《改行表示》 4.《ネタバレ》 映画には二通りあると思う。映画を見れば内容がわかるので観客は作品をただ受け止めるだけ、という受動型映画と、見る観客側にも感受性を働かせたり考えることを求めたりして映画に参加することを要求する能動型映画。もちろん前者が悪いわけではない。ハリウッドの大作映画だって面白いものはある。が、この映画は断然後者。そして受動型映画の見方をして「つまらない」と言っているのを聞いていると非常に心が痛む。この映画には見方があるのだ。「映画の分際で何を」と思われるかもしれないが、そう思うと理解できるところもあるのでは? ようするに感性が合うかどうか。感性が合わない人には最悪映画だろう。これは。 そもそもこの映画の悲劇的なところは宣伝の失敗にある。宣伝する側が「前作は見なくても楽しめる」と言っているのが大失敗だ。かの名作「ロード・オブ・ザ・リング」だっていきなり「王の帰還」から見ればただのつまらない長ったらしい作品だ。まず「攻殻機動隊」ありき。必須。「攻殻機動隊」を見て、小難しい設定やら用語はひとまず置いといて、バトーと素子の切ない関係だけでもおさえておけば「イノセンス」は楽しめる。難解な引用など詩かBGMかと思っておけばいい。(でも本当はあとで知ると意外に意味深なことを言っていたりするけど、まあいいや)とりあえず前作さえ見ていれば、何故バトーや9課の面々ががあれほどへこんでいるかわかるはず。そしてなにより、前作を知らなければあのクライマックスが全然楽しめない。「誰? 少佐って?」とか、バトーが人形に洋服をかける意味がわからないとか、それだけで映画の魅力の三分の二は喪失している。逆にそこさえ押さえておけば、ラブストーリーとして十分に楽しめる。情熱的な描写こそないが、静かに相手を思う男の淡いラブ・ストーリー。前作から二人の関係に魅せられた当方にしてみればこの映画のクライマックスは9年越しで送られた最高の贈り物だ。もちろん、映画の主題は違うところにあるけどね。個人的には10点満点で100点ぐらいつけたいが、万人受けしないので9点。押井さんにはこれからも容赦なく自分の表現の道をまい進してほしい。マンハッタンラブストーリーにいわく、「記録より記憶に残る作品」を。 【ペンギン皇帝】さん 9点(2004-03-17 00:30:32) (良:4票) |
3.いきなりザ・グレート・カブキの毒霧をくらわされたようなオープニング。「目、目、目が・・・」と必死で目を開けようとしてる間に相手のペースで試合が進み、気がつきゃ3カウントフォール負け。恐るべし、ザ・グレート・オシイ。タイトルとは裏腹に罪な映画だ。 【彦馬】さん 9点(2004-03-28 21:39:31) (笑:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 恐らく押井監督はこの作品において、「人形」と「人間」を区別せず、そして(人間自身を含んだ)「動物」に対する愛と「人形」に対する愛をも区別しないという姿勢を取り、そこから見えてくるものをこの作品で表現しようとしたのではないかと思います。 個人的に印象に残っているセリフで、「鏡は瞥見するものであり熟視するものではない」というものがあるのですが、これに関しては、作中に出てくるような精巧な「人形」が登場するようになれば、人間と人形との境界が曖昧になっていくばかりであり、そのような状況であえて人間と人形の区別を問うことは、それこそ人間の存在基盤を曖昧にしてしまう恐れがある、従って我々はあえてこのような問いを発するべきではない、すなわち「鏡を熟視」すべきではない・・・こういう意味があるのではと思っています。 僕はこういう主張に対しては、ある程度共感すると共に、「ちょっとそれは考えすぎではないのか」という気がしないでもありません(もし上に書いたような主張が本当にこの作品に込められているのだとすればですが)。例えば作中での「子育て=人造人間製造の欲望」という考えに関しては、実感としてピンと来ない上に、このような考え方が余りにも論理的であり、人間の「人間臭い」面を軽視しているのではないかと思えてなりません。 もっとも、この点に関しても、押井監督は監督なりに回答を用意しているのかもしれませんが。そしてその回答が、ラストにおける少佐とバトーとの再会シーンに込められているのかもしれません。個人的に異論もあるとは言え、結局この点数にしたのは、このラストの展開がやたらに感動的だったからです。 <追記>久しぶりに見返してみて、その時もラストに至ってやたらに感動してしまいました。そしてその時になって、その原因が作品の構造にあるのではないかということに思い当たりました。 この映画は、物語が進むにつれて、人間の人間たる基盤みたいなものを揺るがしていく(もっともこれは押井監督の意地悪ではなくて、あくまでご本人の問題意識の表れなのでしょうが)という構造を持っていますが、ラストに至って少佐が「登場」し、そこでようやく徹底的に揺るがされた「人間性」に訴えかける事により、見る者(と言うかこの場合僕自身ですが)に何とも言えない、虚無的な寂寥感を伴う感動を与えるのではないか・・・こんなことを思いました。 【マーチェンカ】さん 9点(2004-03-12 22:53:10) (良:1票) |
1.とにかく映像美、世界観、人物描写は見事というしかない。でも攻殻シリーズをそれなりに観ている人間としては少し盛り上がりに欠けたような気が(最後子供の人形を撃ちまくるだけなんて)。脚本は確かに引用が多く難しかったが、基本のストーリーは単純なので結構すんなりと映画に”侵入”することが出来た。主人公は目がないので表情が読み取りにくい。にも関わらず孤独、怒り、悲しみといった心の葛藤が伝わってきたのは演出の上手さと音楽、あとあの主題歌のおかげだろうか。ラストも意外とあっさりとした終わりにしてあるのには驚いたが、バトーもネットの海に消えて次回からトグサが主人公・・・とかにならなくて良かった。 【КОФЕ 】さん 9点(2004-03-11 15:16:58) (良:1票) |