12.ジョージにとってレニーはまるで、直径1メートルの綺麗に研磨されたつるつるのビー玉のようだった。しっかりと背負っているつもりなのに、あっけなく地面に落ちてしまう。でも地面はいつだって土と草が生えていて割れない。いっそのこと割れてしまえばいいのにと落ちる度に思うのだが、そのビー玉の純粋な美しさがやっぱり大好きなのだ。愛しくて綺麗でいつもそばで見つめていたい。誰にも上げたくないその美しさ。しかし、そのビー玉は美しく大きいが故に凶器と化す。簡単にヒトの命を奪う事が出来る。美しいがいつでもお荷物。しかしお荷物だけどやっぱり美しい。ジョージは涙を流し、ビー玉を磨く。そして一発の銃弾をビー玉に撃ちこんだ。ビー玉は呆気なく粉々になった。あんなに綺麗でお荷物だったビー玉が、ちっぽけなただのガラスの破片になった。なぜこの世の中の物は美しければ美しい程、トゲがあり、脆く壊れやすいのだろう。悲し過ぎる・・・ 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-05-03 19:47:10) (良:5票) |
11.《ネタバレ》 映画の評価に原作の力が入ってくるのはある程度仕方なく、原作がいいとやっぱいい。少なくとも原作を殺してない、ってだけで評価していい。スタインベックの映画化では『怒りの葡萄』『エデンの東』の二大名作があるけど、話としてはこれが好き。なんか山本周五郎の「さぶ」思い出したりして。登場するみなが夢や憧れを持ちながら孤独に沈んでいて、自分の孤独な夢を守るために互いに傷つけ合ってしまう。ここで行われる殺しには、憎しみはない。老犬を殺させるキャンディ、仔犬を殺してしまうレニー、女を殺してしまうのも、鼠の死骸の延長上で、そしてリンチの前に友を殺してしまうジョージ。レニーと生きることを許さない社会、自分の中のレニー的なものを分離させないと生活していけない社会、そのやりきれなさ。アメリカ南部って心の傷がよく似合う。レニーが一度仔犬を連れてきたふりしてジョージをからかうあたり、あとになって思い出すとしみじみしちゃう。常にジョージの顔色をうかがっていたレニーに向こう(夢の家の方角)を向かせ、二人の視線が互いでなく、はるかかなたで重なるラスト。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-12-28 12:15:52) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 レニーは、そうされるだけのことはしたのです。そして、他の誰にやらせることなく、ジョージが幕を引いた。ジョージは、いつかこういう日がくることを予見していたのではないか。月と太陽に照らされたシーンが多かったのが印象的です。 【なたね】さん [DVD(吹替)] 7点(2009-12-23 23:16:57) (良:2票) |
9.《ネタバレ》 素晴らしい!途中のエピソード(老人がずっと可愛がっていた老犬を、他人の手によって安楽死させ後悔した事、レニーがねずみや子犬を可愛がりすぎて死なせてしまう事)が、ラストの伏線としてうまく活きている。何と言っても素晴らしいのは、ジョージの複雑な心境をゲイリー・シニーズが深い演技で上手く丁寧に表現していること。彼の物悲しく切ない表情と、無邪気に夢を語る時の表情が見事!監督としての手腕も素晴らしく、時々挟まれる麦刈りなどの労働シーンや蹄鉄投げのシーンは、牧歌的で純粋な雰囲気が出ていて才能を感じてしまう。最後のシーンの間の取り方なども、押し付けがましくならないよう、絶妙な形に仕上がっている。一口に「感動」とは表現できない、静かな心のざわめきを感じた。完璧! 【ちゃか】さん 10点(2003-12-26 09:29:49) (良:2票) |
