10.《ネタバレ》 驚いたのは、80年代軍政下の韓国の農村社会がかかえていた閉塞感を、郷愁とユーモアを込めて見事に描いていたこと。おそらく韓国の人々は、この映画を、ここ数十年の社会や自分の生活の変化と照らし合わせながら、複雑な気持ちで見たのだろうなあと想像できた。それでいて、なんとなく、戦後直後の日本の田舎もこんな感じだったんじゃないかなと思わせる普遍性もあるところがすごい(アメリカ西部の田舎だってこんなんかもしれない)。ある時代と場所を、断罪あるいは賞賛ではなく、ありのままに(しかし愛情をもって)描きだすことで生まれる普遍性とでもいうべきだろうか。だから、この映画にでてくる(あまりに無能な)刑事たちにも、どこか人間味のようなものを感じることができるのだろう。(ごく一瞬を除いて)肝心の犯人が登場しないのにこれだけ引き込まれる犯罪映画というのも珍しいし、最後の少女の「ふつうの顔」という一言が、いっそう物語に深みを与えたと思う。減点分は、「ゲ○吐き」シーンに代表される韓国映画の描写の「濃さ」がちょっと苦手なので、という個人的な事情。 【ころりさん】さん 9点(2004-10-29 13:00:25) (良:2票) |
9.ジャンルを問わず、描写の生々しさというのが韓国映画の最大の特徴とも言え、ひとつ間違うと悪趣味な印象を受けかねないものだが、本作にはその事がむしろ有機的な働きをしたように感じる。日常の何処にでもある田園風景から始まるこの作品は、実際に起こった未解決の猟奇的事件を基に、刑事たちの地道な捜査で容疑者を追い詰めていくという、サイコ・サスペンス的な要素を孕みながらも、純粋な刑事物語としての面白さを魅力たっぷりに描いた本年屈指の力作である。それはまるで初期の黒澤作品のような汗と脂でギラついた感触であり、ある種の懐かしささえ感じさせるほどの雰囲気を醸し出している。映画では、捜査方法や捜査の行き詰まりで感情が縺れ合う刑事たちの遣り場のない姿に焦点があてられているが、なんと言ってもソン・ガンホ演ずる、如何にもといった感じの泥臭い刑事ぶりは本作の白眉であり、捜査に対する苦悩や焦燥感を生身の人間として肌で感じさせる演技は見事と言う他はない。もがき苦しみながら、やっとの思いで追いつめた容疑者の逮捕を断念せざるを得ない彼らの虚無感・脱力感は、我々観客も味わう事となるが、見込み捜査のツケが廻ってきたことと、ハイテクの立ち遅れという当時の韓国の混沌とした社会情勢というものを痛切に感じさせるシチュエーションである。年月を経て、一筋の光明を見いだしたソン・ガンホの自信に溢れた顔は、まさに韓国の今を象徴しているかのようだ。 【ドラえもん】さん 9点(2004-08-27 01:30:54) (良:2票) |
8.韓国映画は初鑑賞なので韓国の文化とか街並み、当時の社会の状況とかそれだけでも新鮮でしたが肝心の本編も最後まで画面に釘漬け状態で本当に久々の「面白い」サスペンス観られて大満足!役者達の演技はもちろんですがそれぞれの顔立ちも絶品です。思い付きと思い込み(?)で犯人を追うソン・ガンホの濃い刑事役はくどくもなくむしろ痛快さえ感じるキャラです。それと対照的な冷静に事件を推理する刑事のキム・サンギョンのソ刑事が後半につれ感情を剥き出しにしていつの間にかキャラ位置がソン・ガンホと入れ替わっているあたりも面白かったです。無毛症の銭湯の調査とか霊媒師に依頼したりとクスッと笑えるシーンもいくつか用意されたり畳み掛けるように出てくる事件の新事実(憶測もアリ)、何人かの容疑者のエピソードで全くダレる事ありません。エンデイングもしっかり後を引く演出が用意されていて秀逸。これを観終わってまず思った一言「日本もこれくらい面白いサスペンス映画を作れよぉ」 【まりん】さん 9点(2004-05-02 14:09:58) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 メディア、雑誌等で評価の高い今作に対する危惧、それはやはり今作が実際の未解決猟奇殺人事件を描いた映画であるということだった。