4.どうしても達者な関西弁を自由自在に操る浪花千栄子や、大輪の花の如き美貌の山本富士子に視線が行きがちになってしまうが、ここでは敢えて田中絹代の控えめながらも力強い演技を僕は声を大にして褒め称えたい。佐分利信と芦ノ湖のベンチに座り、戦争中防空壕の中で家族が一緒だった事を回想するシーン、ゴタゴタが一件落着して電話口で「良かった、ほんとに良かった」と娘の幸せを心から祝福するシーン等はその中でも特に絶品といえる。長年役者を続けてきた人だけが出せる、たおやかな気品とでもいったらいいか。最近こういう女優さんいないよなあ・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(字幕)] 10点(2004-09-26 15:19:24) (良:1票) |
3.“親バカ”とよく言うけれど、その意味でバカでない親なんて多分いないんだよね。有馬稲子がキレイ。情感豊かに、哀愁たっぷりに物語を紡ぎつつも、ベトベトしない小津のストーリーテリングはさすがという他は無い。僕はこれが日本映画の最高傑作のうちの1本であると信じて疑わない。 |
2.頑固親父、父娘の関係をとりなそうとする優しい母、自分の結婚観を押し通す子供、戦後の新しい時代にはどこの家庭でも繰り広げられる光景なんでしょう。コミカルさとシリアスさがどちらも実にリアルであり、ズシズシと心に響きます。両親の気持ちが痛いほど解かるんですよ、解かるけどウーン、痛い。父親が広島へ行くと聞いた後の母親の表情といったら、もうマジ泣けたッス。 【亜流派 十五郎】さん 10点(2004-02-25 15:33:59) (良:1票) |
1.『彼岸花』という「映画」の楽しみ方って何だろう? 「映える」。例えば、画面奥の玄関口に置かれた真っ白な陶磁の花瓶や、いつも部屋のどこかに配置されている真っ赤に塗られたやかんやラジオなどの小道具のさりげない存在感を、さらには、襖に映し出される(見えない)庭の池の揺らめく反射など小津独特のこだわりの空間を楽しむことではないか? 「画く」。例えば、これら隅々まで目の行き届いた色彩豊かな空間において、男たちは、酒やタバコを手に、座敷あるいは会社や飲み屋の椅子にどっかりと腰を下ろし、手前勝手な理屈と淋しき本音をぼそぼそと口にするしかまるで能がない。これに対し、女たちは、感情を露にし、早口でまくし立てるだけでは飽き足らず、画面の手前から奥へと配置された廊下を小走りに嬉々として行き来する(その優美で艶やかな躍動感!)。そんな男と女の関係のアイロニカルな転倒を楽しむことではないか? しかし、なぜ、本作には原節子が出てこないのだ? その謎を解明する楽しみだけでも、本作は、最低3回は観返すことが出来る。ああ、小津の映画って、楽しくて奥が深いよなあ。←などと調子に乗って書いていたら、今夜の『秋刀魚の味』の放映を観逃してしまったよ!なんてこったい。 【なるせたろう】さん 10点(2003-12-11 20:28:27) (良:2票) |