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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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41.  砂の器 《ネタバレ》 
鑑賞後に「なぜ和賀は殺人を犯さなくてはいけなかったのか」が腑に落ちなかった。しかし、よくよく考えてみると、和賀の気持ちを推し量ることは相当に難しいのではないかという結論に至った。 過去に対して抗う男の人生の苦闘・苦悩というものは当人ではないと分からないものだ。 劇中でもセリフがあったが、過去を知る男の存在を消したいといった単純な理由ではないだろう。 他人に成りすます、父親に会いたくてもどうしても会えない、そういった長年の苦闘・苦悩の蓄積のようなものがああいう形で爆発してしまったのではないか。 また、和賀の過去を知る男だからこそ、苦闘・苦悩をぶつけることができたのかもしれない。 さらに、父子を会わせようとする事は確かに親切心かもしれないが、当人たちにとっては願っても願ってもどうしてもできないことだったのかもしれない。 それを三木が強制しようとしたために、このような悲劇に繋がったのだろうか。 父親が自分の息子の姿を見ても「こんな人知らない」と答えたことからも、父子の気持ちを知っているのはやはり父子だけだと感じた。 自分が腑に落ちないと感じるのは当然といえるかもしれない。 ただ、これほど重い想いを抱えているとしたら、加藤剛の演技はやや軽い気がする。 全体的に重厚感のある作品には仕上がっているが、多少軽さが目立つような気もする。 あまり重苦しいと商業的に影響が出るのかもしれないが、もう少し重苦しくしてもよかったかもしれない。
[DVD(邦画)] 6点(2010-12-28 23:28:58)
42.  スミス都へ行く 《ネタバレ》 
熱い映画なのかもしれないが、その“熱さ”が現代から見るとやや理想的過ぎるところがある。途中までは「今の政治家に見せたい」と思っていたが、日本の政治家に見せても政治が変わるような効果はないだろう。逆に、気に入らない法案は徹底的に妨害して潰すというような間違った方向に進みかねないので、日本の政治のためには見せない方がよいかもしれない。個人的には、民主主義の理想、言論の自由、政治による正義などはもはや存在しないと諦めているので、本作のような“理想”とのギャップを感じて、楽しめないところがあった。 政治について語ることは非常に難しいが、現代の政治は利害が絡み合っており、それほど単純でもなく、簡単に物事を変えることはできない。政治は腐敗しているというよりも、何かをしようとすると必ずそれに反対する者がいるので、前には進みにくい世の中になっているのが現実だ。 また、アメリカのように個人で活動できる政治スタイルもあるが、日本のような政党政治では個人の政治家の出番が非常に少なく、郵政民営化の際のように自身の考えに反していても党の方針に従わざるを得ないところがあるので、スミスのような政治家は誕生しにくいところもある。党に反すれば、党からの処分を受けて、政治生命を絶たれてしまうだけだ。 さらに、一部の法律を除き、実際に法律を起案しているのは官僚であり、政治家ではない。立法府は官僚が作った法律を認めるかどうかという機関でしかないので、政治家は主役になりにくい状況となっている。政治家自身も法律を提出することはできるが、サンダースの説明のように基本的には議会では相手にされない。 本作においては、テイラーという有力者の個人的利益(土地売買)に繋げるために法律が提出されているが、基本的に政治家は自身の選挙区の利益になる活動をするものであるのであり、ダム建設が選出州の利益に合致し必要不可欠なものであるならば、ペインの活動もそれほど違和感のある行為でもない。違法な妨害をすることは問題だが、巧みな弁舌で相手を黙らせるのは政治家の仕事だ。 このような現実を踏まえると、本作のような熱い理想を受け入れにくいところがある。スミスの行動よりも、むしろ議長が民主主義や中立性を重んじていることが非常に印象的ではあった。ルールに則った反則的な行為に対しても、きちんと向き合う姿勢というものは忘れてはいけないかもしれない。
[DVD(字幕)] 6点(2010-12-28 23:24:52)
43.  かもめ食堂 《ネタバレ》 
テイストはそれほど嫌いではなかった。 女性向け作品と思われるだけに、さすがに大ハマりというテイストではないが、落ち着いた穏やかな時間を堪能できた。 ストーリーはほとんど存在せず、何かに傷ついた人々が、ただコーヒーを飲んだり、おにぎりを食べたりする程度のものである。 その程度でも、それほど飽きることないということは、女優陣の自然体な演技力、監督の技量が高いということだろう。 フィンランドという国が持つ魅力もあるが、ナチュラルな空気感は見事だ。 本作においてはそれほどリアリティを気にする必要はないのではないかと思う。 「どうやって生活しているのか」「就労ビザはあるのか」「日々の余った食材を捨てているのか」などのつまらないことを気にすると面白みを減るので、あまり考えない方がよい。 汚いところも、きついところも、言い争いも全く描かず、「自分らしくしていれば、そのうち上手くいく」という妄想や理想に近いところがあるが、“映画”というものは現実逃避の手段でもある。 厳しく忙しく、常に何かに追われる日常生活を一瞬でも忘れることができる手段として、本作には存在価値がある。 「やりたくないことはやらない」、そのような理想が通じる世の中が良いのか悪いのかは分からないが、こういう作品もたまにはいいものだ。
