9.いわゆるニューロティック映画というやつでしょうか。罪悪感と殺人の強迫観念に駆られ、記憶喪失に陥った男は果たして何者なのか?なぜこの男は白い物を見ると動揺するのか?という場面で流れる、テルミンの恐怖心を煽る不気味な音楽は効果抜群です。ひたむきに愛する男の無実を信じるヒロインに、情緒不安定ながらもそれに必死に応えようとする男。サスペンスに加えて、この二人のラブロマンスの要素がまたもや堪りません。シュールリアリズムの画家サルバドール・ダリを監修に迎えた悪夢のシーンもまた、この映画の中の大きな見せ場の一つでしょう。実際には20分以上もある大規模なシークエンスだったそうで、映像表現が難解すぎて使われなかったそうですがこれはかなり観てみたい気がします。他にも水槽にミルクを流し込んで撮影した牛乳のシーンや、わざわざ木製の巨大な手を作ってまで撮影した拳銃のシーンなど。とにかくあらゆる斬新な試みと、巧みなヒッチコック・マジックが融合した素晴らしい作品です。 【かんたーた】さん 8点(2004-05-01 12:44:00) (良:2票) |
8.《ネタバレ》 多種多様なスリラーやサスペンス作品が満ち溢れる現代では、この作品のストーリーそのものは、正直なところ意外性のない先読み可能なものとして映ってしまいます。グレゴリー・ペックは到底悪役であるとは思えず、当然バーグマンとのハッピーエンドが待っているのだろうと。しかし、75年もの昔に製作された作品ともなれば、当時この作品を観た者の衝撃と驚きは察して余りある処です。細部に亘り入念に作り込まれた映像はモノクロであることを忘れさせてくれますし、相当分厚いシナリオだったのではないかと思えてしまう登場人物たちの饒舌な語りからは、当時の精神医学や心理学がどのようなものだったのかを推察させてくれます。また、今だったら考えられないようなスキーシーンの特殊効果も、60年代ぐらいまでは普通に使われていたもので、当時の観客を唸らせるに十分だったと思います。さり気なく差し込まれたユーモアに思わずにんまりしてしまうシーンもあって、只管緊迫感漂うだけの作品ではないところも流石のヒッチコック作品と思えてきます。そして何より、主演の二人の超が付く程のカッコ良さと美しさには頭が下がるばかりです。75年前に観ていたら満点の作品かも知れません。けれども、やっぱり現代の視点で観てしまうので、少し控え目の7点献上します。
ちなみに、途中ジョンの左手首に戦火で負傷した火傷あるというエピソードが出てきますが、その後のシーンでは火傷が無くなっているのは、まさかの巨匠のミスなのでしょうか?それが一番の謎でした。
それともうひとつ。男女の(会話時等の)距離感がやたらと近いのは時代なのかお国柄なのか…。「ディスタンス」が合言葉のようになってしまった今だから、尚更に違和感を感じました。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-03-02 15:05:20) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 前半の筆跡を見て偽物と気づくあたり、やはりサスペンスとしては出色の出来。 ヒッチコック監督のカメラアングルも、今観てもやはり斬新。 後半のカミソリ越しに博士を見せるシーンなんて唸ってしまった。 そして白黒映画ならではの陰影の使い方が絶妙。 イングリッド・バーグマンの輝くばかりの美しさを引き出し、善人か悪人か判断のできないグレゴリー・ペックの表情に戦慄する。 タイトルだけ知ってて観たのは初めてだったけど、21世紀の今でも色褪せない映画。 【roadster316】さん [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-14 20:54:46) (良:1票) |
