4.まだちいさな男の子が大勢のギャングにリンチを受ける。
リンチを終えて痛みに泣きながらも嬉しそうに笑う男の子。
目をそむけたくなるようなこのシークエンスで、この国がギャングにでもならなければまともな暮らしができないことをガツンと知らされる。
そして暴力と貧困の中で生きる主人公は、なまじっか“愛”などという人間らしい心を持ってしまったために、命を追われる身となる。
そんな彼と行動を共にするのもまた、劣悪な環境から逃れ危険を覚悟で米国に向かう移民の少女。
明るい未来なんか何一つない彼らのロードムービーには不似合いなほどに美しいメキシコの大自然と朝日が印象的だ。
人間らしい心を取り戻しながら死に向かう主人公と、人間らしい心を失いながら生きる術を手に入れていく冒頭の少年の対比がただただ悲しい。
ひたすらリアルに中米の貧困、移民の現実を描いた秀作。