[DVD(邦画)] 6点(2010-12-28 23:18:32)
44.  ザ・ロード(2009) 《ネタバレ》 
文明崩壊後に、親子が二人で南を目指して彷徨うだけの映画。 悪人から逃れるために隠れて、食べ物や物資を探し求めるだけで目立ったストーリーがないだけに、好き嫌いが分かれそうな作品に仕上がっている。 素晴らしい作品とは思うが、正直言って自分の好みの作品ではなかった。 ただ、本作に描かれているメッセージは深い。 生き残るために他人を襲い、あるいは人間ですら食べるということが当たり前の世界の中で、善という“心の火”を灯し続け、その精神を息子に叩き込もうとする父親の姿が心を打つ。 文明が崩壊して秩序が崩壊して混乱した世界になっても、人々が“心の火”を灯すことで秩序が回復できるのではないかと、かすかな“希望”が感じさせる。 唯一の“希望”が自分達を撃つための銃弾という設定も泣かせる。 平和だった日常生活が随所に回想として挿入されているが、何でもないようなことが実は幸せだったと思わせる。 ラスト間際の父親の幸せそうな夢を見たときに、「悪夢を見る者は生きる希望を失っていないから」という言葉を思い出して、彼の死期を悟ることができるようになっている。 本作中においては、文明が崩壊した理由も明らかもされず、最後に楽園に辿り着くわけでもない。 そういった映画らしい展開を無視する辺りも本作の個性ともいえる。 むしろ、そういったお約束を描かない方が本作にはプラスといえるだろう。 “心の火”を灯した親の子ども達が出会うことが、自分には希望と感じられた。
[映画館(字幕)] 6点(2010-12-28 23:16:56)(良:1票)
45.  シュレック フォーエバー 《ネタバレ》 
3D字幕版を鑑賞。 ラストなので、たまには吹替え版を見てみようかとも思ったが、やっぱり最後まで全部字幕版で統一することとした。 キレがあるアメリカ声優の方が自分には馴染んでいる。 比較はできないが、喋っている人の顔が頭に浮かばない方がいいかもしれない。 それほど高い評価にはしていないが、最終作としては悪くはない締め方をしたように感じられた。 何かを失って、初めて気付く大切な存在。 愛する人、相手をするのは大変な愛する子ども達、賑やかで騒々しい友達。 彼らと接することにより、何かを失うのかもしれないが、かけがえのない何かを得るということだろうか。 それは平凡でつまらないことなのかもしれないが、大人になるということはこういうことなのかもしれない。 周囲に対して壁を作り、人々から怖れられる“怪物”だったシュレックが、いつの間にか人々から愛される“家族のような存在”になっていったというのも、よくよく考えると面白い。 救われたのはフィオナではなくて、シュレックの方だったという言葉は観た者の心に刻まれるのではないか。 今回のリアルな世界にはアドベンチャーも何もなかったが、潔く清々しい幕切れとなった。 ドンキーももう一つの世界で家族を持てることを非常に喜んでいたのも印象に残っている。 また、シュレック、フィオナ、ドンキー、長靴ネコという個性的な各キャラクターが長年のシリーズを通して、一種のファミリーとして形成されたことも、このようなテーマを語ることができた要因といえるだろう。 爆笑できるようなシーンはあまりないが、随所に挿入されるミュージックのチョイスも悪くはなかった。
[映画館(字幕)] 6点(2010-12-27 22:50:28)(良:1票)
46.  バーレスク 《ネタバレ》 
アギレラの魅力は存分に発揮されており、彼女のファンならば十分に楽しめるだろう。 歌とダンスに主眼が置かれており、それを堪能する目的は果たせるはずだ。 アギレラだけではなくて、アカデミー賞女優のシェールがさすがの貫禄をみせており、彼女の出演が本作には欠かすことができないものとなっている。 悪役を含めても比較的善意あるキャラクターが多く、重苦しさやドロドロしたものなどは存在しない。 アギレラの魅力を最大限に伝えるために、アイドル映画のようなアプローチ自体は間違いではないと思うが、これが正解だとも思えない仕上りにはなっている。 この映画に関してはストーリーを気にする必要がなく、ストーリーに文句を付けるのはお門違いということは十分分かっているが、いくらなんでも浅すぎはしないか。 身内もおらず天涯孤独の身であり、苦労を重ねてきたという設定ではあるが、本作では能天気で苦労知らずのわがままな女性とも映ってしまった。 なんらの挫折も苦悩もなく、好意を寄せる二人の男性を手玉に取った小悪魔的な存在ともいえる。 本作に決定的に欠けていることは“挫折”だろう。 とんとん拍子で成功していくだけでは“深み”がない。 “夢”には成功と挫折が付き物ではないか。 田舎から出てきた娘が大した苦労も苦悩もなく夢と男をゲットする、そのような映画に深みがあるはずはない。 夢を掴むために、苦悩を乗り越えるパワーをもっと感じたかったところ。 ストーリーが十分なものではないと、せっかくの歌のシーンも単なるミュージックビデオのようなものにもなってしまう。 ストーリーや自己の心情などと掛け合わすことによって、足し算ではなくて掛け算的な効果が生じるが、本作にはあまりそのような効果はなかった気がする。 シェールの貫禄を除けば、ぞくぞくする様な感覚にはなれなかった。 また、窮地を救った最後のオチはちょっと意外なものであり、アレはアレでも面白いが、プロフェッショナルならば、自分の技能で師匠に“恩返し”するべきではないか。 歌やダンスに主眼が置かれた作品なのに、最後はそれとは関係のない方法で物事を解決してしまうというのは、いかがなものか。 師匠から何かを学び、その師匠を超えていくような“ミラクル”を起こしてこそ、映画の醍醐味といえる。 他のミュージカル作品に比べると、やや物足りなさを覚えたので、評価は低めとしたい。
