7.《ネタバレ》 沖縄は原色の世界で、リゾート気分を思う存分満喫できる楽園のような地です。が、ひめゆりの塔と平和祈念資料館へ足へ運ぶと、そんな浮かれ気分はぶっ飛びます。この地を襲った悲劇に完全に打ちのめされ、まともに展示品を直視する事すら困難な状態になります。この映画は、従軍看護婦として学徒動員され、散っていったひめゆり学徒隊の悲劇を事実に基づいて映像化しています。60年代に製作された映画だけに、ちょっとシニカルなオープニングから始まって、その反戦の主張はやかまし気味。切り取られ、更に吹き飛んだ手足によって作られたグロテスクなオブジェを象徴的に見せるのも、マジメとは思えず悪趣味。あまり上手とは言えない吉永小百合のオーバーアクトが、映画の温度を下げてしまったりもします。それでも、悲劇は十分に伝わってきます。家族を次々と失い、追い詰められてどんどんと命の灯が小さくなっていっても、それでも明るさを失わない娘達、それゆえにその最期は深く胸を刺します。ただ、同時に胸に刻まないといけないのは、こんな悲劇がここだけではなくて沖縄全土、そして日本のあちこちで引き起こされていたという事実。沖縄でひめゆり学徒隊同様の大勢の娘達がやはり命を落としていたのも事実。今、私の立場で誰のせい、何が悪かったと問うのは無意味でしょう。ただ、今の繁栄の影には、決して切り捨てる事のできない沢山の犠牲が存在していた事を認識しておかねばなりませんね。 【あにやん🌈】さん [DVD(邦画)] 7点(2006-08-16 01:00:27) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 今年の終戦の日に観たのはこちら。10年ほど前にひめゆり平和祈念資料館に行ったときは、無言の写真たちが訴えてくる重さ、ググゥッと肩を押されるような重さに、言葉を失ってしまった。なので、もうタイトルだけで重たく感じてしまう作品。 そこを吉永小百合と浜田光夫を起用して、日活青春映画そのまんまなオープニングで惹きつける。当時まだ戦後から23年。戦時中の若者がどのような青春時代を過ごし、命を落としていったかを、次の世代、特にあの子たちと同年代の若い人に観てもらいたいという思いが感じられる。モノクロなので耐性のない人でも最後まで観られると思うけど、実際の場面を想像するだけで充分に恐ろしい。
真面目に創られた映画にしては、ちょっと気になった点が二つ。まず口で手榴弾の安全ピンを抜くトコ。当時の武器は“天皇陛下からの預かり物”だから、丁寧に扱ったはず。それも兵隊でもない女学生が口でグイって…きっとTVドラマ“コンバット”辺りの影響だろうな。 それとアメリカ軍の攻撃機…には見えない。どう見ても民間機。あの飛行機はロッキード・モデル10という輸送機。水浴びを襲うグラマン・ヘルキャットは特撮で表現しているのに、どうして輸送機で代用したんだろうか。 アメリカ軍の攻撃機が女学生を追い回し、機銃を撃つ。きっとこの画を1つのカットに収めるために、撮影用に手配出来る実機を使う必要があったんだろう。パイロットの視力なら、砂地を走るトミちゃん達が非武装なのはもちろん、“一目散に逃げてる女子供”だと解ったはず。 それを、撃つんだ。狙って、撃ててしまうんだ。 この映画にはアメリカ人俳優が出てこない。きっと意図して出さないことにしたんだろう。誰が撃ったかも解らない、無感情な“鉄の雨”だけが彼女たちに襲い来る。そんな劇中、女学生を撃つ攻撃機のカット。撃てば死ぬ。あのアメリカ兵は、どんな気持ちでトリガーを引いたんだろう。その画のためのモデル10。
日本軍の学徒隊の扱い方も酷い。動員されたのが卒業直前なのって、校長先生の人望を利用するのと、学生の方がまとめやすいからだと思う。 学徒にも暴力を振るう軍人。男性器を出してお小水の介助。切断する足を押える手に伝わる体温とノコの振動。生きる希望より青酸カリのミルク。まだ10代の少女たちにはあまりに想像を絶する過酷な数ヶ月。 戦場を連れ回すだけ連れ回して、最前線での解散命令。実際はあの子たちを生かすためじゃない、見捨てる道を軍は選んだ。結果的に1,503名(映画より)もの学徒の命が奪われた理由として、あまりに理不尽じゃないか。
何の抵抗も出来ず、誰にも守られず撃たれて死んでいく学徒。捕虜となって、軍人に聞かされてきた辱めを受けるより、自決を選ぶ少女たち。 軍人でもない少年少女が、呆気なく散ってゆく姿に『無駄死に』という言葉が浮かんでしまう。 それじゃあんまりだ、決してそうじゃない。と思いたいけど、じゃあ、あの子たちの死は『意味のある死』だったのか。 現地訪問よりおよそ10年。この映画を観ても、やっぱり言葉を失うしか出来ない。 ひめゆり学徒隊の悲劇を知った私に出来るのは、平和の有り難みを実感して一生懸命生きることと、あの子たちの犠牲を忘れないでいてあげることくらい。 【K&K】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-08-23 23:41:58) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 現在から見れば、演出や特殊効果、セット、音楽など全てにわたって時代的な拙さが目につき、映画としての完成度は決して高くないものの、あの沖縄戦の悲劇の象徴である「ひめゆり部隊」が辿った運命を多くの人に知らしめるという点では、当時の青春スターである吉永小百合が主役という意味は決して少なくないものがあっただろう。
平和下であれば、現在の若者と変わらず青春を謳歌したであろう女学生たちが、戦争という個人では如何ともし難い状況下で、次々に犠牲になっていった歴史は何度見ても心が痛む。
冒頭の現代のダンスホールのシーンや、沖縄戦を前にした運動会での普通の青春映画のようなシーンなどは、その意味でも効果的に配されている。
やがて戦雲が立ち込め、従軍看護助手として一転過酷な任務に従事しゆく中でも、若い女性が集まれば異性の話で心をときめかせることもあったであろうし、水浴びのシーンが象徴するような友達との無邪気で楽しい時間もあっただろう。
