7.最近の映画で、競うように加速したゾンビに異議を唱える者としては、ゾンビはゆっくり歩いてなんぼである。たしかに、足を速くすればするほどゾンビは人間にとって脅威だし、恐怖も増幅するのは間違いないだろう。しかし、それは単純に娯楽映画としての面白さを追求しただけであって、そこには論理性も説得力もないのである。何故ならゾンビはそもそも死体である。なのに何故生きている時より超人的なスピードが出せるというのか。足だって腐っているんだし、そんな速度で走っては身が持たないはずだ。 ・・・などといくら声を枯らして叫んだ所で、所詮ゾンビ映画は娯楽映画だの一言で片づけられてしまう。論理性を説いたのがそもそもの間違いなのである。 では何が言いたいのかというと、たまにはゆっくり歩くゾンビもいいものですよ、という事である。遠くに居たり、分散している時は人間にとってそれほど怖くはなく、余裕があるのに、ちょっと油断して取り囲まれるとヤバい、という絶妙な距離感が最高なのだから。
先日亡くなったジョージ・A・ロメロ監督のご冥福をお祈りいたします。 【ヴレア】さん [DVD(字幕)] 10点(2017-07-21 21:07:25) (良:3票) |
6.《ネタバレ》 今更ながらレビューしていない事に気が付いた。 【以下、長すぎる前書き】 私が小学校高学年位の時は、詳しい背景は知らないがTVで劇場公開作の宣伝番組を今以上に沢山放送していた様な気がする。 色々なジャンルの作品が取り上げられていたけれど、「あなたの知らない世界」等のワイドショーをおっかなびっくり観ていた私に取って、 ホラー映画(後に「スプラッター・ムービー」)は一番楽しみにしていた番組だった。 その中でも何故か、この『ゾンビ』はエレベーターに乱入してくるゾンビ達のビジュアル含め、私の記憶に強く刻み付けられた。 残念ながら初回公開時に劇場で鑑賞する事は適わなかったが、時は流れて1985年、18歳の私は日芸映画学科に入学した姉の影響も有り、 単なる時間潰しでは無く、意識して映画館に足を運び、レンタルビデオ屋にも足しげく通ういっぱしの映画青年になっていた。 そんな中で開催された第一回東京国際映画祭、中でも目玉企画の一つであった東京国際ファンタスティック映画祭の開催は、 日本に於いてホラー映画が初めて正式に認知された記念すべき出来事で有り、私はなけなしのバイト代でチケットを買い、 連日の様に今はもう無い渋谷パンテオンに通い詰めていた。 この流れで過去のホラー映画にも再び焦点が当たり始め、ゾンビのリバイバル公開と言うこれまた記念すべき出来事に至る。 当時、満席(!)のオールナイト上映で本作を3回連続で観たのも、今となっては良い思い出だ。 【やっと本題】 小学校高学年の時にTVで刷り込まれた印象が強すぎたのか、劇場初見時の印象は実は余り良くない。 もっと派手にゾンビ達を狩るシーンや、人間達が食われている描写のオンパレードかと思いきや、どちらかと言うと冗長な、 悪く言うと眠くなりそうな雰囲気の中で物語は進行していく。 これこそがいわゆる「ロメロ節」の一つなのだが、まだ20歳前の私には理解が出来なかった様だ。 更に時は流れ、ホラー映画が映画のジャンルの一つとして成立し、特殊メイク技術の発達に伴い雨後の筍の如くゾンビ映画が 巷に溢れる様になった今、敢えて本作を見返すと、いまこの年代だからこそ判る表現・描写が多い事に今更ながら唸らされる。 本作を評するのに既に使い古されたフレーズだが、本作はそのまま人間社会の縮図であると言える。 表面的に映像を追いかけるのでは無く、このシーン・この台詞にはどの様な意図が盛り込まれているのか?と考えながら 映画を観る様になったのも、私の場合は他でもないこの「ゾンビ」からなのだ。 家族みんなでワイワイ観る映画では無い、馬鹿笑いしたいなら、CGテンコ盛りの走り回るゾンビが大挙して出てくる作品を観れば良い。 本作は、夜一人で酒でも飲みながらじっくりと観たい。そう思える作品なのだ。 自分自身の映画鑑賞史に於ける本作の大きさ、後世の数多の作品に与えた影響を称え、満点献上します。 【たくわん】さん [映画館(字幕)] 10点(2016-08-05 13:50:02) (良:3票) |
