11.エッセイ映画とでも呼びましょうか。時代観察であります。恥ずかしさを軸にして。カルピスは恥ずかしいと言う。濃いとベトベトするし、薄いと山手線が池袋を過ぎ大塚巣鴨あたりを走っているときの索漠とした感じになって恥ずかしい。この手のうがった笑いは70年以降かと思ってたが、江戸時代からの笑いでもあったんだな。あるいは、ファックスが出来ない・口笛が吹けない、と自分が出来ないことを列挙していくあたり。出勤時の下着から順に点検していくあたりなんか喜八さんならでは。新婚時代を靴だけで見せたり、アニメの使用、舞台風のセットと楽しんでやってます。だらしのないサラリーマンの自画像だけど、この小市民の暮らしを断固守るという気概だけはしっかりある。徴兵制がなくていい時代だ、と思い、戦争中の張りつめた気持ちも悪くはなかった、などとは断固思わない。ふやけた小市民ではあるが、かえって「そこだけは頑固」ってしっかりと根が感じられる(平成の現代よりも)。母への想いがさらにそれを膨らませている。遺書を書いたときの気持ちを思うと泣けてくる、って。このあと作家山口瞳は傑作「血族」で母への想いを書き尽くすことになる。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-12-25 09:44:52) |
10.「才能のある人間が生きるのはなんでもないことだ。本当に偉いのは一生懸命生きている奴だ」。自分も「EVERYMAN」の1人として共感できるところが多くあって、笑いあり涙ありで楽しめました。お茶漬けのシーンが印象に残ったなあ。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-11-03 22:16:38) |
9. 主人公の奥さんに対する口調が高圧的で、そういえば自分の父も母に対してあのような口ぶりだったなと懐かしさを感じつつ観ていました。 ほとんど小林桂樹のナレーションでとぎれる事なくエピソードが紹介され、クライマックスとか物語としての起承転結もほとんどなく話は進むので、観る者によっては、退屈な映画となるかも知れませんが、自分は、昔の映画はなぜかいつも襟を正して最後まで気を抜けず観てしまいます。 前から何故だろうと思っていましたが、この映画を観てなんとなくその理由のようなものが分かりました。 昔の映画からは、面白くても面白くなくても、おかしくても悲しくても「真面目さ、ひたむきさ」がひしひしと伝わってくるからです。だから実際はソファーに座ってリラクックスして観ているのだけれど、心の中で時には正座して手を膝の上に置いたりしてます。この映画の原作も含め山口瞳氏の小説は市井の人々に向けた暖かい視線をひしと感じるので、悲しいエピソードも庶民の切ない話として、素直にまたしんみりと受け止めることができますし、また小林桂樹が33歳くらいの役であっても「ちょっと辛いんじゃないの?」とつぶやきつつもそれがミスマッチだとは思えず、むしろミスマッチの小林桂樹が適役と感じました。それは奥さん役の新珠三千代さんも同様ですが・・・ 【たくみ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-05-31 22:46:41) (良:1票) |
8.う~ん・・・残念ながら私はこの映画、イマイチ好きになれないですねえ。鬼才岡本監督のただならぬ才気は認めます。突如画面にアニメーションを取り入れたり、背景をストップモーションにしたり、オープニングにミュージカルの手法を取り入れたり、画面の一人だけにスポットライトを浴びさせたり・・・。それらの技法がコメディとして絶大な効果を上げている。でもね、この主人公に本当に共感できるのって、戦中派の太平洋戦争中青春時代を過ごされた方に限られるんじゃないですか?しかもこの主人公の年齢設定ってこれで36?!マジ!?この若さでこんな演説好きなん?うわああああああ・・・。「自分語り」が好きでたまらない、苦手な上司のたわごとを居酒屋で延々と聞かされているようで正直かなり辛かったっす・・・。ディベート好きの、弁がやたら立つ人間はあんまり信用するんじゃないと、ガキの頃から親に教育されてたんで(笑)すみません、平均点下げます! 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-04-06 11:21:40) |
7.大袈裟さも無く、非凡さも無く、滑稽ではあっても卑屈さも無く生きる、どちらかと言うと少しダメ人間寄りといってもいい江分利満氏の、ささやかに奮闘する日常が、こんなにも愛しいとは。「平凡」という魅力に、イササカの卑屈さも過多の賛美も無い。そのさじ加減の絶妙さに、只々舌を巻くばかりだった。ウンザリするような酔っ払いのクダを延々聞かされた倦怠感までもが、不覚にも楽しめた。 蛇足だが、個人的には二瓶正也と桜井浩子の「ウルトラマンコンビ」が、コッソリ活躍していたのも印象的。 【aksweet】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-01-13 22:57:26) (良:2票) |
