8.最初に書いておかねばなりますまい。私はブッシュが嫌いです。さて、私にはこの映画、世間での「良くも悪くもブッシュをひたすらコキ下ろしたシロモノ」という評価とはちょっと違うように感じました。ムーアの著書もそうなのですが、看板と中身に実は差がある感じ。メディア戦略によって操作されて伝えられる情報、その情報にコントロールされてしまう民衆、その危うさを、ムーアは自らこの映画で具象化してみせたのでは?と。編集や音楽によって意図的に操作されまくっている映画なのですが、実のところ政治の場もこういう事でしょ?って。タイトル部分で本番前の準備をしている政治家達の姿が映し出されていますが、それは政治もまた国民に伝えられるのは真実とは別の、加工されたモノなのですよ、と認識させようとしているのではないかと思います。メディアは物事を非常に短絡的に、二元論化して判りやすくコントロールしているのではないでしょうか。白でなければ黒、善でなければ悪。真理は決してその極にはない、そんなに単純なモノではないのに。共和党と民主党の二大政党状態が、端的に二元論化でコントロールされている状態を表しているような気がしてなりません。もっとも、その傾向はアメリカだけに言える事ではありません。民衆の中に敵を作り出し、議員が特定の市民を「反日的分子」と言い放ってしまうどっかの国もまた、安易な二元論へ堕している傾向が顕著です。某巨大掲示板に見られる、信者でなければアンチ、右翼でなければ左翼、という極論に走ってしまう原因って、一体どこにあるのでしょうね? そうそう、その国の総理も、平然と犯罪者でもない市民を非難したりしてましたけど、ひとつ言いたいのは、芸術を愛するフリするならば、見てもいない映画をケナすのはイカンのではないの? 最後に、あの無惨な被害者や死体の映像にまで真実がない、なんて言う事はできないですよね。そして、あれは、明日の自分の姿なのかも・・・。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 8点(2004-09-01 21:14:55) (良:5票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 監督が語っていたように、「事実を恣意的に組み合わせて表現した意見」だ。「正しいか間違っているか。判断は観客に任せる」。鵜呑みにせず、一歩引いて鑑賞したい。だが、この燃える怒りに体を委ねざるをえなかった。 多くの政治家に取って戦争は”他人事”なのだろう。あるいは金儲けで、どれだけの人が死ぬかは二の次だ。息子を軍に入れている議員が一人というのが象徴している。アメリカのように経済格差の大きい国で、平等を唱えること自体おかしい。自分は左じゃないが、資本主義の歪みを見せつけられた気分だ。監督の狙い通りにブッシュをホワイトハウスから追い出したところで、変わらないだろう。映画の終着点がブッシュではなくこの社会であったことからも、深刻さを痛感する。 ただその怒りを考えると、また矛盾にぶつかる。自分自身だ。自分は徴兵制度の無い国、平和な街角で、映画を観、メールを打ち、クーラーの中で暮らしている。そもそも戦後日本が急速な経済成長を遂げた要因の一つに、朝鮮戦争での特需景気がある。当時の経済への影響と現在のそれとでは違いがあるとはいえ、もはや国の経済的な発展と戦争は切っても切りはなせない関係だ。自分の恵まれた日常が戦争の利益によって成り立っている。そう考えると、複雑な世界、絶望感に打ちひしがれる。 鑑賞から一週間が経つ。レビューをこんなに悩んだのは初めてだ。以来、イラク戦争はもちろん、以前より数倍注意深くニュースを見ている。これだけで、この映画を観た価値は十分にあった。無知は弱みで、無関心は罪。 「ぼくたちはいつしかなれっこになってしまっている。事実は絵空事となりテレビこそが現実となる。今も数えきれない人々が泣き叫び、ぼくたちが食べたり飲んだりしているうちに、彼らは明日にも死んで行く」 「もし世の中の人の苦しみに一々足を止めていた日には、人は生きてゆかれないだろう。どんな幸福も、他の人の苦悩を食って生きているのだ。」 空爆、市街戦、自爆テロ。日々送られてくる何十、何百、何千、何万という犠牲者の数。その一人一人が歩んでいた尊い人生。その一人一人の死を嘆く数えきれない人々。その悲しみの深さを想像する事。決して膨大な数に、感覚を麻痺させない事。そして初めて俺は、自分が置かれたこの恵まれた状況を、愛する人と自分を愛してくれる人と、この幸福を噛み締める。 【紅蓮天国】さん 8点(2004-08-25 23:46:15) (良:4票) |