5.《ネタバレ》 腐る程ゾンビ映画を見ても、帰って来る所はやっぱりここ。まるで我が家です。冒頭の混乱しまくったTV局内のリアルさに、訳もわからず映画の中に放り込まれます。有りえない状況なのになぜだか全編を漂う現実感。絶望的なのに魅力的な終末世界。「俺ならこう生き残る!」「私なら○○がしたい!」などのシュミレーション談議だけで、朝まで美味しいお酒が飲めそうです。ゾンビが怖くないとの意見がよく聞かれますが、いいんです。人を襲う意識なんて無いだろうし、ただ人間を食べたいだけの死んだ人なんですから。きっとそんなゾンビだらけの状況でのドキュメント風ドラマなんですよね。私はホラーとしても傑作だと思います。たとえ噛まれなくたって、脳破壊・頭切断されて死ぬ以外、死んだらゾンビ確定です。いくら逃げてもゾンビからは逃げられない。映画のラスト、それでも決断したピーターに「絶望の中の希望」が感じられました。ロメロ先生の人間風刺も、人間もゾンビもたいして変わらんなぁも見事。 このDC完全版ですが、ドラマ度は高いんですが長い分少しダレるとこもあります。でも次作「死霊のえじき」のローズ大尉役の彼がセリフ有りの役で出てきたりもします。 駄文をダラダラとすみませんでした。結局言いたいことは、この映画が大好きってことです。 【Ben-zo】さん [DVD(字幕)] 10点(2008-07-19 18:31:15) (良:2票) |
4.小学生の頃、おばあちゃんの家で昼間からテレビ放映されているのを観て、死ぬ程怖い思いをした。その後、近所のレンタルビデオ屋さんで借りてきて、ダビングしたテープを擦り切れる程観た(正月におせち料理を食べながら観た)。高校時代、ディレクターズカット版が公開されると知り、2時間かけて劇場まで足を運んだ。小説版も読んだ。そして、DVDでディレクターズカット版とダリオ・アルジェント版と米国劇場公開版を購入し、今でも時々観直している。最近、我が家に100インチスクリーンのホームシアターセットが設置されたので、いつでも等身大の彼らに会うことができる。ああ、なんたる幸せ…。 【フライボーイ】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-09-11 07:22:24) (笑:2票) |
3.《ネタバレ》 ~DAWN OF THE DEAD~死人の夜明け訳が一般的。“ザ・デッド”の始まり、兆し。ゾンビ=リビング・デッドにわざわざ“リビング”を付ける必要もないくらいゾンビが溢れる世界。新型コロナウイルスにわざわざ“新型ウイルス”って付けない感覚。または人間という種の“死”の始まり。
鑑賞環境の選択項目に『店先』って無いのね。…そりゃ無いか。 当時小学4年生、夏祭りの昼間に、友達3人とクーラーの効いたそうご電器へ。AV家電コーナーで垂れ流されてた映画を見た友人(ホラー平気)が「あ、ゾンビだ」と見出した。きっとビデオかLDの展示だと思う。まだホラー耐性の無い頃だったけど、見栄張って「全然怖くないね」と言いながら見続けた。 「この人殺されるんだよ」とかイチイチ教えてくれる友人は、鬱陶しいというより怖いシーンへの心構えが出来た。 思ったほど怖いシーンもなく、ショッピングセンターで好き勝手する主人公たちにワクワクしたし、彼らの安息をぶち壊した暴走族に怒りを覚えた。そしてゾンビの捕食シーンが怖く、友人は「あれ豚の内臓だよ」とか教えてくれたが、そんな裏事情より、いつかノロノロ歩くゾンビに襲われたらどうしようと、しばらく怖かった。片足の神父さんの記憶があるから、追い出されもせずほぼ全視聴したんだな。緩やかな時代だ。
中学に入り、ビデオをダビングしたものを擦り切れるくらい見た。最近DVDも買った。 私が見てたのは、オープニングからゴブリンの印象的なテーマソングが流れる米国劇場公開版だったようだ。今回見たBSのディレクターズ・カット版とは、音楽の入り方が微妙に違う。ダリオ・アルジェント監修版は、もしかしたら見たこと無いかもしれない。
