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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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41.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
セオデン王とファラミアのエピソードのように、壮大な物語でありながら家族の確執のような小さなドラマを入れているのが上手いと思う。心理描写をおろそかにせず、むしろ各登場人物の小さな物語を積み重ね、織り上げるようにして巨大な世界を創造している。世界の物語とは同時に個人の物語でもある。細やかな描写があってはじめて、合戦シーンでの歴史のダイナミズムを感じることができるのだ。この映画がちっぽけな虫から始まり、平和な家庭に終わるのは象徴的。最初は10点だと思ったけど、SEE版には劣るので9点。やっぱりサルマンの死をカットしたりとか、まずいでしょ。
[映画館(字幕)] 9点(2005-11-27 04:31:02)
42.  シン・シティ
『パルプ・フィクション』への最高にクールなオマージュ。これほどの敬意をもらって、タランティーノも幸せだろう。  想像を絶する暴力と、その奥底に流れる温かな情愛。原作はコミックだし、単純に面白いのも確かだが、暴力のカタルシスの裏には常に悲しみが潜んでいて、浅いドラマには終わっていない。敵役だけじゃなく、ヒーローも皆罪を犯している。善を成すためには悪を為すしかなく、罪を償うためには罪を犯すしかない、という運命が苦い。  この街で頼りになるのは力だけ。だけど力の影にはときおり優しさが見え隠れし、暗闇に支配されたこの街が、ときおり途方もなく美しい瞬間を見せることに気づく。ときには交叉しながら繰り広げられる三人の物語が重層的に「罪の街」を浮かび上がらせ、この荒唐無稽な世界がいつのまにかリアルになる。それと気づかぬうちにこの冷え冷えとした世界に魅き込まれ、観る者はいつのまにか「罪の街」の住人になっている。目を逸らしたいのに、いつまでも見ていたい、残酷で美しい街。  グロテスクな映像が苦手じゃなければ、お奨めします。
[映画館(字幕)] 9点(2005-10-16 04:16:59)(良:1票)
43.  エイリアン
エイリアンの造型、設定はもはやひとつの芸術で、これについてはもはや何も言うことがない。あの異形の、しかし魅力的な怪物は映画ファンの記憶にいつまでも留まり続けるだろう。   ストーリーはホラーの常套を踏んでいるようで、『ブレードランナー』のようなハードボイルド的な渋い演出が多い。登場人物が一人ずつ死んでいくのは確かだが、いたずらに派手な死に方をさせるのではなく、静かに、非情に殺されていく。息が詰まるような暗闇の閉塞感のなか、たった一人で怪物と向き合わなければならないあの緊張感には吐き気すら覚えた。   音楽と音響の使い方がまた超一流。怖い場面で派手で陳腐な音楽を流したりはしない。個性的でなおかつ映像とマッチする音楽もすごいが、ここぞという場面ではむしろ沈黙が神経に響く。呼吸、衣擦れ、機械の作動音、エアロックから漏れる空気の音、時計が秒を刻む音――普段はなんでもない音が大きく感じられ、神経は今にもぷちんと切れてしまいそうなほどに張り詰める。自分の心臓の音さえ聞こえてきそうな気がした。   ところで、エイリアンのデザインなど、性的な要素が盛り込まれていることも興味深い。かの『エクソシスト』が、ロウソクの燭台の影を男性器に似せたりして人間の潜在意識に強く訴えるようなイメージで恐怖を促したというが、こちらの方がずっとあからさまである。
[DVD(字幕)] 9点(2005-10-05 17:12:13)(良:3票)
44.  パリ、テキサス
ラストのトラヴィスの行動を見て、「バカなやつ…」と思ってしまう。でも心からの軽蔑をこめてそう思ったわけではなく、軽蔑と賞賛、同情と共感の入り混じった複雑な感情を込めての「バカ」なのです。  トラヴィスの行動はけっして褒められたものじゃない。弟夫婦の気持ちを無視しているし、息子を母親が一緒に生活しても幸福が保証されるとは限らない。しかし自分が一緒にいればまた二人を不幸にしてしまうかもしれないと知っているからこそ、あえてひとりで夜明けのハイウェイを行く彼の横顔を見ると思わず…。トラヴィスをかっこいいとは思わないけど、嫌いになることもできなかった。あの男はあの男なりに家族を愛していて、懸命に二人を幸福にしようと頑張ったのだから。人間の弱さや愛情というものの難しさについて、考え込まずにはいられない。  映像、音楽の美しさには驚いた。とりわけ映像については、個人的にはいままで観た映画のなかでももっとも美しいとさえ思った。全編にわたって圧倒的なクオリティ。「映像詩」という言葉はまさにこのような作品のためにあるんじゃないだろうか。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-07-05 14:01:26)(良:1票)