[映画館(字幕)] 5点(2010-12-24 00:24:15)(良:2票)
47.  ロビン・フッド(2010) 《ネタバレ》 
「ロビン・フッド」映画は多数製作されているが、有名なケヴィン・コスナー版も含めて鑑賞した記憶が残っていない。他の作品と比較することはできない点は良かったのか悪かったのかは分からないが、本作は素晴らしい作品と感じられた。 ストーリーに関していえば、サプライズ的な面白みはそれほどないといっていいだろう。浅はかなイギリス王を利用するフランス寄りの悪者を倒すだけというシンプルなものとなっている。 本作は、ストーリーで観客を魅了するというよりも、“完成度の高さ”で観客を魅了している。細かい部分まで驚くほどしっかりと作り込まれている。ここまで高い仕上りは、リドリー・スコット監督の“匠の業”といえようか。奇をてらうことはなく、シンプルでありながら、妥協を許さない姿勢が現れており、無理なく流れていく展開に安心して身を委ねることができる作品だ。 ストーリーに関して、面白みはないといったが、根幹部分についてはもちろんしっかりとしている。ロビン・フッドと呼ばれた男の“成長”“自己発見”のようなものが感じられる。自分が何者であるか分からなかった男が、ある貴族の偽の息子となり、貴族の息子として振舞いながら、自分のルーツを探っていき、自己のアイデンティティを確立していく。自分が何者であり、何をなすべきかを明白にした後に、“伝説”へと昇華していっている。“伝説”といっても、神話的なものや英雄的なものではなくて、何かに縛られるのではなくて森の中で“自由”に生きる一人の男、家族をもつ平凡な男のような形で締めくくっている点が素晴らしい。本作のテーマである「羊が獅子になる」という過程をリドリー・スコットならではの視点で見事に描き切っている。我々は決して英雄にはなれないが、誰しもが獅子にはなれるということを伝えているような気がした。 “弓の名手”という設定ながら、あえてそれを封印しているところにもリドリー・スコットのこだわりが感じられる。驚異的な能力を持つ英雄が活躍する映画ならば、資金さえあれば誰でも撮れるかもしれないが、英雄が英雄らしく活躍しない映画はこのコンビにしか撮れないかもしれない。 また、短い出番ながらも、ほぼ全てのキャラクターの個性や心情が感じられる仕上りとなっている。喜怒哀楽やユニークさを用いることにより、それぞれのキャラクターが生きており、これもリドリー・スコットの上手さといえるだろう。
[映画館(字幕)] 8点(2010-12-13 23:56:21)
48.  エクスペリメント(2010) 《ネタバレ》 
「es」は見たことはあるが、面白かった以外あまり記憶には残っておらず、この実験に対して思い入れはない。本作にもそれほど興味はなかったが、『人間の本質』のような“狂気”がみられるかもという期待があり、鑑賞することととした。もちろんアカデミー俳優の共演ということも大きい。 確かに衝撃的な内容は描かれているものの、全体的には物足りない仕上りとなっている。表層的な部分(暴力的・肉体的)で満足してしまい、深層的な部分(心理面・精神面)に対する圧迫というものがそれほど感じられない。過剰な騒ぎが巻き起こされているため、リアリティもなくなっており、ハリウッド映画らしい大げさなものとなっている。正常な人間が狂っていく様、理性が崩壊していく様、正常な人間が虐げられて屈服していく様など、本作でも描かれているが、これでは十分とは言い難い。 どこか単純化されすぎており、人間らしい複雑さが足りないのではないか。 本作は正常の人間ではなくて、もともと異常があった者の集まりになっている。 また、多くの囚人、多くの看守役がいたにも関わらず、目立った者はそれほど多くない点も面白くない。もっと個性的なキャラクターがいないと盛り上がるものも盛り上がらない。ウィテカーは狂った人間を熱演していたが、まだまだ物足りない。ブロディも頑張っていたが、この仕上りでは“ヤラレ損”ではないか。 ハリウッド映画はやはりヌルいのかもしれない。 ラストの展開も全てを物語っている。 殺し合いをやっていたはずなのに、シャッターが開いたら、全てお仕舞い。スーツなどに着替えて、金を貰って皆で同じバスに乗って普通にご帰還というわけにはいかないのではないか。人が死んでいるということを分かっているのだろうか。 予定通りにインドに行って、恋人と抱き合ってエンディングなど、ヌルいと言わざるを得ない。もし精神的に追い詰められたら、インドに行く余裕もなければ、恋人と向き合う余裕もなくなるだろう。 一番怖いのは、看守側でも囚人側でもなくて、この実験を止めようとしなかった主催者側ということだろうか。『暴力行為があったら即終了』というルールを無視して、人間が狂っていく様を楽しんでいたとも取れるようにはなっている。 監視カメラを多用して、その辺りをアピールしているようにも思えるが、主催者側の心理面に対して、観客が深く感じ取れないのはもったいないところだ。
[映画館(字幕)] 4点(2010-12-12 23:16:16)
