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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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1.  世界最速のインディアン 《ネタバレ》 
 印象深いのは、レース前に主人公が薬を二錠受け取って「俺が一錠、こいつに一錠」と愛車の燃料タンクに薬を放り込む場面。  ちょっとした冗談のつもりなのかも知れませんが、それ以上に、主人公がバイクを独立した人格、本当の意味での相棒として扱っている事が窺えました。   バイク乗りは孤独なんて言葉もありますが、この映画の主人公に限っては、そうではない。  様々な人に優しくされ、その結果として夢を叶える事が出来た姿は、たった一人で夢を実現させた姿よりも、眩しく感じられるものがあったと思います。   老いだの若さだのといった線引きを超越して、観る者に純粋な感動を与えてくれる名作ですね。
[DVD(字幕)] 10点(2016-04-03 06:28:07)(良:3票)
2.  映画ドラえもん のび太の恐竜2006 《ネタバレ》 
 のび太がピー助に約束してみせた「僕も頑張る」という言葉。  その約束が守られた事を、この映画から十年後の僕達は知っている。
[DVD(邦画)] 10点(2016-04-01 18:28:29)(良:1票)
3.  50回目のファースト・キス(2004) 《ネタバレ》 
 何が凄いって、ヒロインの記憶障害が治らないままハッピーエンドを迎えるのが凄い。  ファンタジーな設定ではありますが、一応は「難病もの」に分類される内容だったし、これは「無事に病気が治って二人が結ばれる」「病気が治らず、別れる」のどちらかだろうと予想していた身としては、完全に意表を突かれましたね。   こういう「病気は治らなかったけど、二人で頑張って生きていこう」なレアパターンエンドだと(でもさぁ……結局、その後が大変で別れちゃうんじゃない?)なんて疑念が浮かび、素直に楽しめなかったりもするんですが、本作に関しては心配無用。  「二人で頑張って生きていこう」と共に未来に向かって歩み出した後、時間が飛んで「頑張って生きて、幸せになった未来」まで見せてくれるんですよね。  ここの見せ方が、また上手くって、朝目覚め、いつものように記憶を失ってるヒロイン同様、観客にも(結婚したのか)(赤ちゃん産まれたのか)という衝撃と感動を与える演出になってるんです。  BGMも併せ、何度観ても涙が滲んでくるような、文句無しの名場面に仕上がってたと思います。   脇役陣も良い味出してるというか、良い人達ばかりで、ヒロインが戸惑わず「いつもの日常」を送れるよう、新聞やら果実やらを用意して「優しい嘘」の世界を作り上げてる描写にも、グッと来ちゃいましたね。  そこに主人公のヘンリーが現れて、そんな嘘の世界を壊してヒロインに真実を伝える訳だけど、そこで「嘘」を教えて彼女を守っていた側と、彼女に「真実」を伝えた側、どちらも正しいというか、どちらもそれぞれのやり方で彼女を愛してるんだと、しっかり分かる作りにしてるのも見事。  全く正反対の方針を取った両陣営に対し、どちらかを悪役に感じさせたりはせず、どちらも良い人達なんだと思わせるのって、本当に理想的。   (これだけ愛を交わせば、起きた後もヘンリーを憶えてくれているんじゃないか)と思っていたら、やっぱり駄目だったとか、コミカルだけど絶望感ある場面を見せてくれたりもして、その辺りのバランスも上手かったですね。  基本的には「明るく楽しいラブコメ」なんだけど、その空気を壊さない程度にシリアスな場面も挟む。  だから笑えるし泣けるっていう、絶妙な形。  中盤にて、ヘンリーが自作の曲を聴かせる場面もロマンティックだったし、作中で何度も交わされる「ファーストキス」の描き方も良かったです。   気になった点としては……  冒頭の場面からすると、ヘンリーは男(あるいは、性転換した女性?)にも手を出してたみたいなのに、中盤で「男とやる趣味は無い」と主張してるので、どっちなんだと戸惑った事が挙げられそう。  あと「シックス・センス」(1999年)のビデオに関しては、間違いで別の映画のビデオが入ってた事にすれば、皆で毎晩新しい映画を楽しめるのではって思えたんですが……まぁ、何度も「シックス・センス」を観せられヒロイン以外は飽き飽きしてるって方が話としては面白いし、これは重箱の隅レベルの不満点ですね。   もし自分が一日しか記憶が保てない身になったら、毎日この映画を観るだけで毎回感動出来るかも……なんて思えてくる。  そんな、素敵な贈り物のような一本でした。
[DVD(吹替)] 9点(2023-08-16 22:51:32)(良:2票)
4.  ゾンビランド 《ネタバレ》 
 世にゾンビ映画は数多く存在しますが「その中で一番好きなのは何?」と問われたら、本作を挙げるかも知れません。   そのくらい面白いし、楽しいし、魅力的な一品なんですよね。  文明社会が崩壊した理由を長々と語らず「ゾンビウイルスに汚染されたハンバーガー」がキッカケだとナレーションで軽く説明してしまい、後はひたすら主人公達が「ゾンビランド」で生き抜く様を描くという、そのシンプルさが心地良い。  主人公のオタク青年に、相棒となるタフガイ、ヒロイン枠とマスコット枠となる美少女姉妹という、登場人物のバランスも良かったです。   主人公が「ピエロ恐怖症」なんだと告白すれば、その後にピエロゾンビと戦うシーンが挟まれ、恐怖を乗り越えて成長する姿が描かれたりして、とにかく観客の期待を裏切らない作りになっている辺りも、実に素晴らしい。  そうやって、本筋に関しては王道を守りつつ、要所要所で「意外性のある場面」を挟み、飽きさせないようにしている工夫も上手かったですね。  「姉妹達の裏切り」にせよ「相棒のタラハシーが可愛がっていた仔犬の正体」にせよ、直接本筋と絡むエピソードではないので「初遭遇時から姉妹と仲良くなる」でも「タラハシーは仔犬を失ってしまった男」でも、構わないといえば構わないはずなんです。  でも、そこをあえて「裏切られた後に仲良くなる」「仔犬ではなく息子を失ったのだと知って、一同の絆が強まる」という形にする事によって、観客を驚かせる事にも、劇中の人物達に深みを与える事にも成功している。  この辺りの「お約束な魅力」と「意外性の魅力」との使い分けが絶妙で、本当に上手い脚本だなぁと、観ていて感心する事しきりでした。   恐らくは軍隊が乗り捨てていったのであろう戦車がさりげなく背景に映っている(しかも主人公達はそれを驚きもしない)とか、文明崩壊後の世界の描写に、ちゃんと説得力があった点も良いですね。  土産物屋で暴れて、店内を滅茶苦茶にする場面では「ゾンビ」(1978年)から通じる「文明が崩壊した世界で好き勝手やる楽しさ」が感じられたし、皆で暖炉の前に集まってモノポリーする場面なんかも、凄く好き。  「お金はいくらでもあるけど、もうモノポリーで使う事くらいしか出来ない」っていう皮肉さを、さらりと描く辺りなんて、本当に御洒落だと思います。   ビル・マーレイが呆気無く死んじゃうのは寂しいとか、姉妹はシャワーを渇望していたのだから、それを叶えるシーンがあっても良かったのにとか、遊園地でピンチになるまでの流れが無理矢理過ぎるとか、不満点もあるにはあるんですが……  それらもテンポ良く、ギャグを交えながら描かれているので、あまり気になりませんでしたね。   それよりも、小さな売店に籠城して、四方八方から襲い掛かるゾンビを迎え撃つ場面が、痺れるほど恰好良かった事。  クライマックスの舞台が遊園地だからこその、様々なアトラクションを駆使した「対ゾンビ戦」も丁寧に描かれている事など、長所の方が、ずっと印象深い。   終盤にて、主人公は「女の子の髪を撫でる」という夢を叶える事が出来たし、相棒も念願のトゥインキ―を無事ゲット出来たしで、カタルシスを存分に味わえる作りになっているのも、嬉しかったですね。  「僕達は皆、ゾンビランドで一人ぼっちだ」と呟いていた主人公が、家族を手に入れて、再び旅立っていく。  そんなハッピーエンドで終わる辺りも、文句無し。   遊園地で一日過ごした後のような、心地良い充足感に浸れる映画でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2019-04-24 23:26:26)(良:3票)
