12.親父と2人で観に行った唯一の映画、中学生の私は戦争を起こした悪い人は死刑になるのは当然と思ってました。が法学部に入り、東京裁判が国際法や慣習法にない「平和に対する罪」「人道に対する罪」のでっち上げにより、法の不遡及を無視した裁判であったことを映画の中でも弁護団が訴えていたことを思い出した。東京裁判ほど不公正で違法な裁判はない事をもっと多くの人が知るべきである。終戦記念日くらい深夜でもいいから、毎年NHKで放映すべきじゃないのか。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2003-11-18 15:51:14) (良:4票) |
11.強く心を揺さぶられた。公平さ・客観性といった言葉が、逆説的に不公平さ・主観性をもちうるということを学んだ。罪状認否で全被告が無罪を主張したのに対し、「有罪と認めてほしかった」という一般人の言葉が印象的だったが、その考えには欠陥があると思う。逮捕前に自殺した近衛さんらは、「悪いことをしたから」ではなくて「負けたから」自決したのだ。そもそも日本人の考える「戦い」とは、善と悪をきめる戦いではなく、勝ち負けを決める戦いであったはずだ。これは武道と総称される勝負事の基本だと思う。東条たち生き残った閣僚達は、「負けたこと」の責任を負うのにやぶさかではなく、その結果勝者に殺されることも致し方ないと考えていたと思う。彼らが「無罪」を主張したのは、自分の身がかわいいとかではなく、「負けた」けれど「悪」という後付のレッテルは受け入れられないという確固とした精神に従ったからなのではないか。そういう被告達の姿と、日本が「悪」であったと強弁する左翼の方向性をあわせながら、いろいろと考える必要があると痛感した。長いけれど、とてもいい勉強になった。 |
10.凄い、4時間37分(!)があっと言う間の面白さ。ここには敗戦国への憐憫も批判も、戦勝国への妬みも告発も無い。東京裁判という茶番劇を通して本作が総括したのは戦争犯罪ではなく、戦争そのものの不条理。自らの利益だけを追い求める一部の人間達の疑念と恐怖が戦争を生み、前線で無関係な人間が殺し殺される。運良く戦火を生き延びたとしても、戦後、全く理不尽な理由が正当化されて殺し殺される。どう転んでも殺し殺されるなら、誰も戦争なんてしようと思わない。私はここまで戦争の無意味さを描いた映画を他に知らない。最前線の地獄や被災者の悲劇を描いた作品を観ても、これ程の嫌悪感を持ったことはない。そーゆー意味で、これは究極の反戦映画である。マイケル・ムーアもこれ観て勉強しろ、10点献上。 【sayzin】さん 10点(2004-08-16 13:33:42) (良:3票) |
9.本裁判唯一の戦時国際法学位所持者パール判事の言葉、「時が、熱狂と偏見とをやわらげた暁には、また理性が、虚偽からその仮面を剥ぎ取った暁には、その時こそ正義の女神はその秤を平衡に保ちながら、過去の賞罰の多くにその所をかえることを要求するであろう」。 その暁が訪れるまで残しておく「記録」。 大日本帝國すなわち日本は、まごうかたなき敗戦国である。 しかし、断じて、それ以上でもそれ以下でも、ない。 【とっすぃ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-12-27 03:20:59) (良:2票) |
8.《ネタバレ》 最近は“東京裁判史観”なる用語まであって色々と論議が尽きない東京裁判、判決から35年後に裁判を真正面からとらえたこのドキュメンタリー、製作からほぼ40年たった現在でも考えさせられることが改めて湧いてきます。■とにかく上映時間四時間半はめちゃくちゃ長い。でもよく考えると、ニュルンベルク裁判と違って判決までほぼ二年半も続いたわけで、真面目に追ったらこれぐらい長くなるのもやむを得ないかなと思います。最も昭和初年から敗戦そして占領時代までの挿入された記録フィルムだけで全部足すと一時間近くになるけどね。高校生あたりの現代史授業の教材としてはうってつけかもしれません。■検事側すら最終論告で言及しているように、ナチスの犯罪をさばいたニュルンベルク裁判の被告たちと東京裁判の被告は同列に置かれるべきではない。これは私個人の感想ですが、東京裁判は政治家・官僚組織がその行政および外交の失敗が罪に問われた珍しいケースなんじゃないでしょうか。大日本帝国はドイツ・イタリアの様に一人の独裁者が好きなように動かせた国家じゃなく、明治憲法の下での集団指導で運営される体制で“天皇制独裁”なんて大嘘です。明治維新以降だんだんと国家の指導層が劣化してゆきついにたどり着いたのが敗戦だったわけで、その意味ではA級戦犯の中には万死に値する人物がいるのは確かだと思います。とは言ってもそれがいわゆる勝者によって断罪される筋合いのことかというと別問題です。温度差があったとはいえやはりこれは連合国による復讐で、裁判自体が戦争行為の一部で正義とは無関係なんじゃないでしょうか。■こうやってじっくり見させていただくと、勝者の法廷の粗や杜撰さが発見できました。まず裁判長以下の判事団は、それぞれ母国で法曹に関係していた面々だけど、国際法の専門家が一人もいないというのが驚きです。