4.夏の暑い日の真夜中、無性にこの映画を観たくなる時がある。87歳までの30年間、ひとりで黙々とドングリの実を植え続けた男の物語を・・・。この作品を初めて観たのは、地元の自主映画上映団体主催による野外上映会でのこと。すっかり暗くなった夜の公園での上映。地面にゴザをひき、皆もの凄い集中力で映画に見入っている。また、虫に刺されたりするのも野外上映ならではの醍醐味といえるだろう。あの時、南フランス・プロヴァンス地方に想いを馳せながら、シーンと静まり返った公園で観たこの作品は、私に新鮮な驚きと感動を与えてくれた。誰の力も借りずひたすら自分一人で木を植え続け、やがてひとつの森を作ろうなんて、ちょっとやそっとでできる事ではない。相当な決心と根性が必要だろう。だが、この男は30年間もかけてやり遂げたのである。誰に頼まれた訳でもないのに。自分の意志で。観終わって、なんとも言いようのない深い感動が心に染み透ってくるようだった。忘れられない夏の思い出である。 【きのすけ】さん 10点(2004-05-22 14:38:49) (良:4票) |
3.揺らめゆく自然の情景に、今まで自分が忘れかけていた何か大切なものを思い起こさせてくれるような気がする。戦争にも惑わされず、ただ黙々と木を植え続ける男の姿には胸を打たれる。羊飼いエルゼアール・ブッフィエの影に、5年半の歳月をかけて二万枚の原画をほぼ一人で描いて完成させたというフレデリック・バック監督自身の姿を照らし合わせずにはいられない。心洗われる一本。 【かんたーた】さん 9点(2004-10-31 19:25:44) (良:2票) |
2.「スノーマン」のアニメーション映像を見たとき、その作業量を想像しながら、叙情的な絵の動きに感動して涙したけれど、その頃はそれを凌ぐ感動にめぐり合えるとは思っていませんでした。映画祭でこの作品を観て、感動のあまり、しばらくボーッとしてました。なぜだか実話だと思っていて、後日そうじゃないことを知りましたが、この映像作品の元となった話しが世に出た当初は実話として広まったそうです。記憶に間違いがなければ、映像を手がけたフレデリック・バックも制作段階では実話だと思っていたとか。この物語の老人の静かで力強い行動は、映像作家フレデリック・バックを駆り立て、目を患うほどの執念の作業に専念させる力を持っていたということでしょう。物語は実話ではなかったけれど「たった1人の男が行ったこと」という点を除けば、名もなき多くの「木を植えた男」たちがいて森が育ち維持されてきた歴史はウソではなさそうです。少なくとも、かんたーたさんも書かれていらっしゃる通り、フレデリック・バック自身が羊飼いの男と同一視できる偉業を果たしているわけで、この作品がまた世界中の人々の心に小さな種を植えていくことで、ウソがホントへと変わっていく力になってると嬉しいなと思うんです。 【だみお】さん [試写会(字幕)] 10点(2010-01-06 03:10:46) (良:1票) |
1.パステルの画が涼やかに流れていきます。しばしおとぎの国の遊園地でメリーゴーラウンドに乗っているかのような気分に浸らせていただきました。そのメッセージ性はストレートでありながら優しく心に斬りこんできます。前半のブラウンとグレーを基調とした荒漠な大地、そして後半のグリーンとブルーを基調としたメルヘンな空間・・・人間の可能性を丁寧としかいいようのないアニメーションで描いたバックさんの静かなる情熱には、ただ極東の片隅で感謝を叫ぶのみです。 【彦馬】さん 9点(2004-11-14 23:15:28) (良:1票) |