13.『妻夫木の映画は糞映画』
これは僕が信じて疑わないありがたい格言だったんですけど、
まんまと格言が覆されることとなりました。
この作品は久し振りにガツンと来る良質な恋愛映画でした。
冒頭、朝食のシーンでの玉子焼きがほんとに美味しそうで、
庶民派の僕としては、これだけで充分に満足な感じだったのだけど、
ここに池脇千鶴が被せてきた台詞が圧巻だった。
『サルモネラや』
この時点で僕の格言が音を立てて崩れていくのを感じた。
後はもう名台詞のオンパレードで、
このセンスはどこからやってくるんだろうと脱帽するしかなかった。
しかも、これに対抗する上野樹里がまたいい女で、
顔と体で池脇千鶴を圧倒しているのは一目瞭然だが、
若いのに福祉に興味があるなんて性格美人の側面を併せ持つ完璧超人と来たもんだ。
これはもう勝ち目が無いはずなんだけど、そこは映画の魔法である。
見事に勝者と敗者の入れ替わるファンタジー。
現実には絶対にあり得ないけど、
もしかしたらあるかも知れないと思わせるペテンの巧さ。
ここまでやったら最後まで妄想物語を貫いて欲しかったけど、
最後には現実に突き落とす残酷さがまた良かった。
それでも、涙脆いこの僕が泣かなかったのは、
何か希望のようなものを感じるラストだったからかも知れない。