ソ連とフランスの判事に至っては、英語も日本語も理解できなかったというから呆れます。中でも裁判長のウェッブが日本憎悪に凝り固まっており、何が何でも天皇を訴追しようとゴネるわけです。首席検事のキーナンがこれまた典型的な強面で、ギャング相手みたいに被告たちに接します。でもマッカーサーからは天皇を訴追しないという方針を伝えられており、ウェッブを抑え込もうと陰で東条英機の失言をまるで弁護人の様に修正させるのがなんか滑稽。ソ連の検事に至っては日露戦争も日本の有罪要因だと主張、ここまで来ると失笑するしかないですね。その反面、各被告についたアメリカ人弁護人たちの弁論は想像以上に雄弁で、学会の大御所を引っ張ってきた日本人弁護人とは比べ物になりません。彼らは本国でも無名の弁護士たちですけど、やはり訴訟大国だけあってその能力は半端ないです。■判決はご存知の通り七人が絞首刑ですけど、やはりただ一人文官で死刑になった広田弘毅はさすがに可哀想でしたね。なんせ南京事件が彼の責任とされているのにはびっくりです。あと、全員が有罪というのは驚くべき厳しさ、ニュルンベルク裁判でも何人かは無罪だったのにね。しかしこの被告たちの人選には首を傾げるしかないです。大川周明なんて、当時の日本人でも知らない人がほとんどでしょ。この被告人選定には、なんか日本人で入れ知恵した人がいたんじゃないでしょうかね。あと海軍から死刑が出なかったのもなんか腹立つ、永野修身が生きていたらたぶん死刑だったんじゃないかな。宣告後に隣の留置所から死刑を免れた嶋田繫太郎の高笑いが聞こえてきて腹が煮えくり返った、と武藤章が手記に残しています。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-06-12 22:55:13) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 これは凄い。よくこれほどの作品を撮ったもんだと感心させられる。我々日本人にとっては忘れたくても絶対に忘れることの出来ない。いや、忘れてはならないというべきである事実、戦争によって大勢の人の命が犠牲になった。敗戦国である日本、敗者である立場から勝者へ(に)対する東條英機の発する言葉がもたらした戦争批判、天皇批判、戦争の責任は天皇であるという言葉が東條氏をはじめとするその他大勢の人達まで巻き込んでいく過程、日本人側の立場から見たら絶対に戦争によって敗北した日本は被害者、アメリカが加害者である。両方の国の弁護士の言い分を徹底的に鋭く描いている点に注目して観れば、勝者も敗者も関係ない。どっちもどっちであるとばかり言われているような気持ちにさせられるほどこの作品の持つ恐ろしさ、人間なんて皆、自分勝手で我がままな生きものであることがよく解る。A級戦犯である東條英機と同じく裁判によって有罪となり裁かれる者達、裁かれる者と裁く者とのお互いのやりとりも何ともスリリングであり、あっという間に4時間半もの時間が終わってしまったような気がする。人が人を裁くこととは?戦争によって勝ったから何か良いことがあったのか?負けた悔しさ、悲しさから何かを学ぶことの大切さのようなものを教えられた気がしてならない。とにかくこれほどの力強いメッセージを持ったドキュメンタリー映画、一年に一度はテレビ、勿論NHKか教育テレビで放送で流して欲しいし、一人でも多くの方に観て何かを感じ取って欲しいと思います。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2011-09-19 17:30:54) (良:1票) |
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6.《ネタバレ》 これまた、物凄いドキュメンタリー、いや記録映画を観てしまった。 良質なドキュメンタリーは、やはりどんなジャンルの映画も凌駕してしまう。
東條英機といえば、A級戦犯として知っているし、親からもよく話を聞かされたし、歴史の授業にも良く出てきた。 だけど、考えてみたら、肉声を聞いたのは初めてだ!! 東條英機の映像と肉声、そして話し方、手振り身振り、それらを観られたことは予想以上に衝撃だった。 A級戦犯たちの肉声や姿を観ることができるだけでも、極めて貴重な作品である。
ところで、本作はどういう立場から撮られたのだろうか。 アメリカ政府が、本作品の制作にあたってだいぶ協力したらしいが、それにしてはアメリカ批判色が強く打ち出されている。 なぜなら、締めくくりが、アメリカのベトナム戦争参入に対する批判の文字で終わるからだ。 それに、戦勝国アメリカが一方的に日本軍を裁いたというメッセージが強く伝わってきた。 客観的にというより、どちらかと言うとA級戦犯たちを擁護しているように感じた。 それが良いか悪いかではなく、そう感じたのだ。
ところで、この記録映画は実にリアルに昭和というものを描いている。 これほどまでに生きた昭和史を目で見た記憶は他にない。 そういう意味で、類い稀かつ貴重極まりないフィルムである。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2009-08-09 23:36:13) (良:1票) |
