8.《ネタバレ》 昔から気になっていた映画だったが、アニメ映画化を機に初めて見た。健常者の青年と身体障害者の女性の恋愛を描いたラブストーリーだが、本作に登場するジョゼ(池脇千鶴)はよくある障害者を扱った作品にありがちな描き方をされておらず、それが却ってリアルに感じられるし、そのせいか、恒夫(妻夫木聡)との恋愛も障害者云々をあまり気にせずに見ることができたし、映画自体に独特な雰囲気と力強さがあって見ているうちにだんだんと引き込まれた。なんといってもジョゼの強烈で個性的なキャラクターが印象に残るのだが、そんなジョゼの身の周りの世話をしていた祖母(新屋英子)が亡くなり、心配してやってきた恒夫に対し、はよ帰れと言ったあとにやっぱりおってくれ、ずっとおってくれと言うシーンは普段は強がっているジョゼの孤独さやさびしさ、いじらしさといったものが感じられ、つい、見ながら感情移入してしまった。(ただ、そこから次のシーンでああくるとは思ってなかったのでちょっとビックリしてしまったのだけど。)池脇千鶴もものすごくハマっていて、素晴らしく、今まで何本か出演作見てるのだが、こんなに良いと思うのは初めてかもしれない。映画は冒頭から恒夫のモノローグで始まり、それがクライマックスの二人での旅行につながるわけだが、そのモノローグで何気なく語られていた水族館が休みだったエピソードはジョゼの気持ちを考えると切なく、本物の虎は見れたのに、本物の魚は見られず、結局、ホテルの部屋で壁に映された魚を見るというのが見ていてなんとも言えない気持ちになる。冒頭のモノローグで既に二人の別れを暗示していて、死別とかいうありきたりなものだったらヤダなと思ってしまったのだが、この結末はそんな安直な結末とは比較にならないほど重く、見ていてすごくリアルに感じた。果たしてハンディを持った人をパートナーに迎えたときにそのパートナーのことをどれだけ受け止めることができる人がどれくらいいるだろうと考えさせられるし、またもし、恒夫の立場ならパートナーを受け止める覚悟があるかということも考えさせられ、これが本作の真のテーマだったのではないかと思えてくる。ジョゼを受け止めきれなかった恒夫の弱さや、ジョゼの一人でも生きていくという意思の強さといったものをこのラストシーンではしっかり描いていて、犬童一心監督の演出も巧み。これから別々の人生を歩む二人にとってこの出会いは決して小さなものではなかったと思いたい。本当にいろいろと考えさせられる良い映画だった。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2021-01-11 02:29:12) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 恒夫は逃げた。と、言ってるし実際逃げたことには変わりない。でも、誰もそのことを責めることはできない。ただ恋をしてそれが醒めた。それだけだろう。逃げた理由としてジョゼが身障者であり、現実として重荷になってきたというのもあると思う。しかし、恒夫はジョゼが身障者ということもひっくるめて一人の女性として恋をしたのだろう。例えば、「あの娘、かわいいな。すこしおしゃべりだけどそこは彼女の個性だしな。」と言う女の子に恋をする。でも時が経つにつれて恋が色褪せたとき「うるさいヤツだな、最近そこに我慢ができない!」ということは良くあることだし、経験した人もいると思う。恒夫もそう考えただけだ。「おしゃべりと一緒にするな。失礼だろう!」と怒る方もいるかもしれないがその考え方こそが失礼だと思う。とにかく一つの恋愛物語として良くできているし、考えさせられる映画でもある。 【sice】さん [DVD(吹替)] 8点(2005-10-31 14:47:19) (良:2票) |
6.ジョゼは陸に生きる人魚みたい。だけど彼女は童話の人魚姫のように泡にならずに鮭を焼いている。そんなジョゼが素敵です。 【paraben】さん 8点(2004-11-13 13:29:13) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 確かに、ともすればアレなオチだと思います。ただ、一生彼女を背負い続けることが出来るのか、という現実に直面したときに、誰しもが十分に強くなれるという訳ではないのも事実でしょう(少なくとも私自身は、同じ状況でその決断は出来ないと思います)。その意味では私はこのラスト、自分の無力さに涙する主人公にはその面からは大いに共感できましたし、それを許容したジョゼの優しさ・強さにも深く感じ入りました。人間というものの描き方として、私はここはかなり好きですね。そしてこの恋愛は、決してふたりにとって無意味なものであった訳ではないのです。その直後にジョゼの変化・成長を感じさせるシーンを持ってきてそれでジ・エンド、という流れも巧みであり、また適切だったと思います。そこは、アレなオチを演出・演技のテクニックで巧く乗り切った、という感じだといつ観ても思いますね。
