1.敗戦直後のローマ。戦争の後遺症はここにも暗い影を落とす。両親や家屋を戦争で失った孤児たちは、大人相手に靴みがきなどをして必死で生き抜いてゆかねばならない。戦後の日本の都会でも同じような光景が見られたのは、記録番組などを通じて知るところ。しかしながら、こんな子供たちでも馬を買うという夢を持って生きているし、またどんな逆境でも夢や希望というものがなければ人間は生きていられない。そんな健気な子供たちを、敗戦直後の荒みきった大人達が盗品の横流しや窃盗団の手先として都合のいいように利用する。社会のルールや仕組みが分からない子供たちは、弁解の余地もなく刑務所(拘留場か?)に放り込まれてしまう。彼らはただただ大人の言われた通り仕事の手伝いをしたまでのことなのに…。そんな混乱期の母国イタリアの現状を、監督デ・シーカは力強くリアルに描いてゆく。おそらく現行の法律に照らし合わせると主人公の子供たち二人(パスクアーレとジュゼッペ)は無罪であろうし、当然ながら釈放して学校教育を受けさせるのが道理であろう。そんな荒んだ大人達だけではなく、刑務所内の先生と呼ばれる大人達からも理不尽な体罰を受ける。刑務所内の劣悪な生活環境に加え、このような非人間的な仕打ちを受けたところで更正など出来ようはずはなく、ますます大人や社会に対し反感を抱くだけであろう。暗く悲しいラストは強烈なメッセージを放っており、子供たちを取り巻く大人社会への糾弾とも受け取れる。名匠デ・シーカの作品としては「自転車泥棒」と双璧を成す傑作です。