12.《ネタバレ》 母親の言いつけより、友達のピンチを救うことを選択したアハマッドくん。この国は、子どもは大人に逆らえない・大人は子どもの言葉にいちいち耳を傾けていられない社会であることを強調することで、「そんな中であえて友達の家に行くことにした」アハマッドくんの友達を思う気持ちが、より強く伝わってきました。
子どもの気持ちに寄り添う子育てなどガン無視なオトナ社会でありながら、親の言うことをきかず夜遅くに帰宅、当然キツく叱られるであろうシチュエーションで、子どもを気づかう母親の様子に、ホッとさせられました。そしてその後の、強風の中で洗濯物を取り込む母親の姿・・・何を表現したいのかよくわかりませんでしたが、映画全体を引き締めるスパイス的な役割のシーンのように感じました。
そしてラスト、友達のピンチを救ったという結末そのものより、ノートの押し花に心を全部持っていかれました! こんなに温かくさわやかな気持ちになれるエンディング、自分的にこの映画の価値はすべてここにあると言ってもいいほど、素晴らしい演出でした!
友達にノートを返しに行くというだけの単純なストーリーを、ここまで高いレベルの映画に創り上げるキアロスタミ監督。巨匠と呼ばれる理由がハッキリとわかりました。同時に、儲け主義の商業映画・娯楽映画が、いかに底が浅いかということもよくわかりました。 【ramo】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2019-03-14 23:45:25) (良:2票) |
11.《ネタバレ》 いいのは母親とのやりとりのところ。アハマッド君は間違って友だちのノートを持ってきたことを発見する。返さなければ今度こそ友だちにとって大変なことになる。返しに行きたい。しかし母親は次々に用事を言いつける。ノートを口実に遊びたがっている、と母親が誤解していることを彼自身分かっている。つらい立場だ。落ち着かない。弟は宿題を済ませたから遊べるんだよ、と母親は教訓を垂れる。そのとき彼はイライラするのではなく、キョトンとした表情で静かに困惑するのである。これがいい。イライラするのは、誰かに自分の困惑を見せたいからだ。最終的にドラマをまとめてくれる物分かりのいい大人に見せたいからだ。しかしこの映画ではそういう大人は残酷なくらい排除されている。それらしく登場する老人もけっきょく少年の足かせになってしまうし、先生もただ鈍感なだけ。少年の気持ちを汲み大人の世界に翻訳してくれる救済者はついに登場しない。少年は最後まで世界の中にただ一人で立っている。そういう少年だからこそ、別の場所に一人で立っている友人のことに心を寄せられるのだ。ただ一人で立つ少年は、責任という問題に出会っている。宿題をやることが出来なくなっている友だちを助けられるのは、彼一人しかいないというところが辛いのである。おそらく今まで一度も母親の言いつけに背いたことのない「いい子」だった彼が、ここでそれよりも「責任」を、キョトンと困惑しながら選び取っていく。イスラム社会では強大であろう親や老人たちの言いつけを越えて、友だちの家を探しにポシュテの町へ走っていく。翌朝、間一髪で彼は友人を救うことが出来る(ここらへんの友人の絶望しきった描写が傑作)。彼のしたことは先生や親に褒められることでもなく、ただ友人の心配を消したことである。その充実が彼への最大の褒美だ。そういう彼の昨晩の冒険の証人には、小さな一輪の花がふさわしい。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-11-10 10:02:51) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 冒頭の学校のシーンから、子供たちの活き活きとした自然な日常が描かれていて・・・と言いたいところですが、表情が活き活きとしているかというと必ずしもそうとは言えず、むしろ主人公の少年なんて映画を通じ、ほとんど不安そうな表情ばかり浮かべている。思えば私自身も、今だって充分に不安だらけだけど、幼少時は何から何まで不安だったなあ、と。生きる事の不安をもっとも直截的に感じていたのは、子どもの頃だったかもしれない。。。 この映画を見てると、いい加減なオトナの言うことをいちいち真に受けるからムダに不安になっちゃうんだよ、と言いたくなる訳で、こういう辺りのやりとり、見てる分には実にユーモラス。大人は大人でそれぞれ、いい味出しまくってるのですが、言われる子供の側としちゃたまったもんじゃない。ユーモアの陰に、生きる不安という深刻さが垣間見えます。 少年が間違って級友のノートを持って帰ってきてしまったことに気づく中庭の場面。母親は洗濯に忙しく、息子の言うことに関心を払わない。ジャブジャブという水の音、洗濯物を干す時のバサッという音、こういう効果音が母親の関心事(=家事)を強調していて、いかにも取りつく島がない感じ、さらには赤ん坊の泣き声もそこに加わって。 少年は友人にノートを返すべく家を抜け出し、プチ冒険。まずは斜面を登る、そこにはジグザグの道があって、これも見るからにユーモラス、でありながら、前途の困難さも予感させて不安も感じさせます。 友人の家を探す過程で、少年は何人もの人と出会うけれど、基本的に大人とはまともにコミュニケーションが取れていないんですね。たいてい、話が噛み合わない。ようやく噛み合ったかと思っても、大間違い。結局は不安と絶望しか残らない。 結局、自分で何とかするしかないんですが、ラストがいいですね。お天道様はちゃんと見てるんだよ、じゃないけれど、一輪の花がすべてを見守ってました、みたいな演出に、ホロリときます。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2023-07-15 07:02:36) (良:1票) |
