7.見せるものは見せる。いらないものは見せない。とにかく自分の目でしっかりと観て、己の頭で考えろと言わんばかりの無駄のない脚本。そのテンポの良さはもう、82分という作品の長さからもはっきりとわかる。濃縮というか、凝縮というか、とにかく、82分に詰め込まれた内容の濃さ、厚みに感動する。維持をはる馬鹿な男、自分の欲ばかりに動く男、何にもなり切れない愚かな男、誰かの為に死ねるのなら幸せだと言って血を流した男、言葉少なくただただ男らしい生き様を見せ付けた男。どれになるかは、自分次第。その瞬間に何のために生き、そして誰の為に生きたかで、男の本当の強さが試されるのではないかと感じた。面白い。面白すぎて、悔しい。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-06-25 01:55:55) (良:2票) |
6.すべての登場人物たちが物語を把握することなくすれ違ってゆく。我々観客だけが把握する。終盤にかけて大筋は把握してゆくのだが、細かいところは把握していない。よって娘を助けるという一致した終焉に向かってゆくクライマックスは、けして全てを理解した者同士ではなく、人間味を持ちにくい世の中にあって、汚れを知らぬ光を消し去りたくないという想いであったり、女の意地であったりというそれぞれの想いが交錯しながら進行していく。真相を知らなくても人間としての尊厳や情というものがたったひとつのエンディングへと誘う。人間らしく生きることを選択し散ってゆく者たちに涙せずにはいられない。悲劇でありながら、快活な演出と怒涛のクライマックスが娯楽に富んだ名作へと昇華させている。原節子が身売りを決心するシーンの画面に立ち込める重い空気を今でもはっきりと覚えています。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-12-27 13:12:35) (良:2票) |
5.『人情紙風船』はあまりに出来過ぎてるので、あえて『河内山宗俊』を。 あまり記憶が定かじゃないけど、いちばんシビれたところは、たしか、中村翫右衛門の最後のセリフと、残した爪楊枝だったと思う。あの「爪楊枝」みたいのの映像だけで、この映画は傑作だと思いました。物語としても、『人情紙風船』よりこっちのほうが面白くて好きかなあ・・。なんか『人情紙風船』て、あらゆる意味で完璧すぎるんだもん。面白いとか面白くないとかじゃないでしょ、あれは。 それから原節子のことですが、原節子って日本映画には大柄すぎて顔もバタくさいと思うけど、この映画のときの原節子は、まだ若くて可憐な感じでいいです。とくに原節子がはじめに横顔で映し出されるシーンは、たぶん歴史的なシーンなんでしょう。 ・・気持ちは9点以上なんだけど、個人的なバランスの問題で8点にしちゃうのを許して。(T_T) 【まいか】さん 8点(2004-03-20 12:57:35) (良:2票) |
4.本作『河内山宗俊』は、夭折の天才監督、山中貞雄の現存する数少ない作品の一つである。 他の現存する2作品である『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』と『人情紙風船』は鑑賞済み。 したがって、現存する山中貞雄作品はこれで全て見たことになった。 本作『河内山宗俊』は、『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』や『人情紙風船』の2作品と比べると、少し知名度や一般的評価が低い気がする。 そんな中、最後に見たので、それほど期待していなかった。 しかし、なんと、山中貞雄作品の中では、個人的に一番のお気に入りとなった。 かなりの傑作である。 本作のメインキャストとして、河原崎長十郎と中村翫右衛門の二人が出てくる。 この二人は『人情紙風船』や、溝口健二の『宮本武蔵』と『元禄忠臣蔵』でもコンビを組んでいた。 そんな中で、本作における二人は最も魅力的だった。 二人とも最高の俳優である。 まずは河原崎長十郎。 冒頭での将棋シーン。 最初はお茶らけている河原崎長十郎。 しかし、最後に真顔で凄んでみせる。 この時の迫力にゾクゾクした。 そして中村翫右衛門。 相変わらずのひょうひょうとした自然な演技。 素晴らしく魅力的だ。 ラスト近く、口にくわえた爪楊枝を捨て、原節子演じる娘を救うため、立ち上がる。 この時の男意気。 しびれるねぇ・・・ 本作には、小津安二郎作品でお馴染みのミューズ、原節子がヒロイン役で出演している。 ちなみに本作は、原節子の最も若い頃を見ることのできる貴重な作品らしい。 小津作品に出まくっている頃の原節子と比べると、当たり前だが大分若く、純情可憐な感じ。 小津作品では比較的大柄に感じられる彼女だが、本作では小さく見えた。 この時、彼女は15歳だったらしいが、二人の男を振り回す魅惑的な少女として、十分に存在感を発揮していた。 先にも書いたが、本作における河原崎長十郎と中村翫右衛門の二人の掛け合いは、絶妙で素晴らしい。 そして全編に渡って「男意気とは何たるか」を堪能できる素晴らしく良くできた傑作である。 山中作品はどれも素晴らしいが、私は特に本作『河内山宗俊』を高く評価したい。 82分という短い尺の中に凝縮された、いつの時代にも共通する「男の生き様の何たるか」を堪能できる作品である。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-08-14 13:30:46) (良:1票) |
3.「任侠に妙なファンタジーを感じちゃっている」人には是非観て貰いたいスタンダードなクラシック任侠物。昨今の極道モノにありがちな生暖かいナルシズムも、嘘臭いカタルシスも、この作品にはエッセンスですらない。某○シネ系極道物シリーズを何億本製作したところでこの高純度には及ばないだろう。真っ当な人情物エンタテイメント作品として古さを感じずに楽しめた。 【aksweet】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-05-30 12:44:40) (良:1票) |
2.これが70年も前に作られた作品というのが信じられない、時代劇とは思えないスピード感、歯切れのいいテンポに間、軽妙さ、笑いのセンスは抜群です。先読みできないストーリー展開とともに終盤は一転、人情味溢れ熱くさせられました。 【亜流派 十五郎】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-10-25 16:56:49) (良:1票) |
1.そこまで尽くすってのが理解しにくいところだけど、それが原節子だったらありえるのかもと思った。10代の原節子はすごいかわいいし、俯いた感じがとても綺麗。お静に罵られて飛び出すシーンが凄いかわいくて。美しさの罪を感じた。 【バカ王子】さん 8点(2004-05-11 21:35:02) (良:1票) |