《改行表示》 4.《ネタバレ》 自分の「体験」と妙にクロスするので、感想を書いてみる。 私は昭和35年の大阪市の東の下町生まれ。このような船宿(売春船ではないが)は見たことがある。 となりに住んでいる駄菓子屋のおばちゃんに、ある日長い手紙が来た。 小学校に上がる前あたりだろうか、ウチの親父や祖母が遅くまで隣の家で何やら相談をしていた。 戦死したと思っていた旦那が別の所に暮らしているという手紙が来たらしい。ですぐ、夜中に電報が届き、 その方が亡くなったとの知らせだった。朝にはおばちゃんは飛び出て、駄菓子屋はしばらく閉まっていた。 別の女性と結ばれ、中学生くらいの子供がいるという。知らせは旦那の弟からだった。 そう、のぶちゃんの父母のような夫婦が実際に居たのだ 馬車。パンを売り歩いているのはロバ(ポニー)だったけど、信号待ちでトラックやバスのクラクションに驚いてバックするのが怖かった。馬車での事故も割にあった時代。 酒を飲んだら軍歌しか謳わないおっさん 友人の父がそうで、歌うと小遣いをくれるので一生懸命覚えたという。 そういう「年代感」 日本が貧しく庶民が片寄せあって暮らしていた時代。 「高度経済成長」と言う歴史のワードだけでは、決して知られることのない人々の生活。 懐かしがる必要はないが、記憶や記録は、入れておいた方が良いと思う。 あ、ズボンのポケットに穴が開いて、夏祭りの夜店で、貰った小遣い全部落とした記憶もありました。 親父は怒るし、祖母は母親をなじるし、母親は泣くし、数日ブルーでした。 そういう「体験」が映画見ながらくるくるめぐるので、まあ、加賀まりこさんの美しさ、きっちゃんの素直さ、晋平父さんの毅然さ、貞子母さんの優しさ あかんがな、もう涙で見られん と、数回に分けてみることになって、それがもう4順目 あのころ、こんな人たちがいたんだ 本当に近くにいたんだ そう思い起こす映画でした。私事ですいませんが、それが感想です。 【亜輪蔵】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-04-17 16:54:43) (良:1票) |
3.一番ジーンとしたシーンは、姉弟が初めてうどん屋を訪れたとこ。大人は子どもたちを・姉は弟を・招いた者は招かれた者を・招かれた者は招いた者を、それぞれ見守っている。いたわっている。弱者同士が肩寄せ合って生きていく、っていうとクサくなってしまうのだが、そういう高揚した感じはなく、実に礼儀正しくいたわり合うのだ、まるで自明の作法があるように。決して水臭いというのではない。「カスのように生きてきた者」にとってのルールなのだろう。こちらからは傷つけないから、そちらも傷つけないでくれ、っていう。この帰り道、送っていくと橋の下を舟が通り抜けていく、ここらへんの正確さがたまらない。少年が初めて加賀まりこの部屋を訪れる場面もいい。ここにあるのも礼儀正しさだ。女の溢れるばかりの感謝の気持ちを、じっと静かに保たせている緊張がいい。「おばさんもおいでよ」「りこうな子やね」。礼儀正しさが頂点を極めるのはラストであり、子どもの呼びかけに絶対人影を見せない舟の姿である。我々はその舟の中でじっと一つの恥を中心に肩を寄せ合っている家族の姿を想像し、その腹立たしいまでの礼儀正しさに感銘を受けるのである。 /(蛇足)田村高広と池部良の俳優歴って似てる。デビューはズレるがどちらも戦後民主主義の時代を体現する若者として登場し、役柄は「まじめ」。が東京オリンピックに向けた経済成長期になると、そのまじめさが俳優としての幅を狭めてしまい、影が薄れた。ところがオリンピック後の1965年に、どちらもプログラムピクチャーの脇役を得る。田村は『兵隊やくざ』、池部は『昭和残侠伝』、勝新太郎と高倉健という戦後民主主義を「体現しない」主役との戦中戦前を背景にした作品で新境地を開き、その後の渋いバイプレイヤーの地位を確定する。なんかこの二人の俳優歴に、戦後史そのものが重なって見えてくるよう。だから田村のデビューごろの時代を描いた本作で、彼は自分の俳優生活の総括をしたようにも思われるんだ。(11年9.29) 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-12-29 12:07:26) (良:1票) |
2.名優、田村高廣がつい最近亡くなった。この映画、初めて観ましたが、田村高廣と父、阪東妻三郎、本当によく似てる。この作品の中に出てくる男の子、2人、食堂の息子、信雄と廓舟に住む幼い姉弟の弟の喜一と三人で手品をして遊ぶ時のあの何とも言えない優しそう表情など父、阪東妻三郎にそっくりだ!そんな田村高廣のこれぞいかにも日本人って雰囲気の良き父親の顔、演技がとても良い印象を残します。幼い子供3人の視線と大人達の子供達への愛情豊に見つめる視線、小栗康平監督は実に優しく描いていて好感が持てます。それにしてもこの映画、本当に子供達の演技が抜群に上手い。テーマそのものは暗いけれど、親と子の関係が美しく描かれている為、暗さというものを感じることなく見せる演出の素晴らしさ、日本人で良かった。いかにも日本的、こういう映画こそ今の世の中に必要な映画だと思いました。 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-05-29 22:17:35) (良:1票) |
1.子供の視点で忠実に描かれていてすばらしい映画でした。自ずとノスタルジーに浸れる場面も少なからずありました。物語はよくわからないうちに強制終了的に一段落し、おそらく今もあいまいなままになっているというような最後でしたが、原作もいずれ読んでみたいと思います。それほど古くないのにモノクロ作品ですが、仮にカラーでも映画の印象はあまり変わらなかったのではないでしょうか。それにしても、田村高廣と藤田弓子演じる両親が常に優しくて感心しました。家庭のあり方を見せつけられ反省です。「子供に責任はない。(子は)親を選べない。」 物質的に多少貧しくても、ノブちゃんはきっと幸せですね。 【黒い鶫】さん 8点(2004-07-25 12:40:24) (良:1票) |