9.《ネタバレ》 僅か一晩、数時間の話なのでこれをロードムービーと言ってよいのかどうかは分からない。ただ子供にしてみれば、コケルからポシュテまで二回の往復、未知の場所へ行き、初見の人に語りかけ助けを求めなければいけないその行動、そして夜になりながらクタクタとなって戻ってくるその姿。これは立派にロードムービーだったと言えろう。とてもただごとでは無かったハズの一日だ。
そして迎えた翌日朝のスカッとした終わり方。一輪の花を写した映像で幕閉じる。そこに高揚感を爆上げさせるバックグラウンドミュージック。結果、ジンワリと残るその素敵な余韻。いやあ、見処多しで素敵な結果に終わり大変満足させてもらえます。
ただ残念ながら、重箱の隅をつつかせてもらいましたなら(二回見ると分かるのですが)ノートを紛失していた隣の席の例の子は、あの日あの朝あの時、初めてノートが無い事に気付いて 急に絶望感に浸っていたように見えたこと。そこはイランこと気付かぬほうがこちらとしては幸せだったかなと思えてしまった事でした。(^_^;) 【3737】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-10-15 15:42:24) (良:1票) |
8.前フリのノートの必要性からの、 間違えて友達のノートを持ち帰り、 返しに行く必然性が生まれ…
ここまではまぁ
純真無垢な子供が返しに行く過程を、 映画としてどう面白くしていくのかなと思いきや 終始、大人の理不尽さや振り回されるだけの内容 子供の純真さより、大人の身勝手さが鼻に付く映画 最後は一応、子供なりの尽力した姿が見られるものの それまでの過程(大人たち)で全部台無しな感じ
もうちょっと話として面白くなるかなと期待したけど残念 【愛野弾丸】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-09-27 21:39:35) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 本当にタイトル通り一人の少年が隣村の友達の家を探し続ける様を追いかけ続ける映画。 大人になるとついつい子どもに対しても大人の今の価値観で見つめてしまうもの。先生の厳しさ、会話にならない母との「宿題」「手伝い」、仕事が忙しくて聞く耳を持たないドア職人、孫の躾を語るおじいさん。彼らの中にイスラムの伝統や文化などが含まれていたのでしょうか。
結局友だちのうちはどこ?のままで、宿題もまだ、夕飯にも間に合わずでしたが、帰宅後が良かったですね。落ち込んだままで夕飯も食べず宿題、隙間風どころではない、世間の風の冷たさを感じるドアが持っていかれるほどの強風。でも、最後は厳しさもあるけどお母さんが優しく、家族の温もりが感じられたのが嬉しい。
国や時代を問わずいつも子どもは純粋で元気であって欲しい。村を駆け回る少年の姿は同じくイラン映画、「運動靴と赤い金魚」を思い出しました。 【とらや】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-10-12 19:19:01) (良:1票) |
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6.《ネタバレ》 なんともしみじみ幸せになります。向こうの国ではオトナは生活に厳しくてコドモのことなんかかまっちゃいないのですね。日本にあふれる「子供の目線に立って理解しましょう」的な育児マニュアルが阿呆らしくなってくる。大人の無理解のなか走る少年が健気でもう。石段が多くて曲がりくねった街並みとかドアを大事にする考え方とか、なじみの薄いイランの風景にも目を奪われた。夜が本当に真っ暗なんだなあ。こっちまで心細くなってくる。ラストシーン、息をつめて見守りました。先生の一言で涙がじわっ。よかった。ノートにはさんだ押し花が粋です。 【tottoko】さん [地上波(字幕)] 9点(2011-09-13 00:18:44) (良:1票) |
5.彼をぎゅーっと抱きしめて「おかえり!」と言ってあげたい。 |
4.純粋な少年の心温まるストーリー。このシンプルに見える映画の背景に、イランの文化や習わしを見せてくれるキアロスタミのしたたかさ。必要以上に卑屈だったり、高圧的だったりする登場人物たちにちょっと憤りを感じながらも、やっぱり純朴な彼に夢中に!んで、イラン映画はラストが本当に素敵。。一種独特の風味付けと言うか、一花添える感じ。。そこに在る真実を映し出しているようで、とても刺激的です。 【れこば】さん 7点(2004-09-10 20:21:45) (良:1票) |
3.わざわざ映画にするほどの話なのか? 【Olias】さん [DVD(字幕)] 4点(2004-07-04 12:16:20) (良:1票) |
2.男の子がの住んでいる家の一階と二階を移したシーンとか、ラストのほうで奥の部屋に行って宿題をする時のじいさんが座ってるシーンとか、マジ凄い!!!撮り方もさることながらストーリーも良いですねぇ。“ノートを返しに行く”というだけなのに一時間半のドラマに仕立て上げてしまえるんだ~。セリフもほとんどないし。子供は子供で理由があって行動してるんだってのを改めて教えてもらいました。つぶらな瞳がグッド☆そしてやっぱりラストシーンが最高!! 【kaneko】さん 9点(2004-05-06 01:59:11) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 見知らぬ街の行ったこともない友達の家を探し当てるというのは、主人公の少年にとって、恐らく清水の舞台から飛び降りたような思い切った冒険であったに違いない。残念ながら目的を果たせず家路に就き、ぐったりと床に横たわって、無力感に打ちひしがれる彼を慰めるかのように吹きこむ風が、観る者の胸を打つ。そして、ラスト。「最早、これしかない!」という(まるでルビッチの映画のような)窮余の機転が、少年と友人を救うことになる。拍手!! 【なるせたろう】さん 9点(2003-09-12 20:30:44) (良:1票) |