4.《ネタバレ》 『惑星ソラリス』を観たとき水面の映像の美しさにやられた。タルコフスキーの映画の水の描写はどれも美しいが『惑星ソラリス』は格別に美しい。特別な撮影方法があるんだろうが、それは色に関連したものだと勝手に思っていました。しかしこの作品『僕の村は戦場だった』はモノクロなのにソラリスに匹敵するぐらい水の映像が美しい。神々しいと言ったらいいのか。そして作中に元気な水と死んだように動かない水が出てきます。戦争前と戦争中の対比をイワン少年の表情と水の描写で現す。壮絶な戦闘シーンを描かなくても、この対比がそれ以上の効果をもって戦争の恐怖と悲劇を描き出しています。戦争は終わります。映し出されるのはドイツ将校の幼い子供たちの死骸とイワン少年の写真。大人たちがしでかした戦争で亡くしたものの大きさを静かに、そして痛烈に描いています。 【R&A】さん 9点(2005-02-07 13:32:33) (良:3票) |
3.タルコフスキー監督による長編映画第一作。さっそくこの作品でも、物質文明とは対極にある自然界を構成する水、火、木、土などが重要な要素を占めており、これらの格調高い演出はさすがであり感心しきり。ただ、本筋に於いて必要なのかと思われるシーンがところどころ見られる。しかしそんなシーンでさえ後々まで記憶に残り、説得力を持たせるところがタルコフスキー作品の奥深さとも言えよう。この映画では、主人公イワンを演じた少年の存在がすべてであろう。少年イワンが海辺を楽しそうに走るシーンは哀し過ぎるほど美しく、いつまでも脳裡に焼き付く。ドイツ軍に対し憎悪の塊となった少年イワン。夢の合間に現われる幸せだった日々と、過酷な斥候となった現実との対比が戦争の悲劇性を浮き彫りにする。また、表面的には憎きドイツ軍という設定だが、子供というものは国家にしてみると光り輝く希望そのものであると、監督タルコフスキーは敵味方の壁を超え戦争指導者に訴えかけているようにも見受けられる。すると本作は、人間としての良心や罪の意識に問いかける痛烈な戦争批判映画とも言える。様々な解釈が出来る傑作です。 【光りやまねこ】さん 10点(2004-08-19 10:30:31) (良:3票) |
2.《ネタバレ》 水面、雨水、しずく、音、無音、あらゆる形でのあらゆる場面での水がとことん美しいのがやはり印象深いです。〝戦争に巻き込まれる少年〟というのはどうしたって悲劇を連想させますが、物語らなくともゲッベルスの焼死体や子供たちの死体が映る場面だけで無惨さは十分に伝わってきます。また少年が楽しそうに海辺を走るラストシーンの素晴らしさが逆説的に戦争の悲惨さを訴えています。で、そのラストシーンも良いのですが…個人的に気に入っているのは、本筋とは少し脱線している軍女医との恋愛模様?を描いた森のシーンです。あの森のイメージからしてもう凄いと思うのですが、女医が倒れた木の上を歩くところや穴の上で抱き上げられるところなど妙にドキドキさせてくれます。何と言いますか幻想的であり危うい感じがして胸騒ぎを起こさずにはいられないのです。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-08-29 18:26:35) (良:1票) |
1.イワンの幸福だった過去の表情と現在の復讐に燃える表情との対比が全てを物語っている。また、水の使い分けがすばらしい。幸せを祝福する意味で水を使う一方、ドイツとロシアを隔てる川は緊張感を持っていて、その後の不幸を予感させている。この映画を観て、戦争の残虐さを感じることはもちろん、さらに本質的な時間の厳しさというものがヒシヒシと伝わっってくる秀作である。 【たましろ】さん 9点(2003-11-21 22:39:47) (良:1票) |