4.人物、静物の配置の納まり具合には相変わらず惚れ惚れとする。二人が同時にしゃがむ、時間差でしゃがむ。複数が同時に動いた時の静止位置、ビール瓶、グラスの位置。精緻な計算による美学。路地や玄関、廊下、縁側に差し込む残暑の強烈な光線が生み出す光と影のコントラスト。縁側、川べりの原と司のツーショットの誘惑。この二人のしゃがむ位置が法事と葬儀とでは左右反対になっているところを見ると逆転の普遍性を語っているようにも思えてくる。孫とかくれんぼをしていた中村鴈治郎が鬼から逃げる方、「もーいいかい」から「もーいいよ」に反転しているように、死者を見送る生者もいつかは見送られる死者に反転する。火葬場の煙突がフレームの真ん中に位置する左右反転可能なシンメトリーな構図はそういうことではなかろうか。ラストのカラスも左右に二匹である。 【彦馬】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2006-12-12 22:39:59) |
3.中村雁治郎氏が出演されていると、小津映画でも軽快さが加わってなかなかとっつきやすい。雁治郎氏は歩くだけで、どこかユーモラスで味わい深い。笠さんはどこに出演しているのだろうと思っていたらラストの方にしっかり出演されていた。ほんのちょっとの農夫の役だったが、素晴らしかった。 【柴田洋子】さん 9点(2004-02-07 09:21:30) |
2.小津作品は(当然だが)若い頃はあんまり好きじゃなかった。淡々としてうねるようなドラマティックな展開もカタルシスも皆無。コレで一体何を楽しめと?てな感じw。中年になって改めて観ると実に味わい深い逸品であることに気付かされる。本作の場合、松竹蒲田の撮影所を出て珍しく東宝で製作されたことで数ある小津作品の中でも極めて特異な位置を占める。特に森繁がイイ。50~60年代の彼は全くもって上手過ぎる。特に加東大介との飲み屋での遣り取りはケッサク!あ、鴈治郎(二代目)の上手さは勿論云うまでも無いけどね。浪花千栄子の愛人も杉村春子の娘も各々溜め息が出る上手さ。こんな名脇役にも二度と出会えまい。ところで本作を通して小津が描きたかったモノ、実のところは彼のみぞ知る…なんだろうけど、個人的には戦後米軍占領下で根こそぎ否定された戦前の家父長(戸主)制へのオマージュではないかと思う。戦後民主主義によって次々と失われつつある戦前の日本の風習、コレを完全に消滅する前にフィルムに込めて残したい。そういう屈折したエコロジカルな視点が散見される。その意味で小津は(右翼などとは違った)真性の保守派であると言えよう。※因みに本作の読みは「こはやがわけのあき」であって「こばやかわ」ではないので、お間違えなきように…。 【へちょちょ】さん 9点(2004-01-07 14:42:08) (良:2票) |
1.中村雁治郎氏の息子さんがお父さんそっくりなんです。この間息子さんの写真を見て、中村雁治郎さん、いまだご健在かと一瞬思ってしまいました。 【ロイ・ニアリー】さん 9点(2003-12-12 12:19:23) |