色々と変わりダネな映画だと思いますが、この映画で一番変わっているのはやはりヒロインでしょうか。見た目や喋り方、性格も含めて、パッと見はどーにも魅力的には見えないのですが、じーっと観ていると次第に魅力が滲み出てくるというか、そこら辺の表現も奥ゆかしく、また巧みだったと思います。その大部分を担っていた池脇千鶴は、やはり凄い女優だと思いますね。 【Yuki2Invy】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-12-29 17:44:46) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 邦画はあんまり気乗りがしない方なんですが、途切れることなくレビューを目にするし、ちょうど有料放送のチャンネルで観られたし、妻夫木くんだし、観てみることに。 関西弁喋ってるけど、誰が観てもはっきり関西の土地とはわかる所が無く、ココいったいどこなの?みたいなのがいいです。どこか昭和40年代のような風景ね、雀荘でバイトっていうのもなんだし、女の客が真理アンヌとは!! 世間から隠れるように生きてきたジョゼの、恒夫を糧にした自立成長モノかな。 恒夫がジョゼに惹かれるのは、自分が優位に立てることと、ご飯が美味しいことが結構大きいんじゃないかと。居心地がいいんですね。 しかし彼はそれ以上のことは何も考えてない。「ずっと一緒にいて」と言われれば後先考えずに引っ越してくる。ジョゼに優しいのは責任の無さでもあり、水族館の前で駄々をこねるジョゼをおんぶする恒夫の表情が全てを物語ってると思う。 まあね、荷が重すぎて当然といえば当然。 実家行きをやめにすることをジョゼにどう伝えたのかがいちばん気になるところです、あえてソコは飛ばすという演出が良いですね。 ラクな方へ流れて行く自分の甘さ、いい加減さ不甲斐なさにたまらず泣いたと思う。でもそれに気づくだけマシです。 乳母車を押す人はもう必要なくなったジョゼ、必要な時におんぶしてくれる人がいつか現れるといいなと思いながら観終わりました。。。 その人は、あのヤンキーの幼馴染だったりするかしらん。 殆ど観てないけど、妻夫木くんの出てる映画は今のところアタリです。日本の俳優で妻夫木くんほどキスシーンの巧い俳優さんも珍しいんじゃないの?プライベートでかなり経験積んでらっしゃるのかしらね。 【envy】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-02-28 11:14:35) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 そんじょそこらのホラー映画やサスペンス映画に負けないくらい、私にとってはものすごく怖い話だった。彼氏がいなくなったからと「種を撒く」一見清純派美少女(という設定であるらしいことはわかるが…しかし、上野樹里は化けたなあ。ホントに)、その美少女を高みから揶揄するクールな女、軽く恋しちゃう大学生ノリの延長線で重くなるであろう恋に走り、案の定、その重みに逃げ出す男…本当にこの世は魑魅魍魎の住処だなあ。不気味なばあちゃんや凶暴な幼馴染み、変態おじちゃんのほうがよほど私には好ましく思えたが、こういった人々のほうが異端扱いされるのが世の常。普通の人間って怖い。悪意がないから余計怖い。ジョゼとツネオの恋についての感想は人それぞれなんだろうけど、心溶かすような恋が永遠でなく一瞬だと分かっているならば、知ってしまうより、いっそ何も知らないままで海の底の何もない暗闇に延々漂っているほうが幸せなんじゃないかと私なら思う。離れていくツネオの心を眺めているジョゼの、物分りよく諦めの境地に立っているふりをしながら、懸命に「そんなもんだよ」と自分に言い聞かせているであろう心情を思うと、哀しくて哀しくてどうしようもなかった。この映画を前向きとか希望とかいう風に語れる人はきっと大人なんだろう。思い出に生きることもまた幸せだろうなんて、今の私には到底思えない。ただ、これから先、恋をしたら、もう一度観たい映画ではある。いつかは私にもこの味が分かるようになるといいのだが…しかしそれにはあと数年はかかるだろう。なにしろこの強烈な恋愛への恐怖心はしばらく私を支配するだろうから。でも結局はそのくらい、素晴らしい映画だった。 【よーちー】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-11-06 22:54:57) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 久しぶりに邦画でガツーンと来た。主人公の奔放すぎるセックスライフには「なんだなんだ?イマドキの大学生はみんなあぁなのか?」と腹立たしさと戸惑いを感じつつも、『障害者と健常者の恋愛』じゃなくて普通の恋愛映画を観たという感じ。面倒な恋愛から逃げる気持ちもそういう自分を許せない気持ちもよく理解できた。相手の親が厳しすぎたり、相手の気持ちが重すぎたり、家が遠すぎたり・・・「障害者」もそういう面倒の中の一つに過ぎなかったんじゃなかろうか。でも愛する人がいつか離れていくことを肌で感じ、諦観しながら一緒にいるのは切ない。「これからのジョゼの幸せ」ってなんだろうか?それをずっと考えながらこの世界の余韻にひたりたい。 【りんす】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-12-21 20:16:38) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 最後の恒夫の号泣。「どうにかしてあげたい」と思う気持ちの中には同情や愛情の他に、憐憫、自己満足など、多くの感情が混在している。その発露としての涙。あの涙にこそ、どうにかしてあげたいと思いながら、どうにも出来ない自分の無力さ、身勝手さ、卑怯さ、傲慢さ、純粋さなど、すべての思いが込められている。
だが、ふたりにとっての出会いと別れは、決して無駄なものにはならないだろう。例え、同情を愛情と混同していたとしても、彼女に対する「優しさ」は決して偽りではないし、間違っている訳でもない。恒夫は自分の心の弱さや欺瞞を知る事で人間として成長し、ジョゼは彼の優しさに触れる事で、他人を受け入れ、前向きに生きる強さを得た。
突飛な導入で作品に引き込みながら、押し付けがましさの無い、前向きな終わり方に持っていく展開が巧い。恋愛ドラマとしては出色の完成度。 【FSS】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-03-09 00:27:54) (良:1票) |