6.《ネタバレ》 ”人として当然持ち合わせるべき情操”の無い映画だ。それはつまり主人公のファシストの男の性質そのままである。この男のたどる半生をこちらは見守るわけだが、13才の時の決定的な事件により彼は情感を喪失したらしい。元娼婦の女に恋情を抱く部分はちょっと人間ぽいと思ったけれど、それすら驚愕の展開を迎えるわけで。なぜ彼女を見殺したのだろう。この男の冷たさは分かっていたつもりだったが、この暗黒場面には心底 冷えた。 感情は無いながら、映像は凄まじく雄弁で、ひとつひとつの場面の端麗さ、幽玄なこと。「青を意識した」とは監督の言葉。でも私個人的には強烈なのは「赤」だった。新婚旅行での列車の個室を照らす夕陽。森で絶命する女の、金髪・白いコートにそこだけ鮮血で真っ赤な顔。 私は芸術という分野には疎いけれど、この作品の織り成す映像美は”キレイな”他作品とは格が違うような気がする。青い森、白い精神病院、迷宮のような貴族の男の居城。 映像アート系の映画はえてして監督の独りよがりも多く、話がちんぷんかんぷんというのにも出会うけど今作品は男の半生と時代との整合性もきちんとあって物語として理解が難しくない。冷たさと色彩に圧倒される巨匠の傑作。 【tottoko】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2016-01-05 00:29:03) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 ベルトルッチ初期の傑作。人によっては「ラスト・エンペラー」ではなくこの作品がベルトルッチの最高傑作だという人もいるそうだ。確かにそれほどの作品なのだろう。俺は最後まで余り好きになれなかったが。 第二次大戦前夜のイタリア。 主人公のマルチェロはファシスト組織の一員として暗殺の任務をこなす日々を送るが、幼き日のトラウマと優柔不断な性格で冷徹な殺し屋に成りきれずにいた。 まあ、殺しを部下に任せている事・銃もまともに撃てないなんて随分「中途半端」な殺し屋だ。 新妻となるアンナはマルチェロの裏仕事を知らない。 マルチェロも何処かファシストから足を洗いたさそうな表情を見せる。殺し屋一筋のマンガニエーロはそんなマルチェロをため息をもらしつつ護衛する。 マルチェロを励ます(?)マンガニエーロの姿はちょっと応援してしまう。 当の本人は殺しよりも魅力的な人妻にメロメロだ。いや夢中なフリと言うべきか。いや本当に惚れていたのかも。
母親の情夫、恩師の人妻・・・まったく嫌な事件だったぜ。やるせない。 車の中から“あの人”を見つめる姿なんてもう・・・ね・・・。
マルチェロが見た「アイツ」はソックリさんか本物か。それは解らない。
戦争によって狂い、戦争によって心を“抹殺”されていったマルチェロは今後どのような人生を歩むのか。そんな事を思うラストだった。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-05-20 23:12:24) (良:1票) |
4.ぞくぞくするカメラの動き、美しい構図、翌々年の『ラストタンゴ・イン・パリ』に引けをとらない巧みな照明にため息が出っぱなし。とくに光の使い方は、ただ美しいだけではなく実に刺激的。主人公の婚約者を演じるステファニア・サンドレッリがまたものすごくいい。全てのシーンにこだわりを感じる。こだわりが出過ぎるとあざとくなったりするもんだが、この作品はぎりぎりのところで耐えてる。ベルトルッチの最高傑作と言ってしまおう。 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-10-12 14:21:33) (良:1票) |
3.徹底的に細部まで腐心した、名匠ベルナルド・ベルトルッチの究極の演出。あまりにも神経質に細部にまで執りすぎ、一部で崩壊さえ見受けられるが、それさえも、ある種の凄味に思える。脚本と役者の演技は凡庸で、台詞も単体では印象的ではあるものの、映画の流れで見ると浮いているように思える。しかし、ベルトリッチの演出は鬼気迫ると言っても過言でなく、息を呑むとは、まさにこのこと。弾けた瞬間に消えてしまうような、ベルトリッチの身を削るような小さな演出に心打たれる。 【永遠】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-10-20 06:12:39) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 初めて観る作品で三日続けて三回観ました。普通に生きたい、皆と一緒でありたいと願うマルチェロですが、体制に、権力の中に身を置き、傍観者として自分の意志を持たず、日々流されていくのが普通なんでしょうか。保身のために、友、恩人、愛する人を裏切り見殺しにする生き方を大なり小なり誰もがしていると監督は言いたいのでしょうか。生気の失せた妻の姿、トラウマの源が生きていた事に驚愕するマルチェロの姿は、こんな生き方は普通ではないが、この生き方しかできないというどうしようもないやりきれなさを感じました。そして、この作品のワンシーンの何処をとっても絵画として観賞できるハッとする美しさ、全編に漂う妖艶さ、役にピタリとはまるトランティニャン。一回目より二回目、二回目より三回目と観れば観るほど惹きこまれました。映画は芸術でもある事を実感させてもらいました。 |
1.監督曰く、”青の色調に仕上げた”そうで、確かに全てが青色に表現されており、ファシスト時代のヒューマニズムを失った冷たさが伝わってくる。しかし一方で、映像のみに力を入れたみたいで、ストーリー性は殆ど無いと言っていい。イタリアのファシストを強烈に非難する訳でもなく、また反戦映画と言う印象も受けない。とにかく映像美を楽しむための映画であり、それ以上を期待しない方がいい。実験的映画を作るのもいいが、どこかのサッカー代表監督が、「今回の試合はテストだから負けてもいい」と言っているみたいで、こう言う台詞を聞くと、いつも馬鹿にされてるみたいな気にさせられる。 【☆】さん 7点(2001-02-05 06:17:22) (良:1票) |