45.  ゴッドファーザー 《ネタバレ》 
色彩には、それぞれが喚起するイメージというものがある。中でも、高貴、権力、悪というイメージを喚起するのが、「黒」。この映画はその「黒」に満ちている。登場人物が身につけるスーツやコートはもちろん、高級車、銃器、そして彼らが背負う暗黒。彼らは間違いなく悪なのだが、その闇があまりにも深いために、もはや善悪の境界を超越した威厳すら漂う。 彼らは通常のモラルにおける悪の側にいるというよりは、通常のモラルとはまったくかけ離れた価値観に従って生きている人間、われわれとはまったく違う世界の住人だ。だからこそ罪を犯しても後ろめたく思うどころか、誇り高い。おそらくは法を遵守しながらも成功を収めるだけの知性を持ちながらも、進んで闇の世界を選ぶ。家族や友を心から愛しながら、敵対する者は容赦なく殺す人々。恐怖によって人を支配しながら、自身はけっして恐怖に囚われることのない人々。不謹慎だとわかっていても、彼らに魅力を感じる人たちは少なくないはずだ。 映画を観ている最中こそファミリーの仲間になったような気分でいられるが、扉が閉じられるラストで彼らが別世界の存在だったことを思い出す。われわれ一般人にはただ恐れ、畏怖することしかできない。
[DVD(字幕)] 9点(2005-06-13 11:57:07)(良:1票)
46.  秘密と嘘
とても地味なお話だと思うのだが、なぜか画面から目が話せなかった。このサイトで特異な演出方法を知って初めて、なぜこの映画があんなにもスリリングに感じたのかがわかったような気がする。この映画は脚本にまったく作り物臭さがなく、「現実ならこうなるかもしれない」というタイミングの悪さ、計算の上ではありえない台詞と演技がある。地味な作品と評価される方も多いが、個人的にはほとんどサスペンス並みに目が離せなかった。  家族を大切に思うのは当然だが、当然シンシアのようにみっともなく、自分勝手な人物もいるわけで、平和な家庭を保つことはまったく簡単ではない。ましてや家族の綻びを秘密や嘘で誤魔化そうなんて甘い話で、一時しのぎはできても、結局は悲惨な断裂を招いてしまう。いくら真実が醜くても、なりふりかまわず立ち向かわなければ、とりかえしのつかないことになる。 それを伝えるために、リー監督はその特異な手法で、現実の一部をそのままえぐりだしたかのような映画を観客の前に突きつける。相手の弱さ、醜さまでも許さなければ、家族は世界で一番大切な人々から、世界で一番憎い人々に転じてしまう。家族を愛することの素晴らしさ、そして難しさを考えさせられた。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-05-11 23:02:15)
47.  市民ケーン 《ネタバレ》 
直球のお話でしたね。お金がいくらあっても心が満たされなければ不幸だ、という。でも素直に胸を打たれました。号泣したりはしなかったのですが、後から「薔薇の蕾」という言葉の意味を思い出すたびに胸の奥がしくしくと痛むんです。とくに切ないのは後妻が出て行った後のケーンの描写。怒りに任せて後妻の部屋を荒らすわけですが、目は虚ろで力がなく、足元はふらついていて自分が散らかしたものにつまづく始末。暴れまわっているはずなのに、あまりにも弱々しい。大人の男性というよりは、かんしゃくを起こした子供みたいな。そして召使たちが見守る中、生ける屍みたいになってとぼとぼと歩いていく。あの姿、大勢に囲まれながらも途方もなくひとりぼっちで、傷ついた子供のような姿が目に焼きついてはなれません。攻撃的なビジネス戦略も、莫大な財産の浪費も、選挙運動も、すべて幼い頃に見捨てられた寂しさを埋めるためのものでしかなかった。そして結局最期までその思いは満たされることもない……。哀しく、辛い映画でした。 (ほとんど予備知識なしで観ました。題名は聞いたことがあっても、アメリカ映画一位に選ばれたことも知らなかったし、まったく映画通ではないので技法のこともよくわかりません。他の方のレビューを読んで、素直な気持ちでこの作品を観られたことがすごく幸運だったと思いました。古典とは歴史的な意味合いだけで評価されているわけではなく、現代にも通じる部分があるからこそ残るものであって、それを感じ取ることができればとても良質の作品だと思います)
