5.二人の姿をみていると、彼らがなじむことができないのは異国の文化に対してだけじゃないんだな、と思った。「家族から必要とされていない」と感じているボブと、理解のない夫との関係に疲れているシャーロット。子供は電話に出てくれない。妻は「忙しいのよ」とか「あなたの心配をするべき?」とかしか言わない。ボブの寂しさをわかってくれない。夫は妻が苦しんでいるのは知っているはずなのに、彼女の話を聞いているはずなのに、その気持ちが伝わらない。二人の言葉が届かないのは日本人だけじゃない。たまたま出会った二人の間にはたいしたドラマなんて起きないけれど、お互いの孤独への理解が、ほんの少しだけ二人の心を通わせる。タクシーを止めてシャーロットの元へ向かったとき、ボブは二人が結びついた時間がささやかではあるものの、かけがえのない価値のある時間だってことに気づいたんじゃないだろうか。たとえ日本じゃなくても、二人には安心できる場所、迎え入れてくれる人がいないのかもしれない。ラストに抱き合えたことはちっぽけな奇跡で、あんな瞬間があるからみんな寂しさに押しつぶされずにいられるんだと思う。人の心は外国よりもずっと遠いところにあるから。 (日本の描写が不公平なことはみなさんのおっしゃるとおりだと思いますが、自分には許容範囲でした。たまに日本のマンガに出てくるアメリカ人に、「ダジャレみたいな寒いジョークをとばして一人で笑っている」キャラクターがいますから、マシューの扱いも仕方ないかも、なんて。偏見もお互い様なとこがあります。) 【no one】さん 7点(2004-12-26 06:20:50) (良:4票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 「東京は、こんな風じゃない」と言う人も沢山いらっしゃると思いますが、 すみません、こんなもんですよね?。実にサエない東京の町並み。 他の映画で実際以上にカッコよく日本が写ってると嬉しくなったりするもんですが、 この映画は、そのまんまの正直な東京。雑多で汚く品の無いネオン、ダサいタクシー、 ゲーセンで太鼓たたいてる若者、変な英語のマッサージ女、マニュアル通りの病院受付、 違いが分からないメニューの写真、アホっぽいバラエティ、アホっぽい司会者。 あ~、恥ずかしい。これがローマ、パリ、ロンドン、ニューヨークだったら、 旅行者は、むなしい虚無感に襲われたりしないのでは?。 そういう街が持っている奥行き、歴史、活気が伝わって来るのだと思う。 この映画を薄っぺらと批判するより、東京という街の薄っぺらさに気が付きたい。 戦後ドタバタと作って来た子どもの街なのよ。ソフィア、見抜いたんだね。 それにしても、スカーレット・Jの美しさが際立つ。ごめんよ、こんな街で。 【じょるる】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-12-07 02:19:48) (良:1票) |
《改行表示》 3.まず、ソフィア・コッポラはセンスいいと思います。ただ脚本は書かないほうがよかったですね。ホテルの窓、タクシーや新幹線の車内から見える風景のシーンはよかった。 スカーレット・ヨハンソンはヨーロッパ的だし、下着姿でホテルの部屋でなんとなく時間をすごしているシーンはフランス映画みたいだった。ビル・マーレーの何かに疲れた諦めたような淡々とした雰囲気は相変わらず良いです。似てるんだけど・・・と思っていたけどやっぱりジョバンニ・リビシでした、なんか今までのイメージと違いました。 中盤かなりダルくて退屈になるけどこの映画が言わんとすることはなんとなくわかる。 家族もいるし、ひとりぼっちというわけではないのに言いようの無い孤独感、飲んで踊ってカラオケ歌いまくってバカ騒ぎしても、我にかえった時にフっと感じる虚しさとか。しかしそのカラオケで歌ったのが「More Than This」とはね、意外というかやられました。そういえば映画全体の雰囲気が80年代のロキシーミュージック、ブライアン・フェリーの曲となんかすごく合ってる気がしないでもないです。 私の場合、家でひとりポツンといる時よりも、繁華街の雑踏をひとりで歩いている時、あふれるほどの人の数なのに誰も知っている人がいない、そういう時にいちばん孤独を感じるし、怖くもなるんです。そんな時、買い物したお店の店員さんと一言二言会話をするだけでホっとしたりする、そんな感覚がこの映画にはあるんです。東京の人ごみ、日本人だらけの中をひとりでキョロキョロしながら歩くシャーロットを見て自分が常々感じていることに重なったのかも。この映画は異国だから体験する疎外感、孤独感を描いているのじゃないと思う。そしてオープニングとラストがとてもよかったです、特にラストね。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-12-24 11:29:32) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 この映画の2人の主人公の間にはいくつかの大きな断絶がある。まず年齢の断絶。そのためなのか、おそらく最後まで二人は互いを性的な存在として意識しなかったと思う。それと身長の差。シャーロットの背が低すぎるというハリスの言葉どおり、傍から見ても二人はかなり不似合いである。もちろん、互いに既婚者という制度的な制約もある。あとは時間の制約。二人とも東京にいつまでもいる訳ではない。帰国すればお互いに別々の場所に住んでいる。ハリスは大人だから、シャーロットは哲学畑の人だから、あらゆることに距離をもって接することに慣れている。二人の間の断絶は、一瞬だけ乗り越えられ、再びその断固とした姿を現わす。この監督はその一瞬を鮮やかに映している。二人が一瞬放つ光の後ろには、完全に個々の人格の匂いを消され背景化した日本人たちが闇として群がっている。 この映画はいろいろなことを聞かせてくれた。 【wunderlich】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-05-03 11:48:09) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 私はアクションや映像に派手さがない映画はあまり映画館で見ない方で、今作のように静かな映画はレンタルで済ませる場合が多い(映画ファン失格ですね・・・) だが、この映画はレンタルまで待っていられず、どうしても映画館で見たかった。ここのレビューでの賛否両論(?)は知っていたし、見る前からあまり期待もしてなかった。だが、この映画にはなぜか不思議な魅力を感じ、どうしても早く見たかった。見てみたら案の定、どうってことない映画だった。アカデミー脚本賞を獲ったというので、予想も付かない展開や伏線バリバリのストーリーを少しは期待したが、大した事ない出来事が淡々と続いてるだけ。こってり豚骨ラーメンと思って食べてみたら、さっぱり塩ラーメンだった感じ(笑) 脚本賞よりもやっぱりビル・マーレイにアカデミー賞を獲って欲しかったなぁ~~。あの「味のある無表情」がなんとも言えない。素敵な役者だ。あとスカーレット・ヨハンソンも素敵。あの美しさは反則です。だけど映画本編は、アメリカ人が見たら面白いだろうけど、日本人の私にはイマイチでした・・・。逆に日本人がアメリカンカルチャーに触れる映画を作ったら面白いかも。と、不満を募らせていたら、最後ビル・マーレイとヨハンソンが再会するシーンで私はなぜか胸が熱くなった。お互いに住所も電話番号も知らない。おそらくもう二度と会わないであろう二人。まるで、アン王女とジョー・ブラットリーみたいだ。見終わった後も「ローマの休日」のような切なさと爽やかさがあった。あのラストシーンのおかげで私の不満はエンドクレジットが終わる頃にはほとんど消えていた。 |