しかし、最後はその学友たちとも離ればなれになり、本島南部のガマで大半が悲劇の最期を遂げるという救いのないラストが意味する事も大きい。
ラストにテロップで流されたとおり、未来ある学徒まで戦場に駆り出し、最期は自決に追い込んだという、人類史上稀にみる愚行がわが国で行われたという事実を忘れてはならないと思わせる作品だった。 【田吾作】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-08-20 11:37:38) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 沖縄の少女たちの受難を、見事に切り取っていると思う。 戦後23年で未だ本土復帰も果たしていなかった沖縄ゆかりの人は、この映画をどう観たのだろう。 吉永小百合演じる主人公の母親が乗る輸送船。 対馬丸でなければいいのにと願ったが、やはり対馬丸だった。 あの船に我が子を乗せた両親が沖縄戦を生き残っていれば、あのシーンをどう観ただろう。 本来なら人生の門出であるはずの卒業式は、米軍の爆撃が周囲に炸裂する中で行われる。 お国のためと命を投げ出す少女たちと比して、大本営の幹部たちの何と卑劣なことか。 少女たちの魂の何と無垢ではかないことか。 死と隣り合わせの日々を送ったことのない私には、まさに想像を絶する瞬間を生きて、そして散っていった少年少女たち。 救いのないラストも、戦争の虚しさ、悲惨さを私たちに突きつけている。 次代に残すべき映画。 【roadster316】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-07-26 23:38:38) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 沖縄戦の映画です。対馬丸の撃沈、沖縄大空襲などをなぞった後、「ひめゆり」と呼ばれる沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒たちの動員の様子を追いかけます。悲惨な結末を際立たせるため、女生徒たちの健気な側面を過剰に演出しているように見えます。もっと描くべきものがあった気がします。例えば、南風原陸軍病院を撤退する際の青酸入りミルクは、捕虜を許さない軍が動けない重傷者を殺すために飲ませました。重傷者は覚悟して飲んだ訳ではありません。沖縄返還前に製作されたこともあり、資料や証言が現在ほどは充実していなかったのだと思います。 個人的に最も注目していた一点に於いてとんでもない脚色が為されていて、本作は評価できません。それは「解散命令」に関してです。劇中、校長が学徒たちのことを思って軍から「解散を許してもらった」という描写が為されていますが事実は違います。陣地を維持できないと判断した軍が学徒たちを見放したのが「解散命令」です。ほぼ米軍に包囲されている状況で外科壕から放逐された訳で、それは「死ね」と言われたことと同義でした。沖縄県民にとって、災いをもたらしたのは米軍だけは無かったという意味で沖縄戦の悲劇を象徴する出来事ですが、ここは歪めて欲しくなかったです。 余談になりますが、沖縄守備隊の総司令が兵士に降伏を許さなかったこと。ひめゆり学徒に限らずですが、白旗を揚げて投降するような教育を受けていなかったこと。これらが「ひめゆり」の教訓であると思っています。現在、ひめゆりの塔に隣接する平和祈念資料館の展示がこの辺りの実情を分かりやすく見せてくれます。 私はこの作品の舞台となった沖縄本島南部に住んでいます。南国的な解放感に溢れる土地柄ですが、多くの命が散った戦場だった事とのギャップはなかなか整理できません。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-08-21 03:10:28) (良:1票) |
2.終戦間際、沖縄で非業の死を遂げたひめゆり部隊の物語。 ドラマという部分での中身は決して厚くはないのだが、現実にあったということ、 そしてそれ自体が反戦のテーマになっているので、やっぱり重みを感じてしまう。 若くして自らの命を捧げた彼女たちの気持を思うと胸が痛む。 "ひめゆりの塔"は時代やキャストを変え、これまでにも何本か制作されているが、 やはり一度は観ておかなければならない作品かと思う。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-11-16 05:24:59) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 和泉雅子と同年齢で映画少年の私には、キューポラのある街や泥だらけの純情などの映画は見たが、この映画だけは見る気がなかった。それは子どもの時見た「ひめゆりの塔」があまりにも衝撃的でトラウマ的な感覚を持っていたことと、吉永小百合・浜田光夫のいわゆる日活ゴールデン・コンビとひめゆりの塔のイメージでは、遠くかけ離れたもののように思えたからだ。 ようやくDVDの時代になって初めて、この映画を見た。前半部分に対馬丸という名前が出てきたのにはびっくりしたが、学生の頃すでに知っていた「対馬丸事件」(貨物船の船底に学童疎開の子どもと引率の先生方を乗せたまま、米軍に撃沈にされた事件、これ一つをテーマにしても一つの映画が作れる)や10.10沖縄大空襲をさらっと流したのにもまたまた驚いた。 さらに沖縄の悲劇は、米軍の無差別攻撃や防空壕に隠れた者までも毒ガスで殺すという悲惨なものとなり、生き残った者も青酸カリ入りのミルクを飲んだり、手榴弾の信管を抜いて自決した。映画に出てくるような「命を粗末にしないで」とか「あなただけは生き延びて」が言えず、「お国のため命を捧げる」「鬼畜米英に身を汚されることなく、純潔を守る」が当たり前の時代があったことを現代の若者にも伝えたい。その想いが感じられる映画であった。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-03-11 17:06:57) (良:1票) |