15.中学生時代の甘酸っぱい青春の思い出を実にうまく綴った短編。
好きな女のコに花火大会に誘われ、当日は浴衣を着て自分の前に現れる。
こんな経験をもし中学時代にしていたら、一生、自分の中で最も美しい青春の思い出として、死ぬまで心の奥底に眠り続けるだろう。
自分はそこまでの経験はないが、地域の盆踊りか何かで、中学時代の時分に似たような経験をしたことがあるので、恥ずかしいような身がとけるような、なんとも言えない気持ちになる。
大人になると色んな経験を積みすぎて、ちょっとしたことでは心を揺さぶられないし、何しろ中学生といえば、とにかく多感である。
中学時代に異性との関わりで起きたちょっとした嬉しい事が、人生の中でも一際輝いてみえるのはそのせいだろう。
中学時代に異性に好意を告白されたところで、大人のような関係に発展することはないし、本作のラストシーンが示すように、「また来年会えるといいね」みたいにアッサリ終わってしまう。
しかも、その来年とやらは大抵訪れない。
でも、青春時代のそういった甘い思い出が、一瞬のことであるからこそ、その場限りの、まるで花火のように散ってしまうものだからこそ、大人になってもずっと心の奥底にこれ以上ない美しい記憶として残り続けるのだと思う。
この作品は、そんなまぶしすぎる人生の1ページを鮮やかに描いている。
夏だとか、花火だとか、お祭りだとか、そんな一つ一つのシーンが実に活きている。
短めの尺でコンパクトに思春期の美しきシーンを映像化してみせた日本映画として、記憶に残る作品だ。