つまり猟奇殺人を描いたサスペンス映画でありながら、観る前から観客は「犯人は見出せない」ということを覚悟しなければならない。これはこのジャンルの映画としては多大なハンデである。しかし、この映画は評価に違わぬ明らかな傑作としてその全貌を脳裏に焼き付けることに成功したと思う。この映画世界に流れる空気感こそ、犯罪ドラマにおけるリアリティに他ならない。ソン・ガンホ、キム・サンギョン演じる刑事たちの怒り、焦り、絶望…あらゆる感情が生々しく迫ってくる。今尚、まさに息づく犯罪を描いた今作は、事件に翻弄された刑事の複雑に絡まる感情がにじむ表情をスクリーンいっぱいに映し出して終幕する。事実に対し、勇敢で、潔く、説得力に溢れた映画のエネルギーに圧倒される。 【鉄腕麗人】さん 9点(2004-03-30 20:22:05) (良:2票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 かなり昔に観たこの映画を、このところ立て続けに鑑賞している。 遺体が出てくるとはいえ、映画はコミカルな雰囲気で始まる。 それが、後に犠牲者となる主婦が洗濯物を干している辺りから次第に影を帯びてくる。 その辺りが絶妙で、みているものは知らぬうちにダークな世界に引きずり込まれてしまう。 音楽も秀逸で、ソ・テユン刑事が初めて登場する時の不穏な音楽(かねの音みたいな曲)が後々の雲行きを表している。 丘の上の女性が出てくる頃にはすっかりシリアスなドラマと化す。 ラスボスか、と思わせる三人目の容疑者が 虫も殺さないような風貌の美青年(おまけに本を読むインテリ?)という意外さが効いている。 それにしても、トイレの臭いまで漂ってきそうなあの雰囲気は、まっさらで清潔をモットーのような邦画は絶対に出せない味。 明日、また観ることになりそうだ。 ※分からなかった所 1.ヨングが足を怪我したあと唐突に映る焼肉は? 2.冒頭の少年。最後の少女とリンクしているのか? 3.グァンホがいきなり錯乱したのはどうしてだろう? 【有為子】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2022-01-10 03:16:10) (良:1票) |
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《改行表示》 5.《ネタバレ》 3回目。観るたびに面白くなっていく。 深みも増していく。 確かにはじめて観たときは、なんだか長いなぁ。結局真相は闇の中かよ。 なーんて思ったものですが、やっぱりこれ凄いですよ。 もちろんこの結末でいく。って始めたわけだし、時代背景や登場人物のキャラクター、アクセントになるようなユーモアなど、どれもいかにも映画的。 陰惨な連続殺人が捜査陣、マスコミ、町の人々を狂わせていく様子は凄まじい説得力をもって訴えてきます。 劇中、ソン・ガンホさんが久しぶりに排水溝をのぞきに現れたように、わたしも必ずこの作品に帰ってくると思います。 【ろにまさ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-11-15 23:42:32) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 雨と土の湿った臭いがスクリーンから漂ってくる。懐かしさを感じさせる田園地帯は、夜になれば漆黒の闇に覆われ、奥に蠢く"怪物"は獲物をひそかに待ち続ける。被害者が増え続けたのは他でもなく警察の杜撰さであり、当時軍国主義だった閉塞感も大きかったのだろう。動物的な地元の刑事と理性的な都会の刑事がぶつかり合いながらも次第に立場を逆転させていく。そこには事件を解決できない苛立ちと諦めが、止むことのないの雨に溶け込んで、トンネルという排水溝に流れていくようだ。さあ、未解決の事件をどうまとめるか? 15年後の事件を知らない児童が発する、「普通の顔だった」という台詞。もしあの手帳を捨てていなかったら・・・映画冒頭へと回想させる構成は見事としか言いようがない。不気味で恐ろしい。黒澤明のダイナミズムとスピルバーグの柔軟性を併せ持ったポン・ジュノにはこれからもついていきたいと思う。 【Cinecdocke】さん [DVD(字幕)] 9点(2017-05-22 21:11:06) (良:1票) |