5.  ホリデイ 《ネタバレ》 
 休日にノンビリ過ごしながら観賞するには、最適の映画なんじゃないかと思います。   それというのも、これって「面白過ぎて目が離せない」とか「続きが気になって仕方無い」とか、そういうタイプの作品じゃないんですよね。  話の展開は王道に則っており、主役の男女四人も予定調和で結ばれて、ハッピーエンドを迎える事になる。  いきなり大きな音がして吃驚させられる事も無いし、劇中の音楽も穏やかで、心地良いものばかり。  だから観賞中、ウトウトして眠くなったら、そのまま寝ちゃったとしても問題無いような、独特の包容力があるんです。  つまりは「退屈な映画」って事じゃないか……とも言えそうなんですが、自分としては好きなんですよね、こういう映画って。   まず、ホーム・エクスチェンジを題材にする事によって「夢のような豪邸」「お伽噺のようなコテージ」の魅力を、両方味わえる形になっているのが上手い。  しかも、劇中のヒロイン達にとっても、その豪邸とコテージは「初めて訪れる場所」である為、新鮮な反応を示す彼女達と観客とが、同じ気分になって楽しむ事が出来るんです。  旅行映画のお約束「新鮮な場所での、新鮮な恋」も描かれているし、素敵な異性以外にも「偏屈だけど、チャーミングな老人」「とっても無邪気で、可愛い子供達」と出会えたりするんだから、もう言う事無し。  「今いる場所から抜け出して、生まれ変わってみたい」という願望を満たしてくれる、実に良質な作品だと思います。   主演の四人も全員好きな俳優さんだし「予告編」や「劇中曲」の使い方も上手い。  リンジー・ローハンとジェームズ・フランコが出演しているという「危険な罠」についても(予告編だけでなく、本編も観てみたいなぁ……)と思っちゃったくらいですね。  老脚本家のアーサーが自力で歩き、階段を登ってみせる場面にて「マイルズがアーサーの為に作った曲」が流れ出す演出も、凄く好み。  正直、アーサーという人物については考え方が懐古主義過ぎて、あまり共感出来ずにいたのですが、この場面の感動によって一気に好きになれた気がします。  「映画は私にとって、永遠の恋人なのです」というスピーチも、心に響くものがありました。   タクシーが「Uターン出来ない道」と言っていたのに、その後に家から車で出掛けたりする場面があるのは戸惑ったし(多分、反対側の道なら普通に車で移動出来るって事なんだと思われます)折角の可愛い子犬が途中から空気になっているという不満点もあるんですが、気になるのはそれくらい。   アイリスが元カレへのメールで「Dear」と書きかけてから消す場面。  グレアムが「ナプキンヘッド」に変身して、幼い娘達を笑顔にする場面。  マイルズがビデオ店にて、色んな映画音楽を紹介する場面。  そしてアマンダが子供時代のトラウマを克服し、涙を流す場面と、主役四人にそれぞれ印象的な場面がある点も良いですね。   劇中の台詞に倣い「ホリデイ」は自分にとって「恋人のような映画」だと、そう紹介したくなるような、素敵な一品でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2018-06-22 05:35:41)(良:1票)
6.  愛しのローズマリー 《ネタバレ》 
 ジャック・ブラックという俳優の魅力に気が付かされた、記念すべき一品。   元々はヒロインであるローズマリーことグウィネス・パルトロウ目当てで観賞したはずなのですが、終わってみれば主人公である彼の虜になっていた気がしますね。  それくらい衝撃的だったし、本当に良い役者さんだなと、しみじみ感じ入りました。   失礼ながら自分は「太った男優」を恰好良いと思った事が無かったもので、そんな自分の「太ってるのに、こんなに恰好良いんだ」という驚きが、劇中の「太っていても、ローズマリーはこんなに綺麗だ」という主人公の考えとに、上手くシンクロしてくれた気がしますね。  実際に観ている自分自身「外見に左右されない、内面の魅力」に気が付かされた訳だから、主人公の考えの変化にも自然に共感出来たし、そういう意味では非常に運が良かったというか、相性の良い映画だった気がします。   ・主人公が受けた暗示について「以前からの知り合いは従来通りの姿で見える」という部分が分かり難い。 ・ローズマリーと出会う前に色んな女性と絡む為、誰がヒロインなのかと混乱する。 ・美女は次々に登場する一方で、美男子は殆ど出て来ないので女性の観客にとっては物足りなさそう。 ・そもそも主人公の主観とはいえ「太ってる」「老けてる」などの特徴を「醜い」として劇中で扱ってるのは酷いんじゃない?   等々、欠点らしき部分はあるけど、それでも自分にとっては大好きな映画なんですよね。  音楽のセンスも好みだし、ファレリー兄弟の作にしては比較的上品な脚本なのも嬉しい。  ローズマリーの体重でボートが傾いている場面や、脱いだ下着が「パラシュート」サイズで驚く場面なんかも面白くて、コメディ映画としても、しっかり楽しむ事が出来ました。   そして何といっても「主人公が、火傷の女の子と再会する場面」が、本当に素晴らしい。  それまで見た目に囚われていた主人公が、彼女の真実の姿に大きなショックを受け、それでも相手を傷つけないようにと平静を装いつつ「元気かい? 美人ちゃん」と言って、優しく抱き締めてあげる。  その時の(俺は、どれだけ馬鹿な奴だったんだ)(こんな幼い子を見た目で判断して傷付けてしまうような、最低な奴だったのか)という「気付き」と「後悔」の演技とが実に見事で、ここが本作の白眉であったと思います。   それと、もう一つ。  ラストにてローズマリーに告白してみせた際の「鳩時計の真似」も、凄く素敵でしたね。  「本当に、それで後悔しない?」と不安そうに問い掛ける彼女に対し、お道化てみせるだけで、言葉では応えず、その後の優しい笑顔で「後悔なんてするはずないだろう」「だって、君を愛しているから」などといった、色んなメッセージを伝えてみせる。  凡百の台詞よりも遥かに雄弁な、その仕草と笑顔とを見せられた瞬間、この映画は傑作だと確信を抱く事が出来ました。   太っている女性が別人のように痩せた際「生まれ変わった」という表現を用いる事がありますが、本作のローズマリーは生まれ変わったりしません。  生まれ変わるのは、主人公のハルの方。  決して悪い奴じゃないんだけど、偏見に囚われてしまっていた彼が、心優しいヒロインのローズマリーと結ばれて、とびきり魅力的で恰好良い男へと、鮮やかに変身してみせる。  それが実に痛快で、皆が祝福してくれるハッピーエンドも心地良くて、観ているこっちまで幸せな気持ちになれるんだから、本当に良い映画だと思います。   「最初は勘違いから始まった恋が、真実の愛に帰結する」というラブコメの王道を、分かり易く表現してみせた、鮮やかな逸品でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2018-06-19 22:22:02)(良:2票)
7.  2番目のキス 《ネタバレ》 
