4.《ネタバレ》 ある一家に起こる過酷な現実を重くならない演出で見せる作品。 この映画ではとにかく不幸な事が次々起こる。長男が病気で死に、これからという時に夫も死ぬ。加東大介演じる職人に手伝ってもらいながら、女で一つで家族を育てるが結局次女は養子に出してしまう。そして最後、旅行に行く先で田中絹代の体調が悪くなり、映画は香川京子がいづれ嫁に行き、おかあさんはほどなく死んでしまうであろうことを暗示して終わる。 とてーーも重い内容の映画なのである。 現代では子供を一人病気で亡くしたら、それでその後立ち直れないような精神的ショック(今なら鬱病とか)を受けてしまう母親も多いのではないのかと思う。 それでもこの映画ではたたみかけるような不幸がおかあさんを襲う。 が、それを感じさせない。 時代設定ゆえか、この時代にはこの年代まで育てた子を養子にやるのが普通なのかなぁなどと思ってしまう。子供が一人亡くなってただけでへこたれてしたら生き抜けない時代だったのかと想像する。 田中絹代の抑えた演技と、香川京子の可憐さとはっとするような仕草・美しさがこの映画のバランスをとっている。 だたし、少子化の現代においてこの映画を見ると違和感があるのも事実。 『浮雲』は陰鬱な映画であったのは確かだが、この映画も私にとって生と死について色々と考えさせられる映画でした。 【仏向】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-05-18 12:01:52) (良:2票) |
3.良い映画ってこういう作品のことを言うんでしょうね。強さに加え寂しさを感じさせる母という存在は私にとっては映画ならではで、母が時折見せるそういった仕草や表情に強く心を揺さぶられます。母への視線を取り上げている作品ですが、家族は家族それぞれの思いやりの気持ちで成り立っているんだなということが心に残りました。全体として寂しいストーリーですが、クスッと笑える部分や母親の強さがそれを和らげて絶妙な趣を作り出しているように感じました。 【さわき】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-10-20 16:10:56) (良:1票) |
2.『浮雲』では、高峰秀子と森雅之が繰り広げる皮肉の応酬に多少なりともゲンナリしてしまったが、本作は全くの正反対な作品だった。
観た後は何とも言えない、ほのぼのとした気分に浸ることができた。
ラストシーンの、香川京子が魅せる“ウィンク”に脱帽。 岡田英次の演ずる劇中の青年が羨ましい。
そして観ている私も、まるで自分が“ウィンク”されたかの様にポッとなってしまった。
自分も男として生まれた以上は、本作における香川京子の様な可憐で可愛らしい女性から、一度は“ウィンク”されたいものである。
他にも舌をペロっと出すシーンがあったりと、噂に違わず本作は“香川京子を最も可愛く映し出した作品”であった。
香川京子目的で観た本作であったが、肝心の内容の方も素晴らしかった。
『浮雲』でもそうであったが、成瀬巳喜男の映画に出てくる東京の風景はとてもリアルだ。
どこかの花町を描いているわけでもなく、どこかの豪邸を描いているわけでもない。 むしろその様なものは他の古き日本映画で観ることが可能である。
しかし、成瀬巳喜男の映画に出てくる古き良き東京は、いわば『サザエさん』の実写的様相を呈していて、庶民の生活をそのままリアルに伝えている。
街の風景もそうだし、家の中の景色もそうだ。
自分はこんな昔の東京を見たことがある訳でもないのに、何故だか懐かしい気持ちでいっぱいになってしまった。
香川京子の存在といい、こういった懐かしすぎる東京の風景といい、茶の間の景色といい、全てが感動的なまでに懐かしきベールに包まれていた。
そしてそれを観ているこっちの方も、心洗われるのだ。
『浮雲』で成瀬巳喜男に対してゲンナリしてしまった諸氏に、是非ともオススメしたい作品である。
『浮雲』も日本映画史に残る傑作だが、こちらも対極に位置する形で、成瀬巳喜男の誇る傑作中の傑作だと言って間違いないであろう。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-09-02 11:16:17) (良:1票) |
1.田中絹代が時々見せる、言葉がなく目線だけによる演技が絶妙です。その、数秒の間に、悲しみや不安、時には、あきらめや納得が伝わってきます。息子と夫に先立たれ、末っ子を養子に出し、いずれは長女も嫁いでいくだろう。あるいは、あの時代このような母親が多くいたのかもしれない。つい、自分の母や祖母はどうだったのかと考えてしまう。最後の長女の「お母さん、あなたは幸せですか」という問いに何と答えるのだろう。その長女が見つめる中、預かっている妹の息子と布団のうえで相撲をとりたわむれる。母は強く悲しく美しい。 【パセリセージ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-10-23 00:09:50) (良:1票) |