6.G・ペックがひげ剃ろうとするクリームのドロッとした白を見せるとこから次々に白が襲ってきて、教授がミルクをとりにいくシーンを経て、ついにカメラがコップのミルクにふさがれるまで、ここはもうまさにヒッチコックでしたなあ。具体性ということか。テーブルクロスの筋のように、恐怖の対象が極めて具体的にそこにあるの。なんでもないはずのものが、ヒッチに指摘されることによって恐怖の対象になる。彼と深層心理学って、何か結びつかない気がしない? ヒッチの明晰さと、心理学の晦渋さ・曖昧さ。はっきり指させる恐怖と、どうとでも言いつくろえそうな解釈の世界。それが補い合ってるから面白いのかな? 私が観たフィルムの字幕は、後ろの画面が白いとほとんど読めなくて(昔はこういうの多かったんです)、白の恐怖であった。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-12-11 10:26:20) (良:1票) |
5.うーん、名のみ高くて、かな~り前衛な風景の映画を想像してました。が、一番衝撃だったのがショボショボのスキー場面…ある意味ダリの手がけたシーンを打ち消すくらいに前衛でしたよ。 あっ、悪口書いちゃったけど、面白かったですから! ホントホント! もう怖くてスキー場行けませんから!←ホントか 【エスねこ】さん [インターネット(字幕)] 6点(2006-07-29 04:27:27) (良:1票) |
4.あれ?なんか皆さん、えらい辛口ですけど、私はこれもいかにもヒッチコックて感じの雰囲気で好きな作品です。ヒッチコック独特の映像へのこだわり、イングリッド・バーグマンが話が進むに連れて、どんどんと女らしくなっていくその映像的マジックに、そしてまたそんなイングリッド・バーグマンが眼鏡を外す場面でのドキッとさせる瞬間のテクニックはヒッチコックならではの見事な映像の世界!けして世界的にも高い評価はされなかったこの作品ですけど、評価とは裏腹にこれまたどうして、最近のハリウッドの大作などではけして味わうことの出来ないものが観られると私は思います。世の中には過小評価されている映画も幾つもある気がするけど、例えばジョン・フォード監督の「黄色いリボン」やビリー・ワイルダー監督の「深夜の告白」など、ヒッチコック監督で言うならまずはこれ!もっと評価されても良いと私は思うので8点です。 【青観】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-02-04 00:03:26) (良:1票) |
3.記憶を失った男は誰なのか、どんな過去を持っているのかとミステリアスな謎を解いていくスリリングな展開が面白い。ハンサムな正体不明の男に惹かれ彼を信じて救おうとする美人の精神科医、ペックとバーグマンのツーショットを見てるだけでもうれしいので、何故ああまで信じ切れるのかなどチラッと浮かぶ疑念はこの際無視。 やたらめまいをおこしフラフラする軟弱なペック(意外に可笑しい)を力強く助けるバーグマン、というのがなかなか良いです。まさに愛は強し。 精神分析や夢判断をキーにしたところは新鮮で、映像的にも見所のある上質のサスペンスだと思います。 8点か迷いつつ、、 【キリコ】さん 7点(2004-09-13 19:10:40) (良:1票) |
2.これは本当に昔の作品なんだろうか?おもしろすぎる。夢から真相を暴くところなんてゾクゾクしてもーた。「女性は恋をする前は分析医だが恋をすると患者になる」等のおしゃれな台詞もあって、ほんと観ててあきひん。それに白黒ってほんま、役者がはえるね。特に白黒のイングリッド・バーグマン。マジ綺麗。一見堅物。しかし恋すると愛情深い女性って役も魅力的やった。後、夢のシーンは、今の目で見てもすごく幻想的。びっくりした。オチはある程度は予想できるものの、他の部分で十分楽しませてくれるので気にならなくなる。この映画、どっちかというと、サスペンス色が強くて、他のヒッチコックの作品「裏窓」や「バルカン超特急」みたいな能天気さはない。でもテンポといい、雰囲気といい、今のサスペンス映画にはないおもしろさは、やっぱりヒッチコックの映画やなって思う。ラブロマンス風味の精神分析サスペンス映画を観たい人にオススメ。 【なにわ君】さん 10点(2004-05-08 09:18:45) (良:1票) |
1.これ例のダリの夢のシーンも印象深いけど、やっぱテルミン使ったあの音楽で語り継がれる作品でしょう。 俺は電車内とかで挙動不審な人がうろついていると、このテーマが頭ん中でエンドレスに流れてきます。 バーグマンはこの時期、モノクロ画面を通しても美貌が光輝いて ましたね。 |