《改行表示》 4.《ネタバレ》 ウマ・サーマンよ、この俺を殺してくれ。さぁひと思いにバッサリと。 血と汗と涙の壮絶な復讐劇の果てに、ふと抱いた些細な夢想。 Vol.1と明らかにテイストが違うとか、映画の文法がどうとか、タランティーノはそんなこと微塵も考えていない。第一、俺はそんなものに感動しているのではない。スクリーンを通してヒシヒシと伝わってくるその魂に。そう心意気だよ、ココロイキ。だからこそ教会でブライドが見せる笑顔の輝きに惹かれ、生き埋めと暗闇の閉鎖感に潰されそうになり、パイ・メイの修行に燃えて、ワゴンカーでの鍔迫り合いに息を呑みながら、この『キル・ビル』にシビ・レルんだ。 『キル・ビル』にはワクワクが満ちている。一秒先への期待感が溢れている。これぞ紛れも無い映画体験だ。映画の喜びに満ち満ちている。客に笑みを、映画に拍手を。 頭の中の妄想をぶちまけたタランティーノは、恐らく世界一アタマの良いバカだろう。言うなれば天才バカボン。バカほど純粋な人間はいない。この冷めた世の中で、将来の夢すら持ちにくい現代で、一人の映画オタクが中学生のハートのまま天下を取った。それだけで無性に顔がニヤけてくるじゃないか。 先日ニュースで見たが、どこかの学者がメスのマウスだけで子孫を造る事に成功したらしい。もしかしたらこの世界に、もう男は必要ないのかもしれない。そう思ってしまうほど『キル・ビル』の女たちには胸が震える。ブライドもオーレンも、GOGOにもエルにも。そして残念ながら男たちは死に逝くだけだ。刀で斬られ、毒を食わされ、目玉を抜かれてツボを押されて。 そう、だから、だからこそウマ・サーマンよ、ブライドよ、ブラック・マンバよ、ベアトリクスよ、ママよ、この俺を殺してくれ。ひと思いにバッサリと、もしよければ必殺の五点掌爆心拳で。俺は血まみれの後ろ姿を、いつまでもずっと見続けていく。薄れ行く記憶の中で。霞みゆく瞳の先に。 【紅蓮天国】さん 9点(2004-04-24 20:35:25) (良:2票) |
3.ファーストシーンで、もう完全にノックアウト。教会でのブライドとビルの再会シーンに、映画の根底に流れているすべての感情が込められていて、思わず溜息してしまいました。愛するビルの子のために下したブライドの決断。彼女を撃ったことですべてを諦めたバドの男気。去って行ったブライドをどうしても許せなかったビルの弱さ。結局なにも手に入れることガできなかったエルの惨めさ。どれもこれも不思議なくらい身に沁みて、不覚にも泣きそうになったほど。構図も見事。音楽もピッタリ(Rロドリゲスって多才なのね)。前作では雪の日本庭園がどうにもピンと来なかったけれど、日本人にはこっちの方がすんなりくるかも。自分の世界を理解し共有してくれる仲間がいて、こんな作品を作れるタランティーノは幸せもの。初めて彼を天才だと思いました。家庭を壊してまでこの愛の映画に付き合ったユマ・サ-マンにプラス1点。 【showrio】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-03-31 16:26:18) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 「傷み」の映画だなと思いました。vol.1は刀で切る「痛そう」な感覚が満載でしたが、vol.2はよりリアルな傷みを追求して時間をかけてみせていました。殴られ、胸を撃たれ、脅され、生き埋めにされ(これはリアルな恐怖の追及でした)パイ・メイに腕をねじ上げられ、血が滲むまで板に手を打ち続けるヒロインの姿。体をキズつけられる「傷み」を観ていると、恋情の切ない「傷み」も、心で感じる痛みとしては同質かもしれないと気付き驚きました。この全編を満たす「傷み」効果でブライドの子供を失った壮絶な哀しみや愛さえもタラ流に表現しているような気がしてきたのです。復讐自体もとても痛々しいものに感じました。ビルとブライドの会話ですが、「名前を替えても本質は同じだよ」の話は、ビルの「ブライドを真に理解しているのは俺だけだ」という愛の告白に感じました。四歳の娘が金魚によって生死を学んだ話は、「娘はいずれ死がわかるようになる。俺を殺すなら、今しかない。さあヤレッ!」というビルの愛を感じました。(「ポネット」という作品の監督が子供は5歳になると死を合理的に考えられるようになると言っていたのでそう思いました)彼女の愛を失った彼にとってその手で殺してもらうことが究極の愛の形なのだと思いました。そして殺し屋の罪を拭う為に試練をビルはブライドに与え続け、それも愛だったのかもしれない。(これがタラのラブとは!)最後に奪うものは彼の心臓(心)でした。安楽死のような必殺技をビルに使ったのもやはり愛でしょうか。ブライドの壮絶な苦痛の果てに得た最高の幸せ「子供」。幸せそうな彼女の顔は子供は何をおいても大切なものという母の強さや愛・精神を表しているのかもしれません。「ありがとう」の言葉、ビル(タラ)の愛をブライドは受け取ったようですね。ところでいろんな映画のオマージュが詰まった本作、今まで観た映画のシーンを思い出す楽しみはタラの手を離れ、すでに委ねられた観客の映画好き人生そのもの。vol.1さえ既にこのvol.2を楽しむベースの1本になってる気がしています。前後編それぞれのテイスト楽しもうよ!っていう破天荒な監督タラの笑い声が聞こえてくる気がするのです。 【ひいらぎ】さん 9点(2004-05-14 00:16:03) (良:1票) |
《改行表示》 1.Vol.1は正直言ってギミックだけの駄作だと思っていたけど、このVol.2は傑作ではなかろうか?なんといってもうれしいのはタラちゃんの持ち味である語り口のうまさ、これが全開になって戻ってきていること。このとぼけたC調な会話術はほんとうにタランティーノの持ち味。日本ではコトバの制約があるからそうでもないけど、アメリカの劇場では爆笑に次ぐ爆笑なんではないかな。 アクションも細かいアイディアがいっぱいあって、たとえばトレーラーハウスの死闘では、狭すぎて日本刀を抜けなかったり、便器に顔を突っ込まれたエル・ドライバーがレバーを引き、水位を下げ一息ついたり(笑)こういう小技がVol.1にはいまいちなくて、ひじょうに大味だった。Vol.2は隅々まで考え抜かれていて、洗練された映画でしたね。 全体を通じていえることは、これはタランティーノ版「地獄の黙示録」なんだね。完結してみると、やっぱりこれは映画史に残りうるポテンシャルをもった快作でしたね。 【ウェルテル】さん 9点(2004-04-27 06:55:27) (良:1票) |