《改行表示》 6.《ネタバレ》 突如挿入される自然の描写や詩的なモノローグといったテレンス・マリックの手法がすべてぶち込まれており、デビュー作の時点でスタイルを確立してしまっている点には恐れ入りました。『天国の日々』以降20年も監督業から遠ざかっていたのも、「これ以上監督業を続けても同じことの繰り返しだろう」と考えた結果なのだろうと思います。。。 『俺たちに明日はない』の二番煎じのようなあらすじですが、その実態は当時流行していたアメリカン・ニューシネマへのアンチテーゼ。負の感情をぶちまけまくっていたアメリカン・ニューシネマに対して、本作はいかなる感情をも排して光景のみを切り取るという作業に専念しています。1958年に発生したスタークウェザー=フューゲート事件をモチーフとし、無軌道な若者による連続殺人というショッキングな題材を扱いながらも、主人公を義賊とも悪人とも扱っていない点がなかなかユニークです。この主人公には何の目的意識もなく、行く先々でただ人を殺しているのみ。しばらくは決死の逃避行を繰り広げていたものの、飽きがくると自ら車のタイヤをパンクさせて警察に投降。逮捕後にも悪びれもせず、それどころか全米を騒がせた有名人として無邪気にはしゃぐという有様。なかなか斬新なアプローチではあるのですが、このレベルの無茶な犯罪に手を染める人間の心理って、案外こんなものではないかと思います。当初は殺人を犯す意図はないものの、目の前で発生した問題を解決するもっとも簡単な手段として殺人を選び続けた結果、死体の山が築かれるという。こうした本作の切り口にはなかなか惹かれるものがありました。。。 また、『シン・レッド・ライン』以降のような冗長さがない点でも、本作を良いと感じました。なんせ上映時間は94分ですからね。無意味に長い環境映像や、周りクドくて訳の分からんポエムは一切なし。物語をサクサクと進めていく簡潔な演出には感心しました。やれば出来るじゃないか、テレンスさん。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-09-02 03:47:35) (良:2票) |
5.5年後の『天国の日々』で伝説の監督になっちゃって、さらに20年沈黙後『シン・レッド・ライン』を作るんだけど、その『シン・レッド・ライン』は結局のところこのデビュー作『地獄の逃避行』とやってることは同じだったんだとコレ見て思った。狂気を狂気っぽく描かない。殺人の背景とか心の闇だとか一切描かない。殺人のシーンはそれぞれが衝撃的であるが、何が衝撃かっていうとあまりに簡単にその行為が成されているってことに尽きる。映画は男が何を思い何を考えているかを映そうとはしない。それは映らないから。映せるのは行動だけ。それが映画なのだ。そしてテレンス・マリックはその行為が成された場所を映す。そこでどんな異常なことが行われていようと地球はそんなことに関わりなく美しくそこに存在し続ける。というか、どんな狂気をもちっぽけなものにしちゃう。何やったって釈迦の手の中でしかない、みたいな。その美しい景色たちが『シン・レッド・ライン』ほどに雄弁でないところがまたいい。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-09-29 15:44:52) (良:2票) |
4.胸の内が灰色になるような実話を、空の青色で染めている。あっさりと美しい色でまとめられた景色の中に際立つ、マーティン・シーンの狂気。理由など無い、誰にも理解できない彼の内面に踏み込んで立ち入ることもせず、それでも延々と追いかけていく画。普通のようで普通ではない常軌を逸脱した地獄の時間に言葉もなく浸った。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 9点(2015-03-28 19:06:07) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 まったく事前の知識無くこの映画を見たが、家の前でバトンを回す少女、どんどん見境なく人を殺して行くストーリー。 どっかで知ってるなって思ったら、ブルース・スプリングスティーンのネブラスカの元ネタとなる映画でした。 しかも原題がBadlandsってこれもスプリングスティーンの曲名ですね。 さらに後から調べたらシン・レッド・ラインの監督さんのデビュー作らしい。 こんな豆知識どうでもいいかもしれないが後でいろいろ納得のいい映画でした。 たしかく連続殺人を描いた映画ですが、ショッキングなシーンな、グロい場面は皆無。 むしろ詩的な映像をリズムよく積み重ねられていき気持ちよく見られる映画でした。 だたし放題は言い訳出来ないほどの酷さ。このタイトルで随分観客を逃してるような気がする。 何考えてんだ~~~! 【仏向】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-01-06 20:18:58) (良:1票) |
2.ひたすら会う人間すべてを撃ち殺し逃亡し続ける2人の男女には動物的本能しか感じることはできず、時折差し込まれる風景とシシー・スペイセクの儚げなたたずまいがワイエスの絵のような虚無感を漂わせるほかは見るべきところはあまりない。テレンス・マリックが真の詩情を獲得するには「天国の日々」まで待たねばならない。 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-06-26 00:33:57) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 この監督、極端が無い。というか、極端が無いのが極端。エロくもなく、グロくもなく、演技が過剰でもなく、ストーリーも普通、という。主人公の彼は、ハンサムなんだがスター的に中途半端、彼女は美人とも言えない。象徴的表現があるのか、というとそうあるようでもない。そんなこんなの平凡さ。でも、魅了される。あまりの普通さに魅了される。何でだろう。この監督、自分を神様だと思っているのか、とても、人に優しい。そこかな、この映画の秘密は。神様の優しさ、である。悪人に怒らない、というか。人間の罪を許している、というか。説教がない。そうだ、そうなんだ、ふーん、って見てくれている感じがする。まあ、人間だからなぁって。馬鹿だからなぁーって。自然も、神が自分の作品を自慢するかのように、美しい。あの荒野が、バッドランドですよ、でも、美しい。不思議な映画だ 【K-Young】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-21 22:21:08) (良:1票) |