5.あらすじで書いたように、本作は非常に意義深い作品です。しかし内容はとるに足りません。当時は『スターウォーズ』に匹敵したかもしれないこの10分間も、21世紀の現在、観客を楽しませることはまず無理でしょう。さて、こういう映画をどう評するべきでしょう。現役のソフトとしての能力に乏しい以上、1点をつけざるを得ないというのが私の考えです。私は私の感想に基づいて採点しています。私が10点をつけた作品は、私が現在観賞した上で、横綱に相当すると判断したものです。そこに歴史的意義、名作度が入り込む余地はありません。それらは私と作品の一対一の関係を阻害します。私のレビューは、私自身の責任において述べる「感想」であり、映画史の「評論」ではありません。映画史上に残る名作を選んでいるのではないのです。ですからこの「1点」には、歴史的意義も名作度も一切入ってません――採点上は。さて、ここで特筆しておかなければならないのは、いま「採点上は」とことわった中身に関してです。そもそも「老人が現役としての能力を失っている」という状況と、「彼の業績をリスペクトする」という行為は、全く別次元の話でしょう。私は『大列車強盗』を作った人を尊敬しますし、その価値(先駆者としての業績、資料性、骨董価値)を大いに認めます。それでいて1点をつけることは、私の中では矛盾しません。『大列車強盗』は神話の時代の偉人であっても、私が選ぶ精鋭としては、老人である彼はとても戦力にはならないと思うからです。このように、自分の感想と他人の評価を常に分けて考えないと、「歴史的名作だから」という理由で、正直な採点が出来なくなる可能性がある。私はそれを避けているのです。 【円盤人】さん 1点(2004-10-10 16:51:35) (良:11票)(笑:2票) |
4.走る貨車のなかで、列車強盗と守衛が撃ち合っている。こんな至近距離でよく弾(たま)が当たらないもんだなあという、何とも牧歌的(?)場面。しかし一方で、彼らの背後は扉が開いたままになっていて、そこには流れるような森の光景が映し出されている。この映画を見ると、いつもぼくの眼はそこに釘付けとなってしまう…。
もちろんスタンダードサイズの映画だから、ほぼ正方形に近いフレームの映画のなかに、もうひとつ「開かれた扉」というフレームがある。そしてそれは、ぼくの記憶ではヴィスタサイズ風の横長で、そこに映し出された“流れるような森の光景”の映像には、見るたびいつも陶然とさせられてしまうのだった。
あるいは、登場人物たちの服装やちょっとした小道具など、その細部(ディテール)がもたらすリアリティはどうだ。この映画が撮られた1903年と言えば、まだワイルド・バンチ一味も、ブッチ・キャシディ&サンダンス・キッドも実在していた。西部劇の主役たちが生きていたんである! この映画に描かれたものは、すべて当時の「現実」であり、それを再現したものであるのに他ならない。そしてそれは、今なお本作を、フィクションでありながら「ドキュメンタリー」的な生々しさを見る者に与えないだろうか(少なくともぼくは、そう感じた)。
他にも、100年以上前に作られたこの10分程度の映画は、今なお、ぼくという現代の観客を魅了する部分に事欠かない。それは決して「歴史的」やら「骨董的」な意義だのとかじゃなく、まさに1本の「映画」として、ぼくの瞳と心を奪ってしまうのだ。
…例えば、有史以前の人類が洞窟内に描いたラスコーやアルタミラの壁画。その単純な線と色彩による馬や牛、人などの絵は、驚くべき力強さで見る者を圧倒する。それを「古い」とは、誰も言えないだろう。それは「古い」のではなく、「オリジナル(原初・起源)」だからこそ永遠の“生命”を持つ。同じくこの映画もまた、真の「オリジナル」として永遠に「新しい」のだと、ぼくは信じている。 【やましんの巻】さん 10点(2004-10-13 11:46:23) (良:6票) |
3.ネタバレ 百年も前に製作されたこの僅か8分のモノクロ映像を「何だぁ?こりゃ」「音がしねーよ」「ふっる~!てか、もう終わりかよ!呆気ね~」「ラストのおっさんがこっちに向かって銃をズドン!ってそれで怖がらせてる積もりかよ、プ」と一刀両断するのは簡単かもしれません。しかし、リュミエール兄弟の”キネマトグラフ”やトーマス・エジソンの”映写機”だけでは時代の徒花となっていたやもしれない「映画」というものを”大衆娯楽”へと導いた本作の計り知れない功績を、我々映画ファンは永遠に忘れる訳にはいかないでしょう。極端な話、本作なかりせば我々は「映画ファン」なる共通認識用語すら持てずに、本サイトで日夜投稿することもありえなかった…かもしれないのです。もちろん好みは人それぞれでしょうが、歴史的意義すら認めず「つまらん」と断ずるのなら、ソレは偉大な先達へのリスペクトを余りに欠いた軽挙と言うより外ない!というのが私の個人的な気持ちです。ラストシーンに銃声を聞き、ハッと驚く或いは悲鳴をあげる純粋さを当時の観客と分かち合うのが不可能なのが残念ですが。無の状態から創造(クリエイト)する凄まじいポテンシャルを本作の中に感じ取れるか否か?観る者の感性が試される瞬間と言えます。 【へちょちょ】さん 10点(2003-12-16 01:57:37) (良:3票)(笑:1票) |
2.ネタバレ はじめに“train robbery”という題名が出るので、列車を襲うんだと事前に分かるのですが、題名が出ずとも最初の室内のシーンで窓から列車が走ってくる様子をしっかり見せているので、なるほど、これからあれを襲撃するわけだと納得させてくれるところが素晴らしいです。 初期映画で列車と言えば、リュミエールの「列車の到着」を思い起こしますが、あの映画のように観客の方へ向かってくる列車も映していれば、もっと迫力が出て躍動感にも満ちていたかもしれません。しかし、画面の向こう側へと走って行く列車は逃走をイメージさせるものでもあります。また、同じく「列車の到着」は観客が危険を感じて逃げたという伝説がありますが、本作の観客に向けて発砲するラストも当然そういった効果を期待して撮ったようであり、監督の茶目っけが感じられるシーンです。 【ミスター・グレイ】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2009-05-12 18:09:32) (良:1票) |
1.やっと見れました。有名なブロンコ・ビリーが誰だかわからなかったのはなんか嫌だったけど、映像の荒々しさが超初期の映画らしさを表してる。メリエスのような魔術映画と比べるとコミカルなシーンが全くなく、本格的なウエスタン映画なんだけどサイレント映画ではおなじみ出てくる物の動きがなぜか早く感じなかった。最近の映画は特撮ばっかり使って面白くないのばっかだけど、白黒映画、なおかつサイレント映画となるとチャップリンのように自然と笑顔が出てくるような映画やメリエスや、バスター・キートンのように驚きを与えてくれる映画もあり。本当に楽しんで見れる映画ばかりなので安心してみることができる。なんかD・W・グリフィスの映画が見たくなってきた。 【M・R・サイケデリコン】さん [インターネット(字幕)] 9点(2007-01-24 15:38:05) (良:1票) |