 これは久々に大当たりの一本。  明るく楽しいラブコメとして、観賞中は常に笑顔のまま、夢見るような時間を過ごせました。   冒頭、レッドソックスのファンを「神の作った、最も哀れな生き物」なんて評してしまう時点で、もう面白い。  チケットのドラフト会議にて、男友達連中がダンスを踊るシーンも、非常に馬鹿々々しくて良かったですし 「俺の女房とチケットを交換しない?」  と言われて、一度はジョークと思って笑ってみせるも、相手が本気と気付いて真顔になる主人公の反応なんかも絶妙な「間」で、センスの良さを感じますね。  少年野球チームの教え子に対し、恋人の愚痴を零していたら、幼い教え子から的確なアドバイスを貰ってしまうシーンも、凄く好み。   あえて気になった箇所を挙げるなら、女性陣が「どんなに好人物であっても、自分が切った爪や髪を捨てられず取っておくような男は、気持ち悪くて無理」という反応を示す場面。  そして「ヒロインにファールボールが命中して気絶しているのに、それに気付かず仲間と盛り上がってる主人公」という場面が該当しそうですが、明らかにギャグとして描かれているので、笑って受け流せる範疇でしたね。  作品全体に明るい愛嬌が漂っているので、よくよく考えるとブラックなネタなんかも、あまり気にならないというか、スムーズに受け入れられる感じです。   姉妹編である「ぼくのプレミアライフ」(1997年)に比べると、ヒロインが「相手の趣味を知らないままで好きになった」という違いがあり、これには「上手いバランスだな」と感心。  承知の上で付き合った訳ではなく、恋人同士になってから、後出しで本性を知らされた訳だから、ヒロインが彼に「野球観戦を止めて欲しい」と訴えるようになっても、身勝手な印象を受けず、自然と感情移入出来るのですよね。  また、仕事一筋なキャリアウーマンという設定でもある為「趣味に生きる男」「仕事に生きる女」という対照的なカップルになっている辺りも面白かったです。   映画の中盤「夫婦って、お互いに歩み寄るものじゃない?」と言っていたヒロインが、クライマックスにて 「私は彼の為に仕事を犠牲にしなかったのに、彼は私の為に大切なチケットを売ろうとしてる」  と気が付き、その愛の深さを知る流れなんかも、非常に丁寧で分かり易く、ありがたい。  こういった心理の流れを、あえてボカしてみせる演出も御洒落で良いとは思うのですが、やはり万人に伝わりやすい演出の方が、自分は好きみたいですね。   二人が球場でキスを交わした瞬間には、観客の皆が拍手喝采で祝福してくれたのと同じように、心から(あぁ、結ばれて良かったなぁ……)と思えました。   レッドソックス優勝の感動を、そのまま映画のクライマックスに据えて、フィクションよりも劇的な「シリングの血染めのソックス」を、さらっと紹介してみせる辺りも心憎い。  間違いなく球史に残るような大きな奇跡の中では、一組の男女が結ばれた事なんて、とてもちっぽけな事かも知れません。  けれど、主人公達にとっては「愛する人が傍にいてくれる事」が何よりも大切なのであり、優勝の喜びの方は「二番目に素敵な事」になったのだと、最後のキスから伝わってきました。    エンドロール後の、家族ぐるみでレッドソックスのファンになった姿なんかも、実に微笑ましくて良かったですね。  大きな感動と、小さな幸福を感じられる、素敵な映画でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2016-09-05 12:33:31)(良:2票)
8.  プリズン・フリーク 《ネタバレ》 
 自分は刑務所を舞台とした映画が好きなのですが「その中でも一番のオススメは?」と問われたら、数多の有名作品を押しのけて「プリズン・フリーク」と答えてしまいそうですね。  そのくらい好きだし「もっと多くの人に観てもらいたい」と思わされるような、隠れた傑作と呼ぶに相応しい品なのです。   何と言っても、この映画の画期的なところは、刑務所映画であるはずなのに、観ていて嫌悪感を抱くような悪人が、一人も登場しない事ではないでしょうか?  勿論、法律上は囚人というだけでも「悪」でしょうし、主人公のジョンにしたって善人とは言い難いキャラクターなのですが、何処か愛嬌があって憎めないのですよね。  それは囚人同士の殺し合いを賭け事にしている看守達にも、黒人差別主義者の囚人のリーダー格にすらも当てはまります。  こうやって改めて文章にしてみると「いやいや、こいつら完璧に悪人じゃん」と我ながら思うのですが、いざ映画本編を観れば、やっぱり親しみを抱いてしまうのです。  中でも、こういった映画では憎まれ役になる事が多い「主人公達を狙っている同性愛者の囚人」が、妙にチャーミングだったりするのだから、まったくもって困りもの。  見た目は太った黒人男なのに、まさかまさかの劇中のヒロイン格ですからね。  人は見かけで判断するもんじゃないなぁ……などと、しみじみ感じました。   脚本も非常に凝っており 「刑務所のルールその1は『絶対に他人を信用するな』」 「キミはもう家族みたいなもんだから」 「ここから出られるのは、死んだ時だけだ」  などの台詞の数々が、伏線として綺麗に回収されていく様は、実に気持ち良かったです。  それでいて難しく考えながら観る必要は全く無い、というバランスも素晴らしい。  途中で「あれ? 何か急に台詞が説明的になったな?」と不思議に思っていたら、ちゃんと後で、その理由が解き明かされたりするんですよね。  なので観賞後に何かが引っ掛かったような気持ちになる事も無く、後味もスッキリ爽やか。   特に好きなのは、ラストの車中にて、ジョンとネルソンが和解する場面ですね。  一度は殺し合いすら演じた二人が、たった一つの曲を通して「偽りの友達」から「本当の友達」そして「家族」へと変わっていく。  その数分間が、何とも微笑ましくて、観ているこちらも一緒に歌い、一緒に笑いたくなってきます。   とても楽しい映画でした。
[DVD(吹替)] 9点(2016-05-11 15:57:36)
9.  レッド・ドラゴン(2002) 《ネタバレ》 
 ドラマ版「ハンニバル」を観終わった勢いで、本作も久し振りに鑑賞。  シーズン3の6話分ほどを掛けて「レッド・ドラゴン」を映像化したドラマ版に比べると流石に薄味とか、でも「刑事グラハム/凍りついた欲望」に比べれば原作にも忠実だし濃厚な作りとか、どうしても他作品と比較して論じたくなるのですが……  その場合はドラマ版「ハンニバル」の事ばかり語ってしまいそうなので、以下は、なるべく映画単品としての評価を。   まず、ウィル・グレアムを演じたエドワード・ノートンは、文句無しで良かったです。  脇役陣も豪華だし、特にハーヴェイ・カイテルがウィルの上司役で登場した際には、思わず声が出そうになったくらい。  出番が少なめなウィルの妻子に至るまで、しっかりと良い役者が揃っており、安心して鑑賞する事が出来ました。   二時間ほどの尺の中で「レッド・ドラゴン」という物語に必要な事は、大体やってくれているのも嬉しい。  冒頭にて「ハンニバル・レクターの逮捕劇」を、僅か八分ほどでスピーディーに描いてるのは見事だったし「ウィルにクリスマスカードを送ってる」「自分達は似た者同士だと語る」などの場面を挟み、レクターがウィルに抱く感情は、単なる憎しみではないと、自然に描いているのも良いですね。  物語のラストでウィルに送った手紙からしても、レクターは「自分を捕えたウィルに復讐した」というだけでなく、彼なりのラブコールを送り、そして振られたのだと感じさせるような作りになってる。  家族を守る為に傷付いたウィルと、黒幕として暗躍したレクターの二人、どちらが勝者で、どちらが敗者であったろうかと考えさせられる、この味わい深い決着の付け方は、実に好みです。   主犯となるダラハイドも丁寧に描かれており、凶悪な殺人鬼にも拘わらず(可哀想な奴だ)(盲目の女性と結ばれて、幸せになって欲しかったな……)なんて思わせてくれたんだから、お見事。  作中最大のトリック「自殺したと見せかけて、実は生きていた犯人」の場面に関しても、文字媒体ではない映像媒体で表現するのは大変だろうに、自然な仕上がりになってたと思います。   幼い息子を人質に取られたウィルが、ダラハイドのトラウマを刺激して息子を救う場面も良いですね。  ウィルの恰好良さは勿論、ダラハイド側の「こいつだけは許せない」という怒りも伝わって来る、忘れ難い名場面です。   難点としては……  「暗い部屋で電灯を点けると同時に血痕を目撃する場面」なんかは、ちょっと古臭い演出に思えた事。  それと、終わり方が微妙だった事が挙げられそうですね。  クラリスがレクターに会いたがってるという「羊たちの沈黙」に繋がる場面で終わったのですが、ファンサービスが露骨過ぎるというか……  (これは「レッド・ドラゴン」が好きな人じゃなく「羊たちの沈黙」が好きな人の為の仕掛けだよな)と思えて、どうも喜べないんですよね。   クラリスよりウィルが、そしてレクターよりダラハイドが好きな身としては、ちゃんと「レッド・ドラゴン」の物語として完結させて欲しかったです。
