4.皮肉なモンですね、出演したご本人が自分の過去のフィルモグラフィーから抹消したいであろう映画が作品としての評価は一番高いとは・・・。しかし自分がここで褒め称えたいのはこれが監督デビュー作となった澤井信一郎監督の職人的手腕である。当時の松田聖子の凄まじい人気を考えると、どんないい加減な駄作を作ったとしても一応はヒットしたとは思うが、単なるアイドル映画に貶める事なく映画の文法をきちんと踏まえた正統派の演出は素晴しいと思います。澤井監督の今現在に至るまでのご活躍も、これを見ればうなずけます。もう亡くなってずいぶん経つけど、明治生まれの俺のばあちゃんもこれ見て泣いてました。それ以来松田聖子がテレビに出るたんびに「あの民さんがねえ・・・」とニコニコ笑って応援してましたもん。彼女がその後スキャンダル等に巻き込まれる姿を見る事無くばあちゃんは天寿をまっとうして逝きましたが、それはそれでよかったのかなあ・・・なんて考えてしまいます。(追記)澤井監督の演出術の本が出ましたよね。この作品や「Wの悲劇」等を高く評価してる自分は非常に(立ち読みですが)興味深く拝見させて頂きました。 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(邦画)] 8点(2004-12-04 14:03:46) (良:5票) |
3.もっぱら評判の高いこの作品。いや、だまされんぞ。アイドル映画なのにちゃんと撮っているってぐらいじゃ。と、変な気合を入れて観たのだが、まず夕暮れ時の薄暗い空をバックにほのかな逆光で映される二人の描写という美しい画が飛び込んでくる。まあ、こうゆう画が一つや二つ無いとお話にならんでしょ、とか思っていたのだが、一つや二つじゃない。引いた位置から捉えた画が何度も挿入され、それらはことごとく美しく、もちろん単に情景が美しいだけではなく、ちゃんとそこに二人がいて、その二人は必ずといっていいほどに背景にあった逆光を浴びている。松田聖子は木下版のヒロイン以上にヘタクソなのだが、木下版もそうだったが、そのヘタクソさの中に純朴さがにじみ出てるような錯覚を覚える。アイドル映画とは思えないあの“おでこ”もこの純朴さに一役買っている。白を効果的に使っているという↓レビューに大いに納得しながらも、私はりんどうの紫がその色の鮮やかさとともに鮮烈に刻み込まれました。カラーであることがなんの優位性も見出せない映画が多々あるなかで、見事にカラーの優位性を見せ付けている。 【R&A】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-10-05 11:05:40) (良:3票) |
2.松田聖子目当ての観客を外に放り出すことなく、適度に彼女のアップを挟みながら、美しい信州の山々を背景にしたロングショットをフィルムに刻む。白無垢の民子と、騎馬戦を白組で戦う政夫のカットバックは、白と白とがぶつかり合い、観る者に“綿積み”の綿の白さを想起させ、その時に帰宅が遅れたことが二人を引き離した起因となったことを考えれば、あの混じりっ気のない、逆光に映えていた綿の白さは、悲しさと儚さとを想起させるのである。二人が見つめてから何十年と時を隔てても変わらぬラストの夕日が心に残る。 【彦馬】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2006-11-15 17:38:58) (良:3票) |
1.これは驚き、かつてのモノクロの「野菊の如き君なりき」が明治の民子と政夫としたら、この映画は昭和の民子と政夫を思わせるではないか。 もちろんそれが単純に悪いと決めつけるものではなく、これはこれで良い映画である。ただ惜しむらくは主人公二人の演技の未熟さというより、魅力のなさかもしれない。それに引き替え脇役陣の見事さは光るのだが・・・。 一番のまずさは、民子が政夫よりも年長とさんざん語られながらも、そうは見えないこと。アイドル云々よりも、松田聖子が実年齢より若く見えるあの甘ったるさにあるのかもしれないし、「民さんは野菊のような人だ」と政夫が思っても、私には到底思えないことかもしれない。 後にヒットしたレコードの「矢切の渡し」が、この映画の別れの場となる渡し場だったとは、恥ずかしながらずっと後になって知った。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-06-04 09:15:12) (笑:1票) |