4.ネタバレ 騙されているかもしれないとわかりつつも息子に頼るしかない父と母が哀れで滑稽だった。これはのちに「ディア・ドクター」で偽医者を信じようとする村人に通じるものがあると思った。莫大な借金で正常な判断が出来なくなり、どう誤魔化そうが現実から目を背けようがもう選択肢は無いのだから…。 救いは唯一まともだった娘だ。ラストで、兄と対峙する場面の緊張感は凄い。ケリを付ける為に入った山で兄は蛇イチゴを見せようと誘うが、そんなものは無いと信じる妹はそれを拒む。しかし、家に帰ってみるとそこには…。 なかなか考えさせるオチで美味かったです。 ただ、こんなオチ用意されたんじゃあ妹はたまったもんじゃないだろうな。 【ヴレア】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-11-19 22:18:21) (良:2票) |
3.ネタバレ この作品から最も強く感じられることは「正しさ」とはなんだ?という想いでした。正解のない世の中で、何が間違ってるかもわからなくなります。そんな想いが最も伝わるのは、主人公の教師をやっている妹の感情でした。彼女は序盤で、マスダ君という少年の母親が実際に病気であるかも確かめずに、自分の意志や考えを信じ切っているからなのか、自分なりの答えを押しつけてしまいます。物事には、どんなことでも多面性があり、「これはこうだ!」なんて一方の事実から得た情報で決めつけることはあまりにも危険なことだと思っています。だからそれをしていた彼女の真面目さというか、正しさを追い求める姿がどうなっていくんだろうというのが最も興味深い作品でした。自分の家族や仕事、そして自分自身を信じていた彼女は、その全てが離れていき、そして自信を失っていきます。自分は「正しい」と信じたい彼女の思いがよく伝わってきます。だから、終盤で兄を裏切る走るカットと電話のシーンが痛々しく感じられたんだと思います。その後の鼻歌が力強かったのも理解できました。そして、ラストシーンで蛇イチゴが食卓の上に置いてあるそれを見た彼女の失意の表情。親に裏切られても、婚約者に裏切られてもへたり込みはしなかった彼女がへたり込むという事は、自分自身に裏切られた、あるいは自分自身への信頼の喪失を描いていたのかも知れません。自分自身を見失うことはそれこそ、生きた屍だと思います。巧いなぁ~と思いましたが、できればその失意から這い上がってくるところの方が見たかったです。「ゆれる」ではそれが描かれていたように思うので、個人的には「ゆれる」の方が面白かったです。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-06-27 00:05:33) (良:2票) |
2.表層的に取り繕われた平和の中で価値観を培ってきた人間が、その背後にある真実が露見しても尚、自らの価値観にしがみ付く様を描いた異色ホーム・ドラマ。本作に登場するのは父、母、婚約者、そしてホームルームで正義感ぶる女子児童等の偽善者と、露悪な兄。既に偽善者達に裏切られた主人公は、「兄は悪である」という最後の価値観が崩壊することに恐れおののき逃げ出してしまう。兄の本意は遂に明かされませんが、彼は妹にとって唯一の真実を残して去っていく。それが「蛇イチゴ」。宮迫博之以下、周りを固める役者陣に対し、つみきみほが少し弱い気もしますが、テーマ性、リアルな脚本と登場人物、そして充分に面白い娯楽性は、今の日本では橋口亮輔に匹敵するかもしれません。という訳で、7点献上。 【sayzin】さん 7点(2004-10-29 00:36:55) (良:1票) |
1.なんだか、古典的な雰囲気と新しい感性が不思議に入り混じった作品でした。表向きは健全だけど実は破綻しかけている家庭の、何とも言えない居心地の悪さや微妙な「ズレ」の表現の仕方、笑いへの転化の仕方がとっても面白かった。役者陣もみんな良かったし、宮迫博之のひょうひょうとしてていかにもウサン臭ーいお兄ちゃんもいい味出してました。ラストは結構唐突で、一瞬「あれ?」と思ったのですが、不思議な感じの余韻が残ります。も一回ビデオで観てみたいなー。ちなみに監督の西川美和は28歳の新人。これって今の日本映画界ではかなり凄いことなんですよねえ。頑張ってほしいなー。 【ぐるぐる】さん 7点(2003-10-13 15:46:20) (良:1票) |