5.二部構成三時間の大作と聞いて、ちょっと躊躇してしまったが、実際見始めるとゆったりと展開していく映画にも関わらず長さをあまり感じずにだれることなく見られた。とにかく、映画全体に漂う明るく爽やかな開放感がたまらなく心地よい。10年くらい前に1度だけ見た吉永小百合主演の日活版にも爽やかさはあったが、もう全然違った印象を受ける。おそらくこの違いは、日活版は青春アイドル映画的爽やかさであり、この映画の爽やかさと心地よさは既に青観さんが指摘されてるように終戦間もなき頃の貧しい時代に作られたことが影響してるのだろう。これだけでもこの映画が製作されてから60年近く経った現在でもなぜ名作と呼ばれているのかが分かる気がする。出演者に目を向けると、池部良や伊豆肇なんかは当時既に学生役を演じるには無理のある年齢だというのに、違和感がほとんどないし、原節子や木暮実千代の美しさには思わず目を奪われてしまう。特に木暮実千代がこんなに綺麗な女優だったとは今まで何本か出演作見てるのに思わなかったのが不思議なくらいだ。杉葉子や若山セツ子も可愛らしかった。今井正監督の作品を見るのは初めてで、書籍などでかたい作風の監督というイメージがあったのだが、会議のシーンなど笑えるシーンも多く、全体的にそんなに深刻にならずに見られたのも良かった。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-04-14 01:34:59) (良:3票) |
4.戦後4年でまだまだ復興途上の日本。戦争から帰ってきた池部良や、杉葉子が高校生・女学生というにはちょっとトウがたってる気がするが明るく爽やかな青春映画になっている。田舎町の個性豊かな様々な人物が繰り広げる話は、正義や民主主義を取り込んでユーモラスで楽しい。懐メロスタンダードの「青い山脈」の、明るく軽快な歌はこの映画の気分を最もよく表している。私もこの歌 大好きです。 【キリコ】さん 8点(2004-02-07 15:15:10) (良:2票) |
3.まさに「明朗青春篇」。前にNHKで祝日の朝、黄金時代の古い日本映画の名作を放映していた事があって、その時観た映画のひとつ。何と前編と後編の合間に当時の予告編が挿入されるという完璧版での放映でした。その頃石坂洋次郎の小説にはまってた時期でもあり、原節子という伝説の女優ともこの映画が出会いだった事もあり、自分にとっては忘れられない映画。全編にわたって、重っ苦しい戦争の呪縛から全てが解放されたかのような楽天的民主主義的軽やかさが伝わってくる作品です。「アマリリス」の調べに乗って原節子と杉葉子がダンスするシーン、事件解決後みんなでサイクリングするシーンが特に好き。確かこの2つのシーンは原作にない映画のオリジナルだったはず。リメイクの吉永小百合版も観たけどこれには遠く及ばない出来。 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(吹替)] 8点(2006-01-28 13:00:56) (良:1票) |
2.暴力の扱い方に「戦後」を感じるが、なんとも言えぬ開放感が溢れている。作品としての出来不出来などを思う前に、とにかく気持ちよく見ることのできる映画だと思う。 子供の頃、テレビで何度か見たが、遊び友達のなかで意見が一致したのは、新子より和子の方がずっといいということ。また、六助よりガンちゃんの方が人気があった。ずいぶん前に見た映画なのに、ガンちゃんのとぼけた感じをよく覚えている。 【駆けてゆく雲】さん 6点(2004-05-09 19:16:40) (良:1票) |
1.その全盛期には“社会派の「巨匠」”と呼ばれ、黒澤明や小津、溝口以上に批評家から称揚されていた、今井正。そして今やすっかり忘れ去られようとしているこの監督さんだけど、改めて見直す時、最良の今井作品とは常に「少女(たち)」を描いたものであったことに気づかされる。『ひめゆりの塔』しかり、『純愛記』しかり、そしてこの『青い山脈』しかり…。そこには、戦前までの封建社会において抑圧されていた女性性と、戦後社会になってなお残る社会の諸矛盾を、彼女たちを通して浮き彫りにしようという意図があったのかもしれない。けれど、それ以上にこの「巨匠」が少女たちそのものを、ある特別な眼差しで見つめている気配が、その作品から伝わってこないだろうか。この『青い山脈』のなかでも、杉葉子演じる女子高生と女教師である原節子がほとんどチークダンス(!)のように身体を寄せてダンスする場面に漂う、何とも言えない“妖しさ”はどうだ…。なるほど、これは戦後民主主義を謳歌する若い世代を明るく肯定することで、未だ残る戦前的価値観(その象徴である男性教師たちの滑稽さときたら!)へのアンチテーゼたらんとした…という「意図」なのだろう。が、そんな「良識的」な主題以上に、今井正は、女子高生が美しい女教師を慕うそのエロチシズムにこそ、自身が魅せられているのじゃあるまいか。そして、そういった一種の《倒錯》をあらわにする瞬間に、この監督の「本質」があるのだと、ぼくは思う。彼の謳う「正義」や「教条主義」はもはやほとんどタイクツかつ偽善的でしかないけれど、その「少女愛(!)」に満ち満ちた眼差しは、現在においてもなお生々しく見る者に迫ってくる。そう、大いなる肯定と賞賛を込めて、今井正作品は偉大な“ロリコン”映画なのだと、ぼくは断言したいと思う。 【やましんの巻】さん 8点(2004-02-23 18:28:05) (良:1票) |