[DVD(吹替)] 8点(2023-05-10 02:07:12)(良:2票)
10.  コヨーテ・アグリー 《ネタバレ》 
 若者が夢を叶えるまでを描いた、シンプルで気持ちの良い映画。   実在の店をモデルにしているようですが、特に柵のようなものも感じさせず、自然に仕上がっていたと思いますね。  アパートの屋上で歌う場面からは「都会で一人ぼっちの田舎娘」という切なさが伝わってきたし、ニューヨークを舞台にした意味も、しっかり有ったんじゃないかと。   一応、部屋に泥棒が入る場面などで「都会の恐ろしさ」も描いていますが「ニューヨークの人達も、良い人ばかり」という、牧歌的な世界観である辺りも嬉しい。  困窮してる主人公を見かねて、見ず知らずのオジサンが食事を奢ってくれる場面とか(良いなぁ……)って、しみじみ思っちゃいましたね。  冷たいイメージのある都会だからこそ、人の好意が身に沁みるという訳で、凄く印象深い。  「夢を叶える為にニューヨークに来たけど、妥協して別の仕事してる人なんて沢山いる」という事が丁寧に描かれているのも、本作に深みを与えていた気がします。    そんな「妥協した大人」の代表であるコヨーテ・アグリーの店長といい、主人公ヴァイオレットの父親といい、魅力的な脇役が揃っている点も良い。  自分としては、ケヴィン・オドネルというキャラクターが、特にお気に入りでしたね。  女性主人公なラブコメの相手役って、高嶺の花である「王子様」と身近で親しみやすい「彼氏くん」に分かれる訳ですが、本作のケヴィンは後者のタイプ。  幾つもの仕事を掛け持ちして、頑張って生きてる姿が眩しいくらいだったし、マッチョな二枚目なのに、意外とアメコミオタクだったりするのも憎めない。  一歩間違えれば「胡散臭い、女性に都合が良いだけのイケメンキャラ」になりそうなもんなのに、同性の自分から見ても好ましいバランスに仕上がってたんだから、お見事でした。   「アメイジング・スパイダーマン」や「最初のサイン」といったアイテムの使い方も上手いし、練習して瓶捌きが上手くなる場面など「働く楽しさ」が伝わってくる内容なのも良い。  そして何と言っても、ヴァイオレットがステージ恐怖症を克服し、唄い出す場面が素晴らしかったです。  これまで彼女を支えてきた人々が、歌声を聴いた途端に、嬉しそうな笑顔になる。  「夢を叶える事」だけでなく「夢見る人を支え、応援する事」も素晴らしいと伝えてくれる、文句無しの名場面だったと思います。   ヴァイオレットに対し、何かと嫌味な態度で接してたレイチェルが、野次を飛ばす客を黙らせる場面も痛快だったし、そういう「ツンデレな魅力」を感じさせるキャラクターが多かった気がしますね。  個人的には嬉しい事なんだけど、誰も彼もが「嫌な人かと思ったけど、実は良い人」ってオチになっちゃうので、その辺は好みが分かれてしまう部分かも。  後は主人公のステージ恐怖症について、描写が曖昧なのも(冒頭、友達と一緒にステージで唄ってるので後の展開と少々矛盾してる)欠点となりそうです。   こういう明るく楽しいノリで、若者向けの映画って、何だかそれだけで「傑作」とか「名作」とかいう言葉が似合わない気がしちゃうけど……  この映画には、そんな言葉より「好きな映画」って言葉の方が似合っちゃうんだから、仕方無いですね。  たとえ映画史に残る名作であっても、一度観れば充分だって感じる品も多いのですが、本作は定期的に観返したくなる。  オススメの一本です。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2022-06-30 15:14:53)(良:1票)
11.  アメリカン・サマー・ストーリー 《ネタバレ》 
   初代では自慰の現場を両親に見られたのに対し、本作では女性と本番真っ最中な姿を見られてしまうっていう導入部が凄いですね。  こういう形で「前作よりパワーアップした事」を伝えてくれちゃう映画って、ちょっと他には思いつかないです。   そんな下ネタ部分だけではなく、青春映画としてもしっかりパワーアップしており「夏休みの楽しさ」を存分に感じられる内容になっているのが嬉しい。  前作で宙ぶらりんだったジムとミッシェルの関係に、きちっと決着が付いている点も良いですね。  「主人公の恋路を応援してくれる女友達」枠が好きな自分としては、実に好みな展開であり「憧れのマドンナ」枠のナディアではなく、ミッシェルと結ばれると分かった時には、思わずガッツポーズ取っちゃったくらい。  二人の関係性という意味では、前作からの繋げ方が強引だし、初見の際には(ミッシェルって、こんなに良い子だったの?)と戸惑う気持ちもあったりしたんですが……  何度目かの鑑賞となった今回は、そんな違和感も消え去り、素直に祝福する事が出来ました。   愛する彼女が出来たお陰で、すっかり真面目になったオズの変貌っぷりも面白かったし、前作にて「人生で一番楽しいのは、今だよ」と語っていたケビンが、高校時代の思い出に囚われる事から脱して、大人へと成長してみせる流れも良い。  アメリカン・パイシリーズって、基本的には能天気なコメディなんだけど、青春ドラマとしても良質なんだって事を、オズやケビンが証明してくれた気がしますね。  ケビンを励まし、夕暮れの中、主人公四人組のシルエットが並んで歩く場面にも、本当にグッと来ちゃいました。    そんな主人公達だけでなく、振られたナディアに、憎まれ役のシャーマンなど、脇役陣にも優しい眼差しが注がれており、それぞれを幸せな結末に導いてくれるのも、本作の長所ですよね。  シリーズ通してのMVPと呼べそうな「ジムの父」も、存分に存在感を発揮しており「息子想いだが、どこかズレてる」感じが、面白くって仕方無かったです。  病院でのやり取りには笑わせてもらったし、その後、気まずい思いをしているジムに対し「お前は自慢の息子だ」と優しく伝える姿なんかも、凄く好き。  笑いと感動の緩急があって、二つの要素が、互いを引き立て合う効果があったと思います。   賑やかなパーティーが終わり、これで「めでたし、めでたし」かと思われたところで、スティフラーのママが颯爽と登場して〆てくれるのも、お約束な魅力があって良いですね。  (そう来なくっちゃ!)とテンション上がったまま、笑顔のままで、エンドロールを眺める事が出来ました。   学生時代を卒業し、大人になった後も、夏が来る度に観返したくなる。  クライマックスとなる告白シーンだけでなく、皆で別荘に向かう場面や、だらだらとトランプ遊びしたりする場面を、もう一度観たくなる。  理想の「夏休み映画」と呼べそうな、良い映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2020-05-16 08:34:52)(良:1票)
12.  刑務所の中 《ネタバレ》 
