6.いやぁ、さすがは名作ですね。もの凄く素朴でシンプルな作りなんですけど、彼女を殺めるシーンにしろ、父親が復讐するシーンにしろ、一つ一つのショットがとても印象的で記憶に残る。こういう骨太の作品を見ますと、最近のやたらとショットは多いのに情報量の少ない作品群とは対極にあるなという感じがします。神よ、あなたは見ていたはず他。なぜ沈黙なさるのか。こういうところは日本の遠藤周作のテーマに似てます。だけど最後まで沈黙するのではなく、本作はちゃんと泉が湧き出てくる。それにしてもあの少年が実に不憫。少年の存在こそが、このシンプルな作品に重みを持たせている。 【あろえりーな】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2004-09-11 02:27:26) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 米、映画『ヴァイキング』を観ていて興味深いのは、彼等ヴァイキングが暴れ廻っていた頃の10世紀前後のスウェーデン人は未だ、神オーディンの名を高らかに唱えているのに、時代背景が16世紀である、この映画の中で密かに神オーディンの名を小声で唱える者は、召使女のインゲリが只ひとりという少数派に転じている事。
カリンは父テーレと母の愛を一身に受け、美しい無垢な娘として成長。その愛娘を、遠くの教会にまで寄進の品物を届けさせる使いに出す程の敬虔なキリスト教信徒。その道筋でカリンは他所者に無残にも殺されてしまう。神は何もしてくれず、真実、神は存在するのかとする、テーレの信仰心の揺らぎを描く。
一方、オーディンを信じるインゲリが生き残るという不条理に混乱する。横溢するキリスト教への不信、だがカリンの遺体の頭があった、その箇所から泉が湧き出すという奇跡で神の存在を再び確信し、信仰への迷いを吹っ切るというラストは、神の不在、信仰への疑念をテーマにして、如何にもイングマール・ベルイマンらしい作品である。テーマとは別に、映像のセンス、特に照明が優れる。光と影の劇的効果、今日的視点で見直しても力強く、美しい作品であるのは確か。 【DADA】さん [映画館(字幕)] 7点(2016-07-23 09:54:48) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 火に息を吹きかけて天窓を開けるオープニング。 火が強まり陽が差し込むことで画面の中がふわっと明るくなる。 オープニングをこの微妙な光加減で描いてみせたところに、画面作りに対する繊細さがうかがい知れ、そして一つの物語がここから始まるのだという象徴的なこのファーストショットに、自分の中に存在する何かが呼び起されたような気持になりました。 教会への道中、山羊使いの男たちに呼び止められ、食事を分け与えてから自身に危機が迫っている事に感づくまでの、じわりじわりと恐怖が少しずつ滲み出てくるような描写が実に良いです。完璧。 更に、少女を身ぐるみ剥いだその3人組がやって来たのがその子の家となれば、そこに生まれるサスペンス感たるや、もはや尋常ではない。 いつ、どのタイミングで少女の服が出てくるのかを想像すると、食卓を囲む何気ないシーンが緊迫感を帯び、ただならぬ雰囲気で満ち溢れてきます。 夜中に目を覚ました少女の母親が彼らの所に行ってみると、男は少女の服を差し出し高く買い取れと言う。この時の母親の不気味なまでの静けさはどうだろう。怒りに震えることすらもない異常なまでの静けさに身の毛が弥立つ思いがしました。 そして、父が身を清めるシーンのおぞましさ。その対極的ともいえる一本の木の詩的なショットを挟むセンスといい、もはや全てのショットが皆強烈なインパクトを放ち、目を釘付けにされてしまいます。 最後、少女の亡骸を起こした所から水が湧き出でる。 泉の出現という奇跡で終わりを迎えるこの物語は、神話とか聖書の中の一節を描いたようなとても不思議な映画でした。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 8点(2014-01-19 01:10:48) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 私には神の信仰など深いテーマについてはよく解りません。しかし、この映画はそういう難しいことを抜きにしても人間の持っているわがままな部分、惨酷さ、何の罪もない人がただただ己の欲望、身勝手さによって強姦された挙句に殺されるという惨酷さ、そんな惨酷な部分を描くこの何とも許せない話の中にあって、娘に代わって、また神様に代わって自分の娘を殺した男達を刑に処すというその気持ちは父親としての、また人間の持っている悲しさ、それは殺されたカーリンのことを嫌っていたもう一人の女、インゲリの同姓に対しての嫉妬、眼の前で三人の男に殺される場面をただ目撃することしか出来なかった彼女も一人の人間として苦しんでいる様子が観ていてもよく解る。人間とは如何に惨酷で弱い生きものか?という問いに応えているような本当に見ていても寒気のするような内容ではあるものの、画面全体の美しさ、白と黒とのコントラストの色使いの凄さ、カーリンが教会へと向う場面で馬に乗って行く場面のあの美しい映像美、途中で出会う男達に強姦される場面もその後の殺人シーンにしても殺された後に舞う雪も何かもが本当に美しい映像美として心に残るぐらい本当にどのシーンも美しい。男達への復讐を自らの手でやりとげた父親の見せる涙にこそ人間の持っている悲しい部分が現れてもいるそんな気がしてならない。ラスト、殺されたカーリンの死体を目にして神様は何て罪なんだというようなことを祈る人達、流れ出る水の美しさにはため息が零れる。どうしようもないぐらい観ていてもやりきれない気持ちにはなるので何度も繰り返し観たいとは思いませんが、これだけ人間の矛盾した気持ち、惨酷さ、欲望などを美しく描いた映画は他には観た記憶がない。とにかく一度、観たら忘れられないぐらいの美しさが惨酷な世界と相成って描かれていていつまでも心に残りそうです。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2008-04-20 12:07:55) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 こんなにも美しく、そして残酷な映画は観たことがない。 世界広しと言えど、こんな映像はベルイマンにしか撮れない。 それくらい鮮烈な映像だ。
少女の強姦シーン。 これほどまで残酷で鮮烈な強姦描写は観たことがない。 観ていて悪寒がはしった。 動悸がした。 心がざわざわとする程の強烈なシーン。
この強姦シーンを、ここまで際立たせた要因は、少女の美しさに尽きる。 冒頭で、少女が神がかり的な美しさを見せる。 これ以上ない美しさ。 心乱されるほどの、強烈すぎる美しさだ。 この、少女を美しく撮った冒頭部分があったからこそ、後の強姦シーンの痛ましさが際立った。
89分と短い尺ながら、体力を非常に奪われた。 なんていう美しさ、なんという不快な作品だろうか。 この不快感には、どんなスプラッター映画も、どんなホラー映画も、足元にも及ばない。 神秘的な美しさと並存する不快感。 私はイングマール・ベルイマンという監督に畏怖する。
ベルイマンにしか取れない独創性の極めて高いモノクロ映像。 美しい少女と、その少女を極めて神秘的に美しく撮った手腕。 ベルイマンという人が、いかに凄いかを確信できる作品だ。
終わらせ方やラストシーンに疑問は残るものの、並外れた作品であることに疑いの余地はない。
この不快感を基に点数をつけるとすれば、0点のインパクト。 美しさを基に点数をつけるとすれば、10点のインパクト。 あまりに両極端で、点数をつけるのが非常に難しい作品である。
いつかは再見したい作品だが、再見する勇気が湧いてこない。 最後に湧いた「処女の泉」は、私にとってなんの慰めにもならなかったのだ。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-17 21:04:37) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 羅生門の影響を受けている作品ですな。何が正しいことなのか?正義とは何か?を考えさせてくれる映画です 【たましろ】さん 8点(2003-11-26 20:16:37) (良:1票) |