1.ケン・ローチが得意とする下層階級ものではありませんでしたが(むしろちょっと上)、高いハードルと越えられない壁があるのはいつも通りでした。時代に緩和され共同体に違和感を覚え始めた新世代と歴史を苦労して生きてきた人間との摩擦がありありと描かれています。幸いにも人種や宗教問題などと無縁で呑気な日本人である私には理解し難いことでしたけど、若者の自由奔放さが束縛されたり敬遠される世代間の衝突は次元が違えどよくあることで、囚われにもどかしい気持ちになります。そしてその呪縛がどんな困難な障壁であれ愛で突き崩すあたりにケン・ローチのヒューマニズムを感じます。瑞々しい生身の生命力あふれる人間を描かせたらローチの右に出る者はないでしょう。彼の作品を観るといつだって胸に突き刺さるような思いがします。それからカシムやロシーンを演じるのはやっぱりほぼ素人俳優さんなんでしょうけど、どこか現代性の雰囲気があり慣例との不釣合いを醸し出すので良いですね。