 この映画に対する礼儀のような気分で、コーラとアルフォートを携えて鑑賞。   結論としては、ほぼ文句無しの出来栄えだったのですが……  数少ない不満点が導入部にあるってのが残念でしたね。   それというのも、原作漫画では「拘置所で朝食を食べる主人公」という場面から物語がスタートしており、読者は自然と囚人生活を疑似体験出来るような作りになっていたんですが、本作は導入部で十分近く掛けて「主人公はミリタリーマニアであり、銃を不法所持していた」事を描いてしまっているんです。  これには流石に出鼻を挫かれたというか……ミリタリーマニアの人じゃないと「まるで自分が刑務所に入ったような気分になる」って感覚を味わえない気がするんですよね。  序盤から主人公の情報を明かし過ぎてしまったのは、構成としてマズかった気がします。  恐らく監督さんとしては「この主人公は悪い奴じゃないよ。誰かに危害を加えて刑務所に入った訳じゃないよ」という事を冒頭で描いておく必要があると考えたのでしょうが、自分としてはやはり「刑務所の中」もしくは「拘置所の中」から物語をスタートさせ、状況説明はその後に行って欲しかったです。   あとは、ハードボイルド色の濃い短編「冬の一日」も映像化して欲しかったんですが……まぁ、これは主人公を「漫画家の花輪和一」に統一する以上、仕方無かったんだろうなと納得出来る範囲内。  登場人物が幼女化するという漫画的演出などもスッパリ切り捨てていますし、その辺りの取捨選択は上手かった気がしますね。  不満点もあるにはあるんだけど、それが致命的になってはいない、というバランスなのは嬉しかったです。   そもそもこの映画って、オリジナル要素が冒頭の「軍隊ごっこ」と「避難訓練」くらいしかなく「原作には無い独自の魅力を生み出した」っていう褒め方は出来なかったりするんですが……  その分「原作漫画の良さを忠実に映像化した部分」が素晴らしくって、それだけでも傑作認定したくなっちゃうんですよね。   原作で「ムショオタク」を自認していた主人公が「刑務所の中」を楽しんでいる様子もしっかり描かれていたし、刑務作業の際のキビキビした囚人達の動きなんかも、如何にも映画的で面白い。  「パン食」「正月の御馳走」「2級者集会」の場面についても、良くぞここまでやってくれたと、思わず拍手したくなるくらいの出来栄え。  「殺人犯が周りの囚人から憧れの目で見られる」「教官に媚びを売る者は嫌われる」などの刑務所事情を、さり気無く描いている辺りも良かったです。   それと、原作と違って懲罰房の件をクライマックスに持ってきたのも上手いですよね。  原作では拘置所(個室)のエピソードの後、すぐ懲罰房(個室)で過ごすエピソードを描いている為、あまり違いが分からないという欠点があったんですが、映画では「五人部屋での生活」をたっぷり描いた後、個室に隔離される形になっており、懲罰房が凄く新鮮に思えるんです。  先程自分は「映画版独自の魅力が無い」という書き方をしちゃいましたが、何も独自の場面を追加せずとも、こういった「順番の入れ替え」だけでも、充分に面白さはアップするんだなと、大いに感心させられました。   映画のオオトリを飾るのが「醤油ご飯とソースご飯の話」というのは、原作の「一生無縁」に比べると、インパクトが弱いんじゃないかとも思えたんですが……  何度も鑑賞している内に(この終わり方も、シュールな味わいがあって良いな)と、考え方が変わってきましたね。   脱獄する訳でも無いし、裁判で無罪を勝ち取る訳でも無い、刑務所の中の日常を描いてるだけなんだけど、それが面白いし、それが良い。  文字通りの「刑務所映画」として、価値のある一本だと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2020-04-05 22:07:41)(良:1票)
13.  ラッキー・ガール 《ネタバレ》 
 「ラブコメなんて女子が観るもの」という考えだった自分に「ラブコメって、こんなに面白かったのか!」という衝撃を与えてくれた、記念すべき一本。   久々に再見してみると、非常にシンプルな作りであり(ありがちなラブコメでしかなくて、際立った傑作という訳ではなかったんだな)と、寂しい想いに駆られたりもしたんですが……  それでもなお、本作が「面白い映画」「好きな映画」である事は揺らぎませんでしたね。   主人公アシュレーを演じるリンジー・ローハンは魅力的だし、後にカーク船長となるクリス・パインが、彼女と対になる「とことん不運な彼氏」のジェイクを演じているのも面白い。  思えば、この映画を初めて観た頃の自分って(ラブコメ映画に出てくる彼氏役ときたら、男の自分には嘘臭くて耐えられないような奴ばかり)っていう偏見があった気がするんですよね。  でも、本作のジェイクには自然と感情移入出来たし(良い奴だなぁ……幸せになって欲しいな)と応援する気持ちになれたんだから、これって凄い事だと思います。   脇役も充実しており、ジェイクの隣に住んでる幼女のケイティなんて、特にキュートでしたね。  アシュレーが不運になっても決して見放したりせず、一緒に同居生活を送ってくれる女友達の存在も、実に好ましい。  ボウリング場で慣れない仕事を頑張る場面や、洗濯室で泡まみれになって戯れる場面など、昔観て(良いな)と思えた場面に対し、今観ても同じようなトキメキを感じられた事も嬉しかったです。   ラストの「二人同時にケイティにキスをする」という解決法も(そう来たか!)という感じで、意外性があって良かったですね。  今後の主人公カップルは、不運続きな人生になってしまうかも知れないけど、ケイティが傍にいて支えてあげれば大丈夫じゃないかなーって思えるし、ちゃんとハッピーエンドと呼べそうな雰囲気で終わっているのが嬉しい。  再び人生の岐路に立たされるようなイベントが起こったら、ケイティからキスしてもらって一時的に幸運を授かり、事を済ませた後に再びキスしてケイティに幸運を返す、なんて日々を送ってそうな気もしますね。   あえて難点を挙げるとすれば……「会議のプレゼンが成功」とか「車に轢かれても平気」とか(それって運が良いだけで済む話なの?)と思えてモヤッとする場面があるとか、それくらいでしょうか。  あとは、クライマックスの演奏シーンで、もっと盛り上げてくれていたら、文句無しの傑作と呼べていたかも。   思春期の頃、この映画と出会っていなかったら、ラブコメを好きになれないまま、多くのラブコメ映画を楽しめないままだったかも知れないなと思えば、ちょっと身震いするような気分になりますね。  そういう意味では、とても特別な映画ですし、忘れ難い一品です。
[DVD(吹替)] 8点(2019-11-28 18:50:03)
14.  コネクテッド 《ネタバレ》 
 「セルラー」(2004年)ほどのスタイリッシュな魅力はありませんが、アジア映画らしい泥臭さが濃密に盛り込まれており、あちらに負けず劣らずの傑作に仕上がっていますね。   勿論、全編に亘って改良が施されているという訳ではなく(ここは「セルラー」の方が良かったなぁ……)と思える部分もチラホラ見つかってしまうのは、非常に残念。  恐らく「セルラー」で不自然だった箇所を、なるべく自然にしようと改変を行ったのだと思いますが、それによってテンポが悪くなっていたり、逆に説得力が失われていたりもするんですよね。  この「悪くなっている部分」さえ無ければ、あの「セルラー」を越える傑作だと、胸を張って紹介出来た気がします。   中でもキツかったのが「監禁中のヒロインの手枷を解いてあげる犯人達」という場面。  確かに「セルラー」に対しても「なんでヒロインの手を縛っておかなかったんだよ」というツッコミは成立する為「最初は縛っておいた」という形にするのは分からないでもないんですが……それによって「わざわざ一度縛ったものを、何故解いた?」という、より強いツッコミ所が生まれているんだから、本末転倒じゃないかと。  