5.4時間37分。自分が劇場で観た映画で最も長い作品はこれです。でも、全く長く感じなかった。当時、映画館には数人しか客がいなかったんだけど、まるでその裁判の傍聴を特別に許された人になったような気分で身動きできなかった。それだけスクリーンはメッセージを発し続けていたってことですね。戦後生まれとして、もちろん勉強にもなったし、簡単には感想をまとめられない重い重いドキュメンタリーです。この裁判が抱える欺瞞は多くの指摘を受けているが、もし日本が太平洋戦争に勝利していたら、逆のことを米国に対して行ったのかな、というのが当時の自分が思ったことでした。その場合は、A級戦犯も英雄に翻る訳です。やってしまった事に対しては、何らかの決着を付けないと先には進めない。戦争犯罪を追及することは、その真偽を諮ることが目的ではないのだろう。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-01-13 16:31:11) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 とてもおもしろかった。ただ黙って判決を受け入れるA級の彼らの表情をみていると、目頭があつくなった。ぜひテレビで放映すべきだろう。 【no_the_war】さん [DVD(邦画)] 9点(2006-07-20 00:40:26) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 点をつける作品じゃないけど。事実のみだし。私も母親と見に行きました。パンフの原題をいっしょうけんめい暗記しました。もう忘れた。思い出した。Military Tribunal For the Far Eastだったな。パンフには、俳優さんのごとくひとりひとりの顔写真および経歴アンド判決と受刑内容まで盛り込まれ、豪華であった。あのころは、子供が元気で学校行くだけで親は満足じゃなくて、さらなる教養をつけてやろうなどということを考える余裕があったように思うなあ。なんか他の方も親と行ってたりするみたいだし。東條が頭ポコンてやられるの、実際に見るとすごいよね。「げげー。実物ー」。ひたすら本で読むのみの「戦争」の実物が目の前に。このころ何を思ったか「大日本帝国」も見に行ったな。ウルトラマンタロウと夏目雅子が出てた。映画「東京裁判」にソ連と司法取引したとかしないとか近頃疑惑の瀬島龍三が出ていたかどうかわからず。もし出てたら、「あー、このとき妻子と会わせてもらってたわけね」なんていう臨場感もありだな。今これを子供に見せる親なんているのかな。戦後は遠くなりにけり。2000年近くも親から子へと怨念をつないで行ったユダヤ人とはなんたる違いか、単に宗教のある無しか。映像は100冊の本より雄弁。 【パブロン中毒】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-12-25 22:09:02) (良:1票) |
2.太平洋戦争は到底勝ち目の無かった戦争である事は、日米の国力の差を考えれば明らかだった。その事は当時の日本の指導者も分かっていたと思いたい。しかし、その状況でなぜあの戦争を始めたのか?東条元首相は自衛のための戦争であったという。そうなのかもしれない。現実に日本国内以外の海外権益を捨てさえすれば、太平洋戦争は起きなかっただろう。それは一方で、当時の大日本帝国と言う国の面子をかなぐり捨てる事にほかならない。日清から始まる「侵略」戦争により、血で獲得してきたそれら権益を捨てる選択が軍部の発言の強い当時の日本で出来たのだろうか?と、思えば"A級戦犯"と呼ばれた人々にとって開戦を先延ばしに出来なかった事が最大の「罪」なのかもしれない。戦後教育を受けた私たちにとって当時の軍部は絶対悪で、関係する政治家や軍人を不当に低く評価する傾向があるようにも思うが、もうそろそろ精神的、思想的にも「もはや戦後では無い」と言うべき時期なんじゃないだろうか?と思った。なお、映画的な面白さと言うより色々考えさせられたのは久しぶりであったので10点を献上します。 【クルイベル】さん 10点(2005-01-24 10:04:46) (良:1票) |
1.満州事変から支那事変、真珠湾奇襲攻撃で口火を切ることになる太平洋戦争突入とその集結。そして総決算ともいえる東京裁判こと極東国際軍事裁判。佐藤慶の明解なナレーションと共に、激動の昭和史がリアルに力強く明らかにされていきます。この作品では戦争という殺し合いを戦勝国が敗戦国を裁く、という大いなる疑問を見る者に提示します。日本と米英のイデオロギーと価値観の違い、コミュニケーションの壁までが浮き彫りにされる。そんな中、インドの判事パルによる裁判そのものの違法性と全員無罪の主張が説得力を持つ。(それでは誰が何を裁けば良いのか? それとも裁くという発想そのものが意味を成さないのか?) 近代日本の歴史的事実を極めて客観的に捉えており、ドキュメンタリー作品としては完成度も高く見応えも十分。監督小林正樹の集大成ともいえる本作の存在意義は余りにも大きい。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-06-05 22:00:36) (良:1票) |