49.  GAMER ゲーマー 《ネタバレ》 
予告編に斬新さを感じたので、鑑賞してみたが、このゲームはいわゆるクソゲーという奴ではないか。 ルールも設定も不明瞭なゲームにつき合わされるほど、つまらないものはない。 銃弾を避けながら、銃をぶっ放してセーブポイントに向かい、そのキャラクターをどこかにいるプレイヤーが操作するというゲームだが、ゲーム自体には盛り上がるようなものが全くない。 そもそも全体的に何かが足りないと思われる。 ユニークな世界観ではあるが、世界観が十分練り上げられていないということが最大の問題か。 一生懸命に考えても矛盾だらけになりそうなので、あえてマジメに作り込んでいないのかもしれない。 本作には中身がほとんどないので、個別具体的なことを論じても意味はないと思われるので、それは避けたい。 映像はなかなか凝ったところもあるが、どこかで見たことがあるものばかり(確信的に「ブレードランナー」を意識しているところはある)。 設定やストーリーも陳腐で使いまわされたものばかり。 なんだかんだで最後は娘を取り返すというありきたりな落としどころとなっている。 映像はユニークなところがあるので、これがミュージックビデオならば評価できても、映画としては高い評価をするのは難しい。 しかし、ときたまクレイジーさやエログロさが良い感じまで振り切れたシーンがあるので、捨て切れないところはある。 ゲロなどで車を走らせる辺りや、いきなり踊り出すところなど、見所はあるので、もうちょっと愛すべきクソゲーになって欲しかったところだ。
[映画館(字幕)] 5点(2010-12-07 22:53:03)
50.  [リミット] 《ネタバレ》 
「これは凄い」と唸らされるほど秀逸なアイディアに満ち溢れた作品ではないが、このシチュエーションだけで90分をもたせているのはやはり評価したいところ。 イラク、携帯電話、棺桶というキーワードだけで映画をきちんと製作している。 携帯での会話だけであり、映像こそないが、アメリカ政府、彼を雇っている企業、テロリスト、彼の家族や友人などの様子を色々と想像できるということも楽しいと感じさせる。 ただ、狭い空間のみの90分間だけでは、やや飽きてくるのも事実。 なんとか飽きさせないために、ヘビや指切りなどのアイディアを盛り込んでいるが、そのようなことよりも別のアイディアももうちょっと欲しかったところ。 個人的には、アメリカ政府及び利益優先主義の企業への強烈な皮肉が込められている点が非常に面白いと感じられた。 犯人に直接殺されるのではなくて、アメリカ政府の空爆の結果という点が非常に面白い。 犯人に対して身代金を払わずに見殺しにしたアメリカ政府に、間接的にも直接的にも殺されている。 電話でも散々たらい回しにされた挙句に、最終的には人違い、過去に救ったと語った者ですら救えていなかったということがアメリカ政府への皮肉以外の何物でもない。 空爆で殺したのではないかと思われた犯人ですら実は殺していない。 テロリストが彼の家族を脅迫することに違和感があったが、アメリカ人はイラクのことを全然分からないのに、テロリストはアメリカのことを知っているという解釈もできそうだ。 また、何らかの仕掛けが本作で語られていたかもしれないが、会社があの携帯に電話を掛けてくるところが良いアイディアだと思った。 個人的な解釈(思い込み)ではあるが、アメリカ政府、CIA、FBIがクローン電話などの理由により、電話番号を特定できなかったのに、企業が利益を優先するだけのためにあらゆる手段を使ってあの携帯電話番号を入手したとすれば、強烈な皮肉になっている。 彼を助けるために奔走するのではなくて、企業には一切の責任がないということを確認するだけのものであれば、皮肉以外の何物でもないだろう。 エンディングの明るい調子の音楽ももちろんバッドエンディングに対する皮肉ではないだろうか。
[映画館(字幕)] 6点(2010-11-25 23:32:43)
51.  クロッシング(2009) 《ネタバレ》 
撮影方法に関しては凝っているようであり、それを注視していれば楽しめるかもしれない。 高架線を走る鉄道を映しながら、徐々に視点が下へと下がっていくシーンを観るだけでも面白い。 長回しや鏡といったアイテムを利用したり、静から動への移行など、緊張感・緊迫感が高まるようになっている。 アントワン・フークアらしい本格志向のリアルな作品には仕上がっていると思われる。 主演の3人の演技も素晴らしく、フークアのイメージ通りのリアルな演技を繰り広げている。 イーサン・ホークのかなり切羽詰った演技、リチャード・ギアのかなり情けない演技、ドン・チードルのかなり苛立っている演技、それぞれの演技は観客に対して訴えてくるものがあるだろう。 しかし、本作が言わんとしていることに関しては、自分には難しすぎたのかもしれない。 ストーリー自体には難解さは存在しないが、結局のところ何を言いたいのかがよく分からなかった。 家族を守るため、人生を取り返すために必死になった男たちは悲惨な末路を辿り、人生に絶望し諦めた男は何も望みどおりにならないというような“人生の無常”を説いたようなものかもしれないが、初見ではピンとは来ない流れ。 人生が思い通りにならない男たちがもがいて、あがいて、苦しんでも、人生は変わらないということだろうか。 「チャイナタウン」のような仕上りをアントワン・フークアは求めたのだろうか。 「犯人は誰か」「事件の顛末は何か」「出会うはずのない3人が出会うときに何かが起きる」といったような単純なハリウッド映画とは異なる仕上りとはいえ、もう少しだけ心に訴えてくる分かりやすいものが欲しかったところ。 冒頭の会話に「より善か、より悪か」「間違えた方法で正しいことをする」といったヒントが隠されていたが、これらのキーワード通りに進んだようにも思えない。 「トレーニングデイ」や「ティアーズ・オブ・ザ・サン」を見る限りでは、アントワン・フークアらしい結末ともいえるが、上手く“オチ”ていない気がした。 リチャード・ギアが呆然としながら歩んでいくラストは悪くはないが、あのシーンの意味を深く噛み締められる者は少ないのではないか。 “傑作”になり得る素材ではあるが、微妙に何かが噛み合わなかったか。 ただ、高い仕上がりになっているので、再見すれば評価は変わるかもしれない。