無理矢理に推測するなら「手枷を解いてやる事によって飴を与え、自白させやすくする」という効果を狙ったのかも知れませんが、ちょっと分かり難かった気がします。  「セルラー」では「犯人達が手を縛る事を思い付かなかっただけ」という事で、ギリギリ納得出来る形だった訳だし、ここは変えなくても良かった気がしますね。   と、そんな具合に冒頭部で(こりゃあダメじゃないかな……)と失望させられたりもした訳ですが、その後にどんどん挽回。  気が付けば画面に釘付けになっていたんだから、やはり凄い映画なんだと思います。   先程は「セルラー」に比べて悪くなっている部分を述べましたが、それと同じか、あるいはそれ以上に良くなっている部分も多かったんですよね。  まず、主役格の「青年」「女性」「警官」の三人が、不自然な程に有能過ぎない、等身大な存在となっている点が好ましい。  中でもヒロインのグレイスが「教師だから色んな事に精通していて、何でも出来てしまう」という万能属性を取っ払われて「設計士だから電話を直す事が出来た」「男との揉み合いで勝利出来たのも、偶々刃物が血管を傷付けたから」といった感じに改変されており、これは凄く良かったと思います。  警官に関しても「これまでロクに銃を撃った事も無いはずなのに、何故か物凄く有能」というキャラから「性格に難があって降格させられている元敏腕刑事」という設定になっており、グッと説得力が増している。  極めつけはルイス・クー演じる主人公の青年であり「如何にも頼りない眼鏡姿」「でもやる時はやるという精悍な顔立ち」「経理関係の仕事をしており、頭も良い」「これまで息子に嘘を吐き続けていた為、今度こそ約束を守ろうと奔走する」というキャラクターになっていて、実に自分好みでしたね。  小道具として「バットマン」を巧みに活用し「ヒーローに憧れているはずなのに、現実と妥協して情けなく生きてきた主人公が、今度こそ本物のヒーローになる」というカタルシスを生み出している辺りなんて、見事としか言いようがないです。   誘拐犯のリーダーも貫禄があって良かったし、香港映画らしいカーアクションが盛り込まれている点も、嬉しい限り。  空港での犯人達との駆け引きも緊迫感がありましたし「一件落着かと思いきや、実は……」という、どんでん返しのやり方も上手かったと思います。   ヒロインは人妻ではなくシングルマザーなので、この後に主人公と結ばれる未来が示唆されているんですが、それも直接そうとは描かず、あくまで「結ばれるかも?」と思わせる程度に留めている辺りも、上手いバランスでしたね。  最後に息子に理解してもらえて、親子で抱き合うハッピーエンドになるのも、実に気持ち良い。  人質の命を救う為、止むを得ず息子との約束を破ってしまう主人公の姿が切なかっただけに、この「和解」のシーンは、本当に心に響くものがありました。  (あんなに約束を守ろうと頑張ったのに……)というやるせなさが強かっただけに、約束を破ってでも他人の命を救ってみせた主人公の恰好良さと、それが息子に伝わって仲直りする事が出来たという感動も、更に際立つという形。   「バットマンに転職したら?」との言葉通り、この後の主人公は、貧乏な家族を泣かせるようなヤクザ紛いの仕事なんて辞めちゃって、警官になっていたりもしそうですよね。  あるいは息子をロビン役にして、クライムファイター的なヒーローになるかも?  なんて妄想まで出来ちゃう、実に面白い一本でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-12-19 21:30:31)
15.  セルラー 《ネタバレ》 
 「別れのワイン」もそうでしたが、ラリー・コーエン関連作だと彼が「脚本」を担当した品よりも「原案」を担当した品の方が、傑作が多い気がしますね。  根本となるアイディアを思い付く能力と、それを形にする能力とは別なのだと示す好例であるように思えます。   実際、本作においても「携帯電話が紡ぐ物語」を魅せる演出が、アイディアに負けず劣らず素晴らしかったですからね。  とにかく展開が早くて、映画が始まって三分程でヒロインの女性が拉致される様を描く辺りなんて、実に気持ち良い。  本作は「ある日突然、謎の連中が家に押し入って来て監禁された」というヒロインと「ある日突然、謎の電話が掛かって来た」というヒーローの二人によるダブル主人公制になっているのですが、この二つの導入部を立て続けに見せられると、普通ならダレちゃうはずなんです。  なんせ「一人の主人公」「一つの導入部」に比べて、単純計算で二倍の時間が必要になるし(さっき導入部やったのに、また別の主人公でやるのかよ)という観客の苛立ちだって、無視出来ませんからね。  にも拘らず、本作はとにかくスピーディーな演出で乗り切って、観客に余計な事を考えさせず、そのまま映画の世界に引きずり込んじゃう訳だから、見事という他ないです。   主演がクリス・エヴァンスにキム・ベイシンガーと、アメコミ映画好きには嬉しい顔触れが揃っている事。  更に、ジェイソン・ステイサムやウィリアム・H・メイシーまでいて、脇役陣に至るまで非常に豪華な事も、嬉しい限り。  本作は主役側の「青年」「女教師」「警官」の三人が、揃いも揃って有能という、都合が良過ぎる内容なんですけど、それに対する違和感が少なくて済んだのは、演者さんの力が大きかった気がします。   それと、普通ならエヴァンス演じる青年に視点を絞り「ある日突然、謎の電話が掛かって来た。受話器の向こうにいる彼女は何者だ? 監禁されてるというのは本当なのか?」という謎解きの物語にするところだろうに、ダブル主人公制にして、事前に答え合わせを済ませてある辺りも、本作の凄いところですよね。  「謎解きの魅力」は潔く振り切って「事件を解決しようと奔走する面白さ」を重視した作りになっており、それゆえに新鮮で、十五年近く経った今でも古臭さを感じさせない。    「携帯切れよ、運転に集中しろ!」と言いつつ、自分も携帯電話とハンドルを手放せない主人公の姿とか、非常事態ゆえのギャップの面白さを描いている点も良いですね。  大変な事件が起こっているのに、それを知っているのは主人公だけで、周りは理解してくれないというシチュエーション。  だからこそ「すれ違いコント」のような笑いがあるし、孤軍奮闘している主人公の事を、観客も応援したくなるという図式。   携帯のバッテリーを調達する為、止むを得ず店から強盗する際のカメラワークなんかも、凄く良いですね。  あえてシンプルに、画面を左から右へと移動させ、その後にまた右から左に戻すという形で「車に行って銃を取り、店に戻って来る」という主人公の動きに、完璧にシンクロさせている。  主題歌の使い方も抜群に上手くって、視覚的に印象に残る場面と、聴覚的に印象に残る場面、その両方が揃っているってのは、かなり凄い事なんじゃないでしょうか。   そんな中でも特に好きなのは、人質を取られているのを承知の上で「交渉決裂だな」と一度電話を切り、犯人側が再交渉を持ち掛けてくるのを、祈りながら待つ主人公という場面。  とにかくエヴァンスの演技が素晴らしくて、本当に感情移入させられるし、犯人側が折れる電話を掛けてくるまでの「間」も完璧で、緊迫感が凄かったです。  敵側が悪徳警官である事を活かした「(人質には)手を出さないと誓う」「市民を守ると誓ったように?」というやり取りも、皮肉が効いていて素敵でしたね。  クライマックスにおいても、アラームを駆使して敵の位置を知らせたり、ビデオ録画で証拠を押さえたりと、最後まで「携帯電話」というアイテムをフル活用している辺りも、実に見事。   ヒロインは人妻なので、ロマンスに発展したりはしないんだけど、最後は感謝を込めたキスで終わって、ハッピーエンドとなる辺りも好みですね。  携帯電話の画面を使ったスタッフロールに至るまで、とことん楽しむ事が出来た、満足度の高い一品でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-12-17 03:30:50)(良:2票)