《改行表示》 8.《ネタバレ》 ジョージにとってレニーは重荷だったことは間違いない、前半でもそんなことを言っていたし。けど、だからこそジョージにはレニーが必要だったように思います。日々無意味とも思える労働の中でレニーが居たからこそジョージは「こいつのために、俺は必要なんだ」と思えたし、頑張れたんじゃないだろうか。レニー以外の仲間とは気軽に楽しく付き合えるけど、彼らは別にジョージである必要はなく誰でもいいわけで、ジョージは日々楽しくても何か空虚感、虚無感みたいなものを感じるはずです。一方レニーは一緒にいて楽しいわけでもなく、重荷だけど、ジョージなしでは生きていけない、そんなレニーだからこそジョージの空虚感を埋めてくれる存在だったんだと思います。このへんは複雑ですね、大切だけど重荷、重荷だから捨てたいと思うけど、捨てるのは寂しいみたいな…このあたりのジョージの心情はうまく描けていると思います。 そういうレニーを失うはめになり、自ら引き金を引くジョージの姿は痛ましかった…うまく文章にはできませんが、印象に残るシーンでした。 【ペリエ】さん 9点(2003-11-03 21:32:53) (良:2票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 ジョージとレニーにはささやかな夢があり、まさにここぞという大事な場面では、必ずレニーがジョージに夢の話をねだります。 きっと、ジョージの夢の話を真剣に、目を輝かせて聞くのはレニーだけだったのでしょう。ジョージは、その夢が本当にかなうとは思っていなかったような気がします。ですが、唯一レニーの前でだけは、ジョージも本気で夢を見ることができたのかもしれません。そう、きっとジョージにとって、レニーは重荷であると同時に、希望でもあったと思うのです。だとすれば、レニーと離れられなかったジョージの心情もわかる気がします。 ところが、ただの夢物語にすぎなかった希望が、実現するチャンスが訪れます。それは財産を蓄えていた老人の存在。急に出てきた彼の存在によって、夢はもはやただの夢ではなくなってきます。はっきりとした形を帯び始めるのです。 人って不思議なもので、ゴールが遠ければ、転んでも立ち上がることができるのですが、ゴールが目の前にあるときに派手に転んでしまうと、体より先に心が折れてしまうものです。 ジョージにとってきっとレニーは夢の一部でした。そして皮肉にも、そのレニーによってその夢はまた夢のまま終わってしまいました。もし、老犬と、老人のエピソードがなければ、ジョージはレニーと再び旅を続けていたかもしれません。 ラストシーンで、ジョージはレニーに夢の話をします。いつもどおりに、途中からレニーが夢の話をいつの間にか代わりに話しています。そして、夢の話を話し終える前に、ジョージは引き金を引いてしまいます。 それは、レニーとの永遠の別れを意味すると同時に、自分の夢との決別をもはっきりと示したのではないでしょうか。 冒頭とラストで、一人真っ暗な列車に乗っているジョージの眼差しがしばらく忘れられそうにありません。 正直苦手だし、嫌いなタイプの映画ですが、これ以上低い点数はつけられないです。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-05-21 06:32:34) (良:1票) |
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《改行表示》 6.《ネタバレ》 ラスト、犬の死の伏線がここに結集し、残酷な結末を迎える。この映画はまさにこのシーンのためだけに作られたといってもいい。 ■が、逆に言えばこのシーン以外があまりに冗長。のんびりと言えば響きはいいけど、要するに中だるみ。 ■そして、多くのこの映画の論評やレビューを見ていても思うのだが、レニーが「無垢」であるのはいいとして、「無垢」であるがゆえにそれが美しかったり善であったりするのか、それが非常に疑問でならない。「悪意ある犯罪」は悪意を取り除けば平穏に暮らせるが、「悪意なき犯罪」はまさに悪意ではないがゆえに、どこからもストッパーをかけることが出来ず、ある意味「悪意ある犯罪」より危険である。そしてそれを美しいかのごとく称賛してしまうのはもっと危ない。ある種の倒錯があるように思う。 【θ】さん [DVD(字幕)] 3点(2010-01-01 22:38:46) (良:1票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 アメリカ(ハリウッド)映画はやはり凄いなと感じるのは、エンターテイメントを追求するだけではなく、この映画のように「アメリカの苦悩」・「良心」というものにも真剣に取り組んでいるからです。 映画の良し悪しは、役者の演技力や監督の力量に左右されるところも多いのでしょうが、やっぱり原作・脚本だなと思います。