4.《ネタバレ》 ギラつく野性のオーラを全身から発散させる若き三船敏郎の記念すべきデビュー作であり、監督谷口千吉にとっても処女作となった山岳サスペンス・アクションの決定版!!黒澤が(谷口と共同で)僅か20日で書き上げたというシナリオが何と言っても第1の勝因。キビキビと過不足なく誠に理想的な脚本だ。谷口の初陣を飾るに最高の贈り物だったと言えよう。第2の勝因は勿論、凄まじく極悪な強盗犯・江島役の三船に尽きる。ほとぼりを冷ますべく投宿した山小屋で主人や娘の温かい歓待を受けながら一切改悛の情など見せぬ鬼畜外道ぶりを見せつけ正に圧巻!第3の勝因は冬の北アルプスにロケーションを敢行したことによる圧倒的な舞台効果。殊に犯人の1人が発砲した弾みで起こる雪崩のド迫力、三船が自滅するクライマックスの息詰まるサスペンスはロケーションをフルに活かしきった賜物であろう。谷口は結局コレを超える傑作を二度と作れなかったが、三船は黒澤との出逢いにより一層の高みへと飛翔する契機となる。デビューした二人の皮肉なまでのコントラストが際立つ本作に…9点。登山未経験にもかかわらず志村喬が山男・河野秋武を救うラストでややリアリズムに欠け腰砕けなのでマイナス1点。 【へちょちょ】さん 9点(2003-11-04 00:40:11) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 これは黒澤映画=黒澤映画と言えば昔の日本映画ファンにとっては明で決まりである。の特徴である男と男のドラマであり、役者の魅力に尽きる映画と言っても良いぐらい三船敏郎のギラギラした悪人ぶりとそれとは対照的に心優しき悪人でありながらも一人の可愛い女の子の前に人間的な心を開く男を演じている志村喬の二人がとにかく素晴らしい。そして、もう一人の共犯者を演じている小杉義男を観ると私はマキノ雅弘監督が撮った「次郎長三国志」シリーズを思わずにはいられなくなるのである。それはスキー小屋の娘、若山セツ子も同じである。それとこの映画の助監督に本名岡本喜八郎(岡本喜八監督)の名前があるが、これもまた「次郎長三国志」シリーズの助監督としても有名であるので、そういう意味でも何とも興味深く楽しむことが出来た。三船敏郎をはじめとする三人の悪人がスキー場で出会う一人の少女、若山セツ子の初々しさの前に次第に人間らしい何かを掴んでいく。三人が犯罪者であるなんて全く知らずに無邪気に「ヤッホー!」「ヤッホー!」と連呼する若山セツ子の何と言う初々しさ、健気さ、若山セツ子という女優の持っている初々しさが私はとにかく好きでたまらない。ラストの志村喬とのやりとり、蜂蜜をもらって見せる志村喬の笑顔の素晴らしさ、あの音楽がこれまた切なくて、まるで志村喬と若山セツ子の二人の別れ、雪の降る中での若山セツ子の見送る姿と見送られて去っていく時の志村喬の背中からは物凄いオーラ、男の哀愁が漂い、背中で演技の出来る数少ない俳優の一人である志村喬という俳優の凄さは「無法松の一生」の阪東妻三郎演じる富島松五郎や「男はつらいよ」シリーズの渥美清に匹敵するぐらいのものを感じます。アクションもの、サスペンスとして見てしまうと少々物足りないものの、人間ドラマとしての見応えは十分で、これは完全に黒澤明監督脚本の勝利と言っても良いぐらい(勿論、谷口千吉監督のダイナミックな演出も忘れてはならない)が、黒澤映画が本当に良かったと思える頃(三船敏郎、志村喬の二人のいる黒沢映画はどれもが本当に面白かった。素晴らしかった)のギラギラした感じが観られる映画になっている。そして、最後まで私には若山セツ子の「ヤッホー!」と笑顔に蜂蜜を美味しそうに飲む姿が忘れられない。忘れられないと言えば高堂国典の親父も忘れられないぐらいの凄い印象を残します。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-08-29 22:24:43) (良:1票) |
2.黒澤明監督や本多猪四郎監督とともに山本嘉次郎監督の助監督をやっていた谷口千吉監督のデビュー作となる山岳サスペンスアクションで、主役の強盗犯の一人を演じる三船敏郎もこれがデビュー作。戦後2年しか経っていない時代の作品なので娯楽アクションとしては面白いのかどうか不安な面もあったけど、脚本を書いているのが黒澤監督だからか、娯楽性はもちろんだが、人間ドラマとしても見ごたえのある骨太な作品に仕上がっていてなかなか面白かった。三船はこの頃からギラギラした演技で横暴な強盗犯を演じていて、もう既に後のキャラクターが出来つつあるのには驚くし、本作の脚本がのちに黄金コンビとして数々の名作を世に放つ黒澤監督というのも興味深いものがある。志村喬が共演してるので途中から何だか黒澤映画を見てる気分になった。ラストの志村喬と若山セツ子のやりとりと「オールド・ケンタッキー・ホーム」が泣ける。それから音楽といえば忘れてはいけない、伊福部昭にとっても映画音楽デビュー作であるのだが、谷口監督と揉めたというスキーのシーンの音楽をはじめ叙情的な音楽がどれも画面と調和していて素晴らしい。三船もそうだが、伊福部昭もこの後、日本映画の歴史に名を刻んでいくことになるんだなあ。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-02-19 11:57:04) (良:1票) |
1.黒澤明が脚本に参加しているからなのか娯楽性に富んだ観やすい作品に仕上がっている。一人が滑り落ちた際のすばやくハーケンを打ち付けるシーンやザイルを体に巻きつけるシーンの繊細な描写が山男の人となりや、山がいかに危険であるかといった一切合切を一瞬で見せきる。これが監督デビュー作というから驚き。三船敏郎も俳優デビュー作らしいが、三船の三船らしさというものをうまく引き出している。過酷であっただろう雪山でのロケも間違いなく作品を高みに押し上げているだろうが、いまひとつダイナミックさに欠けるような気がする。面白いんだけど決定的な画に欠けるというか・・。 【R&A】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2008-01-17 12:53:49) (良:1票) |