[映画館(字幕)] 6点(2010-11-24 23:36:15)
52.  マチェーテ 《ネタバレ》 
ロドリゲスやタランティーノの信者でもなく、正直言うと「グラインドハウス」にもそれほど乗り切れていなかったので、自分が観て楽しめるのか、そもそも自分に観る資格があるのかなど、鑑賞前には不安はあったが、そんな不安は杞憂だった。 冒頭、敵のアジトに突入する際に、隣にいた相棒が1秒程度で死んだシーンをみて、『あぁ、この映画俺の好みかも』と感じさせてくれた。アジトに突入して次々に敵の頭が吹っ飛ぶシーンをみて、『これは楽しめそうだな』とほぼ確信に変わった。さらに裸の女性で出てきたシーンをみて、『…』。 R18指定作品となっており、暴力的な映画とも思われるが、グロさもエロさもほどよい仕上りとなっており、嫌悪感なく楽しめる作品になっている。 多数の出演者も自分の役柄を理解して、ノリ良く演じている。中でも、デ・ニーロもノリ良く演じており、タクシーを強奪して乗り込んだときには何故か笑えてくる。ローハンも自己が置かれている立場を逆に利用して、あらゆる面でナチュラルな演技をみせており、出番は多くないものの我々を驚かせてくれる。 ラストの展開がかなりグダグダしている部分もみられるが、これもB級映画っぽいテイストを狙っているのだろうか。ロドリゲス監督がそこまで計算して製作しているとも思えないが、見ようによっては、このグダグダなラストは本作とマッチしているかもしれない。 また、スティーヴン・セガールがラストでは乗り切れていないと思ったが、彼の三文芝居も同様に本作には合っているのかもしれない。 好意的に解釈すると、素晴らしいクライマックスや、ラスボスとの壮絶なバトルや、感動的な盛り上がりを用意するような映画ではないということか。 そのような凝ったことをしなくても、次回の予告画面だけ見せてくれれば、それだけで盛り上がれる。 ストーリーに関しても、くだらない復讐劇が繰り広げられていると思いきや、アメリカでのヒスパニック系問題や、メキシコからの不法入国、麻薬問題など、リアルな問題を放り込んでおり、決してバカには出来ないストーリーに仕上がっている。 詳しくは分からないが、アメリカ国内を占めるヒスパニック系の割合は相当なものとなっており、彼らの影響力の高さは重要視されているところである。 グロさやバカっぽさ前面に出して押し切るのではなくて、それらを含んだバランス良い仕上りとなっていることは評価できる点だ。
[映画館(字幕)] 7点(2010-11-11 23:42:21)(良:3票)
53.  ソウ ザ・ファイナル 3D 《ネタバレ》 
なかなか芸術的な殺戮ショウが繰り広げられており、その点だけは感心できる。冒頭の三角関係、自動車工場での4人同時処刑、変型タイプの処刑道具など、単なるグロさだけではなく、殺し方に関しては相当にアイディアを搾っているようだ。 ただ、メインの詐欺者のゲームも含めて、メインストーリーとはやや離れたものであり、殺し方にアイディアを搾っても映画としてはあまり評価しにくい。もっとも、ホフマンとしては遺体すり替えという目的があったが、警官が多数いる中で、爆発の目くらましだけで、一人ですり替えができるとも思えず、驚きのアイディアというよりもやや呆れたアイディアともいえる。 ジグソウが亡くなったこともあり、もはや“ゲーム”や“哲学”など一切吹き飛んでしまっており、無差別テロにも近い仕上がりとなっている。ホフマン刑事のポリシーが「撃たれる前に早く撃て」というようなものなので仕方がないが、当初の「SAW」シリーズとはだいぶかけ離れてきていることは残念だ。過去にもショットガントラップは確かに存在したが、自動マシンガンで皆殺しするようになったら、芸術的な罠というよりも興ざめしてこないだろうか。 悪くはない点としては、詐欺師の口を借りて、ゴードンが生まれ変わったことを正当化する手法辺りだろうか。ジグソウのゲームをクリアし、人生が変わったことで新たな正統な後継者が登場するということは理解できる仕組みとなっている。 しかし、手法に関して面白みがなかったことが残念だ。ただ、ホフマンを拉致して幽閉する程度では面白みがない。実は、ゴードンが仕掛けた壮大なゲームの中にホフマン自身が既に組み込まれていたといったようなアイディアが欲しいところだが、尺の関係やアイディア不足ということもあるのだろう。ホフマン自身はまだ生存しているので、これから彼らのゲームが始まるということも考えられるので、この点に関しては今後のお楽しみというところか。 誰が最後のゲームオーバーを言うかという最大の関心事についても、ゲーム事態がほぼ存在していないので、心にはあまり響かない。ホフマンVSジル、ホフマンVSギブソン、ホフマンVSゴードンなどの盛り上がるゲームを構築して欲しかったところだが、現在のスタッフでも厳しいのか。鉄格子の中に隠れて逃げている相手をただ捕まえて殺すといったゲームともいえないものは、見ていても面白くもなんともない。