《改行表示》 3.このポン・ジュノという監督サン、自国の情けなさと、裏腹な自国への愛しさを描くのがすごーくうまい。ひるがえって日本の若手監督でそういう人がいるかと考えると、かなり心もとない。是枝監督なんて、「自分の映画で日本を論じてほしくないしそんな意識では作ってない」てな趣旨のことを言ってたもんなあ。そりゃ自由だけど、いいのか?それで。 【追記】是枝監督のパルムドール受賞で真っ先に思い出したのが、このレビュー。是枝さんがこれを語っていたのがどの媒体だったか、書いておけばよかった、と思っちゃったわ。何かのインタビューでこう語っていたんですよ。私はその時、ダメだ、是枝、と思った。今この発言について聞いたところで、今回の作品と矛盾はしない、と言うだろうけど、今回の「万引き家族」で自国の情けなさはきっと描けてるんだろうと思う。で、そこに愛はあるのか。あるからこそのパルムドールなんだろうけど、観てみないことにはね。その意味では、楽しみだ。だがしかし。パルムドールがなんぼのもん?!というのも、「うなぎ」で感じたしなあ。ま、とにかく公開したらすぐに観に行こうと思う。 【おばちゃん】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2006-06-29 23:04:31) (良:1票) |
2.うむむ・・・凄い映画。だけど色んな角度から見る事が出来る映画なので、その魅力を語るのは難しいなあ。メンド臭がりのワタクシとしては「【まぶぜたろう】さんと同じでいーでーす」とやる気のない小学生の学級会の如くのコメントで済ませたい所だけど、そーゆー訳にもいかんしな。んーとね、僕はこれ「イナカ」の映画だなーと思いましたです。誤解を招きそうな言い方だけど、これはなにも舞台が農村だからっていう訳じゃなくて、「息苦しい閉塞感に包まれた共同体」という抽象的な意味での「イナカ」。手塚治虫のマンガに「奇子(あやこ)」という、戦後の地方を舞台にした猟奇的な作品があるのだけれど、それに近いものを感じた。一昔前の韓国(忘れられがちだけど、この頃の韓国ってバリバリの軍事独裁体制だったのよ。北朝鮮よりはマシだったのかもしんないけど、それってあんまし自慢にはならんわな。だからあの、日本の特高警察もかくやと思わせる警察の乱暴な捜査とか、あながちオーバーではないと思う)の、あの灯火管制に象徴される当時の韓国社会の「闇」と個人(犯人だけじゃなくて)の「闇」が浮き彫りになっていく様は圧巻でありました。やっぱ凄えや、ポン・ジュノ。 【ぐるぐる】さん 9点(2004-09-14 18:35:23) (良:1票) |
《改行表示》 1.初めて劇場で韓国映画を見ました。ほとんど前知識も無いまま。見終った後の感想は今イチだったんだけど、なぜかとても気になり、元担当刑事の手記を探しまくって一気に読みました。映画は鑑賞可能な範囲のものに留められた、というところでしょうか。 赤い服やら、ラジオやら、映画やマスコミに作られた部分はかなりあるけど、焦りやいらだちから、滑稽とも思える行動に走る刑事たち。計画と実行の伴わないもどかしさ。人はこれほど猟奇的な殺人を犯せるのかともの凄くショックを受けました。この映画を見た後のやり場のない感情。ソン・ガンホの最後の表情が、この映画の印象を強く物語っていました。最初は否定していながら、最後にはこの映画にどっぷりとハマッてしまっている自分がいました。このレビューに投稿していながら矛盾していますが、この映画について面白いとか面白くないとかは語りたくありません。実際に数多くの女性が乱暴され、惨殺された未解決事件なんですから・・。 |