2.『ジョーズ』におけるリチャード・ドレイファスの役柄というのは、要するに「ビックリしたら大事なモノを落としてしまうヒト」なワケで、映画中盤と終盤にそれぞれ、大事なモノを取り落として海底に沈めてしまいます。そうすると、本作でもやっぱり、落とすなと言われて渡された借り物のカメラを取り落としてしまうのですが、それに続いて、こちらは何と「自分自身が海底に落ちてしまう」という展開。『ジョーズ』のクライマックスが印象深いだけに、その手があったか、という驚きがあります。
サメ除けケージごと海底に落ちてしまい、ケージに閉じ込められてしまう女性2人。しかも付近には巨大ザメがいるらしく、ケージから出られたとしても海面には戻れない。いわば、変則的な「閉じこもり映画」ですね。サスペンスの手法としては、サメが迫る姿を登場人物には見せずに我々にだけ見せるような手法もあり得るのでしょうけれど、本作は基本的には登場人物の視点に沿って描いており(これはラストに向けての必然性でもあるのだけど)、サメがどこにいるのか、いつ現れるのか、わからない。最初にサメの姿を見せて、その存在をハッキリ提示しているのだから、あとは登場人物たちと一緒に、いつ現れるかわからないサメを怖がってね、という趣向。
サメの存在に限らず、海底に「閉じ込め」られているので、サメの存在のみならず、周囲の状況自体が、わからない。状況がわからないと、ちょっとしたことが不安になったり、希望になったり、絶望になったり。その一喜一憂をこうやって丹念に描くと、なるほど、目が離せないサスペンスになります。
サメが本当にこんなコトするのか、とか、サメに襲われてこの程度のケガで済むのか、とか、リアリティばかり気にする人を、まるであざ笑うかのようなラスト。ちょっと痛快。