《改行表示》 6.いまや「ペンは剣よりも強し」以上に「映像はペンよりも強し」。 彼の書いた本もヒットしましたが映像で見るとそれ以上のインパクトがあります。 与えられた情報や映像による大衆操作の危うさや胡散臭さについてはテレビ映りを気にする議員や、イラクで死亡した兵士の棺を放映しないなどにも描かれてます。力のある者は自分に都合の悪い映像は隠し、プラスになる映像だけを流して都合のいい流れを作ることも出来る。 真実が何かを知るためにいろんな情報を得て総合的に考えることは大切なことで、この作品で見る映像も貴重な判断材料の一つだろうと思います。 恐怖が銃社会をなくさないようにテロの恐怖を煽って戦争を正当化しようとする。 これは真実なのか意図的に作られたものなのか、壮大な破壊で利を得るのは誰なのかなど多くのことを考えさせられます。 どうであれ戦争は合法的な殺人で、一部アメリカ兵がイラクでゲームをするように高揚してる姿はおぞましい。 チャップリンの殺人狂時代のヴェルドゥ氏の最後の言葉は今一層重く響きます。 愛する母国が誤った方向へ進んでいることへの大きな危機感が監督を突き動かしているのでしょう。 愛国者法をスピーカーで読み上げ、議員にはイラクに子供を志願させたらとパンフレットを配るなど、監督の行動力と堂々と発言する勇気は相当なものです。 【キリコ】さん 8点(2004-09-02 21:02:53) (良:3票) |
《改行表示》 5.面白いとか面白くないとかいうレベルを超越してるので点数つけがたいです。 一方的なブッシュ大統領批判という意見もありますが、弱いものを徹底的に痛めつけるどっかの権力者に比べれば遥かに穏やかでジョークに富んだ映画でしょう。そもそもこういう映画を見て、すぐに意思があっちこっちいったりする国民がいるからファシズムがはびこるのですよ。こういうのはすぐに鵜呑みにせず、これを足がかりにいろんな角度から情報を収集して自分で勉強しましょう。TV画面での見た目の派手さだけの何か頼りがいがありそう、ってな単純な判断基準だけの国民総事なかれ主義では、いつまで経っても権力者においしい世の中のままですよ。今回ブッシュ陣営のTV演出めいた部分が皮肉られていたのは、その警鐘では? それにしても、ムーア監督は良くも悪くも一般大衆に政治的議論を巻き起こさせることができて、大成功だったのではないでしょうか。ただし、ムーア監督が絶対正しいのでも間違っているのでもない、ブッシュ大統領が絶対正しいのでも間違ってるのでもない。真実は自らの手で掴むしかないと思います。でも、米国の「愛国者法」然り、日本の「盗聴法」然りで、周辺から締め付けがきていますので、「間違ってるかも」って気づいたときには、既に国民同士がそれを公言することすら許さない雰囲気を作っている可能性があります。それどころか多くの国民は信じて疑わないかもしれません。「お前、何言ってんの?」って。イラク侵攻前の多くの米国民のように。でも、今はまだその真実を、ムーアのように自由に「真実はこうだったんだよ!」って言える世の中です。どうか、この幸せな世の中を少しでも長続きさせるために、個々に想像力を働かせて、自分自身の未来のために、政治に関心を持って行きましょう。 あ、映画の批評じゃなくなってる・・・。 【こじ老】さん 8点(2004-08-31 01:44:10) (良:2票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 ボウリングの頃は、マジな感じとユーモアな感じが半々くらいに保たれていた気がしたが、今回は9:1くらいでユーモアを捨ててほとんどガチンコの勝負をしている。 相手が相手だから逃げもかわしもしない直球勝負に出たなあという感じがする。 ブッシュ本人のことや石油の利権や軍需産業の癒着、サウジとブッシュとの関係やイラクとブッシュとの関係、9.11が起こった背景等ははっきり言ってほとんど知識ないんで論じることは出来ないけど、 罪のないイラクの人々が死んでいく姿と「助けに来たのに何で攻撃されるんだ」と嘆く兵士の姿、息子を失った家族の深い悲しみと息子が書いた手紙には、全てブッシュのやっていることは間違っているということと彼の嘘を痛烈に感じずにはいられない。 