[映画館(字幕)] 6点(2010-11-04 23:26:00)(良:1票)
54.  怪盗グルーの月泥棒 《ネタバレ》 
3D字幕版を鑑賞。 子ども達は可愛く、ミニオンというキャラクターも非常にユニークに描かれている。 主人公のグルーとライバルのベクターも個性的に描けており、ファミリー層や女性には受けが良さそうな作品に仕上がっている。 ただ、自分はキャラがユニークで可愛いだけでは物足りず、映画としては満足することはできなかった。 ミニオンが色々と遊んでいるシーンは微笑ましいが、さすがにそれだけで喜べる年齢でもない。 アイテムの争奪戦や特殊な兵器などが登場するが、ワクワクするような感覚になれない点は残念。 周囲と壁を作っている孤独のグルーと自分自身を重ね合わせることができるにも関わらず、この映画を見ても“何か”を感じ取ることはできなかった。 一応感動させるようなストーリーになっているが、ありがちな展開が繰り広げられており、グルーと子ども達の関係もそれほど煮詰まっているような感じはせず、感動するほどでもない。 子ども達との関係だけではなくて、月泥棒(それに至る経緯を含めて)やライバルとのバトル、母親との関係など、全体的にやや浅い仕上りとなっている。 そのバランスの良い浅さがアメリカでは受けたのかもしれないが、自分には普通の3Dアニメとしか感じなかった。 目玉ともいえるジェットコースターのシーンはさすがに体験したことのないような素晴らしい疾走感を堪能できるが、それだけでは評価はしにくい。 字幕版絶対信者ではなくて、吹替え版でも別に問題なかったが、自分が鑑賞した回がたまたま字幕版だった。 鶴瓶師匠の方のデキは分からないが、スティーヴ・カレルのノリがかなり良かったので、字幕版の方が正解かもしれない。 3Dでの字幕に関しては、特に問題はなかった。
[映画館(字幕)] 5点(2010-11-03 12:33:50)
55.  アイルトン・セナ ~音速の彼方へ 《ネタバレ》 
FIの中継があっても今までほとんど見たことはない。セナ・プロスト時代、シューマッハ全盛時代には見向きもしなかったが、中嶋やカムイの影響もあってか、最近は結果を軽くチェックするというレベルになっている。アイルトン・セナについてはある程度の知識はあったが、それほど深い思い入れはなかった。しかしながら、あまり知らないからこそ、伝説的なドライバーである彼のことをもっと知りたいという思いがあったので鑑賞することとした。 鑑賞してみて良かったと純粋に思える作品だ。ドキュメンタリー作品としてはかなり素晴らしいデキとなっており、セナに対する“思い”や“魂”が込められている。本作からは一瞬も目を離せないほど“濃厚”な作品に仕上がっているだけではなくて、非常に分かりやすい。FIにそれほど興味がない自分でも面白いのだから、マニアにとっては相当のものだろう。 アイルトン・セナをただ単に美化して賞賛するのではなくて、栄光と挫折、チャンピオンへの重圧と苦悩、ブラジル国民からの期待そして孤独を描き切り、彼の人生を浮き彫りにしている。栄光というよりも苦悩の日々が多かったような作りとなっている。人間業とは思えない華麗かつ自信満々の走りで光り輝いていた80年代とは変わり、34歳とは思えない疲れ切ったサンマリノでの表情が、本作を観た者の心に刻まれるだろう。本作で締めくくられた彼の最後の言葉からもよく分かるようになっている。政治も金も関係なく、純粋にレースを楽しんでいたカート時代を懐かしんでいるセリフが印象的だ。 FIの表と裏もきっちりと描かれており、FIをよく知らない自分としてはFIに対する見方も変わった。華やかにみえるレースもドロドロとした政治やビジネスの世界にまみれており、セナというブラジル人は格好の標的となっている。最近も分裂騒動が起こっていたので、政治的な世界であることは分かっていた事だが、改めて映像で見ると、それに巻き込まれる彼の苛立ちがよく分かる。“走り”で周囲を黙らせることもできたが、それだけではカバーできない時代に突入していくことも悲劇的だ。 また、最大のライバルであるプロストにも焦点があてられている。 お互いにぶん殴りたいような相手ではあるが、チャンピオンとしてお互いの気持ちも理解できる理解者でもあったのだろうか。複雑な気持ちではあるとは思うが、彼を失って悲しむ気持ちに偽りはないだろう。
[映画館(字幕)] 8点(2010-10-30 17:50:25)(良:1票)
56.  エクスペンダブルズ 《ネタバレ》 
スタローンに関しては“不屈”のスターというような好意的なイメージをもっているが、それほど深い思い入れはないというところ。「ランボー」の最新作に関しては純粋に面白い作品と感じたが、本作に関してはあまりハマれなかった。描かれていることについては、それほど多くの差異はないとは思うのだが、何が違うのだろうか。 本作は“過去のスター”を揃えることが目的のようになってしまったためか、全体的なバランス感覚を失しているような気がする。年齢を感じさせない彼らが活躍する姿や、スタローン、ウィリス、シュワが同じフレームに収まるのを見られたことは嬉しいが、集めただけで活かしきれていないのはもったいない。また、他の出演者を優先させるためか、それとも均等に活躍の場を与えるためか、スタローン自体も一歩退いているので、輝いている演者がイマイチ見当たらない(輝くような撮り方ができていないということもある)。