4.あの呪いの人形はぞ~~っ。冷徹な美しき画面はホラー映画の雰囲気を纏ってますね。そしてこの映画を支配するのは「四」。四人の姉妹、四季=春夏秋冬、麻雀=東西南北、死者の数・・・。春夏秋冬で無限の円環時間を、東西南北で全方位空間を表し、邸宅に入りこんだカメラが二度とそこから抜け出さないことで、その邸宅こそが彼女たちの時間空間の全てであることを語り、その四人姉妹が無限の時間空間そのものであると分かる時、見る者は悠久の哀しみに迫られるのです。ロングショットでしか写りこまない主は“四”の中心で、ただ哀しさを浮き立たせる存在です。エンドロールで、四女がひたすら同じ場所を虚ろにさまよう姿に、夢幻で無限な時空に浮遊する“紅”という悲哀が見えるのです。 【彦馬】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-29 12:19:39) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 これぞまさにドロドロ作品、情念がどこまでも渦を巻いている。正妻から第4夫人までが同居生活、というちょっと考えると頭がおかしくなりそうなシチュエーションを、当たり前のように堂々と展開し、しかもその設定に溺れていない。すべてのシーンのすべての台詞で心理の重層がぶつかり合い、息苦しさが凝縮されていく。最初は、主人公がその中で成り上がっていくサクセス系かな、と予想していたのですが、そんな甘いものではありませんでした。その作品世界を支えているのが、4女優の演技と存在もさることながら、「お作法」を徹底して描写するこだわりぶりです。その日の夜主人が誰の床に行くかを、仰々しく重々しく発表し、その儀式が厳かに執り行われるなんて、あまりの自信満々ぶりに、クラクラしそうになります。そして、その辺の基礎固めがしっかりしているからこそ、ここぞというところのランタン使いまくりの演出(紅だけでなく、黒も含む)が効果的に生きています。ラストの(見る側に対する)叩き落としぶりのインパクトは言わずもがな。 【Olias】さん [映画館(字幕)] 8点(2025-01-15 01:28:27) (良:1票) |
2.普通シンメトリーの構図ってのは、ここぞというところでバンと置くと効くので、あんまり使いすぎちゃいけないものなんだけど、この作品はそれがテーマだからね。シンメトリーの安定した重苦しさ、人を発狂させるほどの、整然とした堅苦しさ。シンメトリーの息苦しさをここまで徹底して追求した映画も珍しい。あとは音の響き。作者によって選択された音しか響かない。それも幽界に響くような雰囲気で、嫉妬によって残響を与えられ心にエコーを掛けられているというか、灯篭を消す竹吹きのブボッという音も腹に響く。遠くから聞こえる第三夫人の歌声、若主人の笛。きっちりした画面に選ばれた音のみがキラッキラッと閃く感じが実にスリリング。昔の中国映画だったら、もっと目覚めたヒロインが反抗する設定になったんだろうが、もうそうはならない、プロレタリアートの部屋にまでレッドランタンは侵入してしまっているのだ。画面に現われているのは「八方ふさがり」の嫉妬渦巻く世界なのだけど、ネチネチという感じはあまりなく、荒涼の風が「八方吹き抜け」ていたのではないか。白・黒・赤の物狂いの世界が魅力的。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-10-13 09:56:42) (良:1票) |
1.強い女の役が好きそうなコン・リーが地のままでやっているような演技がとてもいい。チャン・イーモウ監督の映像美にかける執念がこの映画からも伝わってきて、とにかく映像が美しい。コン・リーの主人公もライバルの第三夫人も美しい。この上、正妻と第二夫人もきれいだったらこの映画は中国モードのファッション・ショーになってしまうでしょう。主人公が大学中退だということはストーリーの時代がかなり現代に近いということで、もう少したてば毛沢東が中華人民共和国建国を高らかに歌いながらこういった前近代的な妾制度を廃止し、主人公たちを解放することになるのだけれど、もちろんそんな明るい結末ではないからこそこの映画は世界中で上映されるような芸術度を達成しているのです。閉鎖された環境の中で衣食住等物質的には何一つ不自由なく、正にモルモットのように飼われている女たちがどう考え、どう行動するかを冷徹な目で見つめている、美しくかつ残酷な作品です。日本語の題名は「紅楼夢」とまぎらわしいですね。 【かわまり】さん 8点(2004-01-23 12:40:20) (良:1票) |