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-04-14 12:05:07)(良:1票)
48.  太陽がいっぱい
これまでこんなに魅力的な犯罪者がいただろうか? アラン・ドロンはただ顔立ちが整っているだけじゃなくて、その眼に野生動物のような凶暴な光がある。その光に惹きつけられて、観ているうちにいつのまにかトムを応援している自分に気づく。あれだけ巧妙な計画が実は最初から破綻していて、すべて無駄だったなんて……。眩しいくらいに明るい日差しと、青年の暗い心。光と闇のコントラストが鮮烈でした。
[映画館(字幕)] 9点(2005-03-13 00:25:31)
49.  アマデウス 《ネタバレ》 
マンガ『のだめカンタービレ』を思い出しました。笑えて泣けて、娯楽作でありながら深みもある。   どちらの作品も音楽を題材とし、努力型の人間とエキセントリックな天才肌の人間が出会うことによって起こるドラマを描いているんですが、違うのは『アマデウス』の二人の才能には圧倒的なレベルの差があること。マンガの主人公たちはお互いを高めあって成長していくのに、サリエリは嫉妬心ゆえにモーツァルトを憎まずにはいられない。   ただし共通点もあって、それはサリエリがモーツァルトの最大の理解者だったということ。サリエリはモーツァルトを誰よりも憎んでいたのに、それと同時に誰よりもモーツァルトの音楽を、才能を愛していた。それがこの映画の切ないところで、クライマックスのやりとりで初めて、二人の間にどんな確執があったにせよ、実は二人が最高の親友に成り得たはずだったと気づくのです。   音楽に身を投じたばかりに衝突した二人の心が、最後の最後に、その音楽によって結びつく。死の直前になって、サリエリの憎しみは和らぎ、モーツァルトの孤独は癒される。   僕は天才だとか凡人だとかということよりも、彼らの哀しい友情に胸を打たれました。
[映画館(字幕)] 9点(2005-03-07 16:55:21)(良:6票)
50.  仁義なき戦い 広島死闘篇
山中のぎらぎらと光る眼が忘れられない。凄まじい暴力性、心の内に炎のような激しさを持ち、最後には謀略にのせられ、内なる炎で自らをも焼き尽くす。彼がヤクザの中で伝説的な存在になったのも納得できる。 ただ、妻と子供に対しては優しかったことも印象深い。組長を信じて一途に尽くす純粋な一面も持ち合わせていた。もちろん彼のしたことは許されないし危険な人物だったことは確かだが、彼が伝説的な殺人鬼である前に、一人の人間だったこともわかるのだ。たとえ犯罪者でも、その過酷な運命には胸を打たれずにいられなかった。  そして狂犬のような大野勝利もやっぱり忘れ難い。暴力を振るうことにまったく躊躇せず、人間の死体を銃の的にし、父親に絶縁を申し渡されてバックを失っても「かまわん、わしがほしいのは広島じゃ」とせせら笑う。勝利には山中のような人間らしさの欠片もない。  この二人の若い男の刹那的で危険な生き様には、一見の価値があります。
9点(2005-03-01 00:13:57)(良:1票)
51.  花とアリス〈劇場版〉
鈴木杏さんには悪いけど、最初は花というキャラクターに嫌悪感を覚えた。しょうもない嘘をついて強引に迫っていくのが個人的には気持ち悪くて、郭智博が花を好きになったことを「生理的に理解できない」と言ったときは思わず笑った。ナメクジ扱いも無理ないと思う(失礼)。 でも彼女が舞台裏で泣いた顔が、可愛かった。ぐちゃぐちゃの泣き顔なのに、すっごく可愛かった。 アリスもそうだが、実は目を見張るような美少女というわけではないのに、そのひたむきさ、不器用で傷つきやすく、そのくせ真っ直ぐに生きている姿に惹きつけられる。バレエを踊るアリスは線が細く、か弱く見えるのに、それでいて確かに強さと気高さを感じさせる。その真っ直ぐに伸びた姿勢に、息を呑むような美しさがある。 ほんとうの意味で「美しい」少女を見ることができたと思う。
[映画館(字幕)] 9点(2005-02-28 14:24:52)(良:2票)
52.  バッファロー'66