この辺りが「ランボー」シリーズとは異なるところだろうか。スタローンが先頭切って、もっと派手に暴れて欲しかった。リアリティなど誰も気にしないのだから、誰も手を付けられない“超人集団”でもよかったと思う。序盤の船舶のシーンや、中盤の飛行機による乱射などのムチャなシーンも見られたが、肝心の終盤がイマイチでは盛り上がらない。終盤がイマイチというよりも、単調な作りなので飽きるといった方がよいかもしれない。 基本的に、チームがバラバラな点に関しても、面白ければそれでもよいが、「特攻野郎Aチーム」のような絶妙なまとまりも無ければ、「ナイト&デイ」のようなスター×スターという構図ではなくて、ただの足し算的な描き方(足せてもいないか)では面白くない。 テーマ的には、敵を殺すことはできても、女を救うことができなくては“男”とはいえないということだろうか。 ミッキー・ロークの訳の分からない涙ながらのエピソードや、ステイサムの女を巡るエピソードを含めると、だいたいそのようなイメージを持つ。 ただ、逃げられるのにみすみす捕まった相手では同情しようもなく、「男の美学」「男の哲学」のような心に訴えるものではなかった。 スタローンの脚本であり、全体的にツメがやや甘すぎたか。ツメが甘いというよりも、振り返るとストーリーがよく分からない。本作についてはストーリーはどうでもよいのだが、釈然としない流れでは肝心のアクションにも乗れない。
[映画館(字幕)] 5点(2010-10-18 23:31:47)(良:1票)
57.  ガフールの伝説 《ネタバレ》 
3D吹替え版を鑑賞。本作の見所の一つである映像の美しさはやはり段違いの素晴らしさであり、お腹いっぱいに堪能できる。フクロウの羽毛の柔らかさだけではなくて、埃の舞う様子、水滴の粒や空気の流れ、炎の燃え盛る様など、リアルの現実でもなく、既存の映画とも異なる新たな体験をすることもできるだろう。壮絶なバトルシーンについても、スローモーションなどを多用したり、工夫されており、見所は十分ではあるが、さすがにフクロウということもあり、複雑な動きを描くことは難しいようだ。 ただ、あまりにもリアルに描きすぎているので、フクロウの各キャラクターが全く可愛く見えない。小さいフクロウなどは可愛く見えることもあるが、ファミリー向けアニメ作品としてはこの点はやや致命的かもしれない。 映像の美しさは保証モノではあるが、ストーリーについては正直言って子供騙しレベルといえる。映像の素晴らしさとストーリーの不味さの“バランス”があまりにも悪すぎた。一方がいくら素晴らしくても、他方がダメならば、映画全体の評価が低くなってしまった。ストーリーは「スター・ウォーズ」をベースにして、最後に「ロード・オブ・ザ・リング」を加えましたというような仕上りとなっている。 本作で多用されている『左脳に従え』というフレーズがどうしても『フォースに従え』としか聞こえない。主人公のソーレン=ルーク、ジルフィー=レイア、クラッド=ダース・ベイダー、ライズ=ヨーダ、トワイライトとディガー=R2D2、C3PO、メタルビーク=パルパティーン、こうもり=クローン軍団のようにしか映らなかった。 善と悪の戦いを描くファンタジー映画は、基本的にはどの作品も似たような構図にはなるが、本作はあまりにもオリジナルティがなさすぎる。 どこかで見たことのあるストーリーに加えて、「月光麻痺」「フクロウの左脳に影響を及ぼす鉱石」「飛べないフクロウが数分のトレーニングで一瞬にして飛べるようになる」など、観客を無視してすっ飛ばすようなところも見られるのも問題。 原作がある作品であり、難しいかもしれないが、思い切って子ども向きのファンタジーではなくて、大人が楽しめるように、ストーリーをダーク化すれば、もうちょっと評価される作品になったかもしれない。 大人の事情ということもあるとは思うが、これでは中途半端にしか感じられない。
[映画館(吹替)] 6点(2010-10-17 14:19:16)(良:1票)
58.  シングルマン 《ネタバレ》 
デザイナーのトム・フォードのことはそれほど好きではなかったが、本作のデキは素晴らしいと言わざるを得ない。全体的に高い“美意識”に支えられており、彼が描こうとしたヴィジョンも明確であり、才能の高さをひけらかす様な嫌らしさも微塵も感じさせない。単なる道楽ではなくて、彼がGUCCI、イヴ・サンローランを捨ててまで、映画の監督にこだわった理由というものがきちんと見えた気がした。 最愛の恋人を亡くし、自殺を決意した男の、いつもと変わらないようで何かが変わっている一日を通して、彼の『過去』『現在』『未来』を浮き彫りにしている。 『人生』『孤独』『恐怖』『希望』といった哲学的な要素を交えながら、前向きに生きることができるような一筋のまばゆい光が感じられる。 どんよりとした曇り空が晴れるような感覚、海の中で呼吸ができないでもがいている中で陸地に辿り着いたような感覚を味わえる。 ラストの展開は結果的には同じかもしれないが、明確な違いを打ち出している。 大切なことは“結果”ではなくて、“気持ち”の問題であろう。 孤独から逃げた果てではなくて、最愛の恋人に迎えられるというハッピーエンドと捉えることもできる。 彼の専門分野のファッションについてももちろん輝いている。 しかも、映画の本質とは無関係に輝いているのではなくて、映画を盛り立てるための道具としてしっかりと輝いている点が素晴らしい。 登場人物のキャラクターの性格や生き様をファッションなどのライフスタイルという形を通して代弁しており、デザイナーならではの感性が活かされている。 『ウィンザーノットで』と指示を書き加えるシーンには、主人公がイギリス人であるという誇りが込められているだろう。 また、トム・フォード自身ゲイであることは有名であり、本作もゲイを扱った映画である。ゲイに対する差別や偏見などを直接描いた部分がないにも関わらず、ゲイに対する差別や偏見なども本作を見ることで緩和していくような気がした。 彼らも我々と何一つ変わることのない普通の人間であり、普通に誰かを愛する人間であるということが描かれている。 声高々にストレートに主張してうっとうしいと思わせることなく、自分のメッセージを相手の心に伝えているということも評価できる部分だ。 男同士のラブシーンもあるが、嫌らしさなどは全くなく、トム・フォードのセンスの高さが垣間見られる。
