12.この事件を知っていてこの映画を観るのと、知らないで観るのでは全然違うと思います。私はこの事件を知ってからこの映画を観ることをお勧めします。知っている人がこの映画を観ると、平穏な学校生活を見せられても、のんきな青い空を見せられても、生徒たちの戯れた姿を見せられても1つも退屈しません。観客はあれが「いつ始まるのか?」ということをドキドキしながら緊張感を持って待ち続けることができます。 あのマイケル・ムーア監督はこのコロンバインの事件で「銃社会アメリカ」をクローズアップしていました。しかし「エレファント」では、人を殺すのは「銃」ではなく「人」だということを伝えていたように感じました。 自殺願望を持った人間だからこそ、この事件は生まれたのではないでしょうか。 大切なことは銃の問題ではなく、なぜ2人の少年が人生に絶望したのかということだと考えます。銃の問題やインターネットの問題は原因ではなくきっかけに過ぎません。 心の闇の深さは訴えかけた映画のように思いました。さすがにカンヌの頂点にたった作品だけのことはあります。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-09-04 02:49:48) (良:2票) |
11.この映画の素晴らしさは内容ではない。映画はカメラがあってこそ、というのを久々に示してくれたことこそが、この映画の素晴らしさ。役者でも監督でも脚本でも演出でもなく、映画の王様はカメラ。カメラは縁の下の力持ちではなく、カメラこそが映画の主人公。童貞のガキが通販で買った銃で人を何人殺そうが、そんなのは些細なこと。そんな彼の後姿を黙って捉えるカメラにこそ、この映画の物言わぬ真実と本質がある。カメラが回るからこそ銀幕は躍る。 【永遠】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-07-07 07:18:35) (良:2票) |
10.ドラマ性を廃して長回しで撮り続ければいつか映画の神様が降りてくるかもしれないという信仰が有効だった時代の産物ですね。しかしそんな迷信は素人がスマホで撮った映像が氾濫する現代ではもうほとんど効力を失っているのではないでしょうか。つまるところ映画というのはどうあがいても映されたものに人間の意図が働かざるを得ない創作物なのですから神頼みの前に人智を尽くすべきだと思います。リアルな風俗描写だけが取り柄で明確なメッセージがない作品に時代を超える力は宿らないでしょう。しかも銃乱射犯人たちのパートになるともうあからさまにカッコいい絵を撮ろうとする演出の意図が見えてきて全体のコンセプトすら貫徹できていません。どうしても事件の直接的な描写は劇的にならざるを得ないのでしょうが、ここでこそ抑えた描写をしないのは何かが間違っています。エリーゼのためにやナチスのような深読みさせるための要素をしっかり入れるのには苦笑いです。それに同性愛者とナチスを結びつけるとはなんと軽率な描写でしょう。説明不足のためにその意図が深淵であるように見えるだけで実はこの監督は事件とそれに関わった人間についてろくに理解していなかったのではないでしょうか。 |
9.実験映像としてはとても興味深い。しかしここまで「ドラマが作品の外にある」というのはいかがなものか。こんな手間暇をかけるのならシナリオ的にもう少し粘って、独立した一編の作品として成立させる何らかのアイデアを投入して欲しかった。繰り返される長回しの連続は圧巻だが、その繰り返しが「一つの時間・空間を様々な人々が共有している」ということ以上の意味を持っていない点が特に惜しい。 【皮マン】さん [DVD(字幕)] 4点(2012-10-11 14:46:53) (良:1票) |
8.日常が非日常の世界に変わるその瞬間に向かって淡々と流れる時間。しかし日常の中にすでに事件が始まっていることを、数人の生徒が学内を歩き回る姿を延々と追いかけるカメラが映し出している。存在を誇張されるアメリカン・フットボールの選手たち。存在を認めてもらったように嬉しく写真に収まる人たち。存在を否定されるメガネの女の子。他人の存在を無慈悲に否定する三人のバカ女どもの自意識過剰ぶり。そして存在の確認を銃によって証明する者・・。コロンバイン高校銃乱射事件を題材に持ってきているため、当然ながら社会派の色合いが出ており、それゆえに各映画祭での好評を得ているのだろうし、その語り口も巧いとは思うものの、個人的にはこの社会派の部分は蛇足に感じていたりもする。それほどに『ジェリー』以後のガス・ヴァン・サントの映画は、思想だとかメッセージだとか実際に起こった事件の記憶だとかそのことに対する意見だとかを無視しても、単純にそこ(画面)に映っているものだけで映画が成り立っており、またそこに映っている全てのものの相乗効果でもって緊張感やら孤独感やらといった目に見えないものを表現する。「エリーゼのために」は印象的ではあったけど、これも要らないかもしれない。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-19 13:15:17) (良:1票) |