16.  フィリップ、きみを愛してる! 《ネタバレ》 
 「愛」と「脱獄」を描いた映画として、非常に良く出来ていると思います。   始まって十分程で「言い忘れてたけど、俺はゲイ」と主人公が告白し、本作における「愛」とは「同性愛」であると分かるんですが、それでも戸惑いは最小限で、楽しく観賞出来ちゃうんですよね。  冒頭、自分を養子に出した母親との対面シーンだけでも「ジム・キャリーだからこその魅力」を堪能出来ましたし「可憐な乙女」としか形容しようのないフィリップ・モリスを演じ切ったユアン・マクレガーも、これまた素晴らしい。  この二人が主演だからこそ「男同士のカップル」という際どい役どころでも、自然に感情移入出来た気がします。  ・それまでの恋愛対象は髭を生やしたタイプだったのに、女性的なフィリップに主人公が一目惚れするのには戸惑う。 ・「叫び屋」を殴らせた件でフィリップが感激しちゃうのは、違和感あり。 ・ゲイの男性って、ゴルフを毛嫌いするのが普通なの?   などなど、不可解さを感じる部分もありましたが、それらを差し引いても面白い作品でしたね。  フィリップと出会う前の恋人であるジミーが、死の床にて「僕は生涯の恋人と出会ったけど、君は未だ出会ってない」と語り、自分の死後に出会うパートナーを大切にして欲しいと訴える場面は、特に感動的。  作中にて「フィリップ、きみを愛してる」と告げるシーンが二回ある訳だけど、最初の場面は思い切りドラマティックに叫び「燃え上がる愛」を感じさせて、二回目の場面では「愛の終わり」を連想させるような、静かな雰囲気の中で呟かせるという対比も、凄く良かったです。   そんな「愛」に比べると「脱獄」の方は添え物というか「フィリップに愛を伝える為には、脱獄する必要がある」という程度の描かれ方なんですが、これがまた滅法面白いんですよね。  最後の大技と言うべき「エイズ詐欺」も良かったけれど、ハイテンポで描かれる「判事の書類を偽装して保釈させる」「刑務所内で働く医療スタッフに変装して逃げ出す」「セクシー(?)な職員に変装して逃げ出す」という三つの脱獄シーンも、同じくらいお気に入り。  本当に、あの手この手で刑務所を抜け出そうとする様が愉快で、痛快でさえありました。   「約束を守る」事に拘って、看守達に止められても最後まで音楽を流そうとする囚人仲間も良い味出していたし、食堂にて特別に豪華なメニューを食べる事になり、フィリップが喜んでいる場面なんかも印象的。  ラストシーンにて、愛しい彼を忘れられない主人公が、再び脱獄騒ぎを起こし、笑いながら走る姿で終わるというのも良かったです。   実際の「フィリップ・モリス」が主人公の弁護士役としてカメオ出演している為「決定的な嘘をつく訳にはいかない」という配慮もあってか、最終的にフィリップ側は主人公に愛想をつかしたとしか思えない作りになっているのは、悲しいけれど……  それもまた、本作の魅力の一つと言えそうなんですよね。  実話ネタだからこその、ハッピーエンドになりきれない切なさが、物語に上手く作用していたように思えます。   たとえ愛を否定されたとしても、それでも求めずにはいられない男の愚かさ、滑稽さを、空に浮かんだ不思議な雲が、優しく見守っている。  この映画に相応しい、惚けた魅力のある終わり方でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-09-14 10:09:36)(良:1票)
17.  セブンティーン・アゲイン 《ネタバレ》 
 バスケだけでなく、ダンスを披露するシーンまであるのは「ハイスクール・ミュージカル」ファンへのサービスなのでしょうか。  当時ザック・エフロンは既に二十歳を越えていた訳だけど、十七歳の主人公を爽やかに演じ切っており(やはり、この人は学園映画だと輝くなぁ……)と、しみじみ思えましたね。  本作のラストにおいて、主人公はバスケ部のコーチに就任していますが、ザック・エフロンがコーチ役を務める学園スポーツ物なんかも、何時かは観てみたいものです。   そんな与太話はさておき、映画本編はといえば「安心して楽しめる青春映画」そのものという感じ。  「もう一度、高校時代に戻って人生をやり直したい」という後ろ向きな願望を満たしてくれる内容なんだけど、しっかり前向きな結論に達して終わる為、後味も良いんですよね。  「これまでの自分が積み重ねてきた過去は、決して間違いじゃなかった。だから、やり直す必要なんて無い」という着地の仕方は、予定調和ではあるんだけど、やっぱり清々しくて気持ち良いです。  ・息子と友達になり、一緒にバスケ部に入って活躍する。 ・娘に惚れられ、近親相姦に陥りそうになる。 ・妻に愛を語ったら、熟女マニアと罵られてしまう。   といった具合に「家庭を持つ中年男が、十七歳に若返ったら……」というシチュエーションならではの面白い場面が、ちゃんと盛り込まれているのも嬉しいですね。  どれも目新しい展開という訳ではなく「こういう設定なら、当然こうなるだろう」と思えるような王道展開なのですが、そのベタさ加減が心地良い。   主人公の親友ネッドと、美人校長とのロマンスも良いアクセントになっており「主人公と妻は、どうせ復縁するだろうけど、こっちの恋が上手くいくかどうかは分からない……」という意味で、適度な意外性を与えてくれた気がします。  校長の台詞「孔雀ってるの?」という表現には笑っちゃったし、通信教育で習得したというエルフ語をキッカケに意気投合する流れも微笑ましくて、自分としては、もう大好きなカップルです。   ネッドに関しては、十七歳時点での小柄なオタク少年姿も可愛らしかったので、作中で大人の姿でばかり出ているのが、ちょっと勿体無いようにも思えましたね。  「一緒にカンニングしてバレた」「レイア姫をプロムに誘った」などの断片的なエピソードだけでも面白かったし、やり直す前の「一度目の高校生活」についても、もっと詳しく観てみたかったものです。   その他にも「主人公と選手交代した息子が試合で活躍して、勝つところまで描いて欲しかった」とか「娘の彼氏だったスタンと喧嘩したまま終わっているのが気になるので、和解するなり何なりして関係に決着を付けて欲しかった」とか、色々と不満点は見つかるんですが、それも「この映画の、ここが嫌」という欠点ではなく「ここは、もっとこうすれば良かったんじゃない?」という類の不満点に止まる辺り、自分好みの映画だったんでしょうね。   良い映画、好きな映画に対しては「これ一本で終わる映画ではなく、何十話も続くドラマであって欲しかった」と思う事があるんですが、どうやら本作もそれに該当する一本みたいです。
[DVD(字幕)] 8点(2018-07-30 08:36:59)(良:2票)
18.  団塊ボーイズ 《ネタバレ》 