この映画の原作はJ.スタインベックであり、脚本がしっかりしていて見応えがあります。 冒頭から様々な問題を観る者に訴えて来ます。「貧富の格差」・「大恐慌」・「季節労働者」・「人種差別」・「弱者を取り巻く社会の寛容性」等々・・・ 一ヶ月以上前に観た映画ですが、いまだ映画のシーンを思い出しては、「主人公の一人である保護者のジョージの行く末はどうなるのか」と案じたりします。 また、精神薄弱のレニーが動物に興味を持ち、かわいがる動物を力余って殺してしまう 様や、また死んでしまった二十日鼠を大切にポケットに入れていたシーン等が思い浮かび、ラストがある程度そうなるのかとの予感はありながら、なんとも酷で不条理な結果なので、よけいレニーの無垢さが際立ち、いとしく切なくなります。 これほど真摯で奥が深くまた「跡を引く映画」はあまりないと思います。あれこれ書きましたがまだ書き尽くせない・・・「百聞は一見に如かず。」お勧めの映画です。 【たくみ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-09-15 12:10:43) (良:1票) |
4.犬も切なく、黒人も切なく、女の涙も切なく、夢を語り反芻する三人も切ない。夢を持つのは自由なのに、現実に押しつぶされる。レニーを殺しても、多分ジョージは夢を実現できないだろうと思った。 【しょりちゃん】さん 8点(2003-12-01 10:58:14) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 いい話だ!と思ってしまいそうな映画なんだけど。純粋に自分の心に耳を傾けるとダメですね。ジョージはどちらかというと面倒なんてごめんだというタイプだから、レニーの面倒を見ないといけなくなったことは貧乏くじをひいただけかなぁと。そりゃあレニーはいい人だけど、一生面倒を見たいとは思っていないでしょう。それにレニーは自分を抑えられなくなると人を簡単に殺せるほどの怪力の持ち主なのだから、よっぽど注意を払っていないといけませんね。それにやはり単純にレニーが怖いと思ってしまう。絶対にこういう人とかかわりは持ちたくない。自分がジョージの立場だったら正直逃げたいです。荷が重過ぎる。もしひきうけざるを得ないなら、それ相当の覚悟をすべき。人を殺してしまってからでは遅すぎる。 こんなことを考えさせないくらいの力と勢いのある映画なら満点でしょうけど。 【るいるい】さん 4点(2003-10-31 13:17:11) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 素晴らしく、悲しく、かつ恐ろしい映画だ。人間は、邪魔な他者を排除することによって生き延びてきたのだという、お綺麗な社会の中で忘れ去られていた現実を、まざまざと見せつけられた。ラストのジョージの行動を、善とも悪とも描かずに、ただ深い悲しみで描いたことにより、切り取られた人類の歴史の中のある現実のひとつの悲劇が、胸に痛みを残す。「人は泣きながら生まれてくるのだ」という言葉を思い出した。レニーもジョージも、牧場主もその妻も、泣きながら生まれ、少しの楽しい出来事と、たくさんの辛い出来事が起きる人生を、悩みながらも生き、けれどその生はふとしたきっかけで、紙切れのようにちぎれてしまう。生命を持つものなら誰もが感じながら、忘れたふりをして日常を送っている哀愁に、正面から向き合った、勇気ある作品だと思う。スタインベックの世界を表した色調も素晴らしかった。 【ともとも】さん 10点(2003-09-25 11:03:10) (良:1票) |
1.すごく哀しかったです・・・。それにしてもジョン・マルコビッチが凄かった。ああいった役を演じる時にありがちな「やり過ぎ!」っていうのもなかったし、何と言ってもあの純真無垢な目!あんな大男だけど、守ってあげたい!と思わせるものがあります。可愛がっていた犬を殺されたおじいさんが「自分の手でやればよかった・・・」と言う伏線と最後のシーン・・・。やっぱり哀しすぎます。 【こまち】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2003-01-24 18:51:16) (良:1票) |