6.《ネタバレ》 ~Love Letter~恋文。愛を告白する手紙…って甘酸っぺーなーもう。 手紙文化が滅びつつある今でも、たぶん、まだ多少は使われるであろう“手紙で告白”という手段。 時代設定が私の世代に近く、回想シーンの学校風景から女の子の髪型まで、みんな懐かしく思えた。デジカメやカメラ付き携帯が普及するちょっと前って、ネットで検索しても当時の画像とかあまり出てこない。当時の写真とかは、まだそれぞれの家庭のクローゼットに眠っているんだろう。 樹たちの中学時代の描写がとても綺麗。自転車のライトで答案用紙見るシーンなんて、そんな体験が無くても懐かしさを感じさせる。薄氷の張る丘を滑り降りる樹の美しさも忘れられない。 家が国道になる…そうそう、札幌から小樽に向かう国道5号線はかなり危ない道で、昔は冬道の事故が多かったけど、私が免許を取る頃には走りやすく改装された。って聞いた記憶がある。
同じ顔の二人、同じ名前の二人、死んだ人に手紙が届き返事が来る。ちょっとしたミステリーが適度に興味をくすぐって序盤からグイグイ楽しめた。 タクシー運転手の「似ているなぁ…」はあったけど、博子は免許証の写真、卒業アルバムの写真を実際に見てるのに義母に「私に似てますか?」って聞く辺り、博子と樹はそんなに顔が似ているわけではないんだろう。実際に中山美穂が一人二役を演じているが、決して瓜二つとかではなく、二人はきっと空気や匂いなんかが似ていて、樹(男)は、そういう女性を好きになったんだろう。
主役意外の登場人物がしっかり描けているのも楽しい。強烈キャラ及川早苗は、彼女で一本映画が撮れそうだし、家の取り壊しは妥協できても、病院まで走るのは譲らないお爺ちゃんも面白い。 生徒全員を覚えている浜口先生は恩師の鏡。ネットが普及していないあの時代に、生徒のその後(しかも転校している)まで気に留めているなんてスゴい。 漫画やアニメっぽくもあるけど、登場人物のほんのちょっとした厚みが、それぞれの人にも物語や想いがあることを感じさせ、作者が書きたいメインテーマだけ強調した、その辺の物語とは一線を画す。
文通から中学時代の甘酸っぱい思い出を思い出し、実はその人が亡くなっていたことを後から知る。 最後、図書館の本にラブレターが挟まってる?と思ったが、貸出表の裏ってのがすごくイイ。誰も借りない本の裏に込められた想い。 仕事もサボりがち、実家からも出ていかない。日々を適当に生きていた樹の人生、ここから先大きく動き出すんだろうな。 【K&K】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2021-04-24 15:45:49) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 「拝啓藤井樹様。お元気ですか?私は元気です」――。かつて恋人を山で失くし、失意の中に生きてきた神戸在住の女性、渡辺博子。彼の三回忌の法要に参列した彼女は、偶然目にした卒業アルバムで彼の当時の住所を知る。懐かしさから、博子は何げなくペンを手に取ると、彼に届くはずのない手紙を書くのだった。ポストに投函されたそれは、誰にも読まれることなく送り返されるはずだった。だが、手紙は何故か、北海道の小樽に住む彼と同姓同名の女性、藤井樹の元へと届けられる。「拝啓渡辺博子様。私は元気です。でもちょっと風邪気味です」――。ちょっとした悪戯心から樹はそう彼女に返信を書く。そうして何気なく始まった、見知らぬ者同士の文通。何度もやり取りされる中で、次第にそれは今はなき天国の彼の思い出を鮮やかに蘇らせるのだった。時を超えた二人の思い出はやがて、都会の片隅に小さな奇跡をもたらすことに……。映像作家、岩井俊二監督の長編映画デビュー作となる本作、今更ながら今回鑑賞してみました。結論を言います。素晴らしい作品でした。今まで観ていなかったことを激しく後悔。もう全編に渡って横溢する、このキラキラと光り輝くような豊かな詩情性に完全にやられました。白を基調とした美しい映像に一部の隙も無い完璧な構図、そして気品あふれるクラシカルな音楽ともはや魔法のような美しさにいつまでもずっと浸っていたいと思わずにはいられません。最初はあり得ないストーリー展開に戸惑わせつつも、真相が明らかになれば誰しも納得できるというこの考え抜かれた脚本も見事としか言いようがない。神戸と小樽で暮らすそっくりな風貌を持つ二人の女性、同姓同名のクラスメイト、肺炎で亡くなった父、本当は嫌いだった松田聖子の歌、暗い夜の駐輪場で自転車の淡い光に照らされた二人、誰も借りたことのないマイナーな本の貸出票に書かれた幾つもの彼女の名前、そして最後に彼が借りた『失われた時を求めて』に隠されていた秘密……。散りばめられた細かなエピソードの一つ一つに至るまで監督の才気が漲っていて、その完成度の高さには言葉を失ってしまいます。ただ一つ惜しいのは、豊川悦司の関西弁がいまいち嵌まっていなかったことぐらい。それ以外は、この洗練された美しさに今さらながら脱帽。若き岩井俊二の豊かな才能が完全に開花した、聞きしに勝る傑作でありました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 9点(2020-02-19 20:41:23) (良:1票) |