[映画館(字幕)] 8点(2010-10-14 23:17:29)
59.  ナイト&デイ 《ネタバレ》 
鑑賞後は『楽しかったな』程度の感想しか抱かない深みのない作品ではあるが、本作のような何も考えずに気軽に見られるアクション作品もアリだと思う。 トム・クルーズのカッコ良さや、キャメロン・ディアスのキュートさが前面に押し出されており、それらを十分に堪能することができるという点は評価したいところ。 トム・クルーズ+キャメロン・ディアスという図式よりも、トム・クルーズ×キャメロン・ディアスという図式となっており、単純な足し算ではなくて、掛け合わさってお互いがお互いの魅力を引き上げている最高のコンビに仕上がっている。 このコンビならば、大して意味がなく全世界を駆け回っても、何でも許してしまえるほどだ。 また、「ミッション・インポッシブル」のような本格的なスパイアクションモノと、「オースティン・パワーズ」のようなスパイコメディモノの間を取ったようなバランス感覚も悪くはない。80年代の007シリーズを見ているような、いい意味でのユルさは逆に新鮮にも映る。 銃弾を浴びせられている最中にキスをするというようなあり得ない展開を、もっと要所要所に入れ込んでも良かったかもしれない。 ラストの展開もユニークであり、いい意味での裏切りを味わうことができる。 あの展開がなかったらもっと評価が下がったかもしれない。 全てが前フリのように使われており、『なかなかやるな』と後味の良い楽しい気持ちにさせてくれる。 傑作という評価はしにくいが、全体的にクールさやセンスの良さが目立つ作品に仕上がっている点も評価できる。 住む世界が違う二人ではあるが、相手に気付かれないように気遣うトム・クルーズのクールなカッコ良さ・スマートさと、キャメロン・ディアスのポジティブさが、二人を変えていったという面白さも本作にはある。 トム・クルーズとキャメロン・ディアスの絶妙なコンビに対して焦点を当てており、FBIのような組織やスペインの犯罪組織は基本的にはオマケという構造となっている。 二人の最高のコンビネーションを堪能できたので、その方針自体は間違っていないが、FBIのような組織やスペインの組織にも、きちんと焦点を当てていたら、もっとスリリングな作品に仕上がったかもしれない。 難しい判断ではあるが、完全に置き去りにはしなくてもよいのではないか。
[映画館(字幕)] 7点(2010-10-12 21:38:13)(良:2票)
60.  瞳の奥の秘密 《ネタバレ》 
アカデミー賞外国語賞を受賞している世界的に評価されている作品。 一切飽きることはなく、興味深くストーリーを追うこともできる。 時代背景が必要なところもあるが、さほど難解さもなく、ストーリーは大体理解できたと思う。 しかし、受け手側である自分の人生経験不足ということもあり、個人的には世間的に絶賛されているほどハマることはできなかった。 自分は、まだまだ過去や思い出に生きるほどの熟した年齢ではないということか。 劇中においては、瞳の奥に刻まれた過去や思い出に囚われて生きる男の悲哀や空虚さのようなものが感じられる。 妻を殺された男性、その事件(もちろん事件だけではない)を忘れられない男性という二人の男性が印象的に描かれている。 彼らは“a”が打てないタイプライターのようなものかもしれない。 重要な部分のどこかが壊れている。 過去から一歩抜け出せれば、『怖い』→『愛している』のように何かが劇的に変われるのだろうか。 しかし、過去をどんなに忘れたくても、過去からどんなに抜け出したくても、簡単に抜け出せるほど、単純ではないということもしっかりと描かれているような気がした。 妻を殺された男性の場合には、『愛している』→『怖い』へと変わってしまったのだろう。 この事件によって、彼は“a”を打てなくなってしまったようだ。 冒頭の駅における別れのようなシーンが観客の瞳にも刻まれていくような仕掛けも見事である。 この印象的に描かれたシーンがどのように結び付いていくのかと、観客は考えざるを得ないだろう。 それぞれのキャラクターの瞳の輝きや微妙な表情など、セリフで描かれていない部分なども多く、それらも評価されたのだろう。 また、サッカー競技場における撮影方法についても見所があった。 上空のヘリコプターから撮影しているのだろうと単純に思っていたら、徐々にズームしていき、いつのまにか雑踏の中に視点が移っている。 「今のどうやって撮影したのだろう。どこかで切り替えたとは思うが、初見では分からないな」などと撮影技術などについても感心させられる。
[映画館(字幕)] 7点(2010-10-12 21:34:12)(良:2票)
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