権力者の下に踊らされ、恐怖を植え付けられ知らぬまに自分の自由や思想を失っていく人々にはテロ以上の脅威を感じる。 真に恐ろしいのはテロリストではなく紛れもなくブッシュだろう。 映画としての面白さは本作からは感じないが、人に訴える熱情がこもった素晴らしい映画だとは思う。 自分の利やカッコのために苦しむ人がいるということを知ってもらうために特に政治家や政治を志す人には見てもらいたい。 次の大統領選は本当に楽しみだな。ブッシュが勝つのかムーアが勝つのかというようなもんだな。 ケリーが勝ったら勝ったで、ムーアのおかげで勝ったと言われるのかな。 メディアやマスコミを使って世の中を動かすというのはあまり好きではないがな。 【六本木ソルジャー】さん 8点(2004-08-15 00:29:47) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 マイケル・ムーアの映画に関しては「ボウリング」や「シッコ」も見たが、まあ確かに中立性を欠いているように見える。当たり前だ。この映画は「動物番組」みたいに「動物の営み」「自然の厳しさ」を伝える物ではなく、「何でこんな状況下を黙って我慢しているんだ」「当たり前だと思うんだ?」というメッセージ映画だからだ。マイケル・ムーアが本当にムカついているのはブッシュでも大企業ではなく、そういう奴らが好き勝手しているのを「仕方がない」とか「これが現実なんだ」というように許してしまう「常識」「空気」なんじゃないかと思う。戦場で死んでいくイラク人、戦場で壊れていく兵士、家族を失う悲しさを映像でバンバン流しているのはその証拠だし、華氏911という題名は、動物番組には見られない「怒り」が表現されているのではないかと思う。そう、この映画は視聴者や観客がこの映画を見て素晴らしい論理思考を組み立てていただく為に制作されたのではなく、ブッシュ大統領が嫌いになっていただくために作られたのでもなく、観客が今の現状に怒りを感じ、疑問を持っていただく為に生み出されたものなのだ。とはいうものの、僕ら人類は「怒り」という感情が負の側面を持っている事を歴史的に知っている。こうした怒りだけを提示するだけではなく、「この煮えたぎる怒りをどう希望に変えていくか」という事例を提供することで、彼のドキュメンタリーは完成すると思うのだが、ここまで洗練されるには次回作まで待たなくてはいけない。 【はち-ご=】さん [DVD(吹替)] 8点(2008-06-10 00:26:42) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 マイケルムーアが合衆国の議員たちに家族が軍隊に入隊していますか?と聴いて回るシーンは秀逸。戦争を起こす人間やその家族が軍隊にいることは非常に少ない。その事実をもっと知らせるべきだと思う。 【腰痛パッチン】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-30 15:35:53) (良:1票) |
1.僕は無知だった。何も知らなかった。テレビのニュースとちょっとの新聞の情報で知った気になっていた。アメリカの同時多発テロの時も目ではテレビ画面を見ているけど、気持ちは入らず、完全に他人事だった。“僕には関係ない”と知らず知らずの間に考えていたのかもしれない。この映画もまた“僕には関係ない”内容だった。でも“僕には関係ない”で済まされなかった。ブッシュの行動や言動は“僕には関係”なかったけど、同時多発テロやイラク戦争でなくなった人々の遺族の想いは“僕には関係ない”では済まされかった。これこそ無知だった。アメリカのイラクへの攻撃によって亡くなった人々の中に、僕よりもずっと幼い子供がいた。アメリカのラビンへの怒りによって、未来が消された子供達。この事実は耳では聞いていたけど、実際に目にすると信じられない程の脱力感を味わう事になった。遺族の人々の苦しみ、怒り、涙の意味を知らなかった事が一番恥ずるべき事だった。僕は無知ではいたくない。しっかりと知り、理解したい。生きる為の知識はそれらの事を考え、知る為に使わなければならないと思う。この映画は僕にとって初めの一歩となった。 【ボビー】さん 8点(2004-08-26 07:50:57) (良:1票) |