9.報道番組では連日のように国内政治の「弱体化」とそれに伴う社会情勢の不安定さが伝えられている。
「弱体化」と言うが、ならば過去の政治が今と比べて優れていたのかと言うと、決してそんなことはないだろう。
戦後の混乱からたとえ強引にでも劇的な復興を成したことは認める。ただその内幕では、真っ黒な混沌が渦巻き、幾重にも膿が蓄積され続けたのだろう。
その深くこびりついた膨大な膿が、時代が変わりゆく今になって徐々に表面化している。
詰まりは、この国の政治は「弱体化」しているのではなく、元々それほど強大な力なんてなくて、長きに渡って覆い隠してきた混沌が目に見えるようになった今、一体どうすれば良いのか分からない状態なのだと思う。
そういうことを、この映画で一部始終描かれる数十年前の日本政治の混沌の様を見ていて思った。
この映画に善人は出てこない。政治の内幕を描いた物語でありながら、登場する人物は揃いも揃って“悪い奴ら”ばかりである。
各々が「甘い汁」を吸おうと躍起になり、それらの行為に良心の呵責などは微塵も無い。当然、善が勝るというようなカタルシスは得られない。だから怖い。
悪行が公然とまかり通り、混沌は闇の中に埋められた。この国には、そんな時代が確実にあって、その上に今の社会が成立している。もちろん、その名残は方々で残っているだろう。
その現実を一般人がもっと認識し、何が善で何が悪なのか、その一つ一つを考えなければ、この国の先は無い気がする。