4.なにをどう勘違いしたのか失楽園みたいなもんをイメージしてしまってたんですが、とんでもなかった コミカルで楽しいものだった。 テレビドラマで慣れ親しんできたアイドル中山美穂。 月9の女王と言われてきた中山美穂。 その中山美穂を映画の世界で見るという不思議感。 中山美穂出演の映画を観るのは初めてでした。 (ビーバップハイスクールは除く) でもそこに毎度おさわがせしますの頃のヤンチャな娘の面影はすでになく、素敵で聡明な女性になってゆかれたんだなということを感じました。彼女の二役、良かったと思います。その表情と静かさとそれでいて明るさを失わない素敵な笑顔とお澄まし顔がとても話を素敵なものにしていました。すごく楽しめた良いお話であったと思います。ツッコミ部分は他の方にお任せして 素直に良いお話でしたと言ってしまいたいと思います。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-29 23:53:46) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 思い出をどうしても忘れられず、過去まで追いかける博子。忘れていたつもりでも次々と思い出が蘇ってくる樹♀。思い出というものはやっかいなもの。そんな心のゆれ動きを描いた作品。冒頭樹♀が雪に寝て息を止めていますが、その意味が分かった時じんと来ました。そういう伏線が多数。樹♂の部屋の絵と答案用紙の裏の落書きは、最後の図書カードの裏の絵への伏線。松田聖子の挿話は、本当は好きなのに嫌いと言ってしまう樹♂のシャイな性格を表し、秋葉たちが樹♂を思い出すときに歌います。樹♀は樹♂を好きでした。答案用紙交換の場面でわざと答え合わせをしたのは、二人でいられる時間を稼ぐため。樹♀も樹♂のことを気にしてます。陸上の場面でしっかりと樹♂を見てシャッターまで切ったのに、友達には見てないふり。花瓶を割った挿話からも明らか。樹♂が博子に一目ぼれしたのは初恋の人に似ていたから。樹♂の初恋のラブレター(図書カードの絵)は、その死後婚約者が天国に手紙を出したことが縁で届けられます。青春と恋はほろ苦く時に残酷です。風邪薬を送るのは非常識と思いましたが、天国に送っていたのですね。博子が山に叫ぶ「お元気ですか?私は元気です」これは最初の手紙の文面と同じ。思いが大きすぎて、それ以外の言葉が出ません。悲しさ、苦しさ、感謝、謝罪、怒り、別れなど様々な感情が渾然一体となってほとばしり出ました。繰り返すことでその思いがずしりと伝わります。秀逸な演出。樹♀の家の挿話も見事。朽ちる寸前の古い家は、古い思い出と重なります。じいは息子を亡くしたトラウマを抱え引越したくありません。樹♀の母はそのわだかまりがあるため引越したい。樹♀を病院に無事に届けたことで両者が和解し、トラウマが解消されます。博子のトラウマも天国へ声が届いたことにより(時間がかかるが)解消されることを暗示しています。樹♂が最後の手紙を出さないのは優しさからですね。樹♀と博子がすれ違う、樹♂がカーテンに隠れる、樹♀が焚火の煙と戯れる、自転車の明かりに映る二人など印象的な場面多数。露光オーバーのカメラワークがグッド。二人が似ていないと成立しない物語なので一人二役は納得。突っ込み:卒業していないのに卒業名簿?名簿に二人の名前があるのに気付かない?ワープロなのに手書きで届く?風邪長引きすぎ?あと、蘭々をふる場面で持ってた本がエクソシストには大笑い。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-05-11 11:35:24) (良:1票) |
2.懐古に浸るのって、後ずさりであるんだけど、過去を吹っ切って前に進むためにも必要なことなんだなと思いました。淡々と、しかしテンポ良く話が進んで、というか淡い映像で藤井樹の2人の思い出を綴っていくのは、監督の手法にただただ脱帽です。現在が雪の設定なのは、やがて溶けて春が来るということ、でベタだと思うんだけど、だがそれがいい。渡辺博子は樹の過去を知り、藤井樹もまた否定してきた樹への思いに気づいていく。未知と既知のやりとりを、届くはずがなかった手紙で、というのが上手いとしかいいようがない。ところどころ、クスッとか、ウフフとか微笑んでしまう場面も随所にあり、つい自分の学生時代のころも懐かしんでしまう不思議な映画でした。酒井美紀さんの演技が自然かつ繊細でとても良かったと思います。 【どんぶり侍・剣道5級】さん [DVD(邦画)] 9点(2006-05-11 22:03:42) (良:1票) |
1.フジテレビのカットの仕方は、なんとかならないのか。 CM前のブツ切りとか、ラスト、エンドロールのスッパ切りとか 本編の合間に、名シーンと呼ばれる所を挟んでみたり。 エピソードのひとつの鈴木蘭々は全カット。 好きな映画だけにノーカットをお勧めしたい。 あ、レビューになってないか。 【たんこぶ】さん 9点(2004-02-15 09:09:37) (良:1票) |