10.白黒映画を撮る上で東洋には、西洋にはない強みがある。それは白と黒の色の美学だ。東洋には水墨画という伝統美術がある。それは、完全な白と完全な黒との間の無限の灰色の一色一色全てにそれぞれの意味を見出すというもので、白と黒が持つ無限の美学と可能性を畏怖する思想だ。だからこそ日本は前提的に、白黒映画を武器に出来た。黒澤監督はそれを誰よりも分かっていた。だから、1つ1つの色彩に偏執的なまでにこだわり、結果的に作品中に1つの宇宙を作り出した。無限の美学。この作品の色彩の美しさには紡ぐ言葉もない。木立にも、光にも、百姓が着るボロ服の中にも美学がある。この作品の中に剥落するものなど何もない。必要なものは全てあり、不必要なものは何もない。事象全ての凝縮体のように思う。限りなく瑣末な人間模様、滑稽劇の中に、1つの宇宙がある。人間の弱さ瑣末さ矮小さ、人間が卑小であることに対する、1つの赦しがある。 【ひのと】さん 10点(2004-02-06 15:41:58) (良:6票)(笑:1票) |
9.2008年に修復したフィルム。 配信の技術も素晴らしく、スッキリ綺麗な映像を観られた。 ずいぶん前にビデオ録画した黒沢作品は(どの作品かは忘れました)ぼやけて見づらかった。 時代が進むと、昔の名作が当時のものに近く観られる。 嬉しい進歩に感謝。
さて、「羅生門」のレビューに移ります。
光と影をこんなにも美しく撮影できるとは! そして三船さんの活発で残酷でイキのいい演技。 端正な顔がくるくると表情変わり、美しくコミカルな動き。 深刻な話しでありながら、おかしみも感じられる。 京マチ子さんの体当たり演技も良かった。
不気味な羅生門での3人のやりとりにも引き込まれた。
これぞ映画と思わせてくれた名作。 【たんぽぽ】さん [インターネット(邦画)] 10点(2022-06-21 13:00:08) (良:1票) |
8.個人的に初黒澤。三船の豪快さと京マチ子の品の良さが光る。人間のエゴや自己都合の良さ、業というのをさらけ出す。鑑賞終了後一気に芥川の羅生門も読破。根底は一緒。黒澤はちゃんと咀嚼している。このテーマ性は現代作品でも応用できそう。 【タッチッチ】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-21 20:14:32) (良:1票) |
7.声が聞き取りにくい+効果音が異常にウルサイ=おもろないねん!! 【はりねずみ】さん [DVD(字幕)] 1点(2006-06-15 00:46:12) (笑:1票) |
6.戦後10年ほどの間の黒澤作品の中で、特に傑出した作品には、僕には思えない。、、、海外で評価されたのは、推測するに、1.例えば三船が森をかけるカット割りの躍動感などの映像技術、2.絶対的真理の否定という物語のアイデア、3.様式美を抜きにして日本文化の独自性を伝えていること、などだろうか。、、、、、だが、1.については他の作品にも十分に片鱗は示されているし、2.については、そもそも黒澤のリアリズムと、絶対的真理の否定というのは両立するものなのだろうかと思うし、3.については日本人の私たちには、特に意味のあることではない。、、、、、そもそも、海外で高く評価されたからといって、僕たちも高く評価しなければならないいわれはないのだ。、、、、、確かに、三船という時代劇の旧来の垢に染まっていない役者を中心にして、これまでとは異なる時代劇の空間を構築した意義は大きい。だが、その本格的な構築は「七人の侍」まで待たねばならないのではないか。、、、、そしてこの作品では、映像は斬新だとしても、音は劣悪で、しばしば映像を妨害している。、、、、さらに、すでに触れたが、黒澤自身、最後に木こりの話を付け足したように、ある種、確かなもの、絶対的なものは存在するのだと黒澤は考えているに違いない。そしてそれに基づいて彼のリアリズムは成立していると僕は思う。だとすると、主観的な語りによって事実が形成されるから、事実自体多様なものであり、一つではないというポストモダン的な、「羅生門」の一見したところのテーマは、実は黒澤の思想とは一致せず、へんな目くらましになってしまっている。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-06-30 11:33:53) (良:1票) |
