《改行表示》 8.舞台は昭和三十一年の大阪。わざとのモノクロが実に良い味を出している。 戦争を生き延び、貧困を生き延びてきた、大人たちの陰影。裏切りや罪の過去と、泣けるほどのやさしさ。 子供たちは子どもたちで、誰もが通り過ぎる、理屈抜きのともだち、仄かな憧れ、格差(隔たり)の感覚、引け目や罪の意識、そういった微妙な経験を重ねていく。 出てくる俳優は皆すばらしい。子役たちも昨今の無闇な美形主義でなく自然であどけない表情をしていて、なおかつ演技がうまい。 観客が年齢を重ねてはじめて味わいがわかってくる、そんな胸にのこる映画だった。 【せい】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-08-12 02:02:09) |
7.終戦から10年が経った大阪の、子供達の交流と、彼らを見守る貧しい大人達の心情を丁寧に描いた作品。正直、この映画を見るまで当時の大阪の(おそらく底辺の)庶民が、こんなに貧しく厳しい生活を送っていたということを知らなかった。このため感想を言葉にしづらいが、悲しさは伝わって来て胸が締め付けられる。田村高廣の優しい笑顔は、父親である「王将」や「無法松の一生」の阪東妻三郎を思い出させる。 【wayfarer】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-06-14 02:25:01) |
6.戦後10年後の大阪、復興の影に隠れた貧しさを取り巻く人間模様。何気に見出したらじっくり観入ってしまった。姉弟がせつない。何度も観ないだろうけど印象は強い。役者も子役含めて皆いい。 【movie海馬】さん [地上波(邦画)] 8点(2012-04-15 03:20:12) |
5.お父さんの演技がよかった。親子のやり取りをみて、心が温まるいい映画だった。 【ホットチョコレート】さん [地上波(邦画)] 8点(2011-09-21 21:08:24) |
4.一番ジーンとしたシーンは、姉弟が初めてうどん屋を訪れたとこ。大人は子どもたちを・姉は弟を・招いた者は招かれた者を・招かれた者は招いた者を、それぞれ見守っている。いたわっている。弱者同士が肩寄せ合って生きていく、っていうとクサくなってしまうのだが、そういう高揚した感じはなく、実に礼儀正しくいたわり合うのだ、まるで自明の作法があるように。決して水臭いというのではない。「カスのように生きてきた者」にとってのルールなのだろう。こちらからは傷つけないから、そちらも傷つけないでくれ、っていう。この帰り道、送っていくと橋の下を舟が通り抜けていく、ここらへんの正確さがたまらない。少年が初めて加賀まりこの部屋を訪れる場面もいい。ここにあるのも礼儀正しさだ。女の溢れるばかりの感謝の気持ちを、じっと静かに保たせている緊張がいい。「おばさんもおいでよ」「りこうな子やね」。礼儀正しさが頂点を極めるのはラストであり、子どもの呼びかけに絶対人影を見せない舟の姿である。我々はその舟の中でじっと一つの恥を中心に肩を寄せ合っている家族の姿を想像し、その腹立たしいまでの礼儀正しさに感銘を受けるのである。 /(蛇足)田村高広と池部良の俳優歴って似てる。デビューはズレるがどちらも戦後民主主義の時代を体現する若者として登場し、役柄は「まじめ」。が東京オリンピックに向けた経済成長期になると、そのまじめさが俳優としての幅を狭めてしまい、影が薄れた。ところがオリンピック後の1965年に、どちらもプログラムピクチャーの脇役を得る。田村は『兵隊やくざ』、池部は『昭和残侠伝』、勝新太郎と高倉健という戦後民主主義を「体現しない」主役との戦中戦前を背景にした作品で新境地を開き、その後の渋いバイプレイヤーの地位を確定する。なんかこの二人の俳優歴に、戦後史そのものが重なって見えてくるよう。だから田村のデビューごろの時代を描いた本作で、彼は自分の俳優生活の総括をしたようにも思われるんだ。(11年9.29) 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-12-29 12:07:26) (良:1票) |
3.名優、田村高廣がつい最近亡くなった。この映画、初めて観ましたが、田村高廣と父、阪東妻三郎、本当によく似てる。この作品の中に出てくる男の子、2人、食堂の息子、信雄と廓舟に住む幼い姉弟の弟の喜一と三人で手品をして遊ぶ時のあの何とも言えない優しそう表情など父、阪東妻三郎にそっくりだ!そんな田村高廣のこれぞいかにも日本人って雰囲気の良き父親の顔、演技がとても良い印象を残します。幼い子供3人の視線と大人達の子供達への愛情豊に見つめる視線、小栗康平監督は実に優しく描いていて好感が持てます。それにしてもこの映画、本当に子供達の演技が抜群に上手い。テーマそのものは暗いけれど、親と子の関係が美しく描かれている為、暗さというものを感じることなく見せる演出の素晴らしさ、日本人で良かった。いかにも日本的、こういう映画こそ今の世の中に必要な映画だと思いました。 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-05-29 22:17:35) (良:1票) |
《改行表示》 2.昭和31年の大阪。戦後10年以上たっても戦争の記憶はまだ生々しく暮らしも貧しい。 学校にも通えず廓船で暮らす姉弟の悲しさは胸に迫るし、うどん屋のノブちゃんとの友情、のぶちゃんの父母のやさしさなどしみじみとした情感を感じる。 愛情に恵まれ貧しいながら幸せだったノブちゃん以外は皆それぞれ胸の奥に悲しみを持っている。そのノブちゃんにもいろんな出来事が起こって小さな悲しみを知ることになるが、作品にはそんなみんなを包み込むような暖かさがある。 自転車の車軸回しの遊びや着ている服、赤銅鈴ノ介のラジオ番組、出回り始めたばかりのテレビの相撲などなど、そこかしこに当時の様子が描かれていてノスタルジック。これがまたモノクロゆえに一層効果的。 子供たち(特にきっちゃんの面構えがいい)はじめ田村、藤田の夫婦などの出演者もとてもよかった。 【キリコ】さん 8点(2004-08-18 21:14:41) |
1.子供の視点で忠実に描かれていてすばらしい映画でした。自ずとノスタルジーに浸れる場面も少なからずありました。物語はよくわからないうちに強制終了的に一段落し、おそらく今もあいまいなままになっているというような最後でしたが、原作もいずれ読んでみたいと思います。それほど古くないのにモノクロ作品ですが、仮にカラーでも映画の印象はあまり変わらなかったのではないでしょうか。それにしても、田村高廣と藤田弓子演じる両親が常に優しくて感心しました。家庭のあり方を見せつけられ反省です。「子供に責任はない。(子は)親を選べない。」 物質的に多少貧しくても、ノブちゃんはきっと幸せですね。 【黒い鶫】さん 8点(2004-07-25 12:40:24) (良:1票) |