11.《ネタバレ》 エコや勧善懲悪な話が多いジブリから突然生まれた宮崎監督の実質的引退作品。今までナウシカやラピュタで魅力的な悪役や自然保護を繰り返し観客に提示してきた宮崎映画としては若干異色の作品となっている。本作は「これは善、これは悪」として物語を単純化していない。一応観客は自然をもののけ達から奪う人間を悪として解釈できますが、実は決して人間が一方的に悪としては描かれている訳ではない。エボシ御前はシシ神の森を奪う侵略者だが、エボシは無闇に森を切り崩している訳では無く、身売りにされた娘達や当時人として扱われていなかった業病の患者達、そしてタタラ場を守る為に木を切っているにすぎない。タタラ場にすむ者達からすればエボシは生涯の救世主に違いない。彼女は人間の残酷さを併せ持った聖母なのだ。 つまり両者ともに"守る"為に戦っている。人間はタタラ場を、もののけはシシ神の森を。そこに明確な善と悪の境が無いからこそ観客はこの映画を観た後も迷ってしまう。非常に考えるのが辛い問題を直に投げかけてくる。現代でも環境破壊問題が良く取り上げられるが、別に誰も地球が嫌いで木を切っている訳ではない。それでも地球を破壊する人間が100%悪いと言えるのか。 宮崎監督が今までの勧善懲悪のスタイルを大きく変えたのには意味がある。今の映画界に溢れている、「正義が勝つ、悪は滅びる」という観た後に何も残らない様な映画と、観客に決して解ける事の無い「問い」を投げかける映画と、どちらが価値のある映画と言えるだろう。私は後者の「もののけ姫」の様な映画にこそ価値を感じる。 【民朗】さん [DVD(邦画)] 10点(2008-08-06 16:43:08) (良:4票) |
10.私の周りにはこれ好きって人が全くいない!それに反論します。だから長くなります。この作品は単に自然破壊や環境汚染を非難するエコロジーアニメではない。人間と自然の共生の難しさ、そしてそれは可能か、たとえ不可能としても、そうする努力を惜しまない事こそ、人類に課せられた指名ではないか、というメッセージだと思う。浅い見方をしたならば、エボシやジコ坊は「悪」と取られてしまうのか。だがエボシはいわゆる開発促進派で、周囲の労働者からは絶大な信頼を得ている。そのエボシを利用したジコ坊達だって、強欲ではあるが極めて現実的で最も人間らしい。「不老不死」という人間の永遠のテーマの為に、そこまでする勇気に感心する程だ。それぞれのエゴから勃発した抗争は、今始まった事ではなく、これまでも、これからもずっと続くだろう。どれが悪でどれが善だなんて結論はつけられない。作品の終わり方について「だから?」とか「問題提起だけの終わり方」とか言われるけど、シシ神は、シシ神の森とタタラ場の対立的な環境を全てリセットし、ゼロからのスタートを望んだんだと思う。そして人間たちが今回の騒動を教訓に『人間も自然も』住みやすい新たな環境を、人間の手によって築く事を課題にしたんだと思う。作品で問題を提起されたら、それについてそれぞれが考え、自分なりの答えを出せばいい。だからここまで書いた事も私個人の考え。当たりかはずれかなんて分からない。あともう一つ。かなりハリウッド的なストーリーだと思う。以前BSで「スターウォーズ」に大きな影響を及ぼしたジョーゼフ・キャンベルという神話学者の事を言っていたのでそのまま書きます。→彼は世界各地の神話や民話を検証して「英雄は旅をする」という共通項を見出した。それによると、1.若者は重要な使命を告げられて故郷を追われる。2.若者は旅の途中で永遠の女性と出会い、魔物と戦い、困難をくぐり抜けて最後に故郷に帰る。 まさにこの構想にのっとって作られている(帰ってはいないが)。ここでの英雄アシタカは最初から英雄だった。彼の成長記にしなかったのも「自然環境の再構築」が最終テーマだったからだろうと思う。 【ちゃか】さん 10点(2003-08-09 17:10:46) (良:3票) |
9.《ネタバレ》 はじめて映画館で観たとき、あのラストに感動し、しばらく席を立てなかった。なるほど、どっちが悪いとも言えないんだ―――――アシタカと、サンの関係がそれを表していた。最後、緑深き丘の上で二人が別れるシーンは、その象徴だと思った。「風の谷のナウシカ」の、人間が一方的に悪い、という単純な論理から一歩踏み込んだような気がする。そしてあの、コダマが一匹だけ頼りなさげに現われる最後のシーン。あれを、生かすも殺すも人間次第ということなのか?それともあれは亡霊で、もう二度と戻ってこないことの象徴なのか?人によって意見が割れるので、おもしろかった。だいいち、始まりからして鬼気迫るものがあった。首が吹っ飛び、映画館内の子どもたちがビービー泣く。「これは子ども向けの映画じゃねぇ!」と言っているようにみえた。トトロのあとに、そりゃ酷でしょう・・・。実際、善悪の区別をはっきりさせない映画だから、テーマも大人向けだったと思う。 【九寨溝】さん 10点(2004-12-31 15:45:23) (良:2票) |
8.西村さんの声もイイ!♪ 【タコ】さん 10点(2004-06-21 19:12:08) (笑:1票) |
