5.H.G.ウェルズのSF小説は、我々が当たり前だと思っている文明社会が、決して絶対的なものではないのだ、という価値転換、相対的な視点を我々に迫るものが多く、SFらしいと言えばそうなんだけど、ちょっと理屈っぽい面もあって。そんな中でこの「透明人間」は、人間が透明になることで当たり前が当たり前でなくなる、というSF的な思考実験を提供しつつも、ホラー小説、パニック小説としても第一級の、無類の面白さを誇る小説だと思ってます。 それを、基本的にプロットはそのまま用いながら、どうしてこんなツマラない映画にしちゃったのやら。 70分ほどしかないのにも無理があって、開始間もなく、透明人間がその正体を明かしてしまう。こういう怪人やモンスターの類が、なかなか登場しないのもイライラするけど、早々に登場してしまうのも味気ないもの。多分、イライラの方にこそ、面白さもカタルシスもあるんでしょう。 姿が見えない分は音声でその存在をアピールしようというのか、透明人間、やたらよく喋る。この点では演出上の工夫もなく、ひたすら喋り過ぎで、怖くもないし貫禄もない。 他の登場人物も魅力がなく、ケンプ博士が雑魚キャラレベル。取って付けたようにロマンスを絡めるのも、無理があって明らかに消化不良。この状況下であんなフツーの再会シーン、って、どういうことよ? と、やたらとボロクソに書くのですが、それは何故かというと、「にも関わらず、特殊効果のもたらす驚き」には、目を見張るものがあるからで、様々な工夫、手練手管で見せつける、透明人間の摩訶不思議の数々。今見てもコレ、どうやって撮影したんだろう、と驚くのだから、当時の驚きは、いかばかりであったことやら。見世物としての映画、その究極と言っても良さそう。 透明人間の披露するジャイアントスイング。プロレスのリングでもまず見られない、貴重な光景ですよ、これは。 と言うわけで、こんなにツマラないのに、こんなに面白い。だから何だか、ハラが立ってくる(笑)。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 6点(2021-07-09 07:19:29) |
4.物足りないと言えばそれまでだが、短くすっきりまとまっている。当時の撮影技術では透明人間を作るなんて大変だったろうと思う。フランケンシュタインと雰囲気が似通っていると思ったら、同じ監督だった。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 6点(2014-01-03 06:23:50) |
3.人を透明にさせる編集技術はかなりのものだと思う。 上からグルグルの包帯をほどくシーンに至っては見えないながらも実体がある様をリアルに描いていて驚いた。
とりあえず、純粋に70年近く前の透明技術に感動と驚きを覚え、6点。 【ッュャ】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-08-05 20:54:33) |
2.H.G.ウェルズ原作のSF映画。透明人間になると凶暴になり遂に自らを破滅に追い込むという怪物モノ映画だが、いきなり透明人間になるところから話が始まり、以前の博士の性格や生活ぶりなどが全く書かれておらず、どう変わってしまったのかが全くわからないため、怪物になりきれていない。以前の博士からしっかり書いていれば深い脚本になっていただろうだけに残念。ただ製作が1933年という古さ。当時の人たちには小説で楽しむしかなかった透明人間というものを映像化してしまったことにこの映画の価値があるのだろう。 【Arufu】さん [インターネット(字幕)] 6点(2005-11-14 22:00:11) |
1.「カサブランカ」の警察署長や「スミス都へ行く」の上院議員など、非常に印象に残る名脇役クロード・レインズの主演作。もっとも、映画の中ではほとんどずっと透明のままでしたが(笑)。当時としては画期的と思われる特撮も見どころではありますが、主人公の苦悩をしっかりと描いたストーリーこそ本編の真骨頂。今日言うところのいわゆる“ホラー映画”とは、はっきりと一線を画す出来映えですぞ。 |