4.《ネタバレ》 こういう映画を、正真正銘ホンモノの名作と言うんです。大恐慌下の悲惨さを全面に出しながらも、類稀なる人間讃歌になっているあたり、まさにジョン・フォードの、そしてアメリカ映画本来の真骨頂。最愛の息子が殺人を犯し、逃亡しながらも、あくまで残された家族を支えて生き抜く決意をする母親役のジェーン・ダーウェルが、絶品中の絶品。オンボロトラックに家財道具を積み上げて、土ぼこりの荒野をヨロヨロと旅していく前半部分から、過酷なリアリズムを貫きながらも映像は息をのむほど詩的な瞬間の連続です。スタインベックの原作が20世紀の「ある真実」を直視した《叙事詩》なら、その映画化である本作にあるのは、祈りと憐憫に満ちた《叙情詩》的な眼差し、でしょうか。いつの時代にあってもその価値が失われない、これが「本当の映画」です。 【やましんの巻】さん 10点(2003-11-05 14:00:29) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 ラストの決意がちょっと抽象的に跳びすぎていたように思うんだけど、でもパン買うシーンが(実に具体的で)大好きなので、忘れられない映画です。主人公の一家が旅の途中15セントのパンを10セント分だけ売ってくれって言うと、いいよ全部持っていきな、と店主が言う。老人は乞食じゃないんだと反撥するわけ。そこで店主は古いパンだからと「譲歩」するの。と子どもが飴ほしそうにしていて、これ1本1セントかね、って聞くと、パン売るときはしぶしぶそうだった女店員が、2本1セントです、って答えるの。一家が去ったあと別の客が、1本5セントじゃねえかよ、と笑って、釣りはいらねえぜ、と勘定をすませる。店員が金額を見て、まああの人ったら、というように微笑む。人情ドラマの一景として完璧でしょ。山田洋次が『家族』で笠智衆に似たようなエピソードやらせたのは、これへのオマージュなんじゃないかと思ってる。アメリカ映画って、けっこうウエットなところあるんだよね。ペキンパーなんかにも感じるし。そこらへん太平洋をはさんで日本と共通する感性があるみたい。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-01-05 12:06:18) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 アメリカ文化の一端を知る資料として貴重だと思います。、、、、特に、広大で荒涼とした大自然、そして産業化が進展する社会にあって、家族しか支えはないのだという感覚は強い説得力をもって伝わります。(→特にトラックの運転席で肩を寄せ合うシーンが度々映し出され、広い社会の中で家族が肩を寄せ合うイメージが鮮明に焼き付きます)、、、、、、そして、5セントのキャンディを1セントと偽り子どもに与えたり、その善意を見て釣り銭を受け取らない別の客などの見知らぬ者同士が支え合うささやかな善意。、、、、社会の仕組みを変えようと言う強い意志。、、、、、、、一台のトラクターによって農民が土地を追われたのは、機械化の進展と、それに伴う産業構造の変化のためでした。西漸運動によりフロンティアに拡がった多くの農民たちは、工農の製品価格差と農業機械化などのために3%以下に淘汰され、貧民として都市に流入する。産業の構造変化がいつの時代にもあるものならば、これは、この時代のアメリカに限られたことではありません。、、、、、コンビニと100円ショップのために町中の文房具屋は店をたたみ、警察のシステム変化で、試験場の周りの代書屋は廃業し、いずれ民営化される郵便局員の中には転職を余儀なくされる人も少なくないに違いありません。そう考えると、60年をすぎても、なお通用するテーマを扱う作品だとも思いました。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-08-21 14:05:24) (良:1票) |
1.夜のシーンが真っ暗です(笑)。この徹底的なリアルな描写が貧しさからくる悲壮感をより一層悲観的に映し出す。その中で途中に寄った店で子供に菓子を買ってやるときの店員の応対がひとときのの清涼水のごとく心を和ませる。こういう一種の救いの描写を入れて怒り一辺倒にしないところがなんともフォードらしい。 アメリカ資本主義がもたらす弊害をもろに受けた人々の悲劇でありますが、家族愛と改革精神にあふれるエンディングがこれぞ”アメリカ映画”と思わせてくれる。もちろん良い意味で。 【R&A】さん 7点(2004-12-20 11:27:24) (良:1票) |