5.《ネタバレ》 ビリー・ワイルダーと言えばどうしてもコメディが有名ですけど、実は人間のエゴや赤裸々な行動を描かせても天下一品なんです、要は何でも出来ちゃうということです。まだスターリンが生きてて朝鮮戦争の真っただ中という時代に、ここまで商業ジャーナリズムの偽善性とそれに扇動される大衆の愚かさをあからさまに描くとは大したものです。邦画では長い間「新聞記者と弁護士は正義の味方」というステロタイプが蔓延っていたことを思うと、日本映画の問題意識の欠如を嘆かずにはいられません。もっともハリウッドでは、フランク・キャプラの『群衆(41)』という本作と同様の視点で撮られた映画もありまして、キャプラもワイルダーと同じくコメディ畑の監督なのが面白いところです。主人公の野心ギラギラの新聞記者がカーク・ダグラスだというところで、もうこの映画が傑作になる運命だったんでしょう。脚本もワイルダーらしい巧緻な構成が光りまくっています。冒頭で押し掛けた田舎新聞社の編集長を「ズボンを履くのにサスペンダーとベルトの両方を使う男は騙せない」と評したダグラスが、一年後には同じスタイルになっているのは脚本の芸が細かくて笑わせてくれます。最初のころは半分は善意を持って集まってきた民衆が、だんだんイベント目当ての野次馬に過ぎなくなり、特別列車まで仕立てて押し掛けるエスカレートぶりの異様さ、もうここにはワイルダーの大衆に対する嫌悪すら感じます。ちょっと不満だったのは、最初は冷酷・無慈悲な人間だったダグラスが途中から生き埋めになったレオに同情するようになるところがいささか唐突なような感じを受けるところです。ラストになると完全に良心に目覚めて勧善懲悪っぽい幕の閉じ方で、これは例のヘイズ・コードや大スターであるカーク・ダグラスへの忖度があったのかもしれません。そこら辺は、時代が違えどもメディア報道をテーマにした、ジェイク・ギレンホールの『ナイトクローラー』とは偉い違いです。まあ『ナイトクローラー』はリアルではあるけどあまりにやり過ぎ、とんでもないお話しですけどね。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-31 22:24:24) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 いやあ、凄い!流石はワイルダー監督作品だ!社会に対する皮肉、新聞者の実体、人間のわがままぶりを見事に描いている。洞窟内で死んでいく男の女との終盤戦の攻防、女の首を絞めた後に刺され、それでも最後まで己の信念を貫き通して元の新聞社で倒れるカーク・ダグラスの演技の凄さ、ワイルダー監督、何を撮ってもどんなジャンルの映画を撮っても平均点以上の映画にしてしまうのが凄い。ワイルダー監督の作品の中にあって、知名度の少ない作品ではあるけど、今時の社会派の映画ではなかなか味わえない素晴らしい傑作! 【青観】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-11-27 20:19:31) (良:1票) |
3.6人しか投稿してないということは知名度は低いのでしょうか?邦題は酷いですがなかなかの傑作なのでもったいないですね。みんな機会が会ったら見た方がいいですよー。主役のカーク・ダグラスは初めて見ましたが演技力が抜群なのでグイグイ引き込まれてしまいますね。さすがに親子だけあってマイケル・ダグラスとクリソツで遺伝子の力すげぇって思わされます。(まだご存命なようでビックリしました。)お話ですが、何年か前にあったチリの落盤事故でも不倫だのなんだのお祭り騒ぎになっていたことが記憶に新しいため、なかなかリアルな話に感じれて面白かったです。締めのシーンが好みじゃなかったのでもう少し違った感じだったら10点あげてたかな。 最初に現場に現れた家族が段々とその場に溶け込んでいくのが笑えました。 【映画大好きっ子】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 23:34:25) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 彼の作歴上では「サンセット大通り」に負けず劣らずけれん味溢れた一本だと思う。特に寂れた町に集まる・散らばる群衆を描いた一連のシーンははっきり言って馬鹿馬鹿しいくらい大げさな表現に終始してしまっていて可笑しい。(ま、その位「真実を見抜けない」愚かな大衆を描いている=アメリカ人ではない監督ワイルダーの視点を感じるのだけど)あとは俳優カーク・ダグラスの凄い「目力」を堪能しよう。息子マイケルにもその資質は引き継がれている。が眼にいろんな感情がこもっている分、やっぱりお父さんの方に迫力を感じる。下の方も書かれているがそこまで悪漢を演じていた彼が改心するに至る流れが弱すぎる事、あとは彼以外の俳優に魅力が足りないのがちょっと惜しいかなという気がするが、この主題に関しては制作から50年以上経った今でも理解・共感出来るはず。隠れた佳作。 【Nbu2】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-06-05 17:03:31) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 人は他人の不幸で利益を得たり楽しんだりしている。しかも汚いことに、そうしたマネをしていながら「自分は善人として行っている」と信じて疑わないのだ。 ニュースを伝えるメディアがそれが最も露骨に表れるので本作でもそこにスポットしているが、この醜い心は人間に普遍であるといえよう。ある意味、自分のやっていることが汚いことであることを自覚出来ているカーク・ダグラスの方がまっとうだとさえいえるかもしれない。 【θ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-08-06 00:26:26) (良:1票) |