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5.映像の美しさと構図の斬新さが際だつ。真実は見るものに相対化される、というメッセージが、神の死以後の欧米人を深いところで揺すぶった。相対主義は彼らには無神論につながるとんがったタブー。今でも「ラショモン」は真実の相対性の比喩になっていて、芥川の原作「藪の中」はジャームッシュの『ゴースト・ドッグ』でも意味ありげに言及される。日本では、人によって真実が違うなんて言いぐさはタブーどころか社会生活の前提だから、黒澤は、ラストでヒューマニズムを唐突に持ち出すことで、相対主義を越える希望を観客に見せたつもりだったと思われる。欧米と日本とで、思想的意味が食い違っている興味深い作品ということになる。 【哲学者】さん 8点(2004-06-17 14:16:43) (良:1票) |
4.この映画には「狡い」人間が何人も登場します。でも最も狡いのは、芥川龍之介の原作をうまいこと利用し、カンヌグランプリを獲得した黒澤監督にきまっていますよね? 【STYX21】さん 9点(2003-11-14 00:27:06) (笑:1票) |
3.ファーストシーンのあの雨!凄い雨だ!これぞ日本の雨だ。カメラワークが圧巻。影の主役は鏡。その鏡を使った光と影の絶妙。眠ってる多襄丸の顔に木の葉の影が映っている。その影がユラユラと揺れる。たったそれだけで風が吹いてきたのがわかる、その巧み。封切り当初から「わけがわからない」「難解」と酷評された。確かに黒澤作品中かなり前衛的な作品ではある。しかし、何ら難しくはない。一つの殺人をめぐって目撃者の証言が食い違う。人間は、いつも自分に都合のいい理屈を持ってきて人を責め自分を正当化する。そのエゴを抉って見せた映画。ラストで樵が捨てられてた赤ん坊を「一人育てるのも二人育てるのも同じ苦労だ」と抱いて帰ることを「甘い」と断じた批判は当時からあった。ここにもそういうコメントが見られるが、それに対しては黒澤監督が、まっこうから反論している。当時の日本の映画ジャーナリズムも、同じことを言って、この映画を酷評したがベネチアで賞を獲った途端、手の平返して誉めそやした。ラストに希望=甘いという子供っぽい視点は、いまだに変わってないのだと実感。僕はラストはあれでいい、いやああでなくてはいけないと断じて言う。僕の好みの黒澤映画ではないが名作であるのは間違いない。ところで、森田義光の「模倣犯」のラストって、「羅生門」のラストの真似じゃないの? 【ひろみつ】さん 8点(2003-11-07 22:33:16) (良:1票) |
2. ↓で仰っている通り、確かに芥川の原作「藪の中」はアンブローズ・ビアスの「月あかりの道(原題:The Moonlight Road)」を範に取った…ってか、ぶっちゃけパクリです。が、黒澤自身と橋本忍によるシナリオは「藪の中」のお膳立てのみ拝借して独自の映画に昇華しております。原作に無い木こりを4人目の証人に立てるという大胆なアレンジ、(松山崇による)見事な迄に拘った平安の時代考証、(天才カメラマン・宮川一夫による)山中の暗さと木漏れ日のギラつく光との鮮やかなコントラスト、何よりも溌剌とした役者達(個人的には森雅之がベストかと…)の演技!!原作の提示した「真実は”藪の中”、誰にも分かりはしない…」というシニカルな哲学的テーマよりも、アグレッシブな人間の生命力、飽くなき執念を前面に打ち出しており、ベネチア映画祭金獅子賞に輝いたのは(「地獄門」のカンヌ・グランプリの如き)オリエンタル趣味だけではないコトが実によく理解できます。”世界のクロサワ”の名を一躍世界に轟かせた記念すべき1作として9点~!やや観る人を選ぶみたいなので個人的に1点マイナスw。 【へちょちょ】さん 9点(2003-07-20 08:16:14) (良:1票) |
1.音楽がうるさい。ボレロの出来損ないみたいのが延々と流れるのはつらい。人間に対する性悪性も感じない。今の犯罪の方が、よっぽど恐ろしい。正直、古いと思いました。すいません。 【山本】さん 2点(2003-05-09 04:02:06) (良:1票) |