 「Wild Hogs」という原題が恰好良過ぎるので、邦題もそのまま「ワイルド・ホッグス」にして欲しかったなぁ……なんて、つい思っちゃいますね。  かつて「バス男」が「ナポレオン・ダイナマイト」と改題し再販されたように、こちらも再販して欲しいものですが、流石に難しいでしょうか。   そんなタイトルに関するアレコレはさておいて、映画本編はといえば、実に心地良い「旅行映画」であり「青春映画」であり、自分としては、もう大満足。  ツーリング中の風景は美しいし、音楽も良い感じだし、何より「水場を見つけて、そこで泳ぐ」「テントを張って、皆で焚き火を囲む」などのお約束場面が、しっかり盛り込まれているんですよね。  こういった映画である以上「良いなぁ、自分もツーリングしたいなぁ」と感じさせる事は必要だと思いますし、それは間違いなく成功していたんじゃないかと。   主人公のウディは「破産」に「離婚」にと、様々な問題を抱えているのに、ラストにおいてもそれらの問題が一切解決していないというのも、本作の凄い部分ですよね。  それが決して投げっ放しにならず、劇中で語られた通り「たとえ仕事も家族も失っても、俺には仲間がいる」という前向きな結論に繋がっているんだから、お見事です。  聞くところによると続編の予定もあったそうで、諸々の問題については、その続編にて解決するつもりだったのかも知れませんが、これ一作でも充分綺麗に纏まっていた気がしますね。  この「仲間がいる」という結論は「仲間との絆さえあれば、どんな逆境でも乗り越えられる」というメッセージに繋がっているように思えて、本当に好きです。   一緒に水浴びしたハイウェイポリスをはじめ、同性愛ネタが多いのは鼻白むし「イージー・ライダー」を鑑賞済みじゃないとクライマックスで盛り上がれないんじゃないかと思える辺りは欠点なのでしょうが……それでもやっぱり好きなんですよね、この映画。  特に後者については、元ネタありきのパロディ展開なのを承知の上でも、観ていて熱くなるものがありました。  ピーター・フォンダって、恰好良い歳の取り方をしているなぁって、惚れ惚れしちゃいましたね。   腕時計を投げ捨てて旅に出る「イージー・ライダー」と重ね合わせる為、携帯電話を投げ捨ててから旅に出るシーンも面白かったし、それを踏まえての「時計を捨てろ」というラストの台詞も最高。  敵役となるデル・フェゴスのアジトを爆発炎上させちゃったのは「やり過ぎ」感があり、これじゃあ主人公達が悪者みたいでスッキリしないなと思っていたら、最後の最後で「以前より素敵な住処をプレゼント」というフォローが入っていたのも嬉しいですね。  その後、仲間達による乾杯シーンで終わるというのも、凄く気持ち良い〆方。  この「後味の良さ」は、偉大な先達である「イージー・ライダー」には備わっていなかった部分であり、本作が単なる模倣ではない、オリジナルの魅力を備えた品である事を証明している気がします。   「バイク好き限定」「中年男限定」などの枠に囚われず、女性や子供が観たとしても結構楽しめるんじゃないかな、と思えてくる。  とても愉快な、浪漫のある映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-07-23 05:17:06)(良:3票)
19.  ベガスの恋に勝つルール 《ネタバレ》 
 色んな意味で「夢を叶えてくれる映画」って感じですね。   ベガスで一攫千金、お金持ちになりたい。  美女(美男子)と一緒に暮らしてみたい。  そんな庶民の願望を疑似体験させてくれる、心地良い映画だったと思います。   スロットで大当たりする場面もテンポ良く、気持ち良く描いているし、自宅でのパーティーや社員旅行などのイベントの件も、とても楽し気で良かったです。  二人が同棲する事になる部屋も「ここに住んでみたい」と思わせるような魅力があって、好きなんですよね~  ヒロインは嫌がっていたけど、バーカウンターやピンボールの台があるなんて素敵じゃないかと思えるし「ドアを開けると、そこからベッドが飛び出す」ギミックなんかも好み。   「相手に浮気させようと互いにアレコレ画策する」「便座の上げ下げを巡って争う」「夫婦カウンセリングに向かう二人」などの夫婦喧嘩パートも、軽快なBGMに乗せて楽しく描かれており、良かったと思います。  テーマがテーマだけに、ここで攻防が陰湿になり過ぎて観ていて引いてしまう可能性や、主役二人が「嫌な奴」に思えてしまう可能性もありましたからね。  そこを暗くなり過ぎず、明るく能天気なテンションで描き切ってみせた事には、大いに拍手を送りたいところ。   「自分でサイコロを振る勇気すら無かったけど、とうとう起業を決意した主人公」「仕事に依存していたけど、仕事が好きという訳じゃなかったと気が付くヒロイン」などの真面目な部分を、ライトなノリを失わないまま、さりげなく描いているのも良かったですね。  お約束だけど「今回の騒動を通して、二人は大金よりも価値のあるものを手に入れる事が出来た」と感じさせるものがあって、凄く後味爽やか。   主人公の男友達と、ヒロインの女友達も魅力的であり、喧嘩してばかりだった二人が、最終的にはカップルみたいに仲良くなっちゃう結末も、ハッピーエンド感を高めてくれたように思えます。   その他にも「夫婦どちらも『レイダース』が好きだったと分かる」「結婚指輪を填めた薬指を、中指を立てるようにして旦那に見せ付ける妻」など、印象的なシーンが幾つもあって、本当に観ていて楽しい。  夕暮れを迎えた海辺での「結婚してくれませんか、もう一度」という二度目のプロポーズも素敵で(あぁ、良いなぁ……良い映画だなぁ)なんて、しみじみ感じちゃいました。   あまり評判は良くない(ゴールデンラズベリー賞にノミネートされてる)のを覚悟の上で観賞したのですが、意外や意外、本当に面白くて、楽しくて、吃驚させられましたね。  やはり世間の評判なんかに左右されず、自分の感性で判断しなきゃ駄目だな……と、そんな当たり前の事を再確認させてくれた、非常に価値ある一本でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-07-12 08:54:37)(良:2票)
20.  ハリウッド的殺人事件 《ネタバレ》 
 映画好きなら誰しも「世間の評価は芳しくないけど、自分は好き」という映画を胸に抱えているものだと思いますが、本作が正にそんな一本。   副業で不動産を扱っているベテラン刑事に、俳優志望の若手刑事という二人によるバディムービーなのですが、彼らの年齢差が丁度親子くらいで、会話にも何処となく疑似親子めいた匂いが漂っているのとか、凄く好きなんですよね。  若手の方が「刑事を辞めて、本格的に俳優をやりたい」と将来についての展望を語ったり、初老のベテラン刑事の女性関係を心配してみせたりと、二人のやり取りが実に微笑ましい。   特に、若手刑事のコールデンを演じたジョシュ・ハートネットに関しては、本作が歴代でもベストアクトだったんじゃないかと思えるくらいですね。  「このまま刑事を続けていて良いのか」という作中の悩みが、現実世界の彼が当時抱いていたという「このまま俳優を続けていて良いのか」という悩みとも重なり合っているように思え、非常に説得力があったかと。  ラストにて「役者の才能は無いみたいで……刑事止まりかな」と、何処か照れくさそうに語る辺りなんかも、コールデンの「なんだかんだ言っても、刑事という職業が好き」という気持ち、そしてジョシュの「俳優という職業が好き」という気持ちが伝わってくるかのようで、凄く良い場面だと思います。   脚本担当の方も「実際に不動産の副業をしつつ刑事をやっていた」「その時の相棒は俳優志望だった」というキャリアの持ち主のようであり、そういった現実とのシンクロ具合が、本作に適度なリアリティを与えていた気がしますね。  破天荒な設定の、コメディ仕立てな刑事物なのに、地に足が付いている感じで安心して楽しめたのは、そういった裏付けがあったからこそなのかも知れません。   ハンバーガーのトッピングに、携帯電話の着メロといった小道具の使い方も上手いし、マジックミラー式の取調室のシーンなんかも、コミカルな魅力があって好きですね。  カーチェイスや銃撃戦に迫力が無いという、根本的な欠点もあるのは分かりますが、それさえも 「女の子用の自転車や、タクシーを使って追跡するのが面白い」 「俳優志望だからこその演技力を駆使し、相手を騙してから撃つのが痛快」  なんて具合に、好意的に捉えてしまうんだから、本当に自分と相性の良い映画なんだと思います。   115分で終わるのが勿体無くて、この二人を主役とした刑事ドラマを、何十話分でも観てみたくなるような……独特の魅力を備えた一品でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-06-13 17:43:55)
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