赤いゴツゴツした不気味な壁から始まるオープニング。心臓の音のような不気味な音楽。説明もなくガヤガヤした現場。役に立たないテロップ、少ない情報、受け入れられない専門家の話、仕事を投げ出すスタッフ、不満を見せながらも働くスタッフ。同僚の「our responsibilities finish(俺たちの責任は果たしたよ)」で終わる音楽…DC版より米国版が最高。このドキュメンタリータッチな臨場感がたまらない。 場面は変わりSWAT指揮官の「your responsibilities!(お前たちの責任だぞ)」に続く。責任。ゾンビが街をウロウロしてる現状、仕事なんかしてる場合じゃない。誰の責任とか言ってる場合じゃないなのに、人間は争いと収束行為を続ける。 牧草地の州軍とハンターの場面も秀逸。記録映画のような撮り方。あの歌、誰のなんて曲だろう?DVDを見出すと、OPとここは何度もリピートしてしまう。 給油所でゾンビに襲われるスティーブン達。「逃げろ!」と言われても逃げないフラン。逃げられない、助けられない、助けを呼べない、叫べない。ただ、ゾンビと格闘するスティーブンと、自分に向かってくるゾンビを交互に見ることしか出来ない、この何も出来ない感が凄い上手い。この世界のゾンビが唸ってノロノロ歩くから出来たシーン。ゾンビに叫ばれて走られたら、こちらも走るし、叫んでしまう。この違い、この見事な世界観。 ショッピングセンターのゾンビを一掃後、悲しげな音楽が流れる。あちこちに散乱する動かないゾンビ。こうなっては人間の死体と変わらない死体の山。言葉が出ない主人公たち。ゾンビを建物外に棄てるのではなく、冷蔵庫に埋葬する心境。 一生観続ける映画なので、続きはまた、そのうち 【K&K】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2021-02-14 14:19:28) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 ゾンビ映画の元祖であり金字塔。
のろのろと動くゾンビに、大したことないけど油断するとヤラレルという匙加減が絶妙で、ちょいと危険が伴うけど何でも手に入るショッピングセンターの件は、初見の子供の頃ホラーでありながら冒険心を擽られワクワクした思いがある。 そう、宝の山の秘密基地状態・・・んだから、暴走族が襲撃しに来た日にゃ、邪魔するなよと真剣に思ったもんですなぁ~。
まぁ、今時のゾンビと比較されちゃ敵わないのは解ってますよ。 でも、いいんです、このゾンビが王道なんです。 【ぐうたらパパ】さん [インターネット(字幕)] 9点(2012-04-03 14:44:03) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ゾンビ映画の源流である本作を初めて鑑賞。ちょっと意外でした。ゾンビの群れとそこから逃げる人というシンプルな構成かと思っていたら、登場人物たちの内面の描写に重点が置かれているから。最初はゾンビの頭を撃ち抜くことに涙していた者も、やがて躊躇が無くなり、逆にハンティングを楽しむような風情になって行く。人間でさえ、自分たちに危害を加える者は撃ち殺す。ショッピングセンターへ暴徒が侵入した段では、ゾンビの存在は背景でしか無くなっていました。本作のゾンビはスローな動きや虚ろな眼つきが特徴的で、凶悪と言うよりは哀れな存在です。車両で蹴散らされ、のろのろと人に縋ってくるだけ。顎の力には目を瞠るものがありますが、用心して行動すれば取り付かれることはことは滅多に無い。だから尚更、ゾンビに対応する人間側の姿勢が浮き彫りになる。つまり、ゾンビをリトマス紙にした人間性の問いかけです。人を描こうとした映画だったのだと思います。また同時に、その後のゾンビ映画の可能性を示している作品でもあります。登場人物の性格や性別や職業のバリエーションをゾンビ群に放り込むだけでいくらでも物語を作ることが出来る。ゾンビの動きや能力も変更可能なので、それこそ順列組合せの理屈でゾンビワールドが拡がります。後出しジャンケンみたいな言い方ですが、本作後のゾンビ映画の拡がりはまさにその通りだったと思います。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-02-14 01:33:59) (良:1票) |