4.最初に書いておかねばなりますまい。私はブッシュが嫌いです。さて、私にはこの映画、世間での「良くも悪くもブッシュをひたすらコキ下ろしたシロモノ」という評価とはちょっと違うように感じました。ムーアの著書もそうなのですが、看板と中身に実は差がある感じ。メディア戦略によって操作されて伝えられる情報、その情報にコントロールされてしまう民衆、その危うさを、ムーアは自らこの映画で具象化してみせたのでは?と。編集や音楽によって意図的に操作されまくっている映画なのですが、実のところ政治の場もこういう事でしょ?って。タイトル部分で本番前の準備をしている政治家達の姿が映し出されていますが、それは政治もまた国民に伝えられるのは真実とは別の、加工されたモノなのですよ、と認識させようとしているのではないかと思います。メディアは物事を非常に短絡的に、二元論化して判りやすくコントロールしているのではないでしょうか。白でなければ黒、善でなければ悪。真理は決してその極にはない、そんなに単純なモノではないのに。共和党と民主党の二大政党状態が、端的に二元論化でコントロールされている状態を表しているような気がしてなりません。もっとも、その傾向はアメリカだけに言える事ではありません。民衆の中に敵を作り出し、議員が特定の市民を「反日的分子」と言い放ってしまうどっかの国もまた、安易な二元論へ堕している傾向が顕著です。某巨大掲示板に見られる、信者でなければアンチ、右翼でなければ左翼、という極論に走ってしまう原因って、一体どこにあるのでしょうね? そうそう、その国の総理も、平然と犯罪者でもない市民を非難したりしてましたけど、ひとつ言いたいのは、芸術を愛するフリするならば、見てもいない映画をケナすのはイカンのではないの? 最後に、あの無惨な被害者や死体の映像にまで真実がない、なんて言う事はできないですよね。そして、あれは、明日の自分の姿なのかも・・・。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 8点(2004-09-01 21:14:55) (良:5票) |
3.いまや「ペンは剣よりも強し」以上に「映像はペンよりも強し」。 彼の書いた本もヒットしましたが映像で見るとそれ以上のインパクトがあります。 与えられた情報や映像による大衆操作の危うさや胡散臭さについてはテレビ映りを気にする議員や、イラクで死亡した兵士の棺を放映しないなどにも描かれてます。力のある者は自分に都合の悪い映像は隠し、プラスになる映像だけを流して都合のいい流れを作ることも出来る。 真実が何かを知るためにいろんな情報を得て総合的に考えることは大切なことで、この作品で見る映像も貴重な判断材料の一つだろうと思います。 恐怖が銃社会をなくさないようにテロの恐怖を煽って戦争を正当化しようとする。 これは真実なのか意図的に作られたものなのか、壮大な破壊で利を得るのは誰なのかなど多くのことを考えさせられます。 どうであれ戦争は合法的な殺人で、一部アメリカ兵がイラクでゲームをするように高揚してる姿はおぞましい。 チャップリンの殺人狂時代のヴェルドゥ氏の最後の言葉は今一層重く響きます。 愛する母国が誤った方向へ進んでいることへの大きな危機感が監督を突き動かしているのでしょう。 愛国者法をスピーカーで読み上げ、議員にはイラクに子供を志願させたらとパンフレットを配るなど、監督の行動力と堂々と発言する勇気は相当なものです。
【キリコ】さん 8点(2004-09-02 21:02:53) (良:3票) |
2.面白いとか面白くないとかいうレベルを超越してるので点数つけがたいです。 一方的なブッシュ大統領批判という意見もありますが、弱いものを徹底的に痛めつけるどっかの権力者に比べれば遥かに穏やかでジョークに富んだ映画でしょう。そもそもこういう映画を見て、すぐに意思があっちこっちいったりする国民がいるからファシズムがはびこるのですよ。こういうのはすぐに鵜呑みにせず、これを足がかりにいろんな角度から情報を収集して自分で勉強しましょう。TV画面での見た目の派手さだけの何か頼りがいがありそう、ってな単純な判断基準だけの国民総事なかれ主義では、いつまで経っても権力者においしい世の中のままですよ。今回ブッシュ陣営のTV演出めいた部分が皮肉られていたのは、その警鐘では?
それにしても、ムーア監督は良くも悪くも一般大衆に政治的議論を巻き起こさせることができて、大成功だったのではないでしょうか。ただし、ムーア監督が絶対正しいのでも間違っているのでもない、ブッシュ大統領が絶対正しいのでも間違ってるのでもない。真実は自らの手で掴むしかないと思います。でも、米国の「愛国者法」然り、日本の「盗聴法」然りで、周辺から締め付けがきていますので、「間違ってるかも」って気づいたときには、既に国民同士がそれを公言することすら許さない雰囲気を作っている可能性があります。それどころか多くの国民は信じて疑わないかもしれません。「お前、何言ってんの?」って。イラク侵攻前の多くの米国民のように。でも、今はまだその真実を、ムーアのように自由に「真実はこうだったんだよ!」って言える世の中です。どうか、この幸せな世の中を少しでも長続きさせるために、個々に想像力を働かせて、自分自身の未来のために、政治に関心を持って行きましょう。
あ、映画の批評じゃなくなってる・・・。 【こじ老】さん 8点(2004-08-31 01:44:10) (良:2票) |
1.僕は無知だった。何も知らなかった。テレビのニュースとちょっとの新聞の情報で知った気になっていた。アメリカの同時多発テロの時も目ではテレビ画面を見ているけど、気持ちは入らず、完全に他人事だった。“僕には関係ない”と知らず知らずの間に考えていたのかもしれない。この映画もまた“僕には関係ない”内容だった。でも“僕には関係ない”で済まされなかった。ブッシュの行動や言動は“僕には関係”なかったけど、同時多発テロやイラク戦争でなくなった人々の遺族の想いは“僕には関係ない”では済まされかった。これこそ無知だった。アメリカのイラクへの攻撃によって亡くなった人々の中に、僕よりもずっと幼い子供がいた。アメリカのラビンへの怒りによって、未来が消された子供達。この事実は耳では聞いていたけど、実際に目にすると信じられない程の脱力感を味わう事になった。遺族の人々の苦しみ、怒り、涙の意味を知らなかった事が一番恥ずるべき事だった。僕は無知ではいたくない。しっかりと知り、理解したい。生きる為の知識はそれらの事を考え、知る為に使わなければならないと思う。この映画は僕にとって初めの一歩となった。 【ボビー】さん 8点(2004-08-26 07:50:57) (良:1票) |