4.個人的に初黒澤。三船の豪快さと京マチ子の品の良さが光る。人間のエゴや自己都合の良さ、業というのをさらけ出す。鑑賞終了後一気に芥川の羅生門も読破。根底は一緒。黒澤はちゃんと咀嚼している。このテーマ性は現代作品でも応用できそう。 【タッチッチ】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-21 20:14:32) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 黒澤を「世界のクロサワ」に押し上げた記念碑的作品。尺も90分以下というコンパクトさ。印象としては、音の聞き取りにくさはあるものの、画は現在でも十分に勝負できるものだと思った。
■カメラワーク、構図の取り方がうまい。そして実は細かな工夫をいろいろしている。例えば雨が見えるようにするために、あの雨には実は色が付けてある(墨を溶かしたと聞いた)とか。
■ストーリーは、各人のエゴによって真実が「藪の中」にされていく過程が描き出される。各人が何を守りたく、そのためにどういう物語を語るかというのは、きちんと考えてみるとなかなか面白い。各人の話の中では、皆語り手が「(仕方なく)殺した」と、殺人の役は引き受けているところがまた興味深い。
■個人的には、最後に真実らしいものを志村が語ってしまうところと、最後に希望を見出してしまうところとが若干残念。こういう流れなら最後の最後まで真相は「藪の中」にするような構図にしてほしかったし、志村が短刀を盗んだとはいえ善人、というポジションはなんか息詰まる展開をラストで抜いてしまっている。志村を最後で超悪人のようにしてしまってもいいし、そうでないなら三人の言い争いをもっと引っ張ってもいいと思った。 【θ】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-03-05 00:24:40) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 物凄くエロい映画だと感じた。昔のお公家さんのようなメイクで、現代では全くエロく見えないはずの京マチ子が凄くエロく見えて仕方なかった。意識的、無意識的を問わない記憶の美化や荒廃した世界におけるヒューマニティなど、多くの抽象的な事柄を扱った作品であることは理解できるが、個人的には女性のつかみ所の無さ、そこから来る怖さに最も惹かれた。そしてそれがたまらなくエロいと感じた。
木こりは別として、結局生き残るのは女一人であり、女の行動が話のキーとなる部分であり、そして女の行動自体が一番意見が分かれるところなのだ。この話は男が語る「女」の話であり、この「女」は男(僕)から見た女性一般を表象している、様な気がする。怖ろしや怖ろしや。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-01-10 16:58:33) (良:1票) |
1.戦後10年ほどの間の黒澤作品の中で、特に傑出した作品には、僕には思えない。、、、海外で評価されたのは、推測するに、1.例えば三船が森をかけるカット割りの躍動感などの映像技術、2.絶対的真理の否定という物語のアイデア、3.様式美を抜きにして日本文化の独自性を伝えていること、などだろうか。、、、、、だが、1.については他の作品にも十分に片鱗は示されているし、2.については、そもそも黒澤のリアリズムと、絶対的真理の否定というのは両立するものなのだろうかと思うし、3.については日本人の私たちには、特に意味のあることではない。、、、、、そもそも、海外で高く評価されたからといって、僕たちも高く評価しなければならないいわれはないのだ。、、、、、確かに、三船という時代劇の旧来の垢に染まっていない役者を中心にして、これまでとは異なる時代劇の空間を構築した意義は大きい。だが、その本格的な構築は「七人の侍」まで待たねばならないのではないか。、、、、そしてこの作品では、映像は斬新だとしても、音は劣悪で、しばしば映像を妨害している。、、、、さらに、すでに触れたが、黒澤自身、最後に木こりの話を付け足したように、ある種、確かなもの、絶対的なものは存在するのだと黒澤は考えているに違いない。そしてそれに基づいて彼のリアリズムは成立していると僕は思う。だとすると、主観的な語りによって事実が形成されるから、事実自体多様なものであり、一つではないというポストモダン的な、「羅生門」の一見したところのテーマは、実は黒澤の思想とは一致せず、へんな目くらましになってしまっている。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-06-30 11:33:53) (良:1票) |