都合のいい話と言われたらそれまでなんです。でも、そこがいい。 とことん情けないダメ男ビリー。でもレイラはビリーのダメな部分を知っていてなお、「あなたほど素敵な人はいない」と無条件に愛してくれる。大抵の人はこういう愛情を両親からもらいますが、ビリーにはそれがない。そのままの自分を受けいれてもらったことがないと、普通の自尊心を持つこともできない、心の安定を欠いた人間になってしまいます(単純な言い方ですが)。あれだけ冷たくあしらわれているのに、親の関心を買おうとするところなんかリアルで、すごく痛々しい。 そのビリーに向かって、「あなたは世界一優しい人、世界一ハンサムな人」ってレイラが言うシーン。もちろんそんな訳ないんだけど、それでもあんなふうに言ってくれる。たいしてのめり込んで観ていたわけではなかったのに、そこでポロッと泣いてしまいました。 親との歪んだ関係にとらわれてバカげた罪を犯しそうになったビリーが思いとどまったのも、あの言葉があったからでしょう。ビリーがレイラのような女性に好かれるなんて、ストーリーとしてはご都合主義と思われても仕方がありません。しかし、ビリーのような人にはそんな奇跡的な出会いが必要でした。 これはラブストーリーであると同時に、心に何かが欠けた人間が満たされるまでを描く物語でもあるのです。とても優しく、希望に満ちた映画でした。
9点(2005-02-23 21:17:37)(良:3票)
53.  ツィゴイネルワイゼン
レコードに入り込んだ声。でも、何を言っているかはいまいちわからない……実は、こういう意味のわからないものが一番怖い。助けてという声が入っていたとかなら確かに怖いけど、どこか嘘臭くなるし、なにより恐怖だけで「不安」がない。アメリカのホラー映画の恐怖はショックの要素が強く、日本のホラーはぞっとさせるような戦慄の要素が強い。リンチの映画は戦慄に近いが不条理な作りは「不安」を付けたし、恐怖という感情をさらに複雑なものにしている。清順のそれはさらに乱歩や夢野久作のような日本的な「妖しさ」がある。この、夢を見ているような足元もおぼつかない感じ。生と死、意味と無意味の中間。日常では絶対に感じることのない雰囲気にどっぷり浸かることができる。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-01-27 06:15:08)
54.  ビヨンド・サイレンス
家族というものは不思議なもので、本来はお互いのためを思って、愛し合って成り立つはずなのに、どこかでちょっとした歯車が狂い始めるとそれが逆に憎しみの悪循環になってしまう。「僕の娘だ」「あなたのものじゃないわ」両親が寝室で交わすこの会話がすべてを物語っていた。愛情はいとも簡単に支配欲とすり替わる。これがやっかいなのは、本人はそれがまっとうな愛情だと思い込んでしまうからだ。妻の提言にもかかわらず、夫は間違い続ける。どうしたらこんな状況から抜け出せるのだろう?  それには、シンプルだけど、やっぱりまず相手の話を聞くことだと僕は思う。ララが聾唖学校に行ったとき、実は耳が聴こえなくても音楽を感じることができるのだと気付く。耳で聴くことができなくても、体に響いてくる音。本当はきこえなかったんじゃなくて、きこうとしていなかった。父娘が別の世界にいたように感じていたのも、父が聾だからではなく、娘を理解しようとしてなかったからだ。シャガールも知っていたとおり、「世界は音楽でできている」。父親が娘の音楽を感じようとしたとき、二人は沈黙の世界を出て本来の世界に戻ってきたんだと思う。最後のララの言葉には、思わず泣いてしまった。
[映画館(字幕)] 9点(2005-01-25 12:58:10)
55.  まぼろし
まだ若いのもあって私には大切な人を失った経験がなく、その痛みは想像もつきません。夫の失踪を受け入れられず、幻想で何とかバランスを保つ妻。それでも否応なくつきつけられる現実が幻想を少しずつ打ち壊していきます。そして終盤の彼女が泣いているシーンで、夫の死を受容して終わるのだなと思いきや…あのラスト。いったいどう解釈すればいいのか…幻想に逃げた哀しい結末だったんでしょうか? それにしては圧倒的に美しい光景で、けっして陰鬱なシーンではありませんでした。  ところで、私は『ポネット』のような作品が嫌いです。「お母さんはあたしの心の中で生きている」と言って立ち直るのですが、ずいぶん妙な理屈だし、そもそも喪失の痛みってそんなに生易しいものでしょうか。もしかしたら、一生その痛みが癒えることはないかもしれない。思うに、愛する人を失って生きていけるか?と問われてはっきり答えられる人は少ないでしょう。だからこそ、曖昧なラストでよかったと思います。答えは一人一人の胸の中にしかないからです。それに、彼女が現実を選んだにしろ幻想を選んだにしろ、あそこまで人を愛することができたということ自体、奇跡には変わりありません。どんな解釈をしたとしても、あの海の美しさは誰にも否定できないでしょうから。
