4.この監督、長回しが好きみたい。あるいはカメラマンの趣味か。最初の弁護士事務所へ駆けつけるとこ、階段上って上司と会うまでを一気にいく。さらに面白いのは、牢のまわりをぐるぐる回り、ときに中に入り込んだり出たりする(スタッフが牢の一面をあわてて外したりはめたりしてるんだろうね、『ロープ』みたいに)。法廷でもくねくねカメラが歩き回った。まあ画面として退屈になりそうなとこだから、動き回ったってだけのことかも知れないが、楽しいことは楽しい。典型的なアメリカの「正義を行なう勇気」ものなんだけど、飽きずに感動してしまうのは、こういう風土が日本にはないからなんだろう。どんな国家にも地下牢は生まれてしまうのであり、問題はそれを暴く勇気の有無なんだよなあ。こういう話で弱いのは、ワルモン役の演技パターンが決まってしまうこと。G・オールドマンいい役者なんだけど、やっぱ「ナチ型」になってしまう。本当に怖いのは、「どうして私の言うことが分かってくれない」と泣きながら、心の底から真人間に立ち直らせようとしてする善意の拷問なのではないか。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-04-29 11:57:47) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 映画はヘンリーが受けた残虐な仕打ちも彼が犯す殺人も、克明に描く。けれど克明でありながら、その描写はとても冷静だ。より露骨に声高に描ける可能性を、映画は勇気をもって捨て去る。裁判のシーンもその判決も、観客の求めるカタルシスをもっとドラマチックに感動的に満たすことはいくらでも可能だっただろう。しかし映画は誠実に、それをしない。ヘンリー・ヤングは弁護士ジムに言う。自分のように暗闇でクソにまみれて這い回っていたわけでもないのに野球中継を見ないなんて、と。俺は女を知らないと。穴蔵に迷い込んできた蜘蛛が唯一の友だちに思えたと。おまえと俺は一体どこが違うのかと。裁判の過程や事件の真相とは直接関係のないヘンリーのその焦点のズレた発言の数々は、けれど彼の台無しにされた悲しい人生を静かに物語る。看守の目を盗みジムがヘンリーに娼婦をあてがう一見下世話なそのシーンの持つ意味は、あまりに切実で痛ましい。人間の尊厳をあらかじめ奪われながら、人生の大半をただ生き延びたヘンリー。そんな彼がジムとならんで座り、トランプのカードを飛ばして遊ぶシーンが忘れられない。彼の人生たった一度きりのその幸福な瞬間が、肝心の判決が下る待ち時間の出来事というのは象徴的だ。ヘンリーが望むのは身の潔白や無実などではなく、ありふれた人間としての当り前の価値、ただそれだけなのだ。人としての価値を踏みにじり続けた副所長を裁判中もずっと直視することができなかったヘンリーは、けれど再び戻るアルカトラズの入り口で、ついにまっすぐしっかりと彼の目を見据える。恐ろしい穴蔵へと続く階段を降りながら、それでもその瞬間彼はようやく価値ある一人の人間として、誇り高き勝利のその意味を噛みしめる。彼はもう哀れなヘンリーではない。ようやく美しき一人の人間として、気高くそこに立つ。裁判でも判決でもなく、その時にこそ、彼は本当の意味で勝ったのだ。 【BOWWOW】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-11-24 21:10:22) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 重かったけども真実が暴かれて良かった。ケビン・ベーコンの演技が素晴らしかった。 【ギニュー】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-07-20 20:58:46) (良:1票) |
《改行表示》 1.ケビン・ベーコン、クリスチャン・スレーター、ゲイリー・オールドマン・・・。素晴らしい演技派の俳優陣が揃いました。中でも今回のケビンの演技は特筆すべきだろう。プロ魂のこもった熱演に関心したし、多彩な役に挑戦する心意気にも好感を持った。作品の内容も、刑務所を逆に告発するというセンセーショナルで難しい題材が上手く描けているという点で非常に優秀な作品かと思います。しかし、個人的には今ひとつ起伏に欠けた部分も感じました。ドキュメントとしての出来では文句無く10点つけますが、私は常に「映画」というジャンルに必要なエンターテイメント性を重視して見るようにしているので「普通では有り得ない」という意外性の有る部分も必要かと思います(もちろん度が過ぎるというのは例外ですが)。 「そんな馬鹿な!所詮映画だからな。」というような言葉を聞くことがよく有りますが(私はそういう人種に対して軽蔑の念を抱いてしまいますが)、私は逆にそれこそがエンターテイメントとして大切な要素の一つと思っています。 【おはようジングル】さん 7点(2004-01-11 18:08:10) (良:1票) |