7.この映画はラストの『生きろ』これに要約されると思う。監督は、これが引退作と言ってたけど、それは本気だったはず。だからこそ、この映画はちょっと変な言い方をすれば、“監督の卒業試験”的なメッセージ。難しいと言う人がいる反面、環境保全のメッセージがあざといと言う人もいた、自分は、そのどちらでもないと思う。なぜなら、エボシは“人”を、もののけ(神)は自然を代弁、さらにアシタカ、サン、ジコ坊、など多くの言い分を、少々の痛み(バイオレンス)と共に見せた上で、『生きろ』・・・これは、人が生きて行く上には、必然的に自然も破壊する、その業は変えようもない・・それでも『生きろ』と・・・その強いメッセージは、日常のありとあらゆる場面にも当て嵌まり、とにかく『生き』てみろという監督が子供達に最後に与えたかったメッセージではなかっただろうか。ナウシカのマンガが13年続き、最後に『生きろ』と言ってみせたように(という意味では、全く違う世界観にしたナウシカの続編に思えた)、監督は、ほとんど全作品で言ってきた“自然保全”以前の、人間に対する尊厳と賛歌を見せてくれたように思う。自分にとっては不朽の銘作。 【ウメキチ】さん 10点(2003-11-02 00:14:53) (良:1票) |
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6.「風の谷のナウシカ」から13年……という映画コピーが示すように、「もののけ姫」は「風の谷のナウシカ」とよく似ている。それは、物語が類似しているということではなく、本編で描かれる何倍ものバックストーリーが壮大に広がっているということにおいてである。宮崎駿の凶暴なまでの哲学性と世界観、深遠なるテーマが詰まった今作が、紛れもなく傑作且つ非常に価値のある映画であることに疑いの余地は無い。そして、幼年時から繰り返し観てきた「風の谷のナウシカ」がそうであるように、この映画が、広い世代にとって偉大な映画になることは間違いないだろう。 【鉄腕麗人】さん 10点(2003-10-23 11:30:50) (良:1票) |
5.基本的にアニメとは子供向けに作られたもの。それをいい年した大人が、映画通ぶってあれやこれやと屁理屈みたいなくだらない事を列挙して酷評している事自体が理解できない。もっと純粋にアニメを楽しみましょうよ。子供の頃に見て楽しかったはずだし、大人になって見ても童心に帰れる機会だと思います。そんな意味でもジブリシリーズや、ドラえもんシリーズは大変優れたアニメだと思います。 【ホーリー】さん 10点(2003-02-18 23:30:12) (良:1票) |
4.宮崎駿監督入魂の一作、確かに受け取りました。“神”の考察、森と人間が隔絶している現実、人物心情の描写、どれを取っても文句のつけようがないジブリ最高作品です。映画版『ナウシカ』で甘やかされていた観客に放たれた一矢、痛快ですね。 【映画バカ一代】さん 10点(2003-02-18 01:58:12) (良:1票) |
3.1回見ただけじゃ難しいかもしれないけど、何回か見れば見るたびにちがう感想があってすごく深いと思う。素直に見れば絶対心に残るって。いい映画。 【あい】さん 10点(2002-12-01 19:11:33) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 僕はどうも、こと『もののけ姫』となると、ダラダラと書いてしまう様です(もちろん今書いているこのレビューもそうでしょう)。そこでこの作品に関しては、個人的に最も重要であると思われるポイントに絞って、レビューを書いてみたいと思います。
この作品における最重要ポイント、それは「アシタカ」という人物に尽きるのではないかと思います。作品における表面的な構図(つまり「自然対人間」という対立構造)とは裏腹に、「自然」に関するメッセージ性はそれほど強くは無いのではないかと思います。そして仮に「強いメッセージ性」がこの作品にあるのだとしたら、それはただ一点、「憎しみへの警鐘」ではないかと思っています。
実際この作品では、「憎しみ」は様々に形を変えて描かれます(ある時は身体を蝕む不吉な痣として、またある時はヒルのようなぬらぬらした姿を取って)。そしてこの作品に関しては、その「憎しみ」は「死」とも密接に結びついているのです。『もののけ姫』においては、作中に渦巻く憎しみの源泉として、この「死(への恐怖)」が描かれています。そして主人公のアシタカは、作中の錯綜した対立構図(自然対人間、人間対人間、そして人間対「神」)と共に、この「憎しみ」と「死への恐怖」をも背負っているのです。
そして僕にとっては、このような「重荷」に対してアシタカが最終的にどの様な解決をもたらすのか、という点よりは、このような「重荷」から逃げ出すことなく、様々な状況に真正面から、しかも「憎しみ」をできるだけ排除した上で対決しようとしているその「姿そのもの」に、大きな魅力を感じています。この『もののけ姫』は本当に豊かな作品だと僕は思うのですが、個人的には、その豊かさの多くは、このアシタカという人物に負っているのではないかと思います。 【マーチェンカ】さん 10点(2002-02-11 03:04:02) (良:1票) |
1.難解すぎてこの映画の素晴らしさが伝わらない人がいるのが残念です。この映画は自然保護の映画などではありません。また、宮崎監督が望む人間像はアシタカなどでは断じてないのです。この映画は「ナウシカ」の続きと考えて見ていただきたいですね。マンガの「ナウシカ」ですが。自然を食い潰し、神を殺して生きていく、その人間の業の深さと本質を描いた映画だと思います。ラストはもう少し残酷でも良かった気がしますが、名作にかわりはありません。 |