9点(2005-01-23 05:20:52)(良:1票)
56.  独立少年合唱団 《ネタバレ》 
「僕でもウィーン少年合唱団には入れるって言ってくれたんだ」「父親は自動車工場で働いてる」「声が、出ない」――嘘に嘘を重ねる康夫。学生運動に刺激を受けた彼が「革命」を応援しようとしたことは、厳しい現実に押しつぶされそうになっている少年の精一杯の抵抗だったんでしょう。一方で、「音楽には意味なんかないんだよ。だから音楽はいいんだよ」、と教師は言います。そうです、意味なんかなくても、音楽はそれ自体が美しい、それ自体が価値を持つものです。 (とんでもないきれいごとを言わせてもらうと)生きることもそれと同じだと思います。道夫の父は死ぬ間際に何も思い出せず、革命を夢見た女性は悲惨な死を遂げ、池で溺れた少年は走馬灯なんて見ない。事故にあった康夫が思い出したのは、同じく死にかけたときの記憶。この作品が描く死は残酷で、生きることの空しさを思い知らせます。でも、それでも、最後の合唱はとても美しく響くんです。たとえ生きることがどんなに過酷だとしても、実はかけがえのない美しい瞬間があって、だからこそ人生はそれ自体が価値を持ちます。 初め学園から逃げた道夫は康夫に止められたけど、事故のシーンでは道夫が康夫を引き止める番でした。「戻れよ、ここもそんなに悪いところじゃない。約束するよ」この映画は、どこかにいる「康夫」に届けるために作られたんじゃないでしょうか。
9点(2005-01-21 01:52:27)(良:1票)
57.  ハピネス(1998) 《ネタバレ》 
登場人物のほとんどが不愉快な人たちなんですけど、実は私が一番嫌悪感を覚えたのは三姉妹の長女でした。冒頭で三女に向かって祝福するようなことをいいながらも、実際には見下し、優越感を抱いている。そして何より性犯罪者の夫が自分の病理に苦しんで「僕を愛してる? 真面目な話なんだ」と何度も彼女に問いかけるシーン。寝ぼけた彼女は鬱陶しそうにあしらうだけ。「僕は病気だ」、罪の意識に苦しんでいる彼に対して「薬を飲めば」。「何があっても、僕を愛してくれるかい?」――返答なし。案の定、夫が捕まるとあっさり捨ててしまいました。もちろん、夫のしたことは到底許せることではありません。でも”ノーマル”な妻が、病理を抱えた人たちに対してはいかに無理解で、残酷に接することか。人の醜い部分からは眼を背け、”アブノーマル”な人たちへの侮蔑の上に成り立つ彼女のごく普通の「幸福」が、いかに虚飾に満ちたものか。  対照的なのはこの映画そのものの視点で、笑いものにしながらも、病んだ人々に対する確かな愛情を感じます。どんなに変な人々にも、幸福を求める権利があるのだと思うことができました。
9点(2005-01-21 00:46:00)
58.  悦楽共犯者
お金もあんまりかかってなくて、台詞もなく淡々と進んでいく。なのに、すっごい面白い。他の方も書いていたが、台詞がないことにしばらく気付かないくらいに引き込まれます。ただただ変態の生活を描くだけで、むちゃくちゃ面白い作品に仕立て上げるだけの想像力がすばらしい。だって変態行為を考えろといわれても、普通こんなん思いつきませんよ?! あまりにも変態すぎてもはや変態の領域を超え、もはや何がなんだかわからない。とくに、鳥男は何をしたかったんだ? 変態もここまでくるとある意味才能です。天才的な変態たちの饗宴に圧倒されました。
[映画館(字幕)] 9点(2005-01-19 19:39:52)
59.  遠い空の向こうに
普遍的、悪く言えばありきたりのテーマなのに、素直に胸に染み入ってくる。我慢してたのに何度も泣いてしまった。独創的なアイディアや巧みな脚本で楽しませる作品もすごいけど、こういうシンプルかつストレートな話で感動させることができるのはもっとすごい。
9点(2004-11-05 01:49:52)
60.  バンド・オブ・ブラザース<TVM>
長時間のドラマ形式なので、多面的な視点から深く掘り下げることができている。単純に反戦を叫ぶのでもなく、一方的にアメリカの正義を歌うのでもなく(ドイツ兵の描き方も冷静)、悲劇もあれば英雄的な出来事もある。そして命を奪われる痛みと命を奪う痛みがあり、戦争で失われるものの大きさと、けっして失われることのない人間の強さがある。たとえ戦争そのものの是非がどうであれ、自らが正しいと信じたもののために戦った一人一人の兵士たちが英雄だったことに違いはない。
[映画館(字幕)] 9点(2004-10-14 23:29:25)
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