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6.普通のことを普通らしくただ生きている男、それがこの映画の主人公、江分利満!この映画を見て、またこの映画の主人公の生き様こそ本当に人間らしい生き方ではないかと思う。やたら偉そうな顔をしている政治家、大金を使って他の球団からFA宣言した選手ばかりをやたらと欲しがるどこかの球団の○○恒雄!お前らのように何でも金の力を利用して這い上がろうとする奴らよりもこの映画の主人公の方がずっとずっとかっこ良い。人間らしくて良い。また、この映画の主人公にはまるで偽善的なものを感じない。だからこそそんな人間味溢れる主人公に憧れる。そういう人間をきちんと描いて見せることの出来る岡本喜八監督に憧れる。これは一人の人間の眼を通して、一人の人間の生活から人間の生き様とは何んなのか?て問いに応えている。岡本喜八監督の描く人間はいつも少し変わってはいるけど、その変わっているものこそ人間の本来の姿なんじゃないでしょうか!いずれにせよ、岡本喜八監督らしいユニークさを散りばめた人情的コメディに相応しい映画です。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-12-09 17:18:45) (良:1票) |
5.普通の人生をできるだけ普通に送ろうとする普通な男の、笑いと悲哀。 誰にでも起こり得る、というか誰にでも実際に起こっている人生における事象を、独特の映画のリズムに乗せ“映画感情”たっぷりに描き出す。 オープニングをはじめとする映画のテンポ感は、まるでディズニー映画のミュージカルシーンのようだが、延々と描かれるのは、しがないサラリーマンの酒に酔ったひとりごとである。ただそれが、少しも飽きずクドくもない。むしろどんどんと引き込まれていく。何気ない台詞回しや、それを発する抑揚が絶妙で巧いのだ。 ひたすらに人間の滑稽さを描き連ねたかと思えば、次の瞬間には同じシーンであるのに、じわりと込み上げてくるものが生まれる。 人間とは、滑稽さと悲哀が表裏一体で構築されているものなのだなあと、改めて思う。 主人公・江分利満を演じた小林桂樹の演者としての深みを感じると共に、今更ながら娯楽映画界の大巨匠・岡本喜八の“巨大さ”を感じずにはいられない。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 10点(2006-12-30 08:05:42) (良:2票) |
4.原作は読んでませんが、これってすごく映像化しにくい話なんじゃないのかなあ・・・半分以上、説明はナレーションがやっていて、映像は添え物みたいな感じだし。最後の方も、意味がよく分かりませんでした。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 3点(2005-04-02 23:56:51) |
3.岡本喜八監督を偲んで借りて来て見た。履物だけが動いている会話のシーンなど、シュールなシーンも多くて笑える。でも一番印象的だったのは主人公が家族の前でお茶漬けを食べながら泣くシーン。ちょっと感情移入してしまった。出演者では主人公を演じた小林桂樹が異様なハマリぶりを見せ、妻役の新珠三千代など脇役も名優ばかり。中でも戦争成金の父親役の東野英治郎が良かった。笑えて泣ける喜劇映画の傑作。2010年9月18日追記:小林桂樹さんの訃報・・・。東宝の俳優陣の中でも地味で控えめな印象のある人なのだが、演技には味があり、この「江分利満氏の優雅な生活」をはじめ、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」、「女の中にいる他人」などはこの人でなければというほど小市民のサラリーマン役がピタリとはまる人で、もちろん「社長シリーズ」の秘書役も彼でなければという思いがある。去年森繁久弥さんが亡くなったときにこの人だけはもう少し長く生きていて欲しいと思っていただけに非常に残念に思う。心よりご冥福をお祈りします。 【イニシャルK】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2005-02-27 13:35:45) (良:2票) |
【虎尾】さん 8点(2003-10-15 01:15:59) |
1.これ去年、“新”文芸座で観たんですよ。場内大爆笑でね。あんなスカッとした笑いがとれる邦画ってそうはないですよ。日本一ハリウッド的な資質を持った映画監督だと思います、岡本喜八さんて。 【じゅんのすけ】さん 9点(2003-06-02 22:34:50) |