7.意外と普通だったなぁというのが、正直な感想。世界には思いがけない可能性があるんだとか、なんだかいままであった均衡が崩れているようだとか、みんな大きな声では言わないが感じていることだと思うから、「答えは出しませんけどね」ってこの手の事実を見せ付けられても、普段考えている以上のことは考えられないと思った。結論がないのはひとつの主張ではあるけれど、この題材においてはそのスタンスはどうなんだろう。最近は「中学生日記」だって結論があるのに。 【ぽん太】さん [DVD(字幕)] 4点(2007-02-11 21:26:40) (良:1票) |
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《改行表示》 6.蝉丸さんに全面的に同意です。ヴィム・ヴェンダースや小津安二郎 の映画は、何の事件もない日常を描きながらも心に強く訴えるものがある。 しかし、エレファントは映画としては格好のネタを題材としておきながら、 心に訴えるものがない。政治的、思想的なメッセージを押し付けずに、 観客の判断に委ねるのは大いに結構です。しかし、それでも映像や音楽の力を 駆使して心に訴えることは必要でしょう。本ではなく映画で表現しているのですから。 映像はテクニックに懲りすぎて芸術性とインパクトに欠け、音楽もただ淡々とした 映画に合いそうな綺麗な名曲(エリーゼのために)を選んだだけで残念ながら手抜きでありミスマッチだというのが個人的な感想です。 【Ruby】さん [DVD(字幕)] 3点(2006-11-04 01:44:10) (良:1票) |
5.もし、事件の前にこの映画を作っていたらパルム・ドールがあり得たのだろうか。事件(史実)をもとにいろいろな映画が作られるが、監督や物語を演じる俳優の力量で映画は決まるのだと思う。映像的に面白い画がいくつかあり(ピントを一点にしたままで奥から歩いてくる人物がまるで油絵のように見えたり)、そこは素晴らしいと思う。映画って映像だけではないですよね。この映画、事件に負けてます。事件を上回るぐらいの「何か」を伝えてほしかった(考えさせてほしかった) 【蝉丸】さん [CS・衛星(字幕)] 3点(2006-08-20 01:26:12) (良:1票) |
4.シーンの繋ぎ方が見事だなぁ。 【paraben】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-06-07 17:34:59) (良:1票) |
3.何の変哲も無い、いつもと変わらない高校の一日。カメラは唯ひたすら生徒を追い続ける。前から後ろから、上から下から、廊下、食堂、教室、図書室、運動場等々、唯ひたすら追い続ける。そして起こる惨劇。それでもカメラは唯ひたすら生徒を追い続けるだけ。しかしガス・ヴァン・サントのカメラは、観客を生徒の一人や当事者には決してしない。そこにあるのは当事者ではなく、冷めた目撃者の視線。そして無力な傍観者の視線。この映画は観客に考えることさえ求めてこない。我々に出来るのは唯「見る」ことのみ、そして忘れないこと。事件と共にその事実に戦慄した、7点献上。追伸:何と本作、スタンダード・サイズじゃないですか。そしてHBOの文字。アメリカでは、有料チャンネルHBOのテレビ映画だったんじゃないでしょうか。 【sayzin】さん 7点(2004-05-05 00:07:08) (良:1票) |
2.ガス・ヴァン・サントは名前を与える。ただしそれは恣意的なものであって、特別に選択された人間ではない。この映画が名前を与えた以外にも多くの人間が存在し、多くのごく普通の日常がある。いつもの空。いつもの背中とゲームの背中。いくつもの日常が積み重なった、その時間の交錯。ある(美しい?)日常の瞬間をスローモーションで描くこと。フレームにおさまった「親」と「教師」。名前を与えられている唯一の黒人。ヒトラーの背景に訪れる宅配業者。……。日常を切り取る、という戦略がこの映画にはいっぱいで、はっきりいって、うざい。戦略(あるいは思いつき)に沿って、愚直に、一生懸命演出した、その努力と力量には敬意を表するが、それにつきあうのは、ちょっと恥ずかしい。もっと気合い入れて真っ正面からいかんかい、とも思うし、そもそも、日常を描く、なんてことが映画に出来るのか? 【まぶぜたろう】さん 0点(2004-04-27 00:06:15) (良:1票) |
1.何の変哲もない高校。部活、カフェテリア、図書館、誰もがいつも通りの時間を過ごす日常風景。この映画は、そういった一日の出来事を生徒の視点からリアルタイムのように淡々と映している。そういった中で起こる悲劇。二人の生徒による銃乱射事件。彼らもまた事件が起きるまではいつも通りの日常を送っていた。そんな彼らの心の奥に横たわる何か。澄み切った秋空の風景から映画は始まり、少し雲がかった秋空の風景で終わる。その秋空が空しく、悲しく、少し苦かった。 |